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第1章

侵入

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 処刑の前日の夜、滝沢は便利屋と接触した。

「……はあ、なんで私がこんなことまでしなきゃならないの」

 依頼内容は、王城のある部屋まで“荷物”を運び出すこと。

「依頼料はきっちり取からね、まったく……」


 王城近くの茂みに隠れている。

 城門には、2人の兵が見張りをしていた。

「……そろそろ時間ね」

 すると、彼女は手を差し伸べてきた。

「手、つないで」

「……え?」

「いいから、早く繋いでよ……! スキル使うだけだから、勘違いしないでっ」

 彼女は顔を赤らめながら言った。

 言われた通りにその手を取った。


「──“シャドウスニーキング”」

 すると、自分の体が薄くなって行き、完全に消えるのがわかった。


「この魔法は発動したとき、触れていたもの全てを透明化させる。持続時間はもってせいぜい20分ってとこね」

 見張りの交代の時間がやってきたのか、城門が開く音が響いた。

「さ、行くわよ」


 城の中にはあっさりと侵入できた。

 音を立てずに、広間の階段を上り、最上階を目指していく。


「……ここだ」

 メイド長に聞きだした情報によると、この扉の向こうが目的地──。

 便利屋は扉に耳を当てる。

「……大丈夫、中には誰も居ないみたい」

すると、彼女はポケットの中からスクロールを取り出すと、

「──“アンロックドア”」

 部屋の鍵が開いた音がした。

 そして、静かに扉を開いた……。
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