転生を繰り返してたら神様に惚れられました

丸太

文字の大きさ
上 下
54 / 57
1章 

39. 誕生パーティーは笑顔で

しおりを挟む
入浴後、普段は使わない香油を塗りたくられて、マッサージされて、身体はぽかぽか、お肌はふんわりツルツルになったのはつい先程です。

「ん~、いい匂い。すべすべ気持ちいい」

と頬ずりまでし始めたレオン様をようやくアレク兄様が引っぺがしてくれます。

「~~~!!!」

私はもう赤面、涙目です。

「後になさって下さいまし!」

シャロンと侍女たちが飛んで来て私の身なりを直します。
後って、後って、後でも嫌よ、こんなドキドキ不安定は!

「だって、ソフィア嬢、いつにも増して可愛いんだもん」

「もんじゃない! 調子に乗るな!」

ソファーでレオン様とアレク兄様がじゃれ合っています。
大型犬ですね。
ずっとそこで遊んでいて下さい。

心を落ち着けるためにメイドのセイセイがハーブティーを用意する。
飲みながら大型犬2匹に潰されたドレスが整えられていく。

今日も青のドレスだ。
胸元には青いグラデーションの花がいくつも飾られ、デコルテの白いレースには金の小花が光を反射している。
袖とスカートの裾には花とツタが金の刺繍で優雅に描かれ、スカートのドレープは複雑で華々しく見ごたえたっぷりだ。
ふんわり優雅に編み込まれたハーフアップの髪には色とりどりの花が散っている。
目元を拭いてお化粧も直して。

「整いました。本当に美しいです」

そう言ったシャロンは「男共は近寄るな」と殺気を醸し出して、私のそばからしばらく離れませんでした。



そうこうするうちにパティー会場へ入場する時間が迫り、私は紳士に戻ったレオン様とアレク兄様お二人の贅沢なエスコートで、大ホールの控室に向かう。
その途中、王都から衣装作りのために来てくれた30人以上の使用人たちが花道を作ってくれていた。

「おめでとうございます」

「おめでとうございます、お嬢様」

1か月間で程よく仲良しになれた皆なので、ちょっと感動。
チャリティーバザーの大成功も彼女たちのお陰なので、お礼を言いたいのは私の方だ。

控室に着くとレオン様もアレク兄様も会場に戻ってしまいました。
代わってお父様とお母様が迎えに来てくれます。

「我がお姫様は素晴らしく美しいね」

「ええ、とっても可愛いわ、ソフィア」

お褒めの言葉に勇気と自信を頂いて、いざ入場です。



暗幕を潜ると大ホールの2階バルコニーへ出る。
ここからの入場は主役感がすごいです!
シャンデリアの下の大ホールには大勢のドレスアップした人がいて、皆の視線が集まるのがわかった。
見られています。
かつてない程、見られています。
でも大丈夫。エスコートはお父様だし、お母様も横についていて下さる。
シャロンもギリギリまで髪型やドレスを整えてくれていたし、レオン様も褒めてくれた。

ホールの中は宝石や金や銀があちこちで輝いていて、眼下に広がるお客様はとても煌めいています。
上から一望するのも見ごたえあるわねぇ。
相変わらず私は、状況に対しての緊張はしないようです。
レオン様は例外です。

「この度は我が娘、ソフィアの10歳の誕生日を祝うためにお集り頂き、ありがとうございます。どうか皆さま、お見知りおき下さい」

お父様の張りのある良く通る声が私を紹介すると、私は膝を折ってご挨拶した。開場中から拍手と喝采が湧く。
楽団が音楽を奏で、人々はバルコニーの階段下に集まる。
私はお父様にエスコートされてカーブを描いた階段を慎重に下りる。
花びらが舞っている。
見上げると花道を作っていた使用人たちがバルコニーの上から花びらを散らしてくれています。
にっこり、目でお礼をすると、使用人たちの笑顔も深まりました。



階段の下にはアレク兄様とアド兄様がいて、家族がそこに集まると人々が寄って来た。
きっとこれも序列があるのでしょう。
先ずはフォレスト侯爵一家が正面に立ち、ご挨拶を交わします。

「お誕生日おめでとうございます。そして、チャリティーバザーも見事でした。あれだけの領民を集められるとは、すばらしい企画力だ」

「衣装や食器の再活用も素晴らしいアイデアだわ」

「露店の料理も大好評だったね。食べてみたかったよ」

フォレスト侯爵ご一家が次々とお祝いの言葉と共に、バザーの成功を祝してくれる。
そして最後はレオン様。
お父様が私の手を傍から見て分かるように促して、レオン様に預けた。
同時に周囲に小さなどよめきが起きた。

レオン様に手を取られて向かい合う。
ああ、婚約者になるということはこういうことなのね、と理解する。

お父様とお母様はそのまま来賓客の社交へと戻って行った。

「こちらへ」

レオン様に促されてテーブルの一角に落ち着く。
横にはレオン様、反対側にはアレク兄様とアド兄様。
背後には執事のセバスチャンとそれぞれの従者たち。
鉄壁のガードが組まれたこのテーブルに近づくのは、それなりの理由が無いと難しい。

まず、挨拶に現れるのは麾下の貴族たちだ。
さすがのアレク兄様は見知っているので、対応を任せます。
同年代の娘さんがいるご家庭もあるので腰を浮かせようとすると、レオン様にくん、と手を引かれました。相手にしなくて良いらしい。
その辺の線引きがわかりません。

しばらくすると、街の有力者たちが代わるがわる挨拶に来ます。
やはり、同年代のお子様がいる家庭がありますが、こちらは控えていたセバスチャンが対応。
お兄様も声を掛けません。
私はただにこにこしていれば良いだけだった。

貴族って、すごいな。
こんなに明確に階級によって扱いが変わるのね。
話しかけたいと思った人に話しかけるわけにもいかないのか。
もっと簡単に色々な人と仲良くなれればいいのに。

でも私はシルエット辺境伯の娘として恩恵を受ける身です。
役割をしっかり果たす必要があります。
あっちを見てもにこにこ、こっちを見てもにこにこ、とにかく笑顔を振りまきます。

「ソフィア嬢、俺を見て」

お隣からレオン様がなぜか懇願してきます。

「なんでしょう?」

にこにこ笑顔のまま、レオン様と向き合います。

「よくやった、レオン様」

アド兄様がお褒めの言葉をかけています。
本当になんでしょう?

「ノックアウト続出で収拾がつかなくなりそうだ」

アレク兄様がため息まじりに言いました。

・・・?
何のこと?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初めから離婚ありきの結婚ですよ

ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。 嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。 ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ! ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。

ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。 事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

処理中です...