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1章
38. バザーの思わぬ効果
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午後のティータイムに合わせて私の誕生パーティー兼お披露目会が始まる。
チャリティーバザーの終わった領主邸前広場には続々と招待客の華麗な馬車がやって来た。
私はパーティーの主役なので、招待客の入場が終わり、一通りの歓談が済んだ後に、満を持して登場するのだそうです。
それまで暇よね。
既に準備も済んで自室で待ちぼうけていると、パーティーを抜け出したレオン様が来てくれました。
「綺麗だよ」
私を見つめていつものように言ってくれます。
「レオン様も素敵です」
私もいつものようにお返しです。
このやり取りも、レオン様が自室まで来ることも、この1ヶ月で慣れてきました。
ドキドキと心臓が踊ることも少なくなり、最近の私は安定しています。
話をしていると、アレク兄様とセバスチャンが来た。
珍しいことだ。
アレク兄様にも椅子を進める。
「お気になさっているかと思いまして、チャリティーバザーの報告に来ました」
おぅ!
そうきたか!
確かに気になっておりました。
人が多すぎて逃げるようにバザー開場を後にしたのは先程の事です。
「チャリティーバザーへの来場者は約7万人です」
「「「!!!」」」
ちょっと待って。ブレスの街の人口が5万人ですよ? 来場者予測は3千人から5千人だったはず。
「ブレスの街に今日だけで5万人以上が入った様子です」
「どうやって!?」
思わず突っ込んでしまった。
「あー、路馬車を増やしたんだ。で、3日間無料にしたから、各地から人が入って来たようだな」
アレク兄様が決まり悪そうに言う。王都にいながら協力できることは、と考えて、路馬車を増やして郊外からブレスに人を送り込んだらしい。
「こんなに人が集中するとは思わなかったな」
と頭を掻いている。
「お陰で街中が観光客で溢れ返っています。経済効果はまだ計算中ですが、えらい事になりそうです」
ブレスの街自体が経済効果を上げるとは、これは完全に私の予想外だった。
良いことなのかしら?
「アレク様の計画を聞いて、バザー目的以外にも観光客が来るだろうことは予測していましたから、嬉しい悲鳴です。警備を増やして街に配置しましたのでご安心ください」
私の不安を汲み取ったセバスチャンが説明してくれる。
対応できているなら安心だ。
「結果として、チャリティーバザーの売上は1200万グランを越えました」
「おお!」
「完売か!?」
「完売です」
男性陣が反応を示しています。
きっと良い結果だったのでしょう。
私は、はい。相場がよくわかっておりません。
お金の事はセバスチャン任せです。
私の微妙な反応にセバスチャンが気をきかせてくれました。
「売上げだけでメイン通りにオイル式街灯が整備できます。オイルライターがあれば管理も楽になります」
私はぱあっと笑顔になる。
「まぁぁぁ」
具体的な例でようやく実感する。
また、例が良い!
レオン様とアレク兄様を振り返ると「素晴らしい結果だ」と褒めてくれました。
「更にただいま招待客から調理器具やレシピについて問い合わせが殺到しておりまして、アドライト様が対応なさっています」
なんと!
「パーティー会場でオイルライターを使って着火と火力調整の実演をする事になりました。オイルライターは返礼品として帰りにお渡しするので、その方が安全だろうと言う事になりました」
アド兄様、大忙しですね。
露店を担当なさったことで、火の扱いが格段に上達したのです。
薪でも石炭でもオイルでも、なんでもござれの野性味溢れる美少女とレベルアップしました。
そして待望のレシピセット売り。
「販売するレシピは露店メニューだけです。宮廷料理はまだ販売する段階ではないとの判断です。でも皆様、チャリティーバザーの盛況振りを目の当たりにしておりますし、露店メニューが気になっていたようで、大層喜んでおられます」
うん。良い匂い、漂っていたものね。
「現段階でチャリティーバザーの成功は確実です。おめでとうございます」
セバスチャンが良い笑顔で頭を下げて言うので、その場にいた侍女たちも慌てて膝を折って、正式に敬意を表した。
「おめでとう、ソフィア」
アレク兄様が素早く近付いてぎゅーっと抱きしめて来るので、シャロンが無言でドレスを直す体勢になる。
「ありがとうございます」
このハグは予測していたので、されるがままになっておきました。
予測できなかったのはレオン様です。
「おめでとう、ソフィア嬢」
そう言っていつもの通り紳士的な振る舞いがあるのかと思いきや、アレク兄様同様のハグに見舞われました!
ぎゃーーー!!!
こんなに接近したのは久し振りです。
そう、あの婚約の申込みの時以来です。
油断した! 油断した!
レオン様、こういうお人でした!
「お前、どさくさに紛れて」
アレク兄様が助けて
「俺の婚約者だよ?」
くれない!
「ああ、そうだな! そうだったな!」
レオン様に言い負かされています!
パーティー前に何をなさるのですか!?
お化粧がレオン様の衣装について・・・ない。良かった。私の侍女たち、素晴らしいわ。
でもでもやっぱり近すぎます!!!
私の安定、どこへいった!?
私はパニック状態で、暫くの間レオン様にぎゅーぎゅーに抱きしめられていたのでした。
チャリティーバザーの終わった領主邸前広場には続々と招待客の華麗な馬車がやって来た。
私はパーティーの主役なので、招待客の入場が終わり、一通りの歓談が済んだ後に、満を持して登場するのだそうです。
それまで暇よね。
既に準備も済んで自室で待ちぼうけていると、パーティーを抜け出したレオン様が来てくれました。
「綺麗だよ」
私を見つめていつものように言ってくれます。
「レオン様も素敵です」
私もいつものようにお返しです。
このやり取りも、レオン様が自室まで来ることも、この1ヶ月で慣れてきました。
ドキドキと心臓が踊ることも少なくなり、最近の私は安定しています。
話をしていると、アレク兄様とセバスチャンが来た。
珍しいことだ。
アレク兄様にも椅子を進める。
「お気になさっているかと思いまして、チャリティーバザーの報告に来ました」
おぅ!
そうきたか!
確かに気になっておりました。
人が多すぎて逃げるようにバザー開場を後にしたのは先程の事です。
「チャリティーバザーへの来場者は約7万人です」
「「「!!!」」」
ちょっと待って。ブレスの街の人口が5万人ですよ? 来場者予測は3千人から5千人だったはず。
「ブレスの街に今日だけで5万人以上が入った様子です」
「どうやって!?」
思わず突っ込んでしまった。
「あー、路馬車を増やしたんだ。で、3日間無料にしたから、各地から人が入って来たようだな」
アレク兄様が決まり悪そうに言う。王都にいながら協力できることは、と考えて、路馬車を増やして郊外からブレスに人を送り込んだらしい。
「こんなに人が集中するとは思わなかったな」
と頭を掻いている。
「お陰で街中が観光客で溢れ返っています。経済効果はまだ計算中ですが、えらい事になりそうです」
ブレスの街自体が経済効果を上げるとは、これは完全に私の予想外だった。
良いことなのかしら?
「アレク様の計画を聞いて、バザー目的以外にも観光客が来るだろうことは予測していましたから、嬉しい悲鳴です。警備を増やして街に配置しましたのでご安心ください」
私の不安を汲み取ったセバスチャンが説明してくれる。
対応できているなら安心だ。
「結果として、チャリティーバザーの売上は1200万グランを越えました」
「おお!」
「完売か!?」
「完売です」
男性陣が反応を示しています。
きっと良い結果だったのでしょう。
私は、はい。相場がよくわかっておりません。
お金の事はセバスチャン任せです。
私の微妙な反応にセバスチャンが気をきかせてくれました。
「売上げだけでメイン通りにオイル式街灯が整備できます。オイルライターがあれば管理も楽になります」
私はぱあっと笑顔になる。
「まぁぁぁ」
具体的な例でようやく実感する。
また、例が良い!
レオン様とアレク兄様を振り返ると「素晴らしい結果だ」と褒めてくれました。
「更にただいま招待客から調理器具やレシピについて問い合わせが殺到しておりまして、アドライト様が対応なさっています」
なんと!
「パーティー会場でオイルライターを使って着火と火力調整の実演をする事になりました。オイルライターは返礼品として帰りにお渡しするので、その方が安全だろうと言う事になりました」
アド兄様、大忙しですね。
露店を担当なさったことで、火の扱いが格段に上達したのです。
薪でも石炭でもオイルでも、なんでもござれの野性味溢れる美少女とレベルアップしました。
そして待望のレシピセット売り。
「販売するレシピは露店メニューだけです。宮廷料理はまだ販売する段階ではないとの判断です。でも皆様、チャリティーバザーの盛況振りを目の当たりにしておりますし、露店メニューが気になっていたようで、大層喜んでおられます」
うん。良い匂い、漂っていたものね。
「現段階でチャリティーバザーの成功は確実です。おめでとうございます」
セバスチャンが良い笑顔で頭を下げて言うので、その場にいた侍女たちも慌てて膝を折って、正式に敬意を表した。
「おめでとう、ソフィア」
アレク兄様が素早く近付いてぎゅーっと抱きしめて来るので、シャロンが無言でドレスを直す体勢になる。
「ありがとうございます」
このハグは予測していたので、されるがままになっておきました。
予測できなかったのはレオン様です。
「おめでとう、ソフィア嬢」
そう言っていつもの通り紳士的な振る舞いがあるのかと思いきや、アレク兄様同様のハグに見舞われました!
ぎゃーーー!!!
こんなに接近したのは久し振りです。
そう、あの婚約の申込みの時以来です。
油断した! 油断した!
レオン様、こういうお人でした!
「お前、どさくさに紛れて」
アレク兄様が助けて
「俺の婚約者だよ?」
くれない!
「ああ、そうだな! そうだったな!」
レオン様に言い負かされています!
パーティー前に何をなさるのですか!?
お化粧がレオン様の衣装について・・・ない。良かった。私の侍女たち、素晴らしいわ。
でもでもやっぱり近すぎます!!!
私の安定、どこへいった!?
私はパニック状態で、暫くの間レオン様にぎゅーぎゅーに抱きしめられていたのでした。
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