転生を繰り返してたら神様に惚れられました

丸太

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1章 

36. 婚約式

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鏡の中には、いつもより3割、いえ、5割は増し増しの自分がいる。
編み込まれたハーフアップの髪と、ほんのりお化粧した肌はキラキラと輝き、唇の紅のせいで、肌が白磁のようにも見えます。
毎度のことながら、私の侍女たち、すごいです。

ドレスはシルエットカラーの青。上等の生地やシフォンがいつくも重ねられ、複雑なグラデーションを描いている。胸元には金の豪華な刺繍。子供らしく露出の少ないプリンセスラインのドレスだが、腰のシフォンと袖のレースにボリュームがあり、それが逆に私の身体を華奢に見せている。

「素敵、素敵です!」

「まるでお人形さんのようにお可愛らしい・・・」

専属侍女のシャロンも、他の侍女たちも、目を輝かせて褒めてくれます。
貧相には見えないかしら?
ちょっと不安なのですが、ここでそれを口にするのは侍女の腕を疑うことになるので言えません。



2日前、お父様とアレク兄様が帰郷しました。
そして昨日、先触れがあり、今朝、王都からフォレスト侯爵様とそのご家族が我が邸に入りました。
予定通りです。

そして午前中には婚約式を終わらせ、そのままお昼の会食となる。

「緊張なさっていますか?」

「気持ちを落ち着けるハーブティーです」

シャロンもセイセイも、甲斐甲斐しく世話をしてくれます。
でも私、あまり緊張していません。
なんでかな?
本当に緊張していたり、ストレスで身体が悲鳴を上げる時はこんなものではない、という記憶がなんとなくあるのです。
いつだったか夢でも見たのでしょう。
自分の妄想力のお陰で人生の大事な日に緊張しないでいられるって、なんて効率の良い心身なのでしょう。



窓辺の椅子に座ってお迎えを待つ。
春真っ盛りの風が気持ちいい。
嫌な感じが少しもしないこの空間に、私は今日が最高の日になる確信をした。

コンコンとノックと同時に扉が開かれ、濃紺の衣装に金の刺繍が華々しい衣装のお父様が、素敵な笑顔で私に向かってきてくれます。

「さあ、私のお姫様。何も不安はないかい?」

私の気持ちをおもんばかった言葉と共に、手をとられ立ち上がる。

「凄く素敵だよ。この家を明るく照らす太陽のようだ。フォレスト家の奴らに、その眩しさを見せつけてやろう!」

そういう意気込みで行くのですね!
わかりました。
気合いの入ったお父様に私はコクリと頷き、差し出された腕に手を絡めます。
正式なエスコートです。

廊下にはこの日のために敷かれた深紅のカーペット。
柱という柱に、豪華な花が飾れている。
カーテンは特別な日のたたみ方で美しいドレープが描かれ、風にながれてローズの香りが漂ってくる。

「わあ、全てが特別仕様ですね」

お父様に気さくに声を掛けると

「全く緊張していないようだね」

と呆れられました。

「ふふふ、緊張はしない質のようです」

足取りに不安もなく、軽々と階段を下りる。

「大したもんだよ、お前は。」

お父様から褒められました。



広い食堂に入ると、長いテーブルを挟んで、左にフォレスト家、右にシルエット家の面々が既に並んでいます。
私はお父様にエスコートされて2番目の上座に通される。
お兄様もお母様も抜いてこの席か!
主役感が半端ないです。

でもお向かいにはレオン様。
黒にシルバーのお衣装がいつにも増して凛々しいです。
首のスカーフピンが青い。
気付いて私はピンから視線を上げると、レオン様は私の胸元のブローチを見ている。
そのまま視線が合って微笑みが漏れます。
私もシルバーを身に付けたのですが、気付いて頂けたようです。

にこにこにこにこ。

「こほん。えー、ご覧の通り、この1ヶ月で二人は随分と親交を深めました。」

お父様が、見つめ合ってただ笑顔の私とレオン様をからかうので、私は表情を引き締めます。

「では、婚約式を始めます。この度はわざわざブレスまでお越しいただき・・・」

お父様が歓迎のご挨拶をし、相手方もお招きのお礼を言い合う。
私は令嬢らしく、視線を伏せてお父様の言葉を聞いていた。
そして家族が紹介される。
最初に私。やっぱり主役感がすごいです。

私は視線を上げて初めてレオン様のご両親とお兄様を見た。
なんとまた、美しい家族なのでしょう。
偉丈夫なお父上、線の細い可愛らしいお母上、精悍な兄上。
皆さまなんだか目を見開いて私を見ていますよ。
ど、どこか変かな?
やっぱり貧相な子供でびっくりさせてしまったかしら?

「見すぎ!」

レオン様がご家族を窘めました。
ありがとうございます。
穴が開きそうでした。

レオン様のお父上からもフォレスト家の面々が紹介され、やっとのことで席へ着く。
そして順調に婚約の条件が、両家の間で確認されていく。
目を伏せて一つ一つ聞いているが、「それ、必要か?」という条件も多々あります。形式だから仕方ない。

「58、この婚約はソフィアの13歳の誕生日に広く知らしめるものとする。59、この婚約は・・・」

セバスチャンによって読み上げられていく婚約条件項目。58番。なんで13歳まで公表しないのかしら? お母様の考えらしいけれど、これってレオン様に申し訳ない項目な気がする。もう、変更は出来ないけれど。

婚約条件の読み上げが終わり、両家で相違ない事を確認すると、正式な契約書にサインが交わされた。

「これにて、レオン・フォレストとソフィア・シルエットは正式に婚約者と相成りました」

お父様の声。
家族たちの拍手。

あ、今、私はレオン様の婚約者になったのね。
改めて今この時が記念すべき瞬間なのだと実感する。
ずっと伏せていた視線を上げると、レオン様の優しい、温かい、笑顔があります。
この笑顔をみると、私も笑顔になってしまうのです。

「よろしくね、婚約者殿」

レオン様の小さな声が聞こえます。
私は更に笑顔を深めるのでした。
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