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1章
32. 制作はマンパワー
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さて、今日中に衣装仕立て直しの工程を作らなければならない。
王都メンバーにも、昨日のうちに衣装1人3着贈呈会を終えた。
貴重品や思い出の品はとっくに倉庫へ移動済み。
残った服、全てを仕立て直す!
まずはデザインする人、解体する人、縫う人、コーディネイトする人などに分けて流れ作業をするラインを作ります。
広い会議室に3つの館から合わせて50人以上の使用人たちが集まった。
既にこちらのメンバーで始めていた作業を見て、皆がやりたいブースに別れた。
周りを見て人手が足らなそうなところに移る者もいる。
うん。
さすがは一流の使用人たちです。周囲を見て弱い部分を補う器量がある人物もそれなりにいる様子です。
「やっぱり問題はデザインね」
ラインの一番先頭、最初の作業がデザインなのだが人がいない。
私が困った声を出すと、3邸の代表者が集まって来た。
「今まではどなたが?」
と聞かれたので
「私です」
と答えるとどよめきが起きた。
そんなにすごいことかー?
簡単だよー。
王都シルエット邸のメイド長、リマが1人の少女を呼んだ。
フォレスト邸の侍女アリーは若い女性を呼ぶ。
「旅の道中聞き込みをしたのですが、この2人はデザインが出来ます。この子は仕立て屋の娘で、彼女はセミプロです」
アリーが説明してくれる。
「まぁ! 即戦力ね。助かるわ」
私はセミプロだという使用人に
「ではあなたがデザイン長ね。頼りにしています」
とにっこり命名すると、驚いています。
「そんな、まだ実力もわからない状態ですのに」
と謙遜するので
「大丈夫、決定! あまりにも負担なら言ってください。でもセミプロなら直ぐに慣れるわ。他にセンスがありそうな人がいたら助手に付けて育ててあげてね」
と強引ですが断行します。
時間がないのです。
適材適所、デザイン部分は出来る人が限られている。やってもらうしかありません。
「では、ブレスチームで実演しますわね。よく見ていて」
私は無造作にハンガーから1着を取り、紙に元の服と仕上がりイメージの2つを絵にする。文字で簡単に指示も書く。
「はい、出来上がり! この通り進めて」
5分もかからず仕上げた指示書を、服と一緒に次の工程へ渡す。もちろん指示の足りない部分もあるが、それは各工程で補ってもらう。
渡した服を次の解体組がザクザク切っていく。端切れ布や飾りは種類別に箱に収められる。
そして次の手縫い組へ。端の始末などを素早くチクチク。
その間に飾り付け組が、カットした布と別の服から出たレースを組み合わせてリボンを作る。別の人も必要な飾りを箱から探し出す。
右から左へ各工程をめぐった服はプレス組に仕上げられ、コーディネイト組が帽子やバッグ、靴などをハンガーに付け足していく。
そして1着1コーデ完成!
「こんな感じにちょっと上等な町民服を目指して進めて行くのよ。頑張って」
私は「後はよろしく」と皆を見回してから現場を離れます。
私が会議室を出ると、ワッと問答が始まった。
揉めている揉めている。
皆で考えて、効率の良い方法を編み出せば良いのです。
私はニンマリ笑って、室内の喧騒を背に次の現場へ移動です。
ホールへ向かうとレオン様が待っていた。
うう、まだ恥ずかしい。
レオン様からの熱烈な告白を受けたのはつい先程です。
ほんの小一時間前、引きこもった部屋から人生最大の恥ずかしさを抱えて家族の元へ出ていくと、
「あ、落ち着いた? まとまった?」
と、簡単に反応されただけだった。
そして淡々と婚約条件の確認をした。
突っ込みたい部分もあったが、お父様とお母様が決めてくれた事なら信用しますと、サインし拇印を押した。
さすがに手が震えて署名には少々時間が掛かった。
それからの会議室でした。
皆、婚約のことは知っているのだろうが、静かに見守る会みたいになっているので助かります。
今はやわこい所に触れないで欲しいのが本心だ。
こうやってレオン様と向かい合うだけで緊張してしまうのですから。
「じゃ、行こうか。緑林館」
レオン様に促されて外へ出る。
そうです。緑林館隣にある工房へ行って、職人たちにオイルライターの部品を作ってもらうのです!
「歯車さえ上手く作れれば成功しそうですね」
わたしはワクワクが押さえきれなくなって、レオン様が婚約者としてお隣に要ることを忘れてしまう。
もういつも通りに話し掛けています。
レオン様もいつも通りです。
ただ、隣を歩く距離が縮んだかな? という変化はありました。
「それよりも俺はオイルを入れる容器の方が難しいと思う」
「あと、オイルも。何のオイルがいいか検証しなければなりませんね」
「吸い上げる紐もね。安全な物じゃなきゃ意味が無い」
オイルライターは設計図の空想から現実へ移行すると、ひとつひとつの工程で難易度が高くなる。
でも、これが成功したらこの世界の未来は大きく変わるらしい。
出来れば良い方向に変えたい。
最近チャリティーバザーの準備をしているうちに、自分の考えがまとまって来たのです。
この世界は魔力を求めて喘いでいる。
でも魔力はなくなるの。
だから、魔力がなくても生きていける知恵をつければいいのです。
つまり、魔力は要らない。
レオン様やお兄様の話を聞いていると、きっと暴動どころでは済まなそうなので、今はまだ内緒です。
王都メンバーにも、昨日のうちに衣装1人3着贈呈会を終えた。
貴重品や思い出の品はとっくに倉庫へ移動済み。
残った服、全てを仕立て直す!
まずはデザインする人、解体する人、縫う人、コーディネイトする人などに分けて流れ作業をするラインを作ります。
広い会議室に3つの館から合わせて50人以上の使用人たちが集まった。
既にこちらのメンバーで始めていた作業を見て、皆がやりたいブースに別れた。
周りを見て人手が足らなそうなところに移る者もいる。
うん。
さすがは一流の使用人たちです。周囲を見て弱い部分を補う器量がある人物もそれなりにいる様子です。
「やっぱり問題はデザインね」
ラインの一番先頭、最初の作業がデザインなのだが人がいない。
私が困った声を出すと、3邸の代表者が集まって来た。
「今まではどなたが?」
と聞かれたので
「私です」
と答えるとどよめきが起きた。
そんなにすごいことかー?
簡単だよー。
王都シルエット邸のメイド長、リマが1人の少女を呼んだ。
フォレスト邸の侍女アリーは若い女性を呼ぶ。
「旅の道中聞き込みをしたのですが、この2人はデザインが出来ます。この子は仕立て屋の娘で、彼女はセミプロです」
アリーが説明してくれる。
「まぁ! 即戦力ね。助かるわ」
私はセミプロだという使用人に
「ではあなたがデザイン長ね。頼りにしています」
とにっこり命名すると、驚いています。
「そんな、まだ実力もわからない状態ですのに」
と謙遜するので
「大丈夫、決定! あまりにも負担なら言ってください。でもセミプロなら直ぐに慣れるわ。他にセンスがありそうな人がいたら助手に付けて育ててあげてね」
と強引ですが断行します。
時間がないのです。
適材適所、デザイン部分は出来る人が限られている。やってもらうしかありません。
「では、ブレスチームで実演しますわね。よく見ていて」
私は無造作にハンガーから1着を取り、紙に元の服と仕上がりイメージの2つを絵にする。文字で簡単に指示も書く。
「はい、出来上がり! この通り進めて」
5分もかからず仕上げた指示書を、服と一緒に次の工程へ渡す。もちろん指示の足りない部分もあるが、それは各工程で補ってもらう。
渡した服を次の解体組がザクザク切っていく。端切れ布や飾りは種類別に箱に収められる。
そして次の手縫い組へ。端の始末などを素早くチクチク。
その間に飾り付け組が、カットした布と別の服から出たレースを組み合わせてリボンを作る。別の人も必要な飾りを箱から探し出す。
右から左へ各工程をめぐった服はプレス組に仕上げられ、コーディネイト組が帽子やバッグ、靴などをハンガーに付け足していく。
そして1着1コーデ完成!
「こんな感じにちょっと上等な町民服を目指して進めて行くのよ。頑張って」
私は「後はよろしく」と皆を見回してから現場を離れます。
私が会議室を出ると、ワッと問答が始まった。
揉めている揉めている。
皆で考えて、効率の良い方法を編み出せば良いのです。
私はニンマリ笑って、室内の喧騒を背に次の現場へ移動です。
ホールへ向かうとレオン様が待っていた。
うう、まだ恥ずかしい。
レオン様からの熱烈な告白を受けたのはつい先程です。
ほんの小一時間前、引きこもった部屋から人生最大の恥ずかしさを抱えて家族の元へ出ていくと、
「あ、落ち着いた? まとまった?」
と、簡単に反応されただけだった。
そして淡々と婚約条件の確認をした。
突っ込みたい部分もあったが、お父様とお母様が決めてくれた事なら信用しますと、サインし拇印を押した。
さすがに手が震えて署名には少々時間が掛かった。
それからの会議室でした。
皆、婚約のことは知っているのだろうが、静かに見守る会みたいになっているので助かります。
今はやわこい所に触れないで欲しいのが本心だ。
こうやってレオン様と向かい合うだけで緊張してしまうのですから。
「じゃ、行こうか。緑林館」
レオン様に促されて外へ出る。
そうです。緑林館隣にある工房へ行って、職人たちにオイルライターの部品を作ってもらうのです!
「歯車さえ上手く作れれば成功しそうですね」
わたしはワクワクが押さえきれなくなって、レオン様が婚約者としてお隣に要ることを忘れてしまう。
もういつも通りに話し掛けています。
レオン様もいつも通りです。
ただ、隣を歩く距離が縮んだかな? という変化はありました。
「それよりも俺はオイルを入れる容器の方が難しいと思う」
「あと、オイルも。何のオイルがいいか検証しなければなりませんね」
「吸い上げる紐もね。安全な物じゃなきゃ意味が無い」
オイルライターは設計図の空想から現実へ移行すると、ひとつひとつの工程で難易度が高くなる。
でも、これが成功したらこの世界の未来は大きく変わるらしい。
出来れば良い方向に変えたい。
最近チャリティーバザーの準備をしているうちに、自分の考えがまとまって来たのです。
この世界は魔力を求めて喘いでいる。
でも魔力はなくなるの。
だから、魔力がなくても生きていける知恵をつければいいのです。
つまり、魔力は要らない。
レオン様やお兄様の話を聞いていると、きっと暴動どころでは済まなそうなので、今はまだ内緒です。
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