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1章
29. 夜会ではモテモテでした
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アリーとの会話を楽しんでいると他の使用人も集まり始めた。
皆フォレスト邸の方々です。
「また後程」
とアリーが去って行くと次の方が挨拶に来る。その方が終われば次の方。
レオン様が例の如く「僕の一番」と毎回紹介するので、私の心臓には徐々に毛が生えてきました。
もう少しも動じません。
「またご冗談ばかり」
と流せばいいのです。学習しました。
フォレスト家の方々が去ると次は王都シルエット邸の使用人たちがワッと寄って来る。
円卓の周りはお父様とお兄様の馴染みの方ばかりになり、王都邸に出入りしているレオン様もよくご存じの様子だ。
フランクな会話も出始める。
「アレク様からいつもお聞きしているのですが・・・」
「アレク様がおっしゃる通り・・・」
「アレク様がいつもソフィア様の事をお話し下さって・・・」
どれだけ私の話をしているのかな? アレク兄様。
こちらはもう無視です。
アレク兄様のフォローなど致しません。
「アレク兄様、寂しんぼですね」
この一言でお終いです。
ワイワイと歓談が進むと給仕たちがデザートとお茶を運んで来た。
甘い匂いに皆が席に戻る。
「フォンダンショコラとスフレチーズケーキです」
給仕たちが各テーブルに説明しながら配膳していく。
皆さまのわくわくしたお顔をぐるっと見回して、私は満足です。
この二つのデザートは我が家のテッパンで、私とアド兄様が四苦八苦して開発したものです。
レオン様が邸にいらした日にもお出しして、大好評でした。
お隣のレオン様も「あ!」と見知ったデザートに喜んでおります。
食べた傍から歓声が上がる。
「美味しい! 暖かいチョコが入っているわ! え、チョコってこんなにおいしかった!?」
「こっちはフワフワよ! 口の中でジュワッととろけるの!」
やっぱり女子には甘いデザートよね!
キャッキャウフフのデザートタイムになりました。
私はアド兄様と目が合うと、にっこり笑顔を交わしました。
アド兄様の「やったね!」という可愛い笑顔。
あぁ、癒される。
甘食が苦手な方のためにも、フルーツ盛りが用意されています。
我が家の料理人たち、わかっております!
シルエット領はフルーツに恵まれているのです。
何といっても広いので山あり、温暖地域あり、港ありです。何らかの方法でいつでも美味しい旬のフルーツが手に入ります。
こちらも大人気でした。
食事が終わると男子はサロンに、女子はテラスに移動する。
といっても女子ばかりだ。
旅路を管理統括する男性従属が各家から三人ずつ来ているのみなので、今日はパーティーには珍しくサロンが寂しいです。
代わりにテラスは盛り上がっています。
テラス窓は一部が解放され、庭の木花も楽しむことが出来る。
もちろん魔道具でライトアップされているので、大窓の外にはほんのり明るい幻想的な空間が広がっている。
この美しい空間でお茶を頂きながら会話を楽しむ。
それ自体が使用人たちには贅沢なのでしょう。
とても楽しそうで嬉しそうです。
誰とお話しようかしら? と悩んでいたのは全くの杞憂でした。
夜の外は苦手なので、一部がガラス張りになった室内に場所を取ると、次から次へと使用人たちが私の元にお話に来てくれます。
「ドレスは、レオン様のお色を意識なさったのですか?」
フォレスト邸のメイドたちの関心はその一点です。
「レオン様があんなに親しく女性とお話ししている姿は初めて見ました」
などとレオン様情報が暴露されていきます。
私みたいな子供を女性と見てくれてすみません、ごめんなさい、な気持ちです。
「レオン様、ご冗談がお好きですよね。いつもあのように私をからかうのです」
私は貴族令嬢の笑みをお顔に張り付けて、レオン様の態度を説明する。
そのうちに、なんで私がレオン様の招いた誤解を訂正して回らなきゃならないのだろうと、理不尽に思えて来た。
二度とごめんです。
明日、もうからかわないで欲しいとちゃんとお伝えしよう。
私の機嫌を敏感に察したシャロンが、集団から私を呼び出してくれました。
その先には王都シルエット邸のメイド長であるリマが、数人のメイドと一緒にお母様とお話していた。
「辟易しているわね」
お母様はコロコロと笑って私を迎え入れてくれた。
「女子なんてこんなものよ。恋愛話には目が無いの。今日の相手は皆使用人だから向こうも遠慮しているけど、本当の夜会はもっとあからさまよ。ソフィアはレオン様に好意を抱いている令嬢方から敵視されるのは必定ね」
お酒が入ってお母様は饒舌です。
「レオン様が余計な事をおっしゃるので被害を被ったのですわ。こういった冗談はやめていただかないと」
お母様の前なので気が抜けて小言が出てしまいました。
「あら、フォレスト邸のメイドたちが言っていたじゃない。レオン様が楽しそうになさっているって。冗談と思い込んでしまってはお可哀想ではなくて?」
お母様の言葉に私はまたもお顔に笑みを貼り付けました。
「レオン様は王都でたいそう人気があります。お年の合うご令嬢たちが取り合いをしている状態です。でも、今までどなたかになびかれたお噂は一度も聞いたことがありません。私もソフィア様と楽しそうにお話しているレオン様を見て、驚きました」
王都でのレオン様を知るリマが追い打ちをかける。
「レオン様、アレクサンドライト様に近寄って来る女性もバッサバッサ切りに行きますからね。クールビューティーで近寄りがたいレオン様があんな甘~い笑顔でいらっしゃるのは本当に初めて見ました」
お母様に集っていたメイドたちが次々とレオン様が私に気がある説を唱え出した。
私の笑顔はもうカチコチに固まっています。
「きっと私が子供だから気を許してしまうのでしょう」
我が家のメイドたちにもレオン様との誤解が生じていて実に迷惑です。
「うふふ。なかなか強敵ね」
何がですか? お母様。
私はもう眠くて思考が止まってしまいそうです。
笑顔のキープも疲れました。
とにかくレオン様には明日、文句を言ってやるのです!
そのまま眠くなってしまい、シャロンと共に一足先にこの場を抜け出る。
「疲れたわ」
珍しく根を上げてしまいました。
今日ばかりはシャロンも「令嬢らしく!」とは言いません。
「ゆっくりお休みください」
と優しくベッドへ送り込んでくれました。
皆フォレスト邸の方々です。
「また後程」
とアリーが去って行くと次の方が挨拶に来る。その方が終われば次の方。
レオン様が例の如く「僕の一番」と毎回紹介するので、私の心臓には徐々に毛が生えてきました。
もう少しも動じません。
「またご冗談ばかり」
と流せばいいのです。学習しました。
フォレスト家の方々が去ると次は王都シルエット邸の使用人たちがワッと寄って来る。
円卓の周りはお父様とお兄様の馴染みの方ばかりになり、王都邸に出入りしているレオン様もよくご存じの様子だ。
フランクな会話も出始める。
「アレク様からいつもお聞きしているのですが・・・」
「アレク様がおっしゃる通り・・・」
「アレク様がいつもソフィア様の事をお話し下さって・・・」
どれだけ私の話をしているのかな? アレク兄様。
こちらはもう無視です。
アレク兄様のフォローなど致しません。
「アレク兄様、寂しんぼですね」
この一言でお終いです。
ワイワイと歓談が進むと給仕たちがデザートとお茶を運んで来た。
甘い匂いに皆が席に戻る。
「フォンダンショコラとスフレチーズケーキです」
給仕たちが各テーブルに説明しながら配膳していく。
皆さまのわくわくしたお顔をぐるっと見回して、私は満足です。
この二つのデザートは我が家のテッパンで、私とアド兄様が四苦八苦して開発したものです。
レオン様が邸にいらした日にもお出しして、大好評でした。
お隣のレオン様も「あ!」と見知ったデザートに喜んでおります。
食べた傍から歓声が上がる。
「美味しい! 暖かいチョコが入っているわ! え、チョコってこんなにおいしかった!?」
「こっちはフワフワよ! 口の中でジュワッととろけるの!」
やっぱり女子には甘いデザートよね!
キャッキャウフフのデザートタイムになりました。
私はアド兄様と目が合うと、にっこり笑顔を交わしました。
アド兄様の「やったね!」という可愛い笑顔。
あぁ、癒される。
甘食が苦手な方のためにも、フルーツ盛りが用意されています。
我が家の料理人たち、わかっております!
シルエット領はフルーツに恵まれているのです。
何といっても広いので山あり、温暖地域あり、港ありです。何らかの方法でいつでも美味しい旬のフルーツが手に入ります。
こちらも大人気でした。
食事が終わると男子はサロンに、女子はテラスに移動する。
といっても女子ばかりだ。
旅路を管理統括する男性従属が各家から三人ずつ来ているのみなので、今日はパーティーには珍しくサロンが寂しいです。
代わりにテラスは盛り上がっています。
テラス窓は一部が解放され、庭の木花も楽しむことが出来る。
もちろん魔道具でライトアップされているので、大窓の外にはほんのり明るい幻想的な空間が広がっている。
この美しい空間でお茶を頂きながら会話を楽しむ。
それ自体が使用人たちには贅沢なのでしょう。
とても楽しそうで嬉しそうです。
誰とお話しようかしら? と悩んでいたのは全くの杞憂でした。
夜の外は苦手なので、一部がガラス張りになった室内に場所を取ると、次から次へと使用人たちが私の元にお話に来てくれます。
「ドレスは、レオン様のお色を意識なさったのですか?」
フォレスト邸のメイドたちの関心はその一点です。
「レオン様があんなに親しく女性とお話ししている姿は初めて見ました」
などとレオン様情報が暴露されていきます。
私みたいな子供を女性と見てくれてすみません、ごめんなさい、な気持ちです。
「レオン様、ご冗談がお好きですよね。いつもあのように私をからかうのです」
私は貴族令嬢の笑みをお顔に張り付けて、レオン様の態度を説明する。
そのうちに、なんで私がレオン様の招いた誤解を訂正して回らなきゃならないのだろうと、理不尽に思えて来た。
二度とごめんです。
明日、もうからかわないで欲しいとちゃんとお伝えしよう。
私の機嫌を敏感に察したシャロンが、集団から私を呼び出してくれました。
その先には王都シルエット邸のメイド長であるリマが、数人のメイドと一緒にお母様とお話していた。
「辟易しているわね」
お母様はコロコロと笑って私を迎え入れてくれた。
「女子なんてこんなものよ。恋愛話には目が無いの。今日の相手は皆使用人だから向こうも遠慮しているけど、本当の夜会はもっとあからさまよ。ソフィアはレオン様に好意を抱いている令嬢方から敵視されるのは必定ね」
お酒が入ってお母様は饒舌です。
「レオン様が余計な事をおっしゃるので被害を被ったのですわ。こういった冗談はやめていただかないと」
お母様の前なので気が抜けて小言が出てしまいました。
「あら、フォレスト邸のメイドたちが言っていたじゃない。レオン様が楽しそうになさっているって。冗談と思い込んでしまってはお可哀想ではなくて?」
お母様の言葉に私はまたもお顔に笑みを貼り付けました。
「レオン様は王都でたいそう人気があります。お年の合うご令嬢たちが取り合いをしている状態です。でも、今までどなたかになびかれたお噂は一度も聞いたことがありません。私もソフィア様と楽しそうにお話しているレオン様を見て、驚きました」
王都でのレオン様を知るリマが追い打ちをかける。
「レオン様、アレクサンドライト様に近寄って来る女性もバッサバッサ切りに行きますからね。クールビューティーで近寄りがたいレオン様があんな甘~い笑顔でいらっしゃるのは本当に初めて見ました」
お母様に集っていたメイドたちが次々とレオン様が私に気がある説を唱え出した。
私の笑顔はもうカチコチに固まっています。
「きっと私が子供だから気を許してしまうのでしょう」
我が家のメイドたちにもレオン様との誤解が生じていて実に迷惑です。
「うふふ。なかなか強敵ね」
何がですか? お母様。
私はもう眠くて思考が止まってしまいそうです。
笑顔のキープも疲れました。
とにかくレオン様には明日、文句を言ってやるのです!
そのまま眠くなってしまい、シャロンと共に一足先にこの場を抜け出る。
「疲れたわ」
珍しく根を上げてしまいました。
今日ばかりはシャロンも「令嬢らしく!」とは言いません。
「ゆっくりお休みください」
と優しくベッドへ送り込んでくれました。
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