転生を繰り返してたら神様に惚れられました

丸太

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1章 

20. レオン様の甘い囁きはかろうじて届かない試食会

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アド兄様が開発した露店メニューは男子が喜びそうなガッツリソーセージパン、軽く食べられるしょっぱい系のツイストポテト、女子には欠かせない甘食のカステラ。

「バザーに露店、どう? いけそう?」

アド兄様が判断を迫ります。

味も良い。持ち歩きしやすい串刺し形状。客様に配慮した3種類のメニュー。
普段、邸では全く食べない種類の料理なだけに、アド兄様の食へのセンスが光っている。

でも、私は外に出たことがなく、街を知りません。

「レオン様はどう思います? 私は街の人がどんなものを好むのか、全く知りませんので参考までに」

傍らのレオン様に思わず助けを求めた。

「美味しいよ。良いと思うよ、露店。むしろ美味しすぎて革命起きちゃうよ、これ」

まだまだ食べ続けています。レオン様。

外ではそんなに貧相な物を食べているのかしら?

「外、出てみたいな」

シルエット邸の敷地は広い。
広大な敷地には森や山や川もある。
まだ行ったことがない場所もある程だ。
その安全地帯から出ることなく、ソフィアは育った。

邸の三階にある自室から遠くに眺める街はどんな雰囲気なのだろう。
お兄様たちは外へ出て帰って来るととても楽しそうだ。
私も外へ出てみたい。
知りたいことがたくさんあるのだ。

「ソフィア嬢は何が知りたいの?」

テーブルを挟んでお向かいに座ったレオン様は、私の思わず出てしまった言葉を拾って甘く声をかけてくれます。

「代わりに見てきてあげるよ?」

やんわりと包み込むような笑顔です。

「本当に?」

遠慮がちに言うと私の顔を覗き込むようにして笑いかけてくれます。

「もちろん。ソフィア嬢の目になってあげるよ」

いつもは凛々しい瞳がふんわり優しく蕩けそう。
素敵な申し出・・・。

いえ、ちょっと待って。素敵とか、そんな問題ではありません。
レオン様は私が今までお会いした中で最も知識があり、私の感覚を理解してくれる方だ。と思う。
そう、最強!
その最強が私の目になって下さると!

「ならば、私の疑問を解消ください!!」

レオン様、素敵なグレーアイを露にしてびっくりしています。
が、男に二言は無しなのですよ!

「まず、油。我が領の食用油はどのくらいあってどのくらい流通しているのかしら?」

「次に、畜産。領民たちはお肉、食べられているの!?」

「そして最後に領民たちのお洋服。どんな服を何着持っていてどう着回しているのかしら!?」

たくさん知りたいことはあるのですが、溢れ出る好奇心を抑え込んでとりあえずバザーに必要な知識を求めました。

レオン様は椅子の背にもたれて深呼吸したと思ったら、笑い出しました。

「あはは。もうほんと・・・。知りたいことはそれだけ?」

笑いながら従者たちを呼んで、外出の準備を始めました。

「アド君も付き合って。街を案内してよ」

レオン様がアド兄様を誘うので、我が家の従者たちも外出の準備にかかります。

「すぐ、調べてくれるの?」

私はびっくりして尋ねます。

「すぐ知りたいんでしょ? バザーに必要な情報ばかりだ」

従者の差し出す薄手の外套を羽織って、馬に乗るためのブーツに履き替えながら、レオン様は私の意を汲んでくれる。

身支度が終わるとレオン様はガゼボを出て、両手でグイっと髪をかき上げた。
その姿が美しくて思わず見とれてしまった。

「レオン様・・・」

私もレオン様の後をついてガゼボを出て、最後にまたお願いした。

「外で父様とアレク兄様に合流して、これをお渡し下さい」

とアド兄様考案の露店料理をたくさん侍女たちに包ませて、持たせてしまいました。



慌ただしくアド兄様の案内で邸を出て行くレオン様と従者たちを見送り、私はお母様を呼びます。
お天気のいいお昼です。
初めて目にした野外調理場ですが、流石はシルエット家の備品なだけあって立派です。
荷車も荷台も、外で、戦地で使うのにはもったいないくらいの装飾がなされています。
石窯もレンガが飾られ趣があるし、樽も水瓶も立派です。

もうすぐお昼です。
どうせなら皆で試食会だ。

「さあ、どんどん作って。バザー本番だったらもっともっと人がいるのよ」

私の掛け声に料理人たちが威勢よく動き回ります。

やってきたお母様をガゼボに誘い、露店メニューを試食してもらう。
伸びるチーズに驚き、ポテトの形に感心し、カステラの食べやすさに食欲が止まりません。

お母様が一通り食べ終えると、従者や侍女たちにも試食を進めた。
使用人たちも巻き込んで、次々と出来上がる食事を皆が順に食べては、美味しさに感動しています。
こういった料理はきっと外で食べるからより美味しいのでしょう。
執務室に籠っていたお母様を誘い出して正解でした。
良い気分転換にもなった様子です。

「いいわねぇ、露店。領民たちが笑顔で食べる姿が思い浮かぶわ」

食べ終わったお母様はガゼボから周囲を見渡しながら言った。
使用人たちは良い場所を見繕って地べたに座り込み、楽しそうに食事をしている。
落ち着いてきた所で料理人たちもお食事タイムだ。

お母様はそんな我が家で働く者たちの姿に領民たちを重ねたようだ。
本当に、なんて広くて優しい心を持っているのだろう。

私も、今はまだ出来ることは少ないけれど、お母様のように領民たちに幸せを感じて欲しいと願うのです。

そのためにも、今はレオン様を待ちます。
その報告次第では、やってみたいことがあるのです。
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