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1章
8. まずは食器
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「まずは食器だと思うのです」
セバスチャンが紅茶を入れる姿を眺めながら私は言った。
サロンでの会議が終わると、お父様とお母様は仕事に戻り、私たちはそれぞれの従者と共に大きな窓から日が差し込む、明るいティールームへ移動した。
「ソフィアの企画にお前たち兄弟も協力しなさいね」
と言い残してくれたお父様に感謝です。
とても心強いです。
ティーテーブルに着くと筆頭執事のセバスチャンの手で、小ぶりなお菓子と紅茶が出される。
そこでの私の発言であった。
「食器?」
アレク兄様とアド兄様が揃って聞き返す。
「そうです。バザーに出すなら、まず食器がいいと思うのです。今日のティーセットはレオン様がいらっしゃるのでお客様用を用意していますでしょ?」
大きな円卓の上にはお菓子が盛られた大きなプレート、ミルクピッチャーとシュガーポット、各々の前にはティーカップとソーサー、セバスチャンの手にはティーポットがある。
お皿もカップも縁取りは金、その内側には複雑なブルーのダマスク模様が描かれた繊細な食器だ。
ティースプーンも同じように模様があしらわれている。
シルエット家のカラーである金と青のティーセットはお客様がいらしたときに使う定番である。
「レオン様、こちらの食器、もう二度と見られないのですよ。こんなに素晴らしい陶磁器ですのに」
「そうなのかい?」
「はい。お客様に二回と同じ食器を使わせないのが我が家の方針です」
「「「ええ?」」」
レオン様にお話ししていたのに返事は3つ。
私は驚いてお兄様たちを見た。
「ご存知なかったのですか?」
聞くとばつが悪そうに
「あんまり、食器とか意識して見てなかったから」
と、二人でゴニョゴニョ言っています。
「では、役割を終えてしまったこの食器はこの後どうなるんだい?」
レオン様の問いかけに答えたのはセバスチャンだ。
「倉庫へ送られます。何かの時にまた使用できるよう丁重に保管されますが、次から次へと窯元から新作が贈られてくるので、もう日の目を見ることは無いでしょう」
窯元の保護を目的としたやり方であり当然のことのように言っておりますが、とんでもないことです。
シルエット家は名家であり領主でもあります。毎日お客様は数多く訪ねて来ます。
「つまり、最低でも毎日2、3セットは邸から去っていくのですから、倉庫のなかは食器で溢れているはずです」
私が自信満々にそう憶測すると
「まぁ、そうですね。年間千セットは倉庫へ流れています」
とセバスチャンが肯定しました。
ビンゴです!
「せん! 」
アレク兄様が驚いています。
「だったら、窯元の代表作となりそうな物は残して、他は売っていい気がする」
とアド兄様。
でしょでしょ!? と私は嬉しくなります。
「なら、食器の裏側にね、マークと何年製か書き込むといいよ。通し番号とかも書き込んでおけば数年後に価値が出たときある程度管理できるね。」
レオン様が腕を組んで言いました。
前向きな意見に思わず笑顔になってしまいます。
「毎年バザーが出きるといいね」
レオン様もにっこりと笑顔を向けてくれます。
この方はなんでこんなに嬉しそうな笑顔をくれるのでしょう?
ちょっと早くなる鼓動を誤魔化さなければなりません。
「そうなのです。それが次の展開なのです。ただの1度ではなく定期的にチャリティーを行って、より多くの資金を公的に領民のために使えればと思うのです」
未来予想はもっと多方面になるのですが、そこまではまだ望めない。
取り敢えずは今回、お父様の予想を越える成功を収めたいところだ。
「いいね、マーク。今回のバザーで出品する物には全てマークを着けよう。いずれそのマーク自体に価値が生まれるかもしれない」
アレク兄様が賛同してくれたので、その後はどんなマークにするかで話は盛り上りました。
セバスチャンが紅茶を入れる姿を眺めながら私は言った。
サロンでの会議が終わると、お父様とお母様は仕事に戻り、私たちはそれぞれの従者と共に大きな窓から日が差し込む、明るいティールームへ移動した。
「ソフィアの企画にお前たち兄弟も協力しなさいね」
と言い残してくれたお父様に感謝です。
とても心強いです。
ティーテーブルに着くと筆頭執事のセバスチャンの手で、小ぶりなお菓子と紅茶が出される。
そこでの私の発言であった。
「食器?」
アレク兄様とアド兄様が揃って聞き返す。
「そうです。バザーに出すなら、まず食器がいいと思うのです。今日のティーセットはレオン様がいらっしゃるのでお客様用を用意していますでしょ?」
大きな円卓の上にはお菓子が盛られた大きなプレート、ミルクピッチャーとシュガーポット、各々の前にはティーカップとソーサー、セバスチャンの手にはティーポットがある。
お皿もカップも縁取りは金、その内側には複雑なブルーのダマスク模様が描かれた繊細な食器だ。
ティースプーンも同じように模様があしらわれている。
シルエット家のカラーである金と青のティーセットはお客様がいらしたときに使う定番である。
「レオン様、こちらの食器、もう二度と見られないのですよ。こんなに素晴らしい陶磁器ですのに」
「そうなのかい?」
「はい。お客様に二回と同じ食器を使わせないのが我が家の方針です」
「「「ええ?」」」
レオン様にお話ししていたのに返事は3つ。
私は驚いてお兄様たちを見た。
「ご存知なかったのですか?」
聞くとばつが悪そうに
「あんまり、食器とか意識して見てなかったから」
と、二人でゴニョゴニョ言っています。
「では、役割を終えてしまったこの食器はこの後どうなるんだい?」
レオン様の問いかけに答えたのはセバスチャンだ。
「倉庫へ送られます。何かの時にまた使用できるよう丁重に保管されますが、次から次へと窯元から新作が贈られてくるので、もう日の目を見ることは無いでしょう」
窯元の保護を目的としたやり方であり当然のことのように言っておりますが、とんでもないことです。
シルエット家は名家であり領主でもあります。毎日お客様は数多く訪ねて来ます。
「つまり、最低でも毎日2、3セットは邸から去っていくのですから、倉庫のなかは食器で溢れているはずです」
私が自信満々にそう憶測すると
「まぁ、そうですね。年間千セットは倉庫へ流れています」
とセバスチャンが肯定しました。
ビンゴです!
「せん! 」
アレク兄様が驚いています。
「だったら、窯元の代表作となりそうな物は残して、他は売っていい気がする」
とアド兄様。
でしょでしょ!? と私は嬉しくなります。
「なら、食器の裏側にね、マークと何年製か書き込むといいよ。通し番号とかも書き込んでおけば数年後に価値が出たときある程度管理できるね。」
レオン様が腕を組んで言いました。
前向きな意見に思わず笑顔になってしまいます。
「毎年バザーが出きるといいね」
レオン様もにっこりと笑顔を向けてくれます。
この方はなんでこんなに嬉しそうな笑顔をくれるのでしょう?
ちょっと早くなる鼓動を誤魔化さなければなりません。
「そうなのです。それが次の展開なのです。ただの1度ではなく定期的にチャリティーを行って、より多くの資金を公的に領民のために使えればと思うのです」
未来予想はもっと多方面になるのですが、そこまではまだ望めない。
取り敢えずは今回、お父様の予想を越える成功を収めたいところだ。
「いいね、マーク。今回のバザーで出品する物には全てマークを着けよう。いずれそのマーク自体に価値が生まれるかもしれない」
アレク兄様が賛同してくれたので、その後はどんなマークにするかで話は盛り上りました。
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