転生を繰り返してたら神様に惚れられました

丸太

文字の大きさ
上 下
11 / 57
1章 

7.5 sideレオン その2

しおりを挟む
可愛い
可愛い
可愛い 

嬉しい
嬉しい
嬉しい 

君がそこにいる。
それだけて幸福。 

心の穴が埋まった。
パズルのピースがピタリと嵌まったときのように満足感で一杯になる。 

神の与えしこの僥倖に感謝しながら、俺はまだ十に満たないこの少女に最上級の挨拶をした。 

「私はレオン・フォレスト。末永くお付き合い頂きますよう」 

そして小さな手の甲にキスを落とす。 

驚いて溢れそうになるほど目を見開いている。
可愛い。 

その顔を見つめると恥ずかしいのか頬を赤らめている。
愛しい。 

「早速口説くな、レオン」 

と少女の兄、アレクサンドライトによって手を払われても幸福感は逃げない。
彼女がそこにいるのだから、それで気持ちは完結する。 

久しぶりに会う兄に抱き込まれてしまう小さな身体が可愛らしい。
アレクとの関係やシルエット邸に招待されたことを聞いている真剣な横顔も愛おしい。 

「はじめまして。ソフィア・シルエットです」 

美しく気品あるカテーシーをもらい、俺はこの子の為にために生きるんだと人生の目的に気付いたのだった。




邸のだれもが彼女を愛していることがわかる。
それはそうだろう。
彼女の存在の輝きは、そこにいるだけで周囲に幸福感をもたらす程だ。 

だが、ソフィア自体は不思議な子だった。
無口かと思えば理路整然とした大人顔負けの意見を述べる。
年齢にそぐわない落ち着きを持ち、どこか俯瞰的立場から全体を眺めるような話ぶりは神々しい超越感すら覚える。
なのにちょっとした仕草は年相応の幼さと可愛いらしさで、遺憾なく周囲を魅了する。 

可愛いくて、愛おしくて、面白い。 

こんな感想を抱くとは、それ自体も面白い。 

バザーの話ではあまりの愉快さに心が踊った。
歴史あるシルエット邸の物を売るなどと言い出し、終いにはシルエット邸の掃除をして贅沢を断ち、捨て、離れるのだと、貴族として本末転倒な表現をした。 

その場の皆が困惑する様もおかしかった。
ソフィアの表現は貴族社会の成り立ちや、シルエット家の歴史が作り上げたプライドなど、階級社会における強者の矜持を揺るがす言い方だ。
だが、そこに気付いている者は僅かだ。
それほど突飛なことを言っている。 

困惑の理由が解っていない皆の呆け顔がおかしくて、ついソフィアの意見にちゃちゃをいれてしまった。 

するとどうだ。
切り口を変えて自分の意見のメリットを社会面と個人面で説明し、シルエット辺境伯とその婦人の了承を得てしまった!



頭の回転が早い。
意見に軸がしっかりとあり、始まりと終わりを見据えている。
そして根底にある概念が終始ぶれない。
博識に支えられた提案だ。 

やばい。
可愛いだけじゃなく、面白いなんて魅力的過ぎる。
凄いね、と褒め称えるだけではなく、自分がこの手で支えたい。
歩調を合わせて共に歩きたい。
彼女の力になりたい。 

ああ、もう、直ぐにでもシルエット伯に婚約したい旨を伝えたい。
辺境伯がそのつもりで今回招待してくれたことは、婦人の態度でもう確定している。
そして王都に帰ったら父に婚約の準備を整えてもらおう。
いや、すぐ帰ってしまうのはもったいない。
なるべく長く滞在して、まずは手紙を送ろう。
この与えられた遊学の機会を彼女と過ごしながら、時間を無駄にせず外堀を埋めるのだ。 

彼女はまだ恋や愛を知らないのだろう。
挨拶をしたときの初さでわかった。
その彼女がこの先恋をし胸を焦がし乞い求める相手が俺であればいい。
先程までは彼女に出会えただけで幸福感を得られていたというのに、もう今は、さらに欲深い願いに囚われていくのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初めから離婚ありきの結婚ですよ

ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。 嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。 ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ! ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。

ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。 事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

処理中です...