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1章 

7. 断捨離

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「売り物は全てシルエット邸内の物?」 

「平民用に修復したり仕立て直したりする?」 

「商品を作るのは使用人たち?」 

「露店も邸の料理人が出す?」



「はい、その通りです。そうすれば仕入れ代がほとんど掛からないでしょう?
あ、もちろん手伝ってくれる使用人たちには特別手当を払いますよ。」 

皆さん静かになってしまいました。 

「シルエット邸の不用な物を出品するのです。」 

「不用なもの・・・」 

お父様が呆然と呟きます。 

「もちろん、ちゃんと目利きします。価値のあるものは売りませんわ。
まずは私たちの衣装です。
そして倉庫にしまうだけしまって2度と出てこない品々。
そのあたりを一気に断捨離します!」 

「断捨離・・・?」 

お母様も呟きます。 

「断捨離とは不必要な贅沢を断ち、不要なものを捨て、物への執着から離れることをいいます。とにかく我々は贅沢しすぎです。」 

「執着って・・・」
「贅沢って・・・」 

まるで貴族を批判するような私の言に、アレク兄様もアド兄様も言葉を失っております。



「あはは! 面白いね、ソフィア嬢」 

レオン様だけが何か楽しそうです。 

「でも我々貴族は贅沢することで力を誇示している。贅沢することで平民との格の違いを見せ付け、格の違いは忠誠心を生み、忠誠心は国家統治の要となっている。
貴族にとって贅沢は仕事のひとつだよ?
それを手離せと言うの?」 

それまでおとなしく聞き役に徹していたレオン様が思わぬ発言をしたことで、お父様が顔色を変える。
ブレス領のことに口出しされる謂れはないと言いたげだ。 

それをレオン様もわかっているのに、面白がっている。 

ならばお父様から「揉めるならその企画は無し」と言われる前に説得するだけです。 

「手離すのではありません。
返せるものはお返しするのです」 

レオン様に向かって言うと「へぇ」と片眉を上げた。
やだ格好いい。
毒気を抜かれてしまう。
いやいや、ここで気を抜いてはならない。
私は根性でレオン様から視線を外し説得を続けた。 

「私たちは領民の納税で生活しています。倉庫にしまわれたままの品々も、元は領民の血税です。
使わなくなったのだから、お返ししましょう?
お返しした品々はシルエット家の縁という価値を得て、きっと大切にされるでしょう。
そうやって、今までよりもちょっとよい物を流通させて領民の目と心を肥やすのです。
それはやがて別の形で私たちに還ってきます。
例えばブレスの工芸品や衣装のレベルが上がったり、相乗効果で生活レベルも上がったり。
そうすればシルエット辺境伯の評価も必然、上がります。
その大きな循環を作りたいのです」 

切り口を変えて説明する。
すると、強ばっていた皆の顔から少しずつ力が抜けていくのが見て取れた。 

「お返しする、か」 

お父様も冷静さを取り戻しました。 

「そうね、ブレスの発展はアドの評価に直結するわ」 

お母様も贔屓ポイントを見つけたようです。 

本当は私たち貴族の贅沢とは何か、という本質を考える機会になればとも思いましたが、急激な変化には反発が付き物です。
レオンはそれを言いたかったのだと思います。 

証拠に 

「ねぇ、面白そう。私も参加していいかな?」 

などと、先ほどの挑発はどこへやら、楽しんでおられます。 

侮れないお人です。 



熟考の末、お父様が決断する。

「わかった、やってみよう」 

わーい! お許し頂きました~! 

「バザーは領民たちも大好きだから、それなりの売上は見込めるだろう。そこで得た利益を分かりやすく街の修繕費に当てる。それがソフィアの最初の功績となる。そこまでが一連の流れだ」 

とお父様がまとめて下さいました。 

「素晴らしいわ」 

お母様も納得してくれた様子です。

 

緊張が高まったサロン会議の結果、私のチャリティーバザーの企画は採用されることとなりました。
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