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1章
6. 令嬢の役割
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「ちゃっ・・・?」
「チャリ???」
皆様の頭の横にハテナマークが見えます。
「チャリティーです。慈善を意味します。慈善事業を前提とした資金を集めるバザー。これをチャリティーバザーといいます。利益は全て領民の生活に直結した公的資金へ回します」
少し詳しく説明すると、両親の顔がぱぁぁぁっと輝いた。
「ソフィア、あなたは伯爵家の娘として領民に施しを与えるというのね! 素晴らしいわ!
エド、私たちの娘はなんて優しい子なのでしょう。」
「そうだねエリー。ソフィア自身の素質はもちろんだが、君の教育の賜物だよ」
えー、バカップル。
なんですか施しって。
そうじゃない。
「バザーか。では俺がバークレー商会に掛け合ってみよう。レオンも見立ててくれよ」
アレク兄様がレオン様も巻き込んで王都の商人ギルドとの交渉計画を持ち出しました。
王都のシルエット邸に移って半年です。流行物への目利きに自信があるのでしょう。
婦女子が喜びそうです。
「バザー会場に露店もいいよな! レオン様、バークレー商会を通して王都の料理人も呼べないかな?」
アド兄様は相変わらずの食いしん坊ですね!
王都の有名料理人を呼べたら最高ですよね、わかります。はい。
「ブレスの商人たちにも掛け合って、売れ残りや片落ち品を出品させましょう」
と筆頭執事のセバスチャン。
「素敵です! ソフィア様の慈愛の精神を表明する良い企画になります!」
侍女のシャロンもノリノリです。
私の気持ちは置き去りに、話がどんどん広がっていく。
こっちのソファーには王都のおしゃれ商品交渉チームが、あっちのソファーにはアド兄様中心に食いしん坊チームが出来上がりつつある。
ちょっと待って。
そうじゃない。
放っておくと私の名前の元に行われるパーティーが、どんどん施しと享楽のお祭りになってしまうわ!
確かに好きです、お祭り。楽しいです。
でも、単に楽しさを求めるは意に沿わないのです!
これは私の初の事業なのですから!
「皆さん、違いますわ!」
私は声を張った。
滅多に声を荒げない私か精一杯の大きな声を出したので、皆さん目が点、はとポッポになっています。
静まり返った室内の真ん中に立ち、私はキリリとお父様とお母様を見据えた。
「まずは、お父様。お母様。
施しなどという概念はお願いですからお捨てください。
施しとは受けたものが感じるものであり、上に立つ者が口にしてはいけないと思うのです。誤解を生みますわ」
父、母、口をポカーンと開けております。
間抜けなお顔もかわいいけれど、かわいいだけで貴族は成り立ちません。
「そしてアレク兄様。王都の物品を売ることを考えてどうするのです?
私は領主の娘として、領民の生活を豊かにする活動をしていきたいのです。
その意思表示なのですから、どうせなら領内の産品をどの様に売りさばくかを考えるべきですわ」
アレク兄様。途中から眉をハの字にして情けないお顔になりました。
そんなお顔も美しいけれど、貴族はお顔だけではやってられません。
レオン様もアレク兄様の隣でポカンとしていますが今は無視。
「アド兄様」
料理人たちと盛り上がっていた食いしん坊は私に呼ばれるとビクリと身をすくませた。
「お兄様の食いしん坊は利点です。
食は生活の基盤です。
美味しい食事にお得にありつけるだけで人々は幸福感を得られます。
でも、アレク兄様同様、王都に利益を落としてどうするのです?
ここは、ブレスの食文化を活性化させなければならないところです。
それにレオン様の朝食の反応を見ますところ、王都よりブレスの方が・・・言うのは憚れますが様々美味しいのかもしれません。リサーチが必要です」
「・・・お、おう・・・そうだな。り、りさ???」
「リサーチ、調査することです」
私の勢いに押されながらお返事なさったアド兄様ですがあれれ?
リサーチという言葉に何かお考えが浮かんだようです。
可愛らしいお顔がまるで悪徳令嬢のように企み顔になりました。
さすが食いしん坊。
各地の美味しいもの調査、私も参加したいです。
「セバス、今回は商人たちの手は借りないつもりよ。何せ全てはここにあるのですから。
バザー成功の鍵は、あなたの采配かもしれないわ。」
筆頭執事のセバスチャン。
なにやらピーンと閃いた様子。
私の言いたいことを理解したみたい。
「シャロン」
私が顔を向けると専属侍女はなにやら涙ぐんでいます。
なぜ泣く?
「慈愛とは施し同様、示すものではなく受け手が感じるもの。慈愛の精神を表明するなど私ごときが烏滸がましいわ。」
「こ、心得ました」
シャロンは私の前に跪き、両手を胸の前で組んだ。
そしてそのままクルリと身体を両親に向けると。
「旦那様、奥様。おっしゃっていることが全然わからないのですが、崇高なご高説であることだけは感じます! やはりソフィア様は天才でございますか?」
などとのたまった!
わかってないわね、確かに!
皆がワッとシャロンの言葉に沸き立ちます。
「いや、もう、天使? 天使かな?」
などとお父様がとんちんかんなことを言い出すので、皆が同調して騒ぎ出す前に先手を打って再び声を張る。
「皆さん、よく聞いてください!」
またしてもシーン。
「私のやりたいことは、施しでも慈愛の表明でも、ましてや伯爵家の権威を示すことでもありません!
私のやりたいことのメイン、それは!
お・掃・除、です!」
言い切りました。
言いたい事、言えました。
普段あまり喋らない分、頑張って賢そうな口調を意識して、一年分お話した気分です。
疲れました。
「・・・掃除、とは?」
レオン様が静まり返った皆の代弁をするように呟いた。
あ・・・肝心なことを言い忘れておりました。
「チャリ???」
皆様の頭の横にハテナマークが見えます。
「チャリティーです。慈善を意味します。慈善事業を前提とした資金を集めるバザー。これをチャリティーバザーといいます。利益は全て領民の生活に直結した公的資金へ回します」
少し詳しく説明すると、両親の顔がぱぁぁぁっと輝いた。
「ソフィア、あなたは伯爵家の娘として領民に施しを与えるというのね! 素晴らしいわ!
エド、私たちの娘はなんて優しい子なのでしょう。」
「そうだねエリー。ソフィア自身の素質はもちろんだが、君の教育の賜物だよ」
えー、バカップル。
なんですか施しって。
そうじゃない。
「バザーか。では俺がバークレー商会に掛け合ってみよう。レオンも見立ててくれよ」
アレク兄様がレオン様も巻き込んで王都の商人ギルドとの交渉計画を持ち出しました。
王都のシルエット邸に移って半年です。流行物への目利きに自信があるのでしょう。
婦女子が喜びそうです。
「バザー会場に露店もいいよな! レオン様、バークレー商会を通して王都の料理人も呼べないかな?」
アド兄様は相変わらずの食いしん坊ですね!
王都の有名料理人を呼べたら最高ですよね、わかります。はい。
「ブレスの商人たちにも掛け合って、売れ残りや片落ち品を出品させましょう」
と筆頭執事のセバスチャン。
「素敵です! ソフィア様の慈愛の精神を表明する良い企画になります!」
侍女のシャロンもノリノリです。
私の気持ちは置き去りに、話がどんどん広がっていく。
こっちのソファーには王都のおしゃれ商品交渉チームが、あっちのソファーにはアド兄様中心に食いしん坊チームが出来上がりつつある。
ちょっと待って。
そうじゃない。
放っておくと私の名前の元に行われるパーティーが、どんどん施しと享楽のお祭りになってしまうわ!
確かに好きです、お祭り。楽しいです。
でも、単に楽しさを求めるは意に沿わないのです!
これは私の初の事業なのですから!
「皆さん、違いますわ!」
私は声を張った。
滅多に声を荒げない私か精一杯の大きな声を出したので、皆さん目が点、はとポッポになっています。
静まり返った室内の真ん中に立ち、私はキリリとお父様とお母様を見据えた。
「まずは、お父様。お母様。
施しなどという概念はお願いですからお捨てください。
施しとは受けたものが感じるものであり、上に立つ者が口にしてはいけないと思うのです。誤解を生みますわ」
父、母、口をポカーンと開けております。
間抜けなお顔もかわいいけれど、かわいいだけで貴族は成り立ちません。
「そしてアレク兄様。王都の物品を売ることを考えてどうするのです?
私は領主の娘として、領民の生活を豊かにする活動をしていきたいのです。
その意思表示なのですから、どうせなら領内の産品をどの様に売りさばくかを考えるべきですわ」
アレク兄様。途中から眉をハの字にして情けないお顔になりました。
そんなお顔も美しいけれど、貴族はお顔だけではやってられません。
レオン様もアレク兄様の隣でポカンとしていますが今は無視。
「アド兄様」
料理人たちと盛り上がっていた食いしん坊は私に呼ばれるとビクリと身をすくませた。
「お兄様の食いしん坊は利点です。
食は生活の基盤です。
美味しい食事にお得にありつけるだけで人々は幸福感を得られます。
でも、アレク兄様同様、王都に利益を落としてどうするのです?
ここは、ブレスの食文化を活性化させなければならないところです。
それにレオン様の朝食の反応を見ますところ、王都よりブレスの方が・・・言うのは憚れますが様々美味しいのかもしれません。リサーチが必要です」
「・・・お、おう・・・そうだな。り、りさ???」
「リサーチ、調査することです」
私の勢いに押されながらお返事なさったアド兄様ですがあれれ?
リサーチという言葉に何かお考えが浮かんだようです。
可愛らしいお顔がまるで悪徳令嬢のように企み顔になりました。
さすが食いしん坊。
各地の美味しいもの調査、私も参加したいです。
「セバス、今回は商人たちの手は借りないつもりよ。何せ全てはここにあるのですから。
バザー成功の鍵は、あなたの采配かもしれないわ。」
筆頭執事のセバスチャン。
なにやらピーンと閃いた様子。
私の言いたいことを理解したみたい。
「シャロン」
私が顔を向けると専属侍女はなにやら涙ぐんでいます。
なぜ泣く?
「慈愛とは施し同様、示すものではなく受け手が感じるもの。慈愛の精神を表明するなど私ごときが烏滸がましいわ。」
「こ、心得ました」
シャロンは私の前に跪き、両手を胸の前で組んだ。
そしてそのままクルリと身体を両親に向けると。
「旦那様、奥様。おっしゃっていることが全然わからないのですが、崇高なご高説であることだけは感じます! やはりソフィア様は天才でございますか?」
などとのたまった!
わかってないわね、確かに!
皆がワッとシャロンの言葉に沸き立ちます。
「いや、もう、天使? 天使かな?」
などとお父様がとんちんかんなことを言い出すので、皆が同調して騒ぎ出す前に先手を打って再び声を張る。
「皆さん、よく聞いてください!」
またしてもシーン。
「私のやりたいことは、施しでも慈愛の表明でも、ましてや伯爵家の権威を示すことでもありません!
私のやりたいことのメイン、それは!
お・掃・除、です!」
言い切りました。
言いたい事、言えました。
普段あまり喋らない分、頑張って賢そうな口調を意識して、一年分お話した気分です。
疲れました。
「・・・掃除、とは?」
レオン様が静まり返った皆の代弁をするように呟いた。
あ・・・肝心なことを言い忘れておりました。
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