転生を繰り返してたら神様に惚れられました

丸太

文字の大きさ
上 下
7 / 57
1章 

6. サロン会議

しおりを挟む
朝食を食べ終わると、皆でサロンに移動した。
サロンには2組の豪奢なソファーセットが部屋のあちらとこちらに置いてある。

手前のソファーに座ると、別室で食事をしていた執事をはじめ従者、侍女、使用人の役職者たちが入室してきた。彼等は座らずにそれぞれ所定の位置に付き、ソファーを囲んだ。

朝食の後はいつもサロンで本日の予定の確認や様々な報告が行われる。

貴族教育の一環として、この会議にはアドライト兄様も私も参加している。発言も許されているのだが、私はまだ口を出した事がない。

王宮で働くお父様から王都の様子が語られ、アレク兄様も学友となる貴族の事などを報告している。
レオン様もいらっしゃるのに忌憚ない。
領地経営のお勉強というところでしょう。

お母様は領地ブレスについての報告をし、筆頭執事であるセバスチャンも補足する。
このお二人が今はお父様の居ない領地を治めている。
セバスチャンは代々我が家に仕えてくれる子爵の出でもあり代官として優秀なのだ。
各々の報告が終わると、多少の課題が残るものの万事つつがない様子を確認して、皆に安堵が広がった。

私は仕事をする家族の凛々しさに見蕩れながら皆の報告を聞くだけだ。
仕事中の男子は凛々しさ増倍で、お母様も美しさに凄みがかかるのです。
うーん、目の保養。



いつの間にかパーティーの話に移り変わっている。
このパーティー、私の10歳の誕生日パーティーで、シルエット家の令嬢としての公式なお披露目会なのだ。
私の人生初の公務となる。

招待客のリストを、貴族社会のパワーバランスに敏感なお母様が確認し、お父様に報告する。

王都からはお父様の同僚であるフォレスト侯爵家が招待されるらしい。
近隣のお付き合いのある領主様方もご招待する。
そして領内のシルエット伯爵家麾下の貴族はもちろん、領主邸で働く者たちの家族や、ブレス領で精力的に活動している平民の方々まで招待するらしい。
あくまで娘を披露する領内のパーティーという趣向を捉えた人選だ。

「完璧だよ、エリー」

お父様はお母様からリストを受け取ると、そのままその手にキスをする。
どんな時でもラブラブ夫婦です。

伯爵夫婦が甘々タイムに突入する隙を与えずに、パーティーの準備について話し合いを進めなければ!
と、執事や侍女、料理人たちが一斉に議題を出す。

聞いていると大掛かりなパーティーになりそうだ。
晩餐のメニュー、会場の設定、装飾の確認、馬車の管理、話し合いは尽きない。



「さ、ソフィアのお披露目ですからあなたの意見も聞かないと」

一段落するとお母様が私に話を振る。

「何か企画は考えまして?」

そうなのだ。
10歳のお披露目パーティーでは、シルエット家の一員としての立場を表明する企画が執り行われるのが慣例なのだ。

例えばアレク兄様の時は、跡取りとしてお父様と共同で記念硬貨を全領民に配り、一気に名を広めた。
アレク兄様はお父様似の美男子なので、お披露目の後には市井に姿絵が流出してしまい、年頃の少女たちはこぞって買い求めたという。

昨年のアド兄様のパーティーは私もよく覚えている。
アレク兄様を支えるという意思表示でシルエット家専属騎士団による公開トーナメント戦が行われ、大変盛り上がった。
腕に覚えのある領民たちも参加し、夜中には酒盛りでシルエット邸前広場はいつまでも大騒ぎだった。
もちろんアド兄様もトーナメント戦に参加した。その美少女然とした外見からは想像できない武芸を発揮したことでしばらくの間アドライト人気が叫ばれたほどだ。

「市井に顔を出すことは避けて欲しい」

「同じく」

アレク兄様とアド兄様のつぶやきが聞こえる。

「なんで?」

とレオン様が素朴な疑問を口にする。

「アレクの時は姿絵が出回って大問題になったんだ。アドの時も相当規制したが、やはり姿絵が流出してしまってな。回収に数ヶ月かかった。」

とお父様が説明した。

「シルエット家、美形も時には弊害だな」

楽しそうにレオン様が笑った。

「笑い事じゃない。もしソフィアの姿絵が出回ったりしたら!!!」

お父様の悲鳴にレオン様が私をじっと見る。

凛々しい目元がまろみを帯びて

「それは大ごとだ。私が買い占めよう」

と甘い笑顔を送ってきます。

「その顔やめろ」

すかさずアレク兄様の突っ込みが入るので、私のドキドキはバレずに済みました。

私も女子ですから、軽々しく身の危険に繋がるようなことはしたくない。

「過去の記録では平和の花であるニガヨモギをアレンジして配ったり、修道院に寄付をしてその式典を行ったり・・・まあ、地味ですけど堅実ですわね」

お母様の言いたいことはわかります。
いずれ結婚して領地を離れる女子ですから、平和を祈り、慈愛の精神を表明すればそれで済むということでしょう。
お父様もお兄様たちも私の姿を知らしめたくないらしいですし。

でも。
ふふふ。
安心なさって。
私、とっくに素敵な企画を思いついているのです。

「良い考えがあるのです」

私がそれを切り出すと、皆の視線が集まりました。
それなりにざわついていた室内が一気に静かになってしまいます。

え?
なんでしょう?
ちょっと緊張します。

「なあに、ソフィア」

お母様が殊更優しい声で先を促します。

お父様をはじめ皆様ジリジリと私の発言を待っている様子です。
レオン様だけが平常ですね。
そんな期待なさっても爆弾発言は致しませんわよ。

「私、チャリティーバザーをやりたいのです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました

当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。 リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。 結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。 指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。 そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。 けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。 仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。 「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」 ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。

ヤンデレ悪役令嬢の前世は喪女でした。反省して婚約者へのストーキングを止めたら何故か向こうから近寄ってきます。

砂礫レキ
恋愛
伯爵令嬢リコリスは嫌われていると知りながら婚約者であるルシウスに常日頃からしつこく付き纏っていた。 ある日我慢の限界が来たルシウスに突き飛ばされリコリスは後頭部を強打する。 その結果自分の前世が20代後半喪女の乙女ゲーマーだったことと、 この世界が女性向け恋愛ゲーム『花ざかりスクールライフ』に酷似していることに気づく。 顔がほぼ見えない長い髪、血走った赤い目と青紫の唇で婚約者に執着する黒衣の悪役令嬢。 前世の記憶が戻ったことで自らのストーカー行為を反省した彼女は婚約解消と不気味過ぎる外見のイメージチェンジを決心するが……?

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

処理中です...