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1章
4. シルエット辺境伯一家
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レオン様へのご挨拶はアレクサンドライト兄様に見せつけるような形になってしまった。
お兄様は慌てて私の手を取り、レオン様を誘って食堂へとエスコートしてくれる。
レオン様はにこにことついて来ます。
どこまでも笑顔です。
アレク兄様は、13歳。
最近はお会いする度に背が伸びて、身体つきも大人びてきた。
性格は穏やかで争いを好まない。おかげで人によく好かれるハンサム少年だ。
そんな、王都ではきっと女性から引く手数多のお兄様にエスコートして頂けるなんて、妹って役得ですね。
主に家族が使う小さくて豪奢な食堂にはすでにお父様がいて、1つ年上のアドライト兄様とお話しをしていた。
2人ともシルエット家の証の金髪碧眼です。
お父様はエドガー・シルエット辺境伯。
辺境伯という爵位を賜り、国境を抱える広いシルエット領を武力と知力で治めている。
スマートな外見と表情穏やかな優男ぶりが王都の女性に人気らしいが、知る人ぞ知る家族大好き人間だ。
平時は宰相補佐として王宮勤めをしているが、文官としても優秀なようでなかなか領地に帰してもらえないのがここ数年の悩みだ。
アドライト兄様は11歳。お母様似のパッチリとしたアーモンドアイが可愛らしい。
ソフィアより10センチ以上背は高いが、少女と見紛うほっそりとした身体つきをしている。
けれどシルエット家ならではの武闘派で、普段、お父様やお兄様がいらっしゃらないのをいい事に、稽古と言っては見回りの兵士たちと敷地外に出て好き放題やんちゃしている。
渋めのハンサムなお父様と、見た目美少女のアド兄様が並んでいると、まるで絵画の中のように美しく華麗です。
優美な装飾がなされた大窓の芸術的なドレープを描くカーテンが背景を飾っていて見事な一枚の絵画が完成です。
うん。
ありがたい。
「おはようございます。お帰りなさいませ、お父様」
先程はアレク兄様に阻まれてしまったご挨拶を今度はスムーズに行った。
「おお、ソフィア。淑女のご挨拶も上手になったな。少し見ない間にまた可愛くなって!」
おかしな程の速さで近づいて来てぎゅーっとバグ。
もう、我が家の男子のお約束です。
「おはよう、ソフィア」
アド兄様も抱きつぶされている私に声を掛けてくれます。
まだ声変わり前の美しい声です。
私を優しく見つめるその姿は絶世の美少女じみています。
毎日一緒のアド兄様は過剰反応無しの、ほっぺを合わせるチークキスの挨拶でした。
助かります。
きっと一時前は、アド兄様もお父様とアレク兄様からぎゅーハグの挨拶をされて辟易していたことでしょう。
いつも愛情表現が過多なシルエット家なのです。
「おはようございます。シルエット辺境伯」
家族の挨拶が終わる頃合いを見計らって、レオン様がお父様に挨拶をした。
「夜が明けて見ても素晴らしい館ですね。荘厳で優美だ。
少し早起きしてしまったので、飾られた美術品を見せていただきましたが、どれも一級品でシルエット家の歴史を感じました。」
おや驚いた。
レオン様、先ほどまでの間の抜けた・・・いえ、朗らかなニコニコ顔とは違って、キリリとした美男子になっています。
「そしてなんと言っても家族絵の素晴らしさは目を見張ります。モデルがいいからでしょうね」
レオン様。お父様の喜びポイントをつついてきます。
やるな!
「そうだろ? 特にソフィアが生まれてからの我が家はもう完璧に等しく、私はいかに神々から愛された果報者かと我を忘れることもしばしばでーーー」
始まってしまったお父様のシルエット家愛情物語。
それを止めたのは、食堂の扉が開く音。
音と共に流れ込む存在感。
「おはようございます、皆様」
侍女の先導で入ってきたのはお母様、ダニエラ・シルエット辺境伯夫人だった。
お母様が侍女を引き連れて入室する様は、この邸の主ですオーラがだだ漏れていた。
お召しになっているのはデイドレスだけれど、伯爵夫人として隙のない仕上がりに、室内の雰囲気が一気に華やかになる。
ライトブロンド髪は淑女の見本のように結い上げられている。エメラルドのアーモンドアイは少しきつめだが、その表情は慈愛に満ちていてともすれば神々しいほどだ。
お父様と抱き合って恒例の甘々挨拶を交わし、3人の子供たちに次々と声をかける様は貫禄すらある。
流石はお父様の留守を長いこと守り続ける女領主様です。
うん。
素敵。
「エド、紹介下さいな」
お父様のラブラブ攻撃を華麗にかわし、お母様はレオン様と向き合った。
お父様が襟を正して紹介する。
「ああ、こちらは私の同僚で副宰相のファルコ・フォレスト侯爵のご次男、レオン・フォレスト侯爵ご令息だ。
王都でアレクと仲良くしているよ。
遊学の名目で今回遊びに来てもらった」
「まぁぁ。ようこそ。ブレス領主邸、シルエット家へおいでくださいました」
お母様、鈴を転がすような声です。
思うところがあると、より鮮やかに、澄んだ声になるのです。
シャルル・フォレスト侯爵様のご令息、ということは。
フォレスト侯爵は武勲で爵位を賜ったが本来は王弟である。
8番目の弟であり王位継承権を生まれながらに外れているが、侯爵とはいえ紛れもない王族だ。
レオンは現国王の甥に当たる。
はい。貴族の関係図は頭にしっかり叩き込まれています。
お名前を聞いたときに多分、と思っていたので今さら驚きません。
家族の皆が和やかな笑顔でレオン様を迎え入れます。
ポーカーフェイスは貴族の持って生まれたスキルですからね。
私もアド兄様も(王族かよ!と思っても)お顔には出しません。
「さて、食事にしようか」
お父様の一言で皆が席に着きました。
お兄様は慌てて私の手を取り、レオン様を誘って食堂へとエスコートしてくれる。
レオン様はにこにことついて来ます。
どこまでも笑顔です。
アレク兄様は、13歳。
最近はお会いする度に背が伸びて、身体つきも大人びてきた。
性格は穏やかで争いを好まない。おかげで人によく好かれるハンサム少年だ。
そんな、王都ではきっと女性から引く手数多のお兄様にエスコートして頂けるなんて、妹って役得ですね。
主に家族が使う小さくて豪奢な食堂にはすでにお父様がいて、1つ年上のアドライト兄様とお話しをしていた。
2人ともシルエット家の証の金髪碧眼です。
お父様はエドガー・シルエット辺境伯。
辺境伯という爵位を賜り、国境を抱える広いシルエット領を武力と知力で治めている。
スマートな外見と表情穏やかな優男ぶりが王都の女性に人気らしいが、知る人ぞ知る家族大好き人間だ。
平時は宰相補佐として王宮勤めをしているが、文官としても優秀なようでなかなか領地に帰してもらえないのがここ数年の悩みだ。
アドライト兄様は11歳。お母様似のパッチリとしたアーモンドアイが可愛らしい。
ソフィアより10センチ以上背は高いが、少女と見紛うほっそりとした身体つきをしている。
けれどシルエット家ならではの武闘派で、普段、お父様やお兄様がいらっしゃらないのをいい事に、稽古と言っては見回りの兵士たちと敷地外に出て好き放題やんちゃしている。
渋めのハンサムなお父様と、見た目美少女のアド兄様が並んでいると、まるで絵画の中のように美しく華麗です。
優美な装飾がなされた大窓の芸術的なドレープを描くカーテンが背景を飾っていて見事な一枚の絵画が完成です。
うん。
ありがたい。
「おはようございます。お帰りなさいませ、お父様」
先程はアレク兄様に阻まれてしまったご挨拶を今度はスムーズに行った。
「おお、ソフィア。淑女のご挨拶も上手になったな。少し見ない間にまた可愛くなって!」
おかしな程の速さで近づいて来てぎゅーっとバグ。
もう、我が家の男子のお約束です。
「おはよう、ソフィア」
アド兄様も抱きつぶされている私に声を掛けてくれます。
まだ声変わり前の美しい声です。
私を優しく見つめるその姿は絶世の美少女じみています。
毎日一緒のアド兄様は過剰反応無しの、ほっぺを合わせるチークキスの挨拶でした。
助かります。
きっと一時前は、アド兄様もお父様とアレク兄様からぎゅーハグの挨拶をされて辟易していたことでしょう。
いつも愛情表現が過多なシルエット家なのです。
「おはようございます。シルエット辺境伯」
家族の挨拶が終わる頃合いを見計らって、レオン様がお父様に挨拶をした。
「夜が明けて見ても素晴らしい館ですね。荘厳で優美だ。
少し早起きしてしまったので、飾られた美術品を見せていただきましたが、どれも一級品でシルエット家の歴史を感じました。」
おや驚いた。
レオン様、先ほどまでの間の抜けた・・・いえ、朗らかなニコニコ顔とは違って、キリリとした美男子になっています。
「そしてなんと言っても家族絵の素晴らしさは目を見張ります。モデルがいいからでしょうね」
レオン様。お父様の喜びポイントをつついてきます。
やるな!
「そうだろ? 特にソフィアが生まれてからの我が家はもう完璧に等しく、私はいかに神々から愛された果報者かと我を忘れることもしばしばでーーー」
始まってしまったお父様のシルエット家愛情物語。
それを止めたのは、食堂の扉が開く音。
音と共に流れ込む存在感。
「おはようございます、皆様」
侍女の先導で入ってきたのはお母様、ダニエラ・シルエット辺境伯夫人だった。
お母様が侍女を引き連れて入室する様は、この邸の主ですオーラがだだ漏れていた。
お召しになっているのはデイドレスだけれど、伯爵夫人として隙のない仕上がりに、室内の雰囲気が一気に華やかになる。
ライトブロンド髪は淑女の見本のように結い上げられている。エメラルドのアーモンドアイは少しきつめだが、その表情は慈愛に満ちていてともすれば神々しいほどだ。
お父様と抱き合って恒例の甘々挨拶を交わし、3人の子供たちに次々と声をかける様は貫禄すらある。
流石はお父様の留守を長いこと守り続ける女領主様です。
うん。
素敵。
「エド、紹介下さいな」
お父様のラブラブ攻撃を華麗にかわし、お母様はレオン様と向き合った。
お父様が襟を正して紹介する。
「ああ、こちらは私の同僚で副宰相のファルコ・フォレスト侯爵のご次男、レオン・フォレスト侯爵ご令息だ。
王都でアレクと仲良くしているよ。
遊学の名目で今回遊びに来てもらった」
「まぁぁ。ようこそ。ブレス領主邸、シルエット家へおいでくださいました」
お母様、鈴を転がすような声です。
思うところがあると、より鮮やかに、澄んだ声になるのです。
シャルル・フォレスト侯爵様のご令息、ということは。
フォレスト侯爵は武勲で爵位を賜ったが本来は王弟である。
8番目の弟であり王位継承権を生まれながらに外れているが、侯爵とはいえ紛れもない王族だ。
レオンは現国王の甥に当たる。
はい。貴族の関係図は頭にしっかり叩き込まれています。
お名前を聞いたときに多分、と思っていたので今さら驚きません。
家族の皆が和やかな笑顔でレオン様を迎え入れます。
ポーカーフェイスは貴族の持って生まれたスキルですからね。
私もアド兄様も(王族かよ!と思っても)お顔には出しません。
「さて、食事にしようか」
お父様の一言で皆が席に着きました。
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