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1章
2.5 sideガイア
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「ガイア様、またね!」
彼女は止める間も無くおもむろに穴に飛び込んでしまった。
「あああああ」
私は情けない声を出すことしかできなかった。
転生を繰り返す『渡り人』の少女。
少女の魂はいつ見ても美しい白銀に輝き、そのエネルギーの強さはそこにあるだけで周囲を活性化させる。
格、というものを改めて認識させられる。
魂の格が生まれながらにして違うのだ。
最初は、ただの不幸な少女だった。
けれど理不尽な生をもがき生きる中で、その魂は少女自身のエネルギーでどんどん浄化され、死に絶える時にはついに転生の間までたどり着いてしまった。
美しく清廉な魂が傷付きボロボロになっているのを、ガイアは涙を流して癒し続けた。
すると、少女の魂はみるみるうちに健やかさと朗らかさ取り戻し、とうとう次の人生への希望までもを取り戻した。
打たれ強いというか、懲りないというか。
ガイアは少女が幸せになるところを見たくなり、新たな人生へと送り出した。
その世界で、少女は前世の鬱憤を晴らすかのように伸び伸びと生き抜いた。
なのにまた、少女は転生の間に戻ってきた。
しかも魂の輝きを増して。
人生に満足した者は、魂を捨て、精霊となり、神の世界へ昇華されるのだが、彼女の魂は磨かれて尚も次を望んだ。
ガイアはまた少女を次の生へと送り出した。
すると、また、戻ってきた。
長いこと転生の間で管理者として過ごしてきたガイアだが、こんなことは一度もなかった。
だが、ここに来たからにはシステムとして、少女を送り出さなければならない。
戻ってくる度に少女の魂は品格を増し、ガイアの心をも夢中にさせる程に美しく高みへ昇っていった。
「もういいかげん転生を終わらせて僕のお嫁さんになろうよ」
そうやってガイアが何度口説いても、彼女は魂を捨てきれず、ここへ戻って来てしまう。
「どうしてかしら?」
彼女は言うが、ガイアには思い当たる節がある。
彼女の何回もの人生に共通するもの。
それは・・・
そんなガイアの話を聞くこともせず、彼女は何も持たずに次の人生へ飛び込んでしまった。
取り敢えず、自分の加護だけは与えておいて良かった。
だが。
ガイアは思う。
もう、結構、待った。
悠久の時を生きる身であり、人と時間感覚が違う自分だが、それでもかなり待ったと思う。
そもそも彼女がイレギュラーなのだ。
『渡り人』など、架空の話しだと思っていた存在だ。
それくらい彼女は枠外なのだ。
正攻法で自分のもとへ昇華されるのを待っていても、いつになるか全くわからない。
ならば。
己れもイレギュラーを起こすしかないのではないか・・・?
これは、前から薄々感じていたことだ。
彼女の転生が繰り返される理由。
それに思い当たったときから、考えていたこと。
ガイアは少女が飛び込んだ穴を見つめる。
海底のようにエメラルドに輝くワープ空間。
幾筋も漂う世界線。
少女がたどり着いた世界線は一際輝きを増した。
彼女がその世界に存在すること。
今やただそれだけでその世界は救済される。
「オーディン様~、ごめんなさ~い。」
ガイアはそう言葉を残すと、ためらいもせず、一際輝く世界線を目指して、穴の中へ飛び込んでいった。
もう待つのはうんざりだ。
ならば迎えに行くまで。
自分で彼女の魂を昇華させてみせよう。
彼女は止める間も無くおもむろに穴に飛び込んでしまった。
「あああああ」
私は情けない声を出すことしかできなかった。
転生を繰り返す『渡り人』の少女。
少女の魂はいつ見ても美しい白銀に輝き、そのエネルギーの強さはそこにあるだけで周囲を活性化させる。
格、というものを改めて認識させられる。
魂の格が生まれながらにして違うのだ。
最初は、ただの不幸な少女だった。
けれど理不尽な生をもがき生きる中で、その魂は少女自身のエネルギーでどんどん浄化され、死に絶える時にはついに転生の間までたどり着いてしまった。
美しく清廉な魂が傷付きボロボロになっているのを、ガイアは涙を流して癒し続けた。
すると、少女の魂はみるみるうちに健やかさと朗らかさ取り戻し、とうとう次の人生への希望までもを取り戻した。
打たれ強いというか、懲りないというか。
ガイアは少女が幸せになるところを見たくなり、新たな人生へと送り出した。
その世界で、少女は前世の鬱憤を晴らすかのように伸び伸びと生き抜いた。
なのにまた、少女は転生の間に戻ってきた。
しかも魂の輝きを増して。
人生に満足した者は、魂を捨て、精霊となり、神の世界へ昇華されるのだが、彼女の魂は磨かれて尚も次を望んだ。
ガイアはまた少女を次の生へと送り出した。
すると、また、戻ってきた。
長いこと転生の間で管理者として過ごしてきたガイアだが、こんなことは一度もなかった。
だが、ここに来たからにはシステムとして、少女を送り出さなければならない。
戻ってくる度に少女の魂は品格を増し、ガイアの心をも夢中にさせる程に美しく高みへ昇っていった。
「もういいかげん転生を終わらせて僕のお嫁さんになろうよ」
そうやってガイアが何度口説いても、彼女は魂を捨てきれず、ここへ戻って来てしまう。
「どうしてかしら?」
彼女は言うが、ガイアには思い当たる節がある。
彼女の何回もの人生に共通するもの。
それは・・・
そんなガイアの話を聞くこともせず、彼女は何も持たずに次の人生へ飛び込んでしまった。
取り敢えず、自分の加護だけは与えておいて良かった。
だが。
ガイアは思う。
もう、結構、待った。
悠久の時を生きる身であり、人と時間感覚が違う自分だが、それでもかなり待ったと思う。
そもそも彼女がイレギュラーなのだ。
『渡り人』など、架空の話しだと思っていた存在だ。
それくらい彼女は枠外なのだ。
正攻法で自分のもとへ昇華されるのを待っていても、いつになるか全くわからない。
ならば。
己れもイレギュラーを起こすしかないのではないか・・・?
これは、前から薄々感じていたことだ。
彼女の転生が繰り返される理由。
それに思い当たったときから、考えていたこと。
ガイアは少女が飛び込んだ穴を見つめる。
海底のようにエメラルドに輝くワープ空間。
幾筋も漂う世界線。
少女がたどり着いた世界線は一際輝きを増した。
彼女がその世界に存在すること。
今やただそれだけでその世界は救済される。
「オーディン様~、ごめんなさ~い。」
ガイアはそう言葉を残すと、ためらいもせず、一際輝く世界線を目指して、穴の中へ飛び込んでいった。
もう待つのはうんざりだ。
ならば迎えに行くまで。
自分で彼女の魂を昇華させてみせよう。
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