3 / 57
1章
2.5 sideガイア
しおりを挟む
「ガイア様、またね!」
彼女は止める間も無くおもむろに穴に飛び込んでしまった。
「あああああ」
私は情けない声を出すことしかできなかった。
転生を繰り返す『渡り人』の少女。
少女の魂はいつ見ても美しい白銀に輝き、そのエネルギーの強さはそこにあるだけで周囲を活性化させる。
格、というものを改めて認識させられる。
魂の格が生まれながらにして違うのだ。
最初は、ただの不幸な少女だった。
けれど理不尽な生をもがき生きる中で、その魂は少女自身のエネルギーでどんどん浄化され、死に絶える時にはついに転生の間までたどり着いてしまった。
美しく清廉な魂が傷付きボロボロになっているのを、ガイアは涙を流して癒し続けた。
すると、少女の魂はみるみるうちに健やかさと朗らかさ取り戻し、とうとう次の人生への希望までもを取り戻した。
打たれ強いというか、懲りないというか。
ガイアは少女が幸せになるところを見たくなり、新たな人生へと送り出した。
その世界で、少女は前世の鬱憤を晴らすかのように伸び伸びと生き抜いた。
なのにまた、少女は転生の間に戻ってきた。
しかも魂の輝きを増して。
人生に満足した者は、魂を捨て、精霊となり、神の世界へ昇華されるのだが、彼女の魂は磨かれて尚も次を望んだ。
ガイアはまた少女を次の生へと送り出した。
すると、また、戻ってきた。
長いこと転生の間で管理者として過ごしてきたガイアだが、こんなことは一度もなかった。
だが、ここに来たからにはシステムとして、少女を送り出さなければならない。
戻ってくる度に少女の魂は品格を増し、ガイアの心をも夢中にさせる程に美しく高みへ昇っていった。
「もういいかげん転生を終わらせて僕のお嫁さんになろうよ」
そうやってガイアが何度口説いても、彼女は魂を捨てきれず、ここへ戻って来てしまう。
「どうしてかしら?」
彼女は言うが、ガイアには思い当たる節がある。
彼女の何回もの人生に共通するもの。
それは・・・
そんなガイアの話を聞くこともせず、彼女は何も持たずに次の人生へ飛び込んでしまった。
取り敢えず、自分の加護だけは与えておいて良かった。
だが。
ガイアは思う。
もう、結構、待った。
悠久の時を生きる身であり、人と時間感覚が違う自分だが、それでもかなり待ったと思う。
そもそも彼女がイレギュラーなのだ。
『渡り人』など、架空の話しだと思っていた存在だ。
それくらい彼女は枠外なのだ。
正攻法で自分のもとへ昇華されるのを待っていても、いつになるか全くわからない。
ならば。
己れもイレギュラーを起こすしかないのではないか・・・?
これは、前から薄々感じていたことだ。
彼女の転生が繰り返される理由。
それに思い当たったときから、考えていたこと。
ガイアは少女が飛び込んだ穴を見つめる。
海底のようにエメラルドに輝くワープ空間。
幾筋も漂う世界線。
少女がたどり着いた世界線は一際輝きを増した。
彼女がその世界に存在すること。
今やただそれだけでその世界は救済される。
「オーディン様~、ごめんなさ~い。」
ガイアはそう言葉を残すと、ためらいもせず、一際輝く世界線を目指して、穴の中へ飛び込んでいった。
もう待つのはうんざりだ。
ならば迎えに行くまで。
自分で彼女の魂を昇華させてみせよう。
彼女は止める間も無くおもむろに穴に飛び込んでしまった。
「あああああ」
私は情けない声を出すことしかできなかった。
転生を繰り返す『渡り人』の少女。
少女の魂はいつ見ても美しい白銀に輝き、そのエネルギーの強さはそこにあるだけで周囲を活性化させる。
格、というものを改めて認識させられる。
魂の格が生まれながらにして違うのだ。
最初は、ただの不幸な少女だった。
けれど理不尽な生をもがき生きる中で、その魂は少女自身のエネルギーでどんどん浄化され、死に絶える時にはついに転生の間までたどり着いてしまった。
美しく清廉な魂が傷付きボロボロになっているのを、ガイアは涙を流して癒し続けた。
すると、少女の魂はみるみるうちに健やかさと朗らかさ取り戻し、とうとう次の人生への希望までもを取り戻した。
打たれ強いというか、懲りないというか。
ガイアは少女が幸せになるところを見たくなり、新たな人生へと送り出した。
その世界で、少女は前世の鬱憤を晴らすかのように伸び伸びと生き抜いた。
なのにまた、少女は転生の間に戻ってきた。
しかも魂の輝きを増して。
人生に満足した者は、魂を捨て、精霊となり、神の世界へ昇華されるのだが、彼女の魂は磨かれて尚も次を望んだ。
ガイアはまた少女を次の生へと送り出した。
すると、また、戻ってきた。
長いこと転生の間で管理者として過ごしてきたガイアだが、こんなことは一度もなかった。
だが、ここに来たからにはシステムとして、少女を送り出さなければならない。
戻ってくる度に少女の魂は品格を増し、ガイアの心をも夢中にさせる程に美しく高みへ昇っていった。
「もういいかげん転生を終わらせて僕のお嫁さんになろうよ」
そうやってガイアが何度口説いても、彼女は魂を捨てきれず、ここへ戻って来てしまう。
「どうしてかしら?」
彼女は言うが、ガイアには思い当たる節がある。
彼女の何回もの人生に共通するもの。
それは・・・
そんなガイアの話を聞くこともせず、彼女は何も持たずに次の人生へ飛び込んでしまった。
取り敢えず、自分の加護だけは与えておいて良かった。
だが。
ガイアは思う。
もう、結構、待った。
悠久の時を生きる身であり、人と時間感覚が違う自分だが、それでもかなり待ったと思う。
そもそも彼女がイレギュラーなのだ。
『渡り人』など、架空の話しだと思っていた存在だ。
それくらい彼女は枠外なのだ。
正攻法で自分のもとへ昇華されるのを待っていても、いつになるか全くわからない。
ならば。
己れもイレギュラーを起こすしかないのではないか・・・?
これは、前から薄々感じていたことだ。
彼女の転生が繰り返される理由。
それに思い当たったときから、考えていたこと。
ガイアは少女が飛び込んだ穴を見つめる。
海底のようにエメラルドに輝くワープ空間。
幾筋も漂う世界線。
少女がたどり着いた世界線は一際輝きを増した。
彼女がその世界に存在すること。
今やただそれだけでその世界は救済される。
「オーディン様~、ごめんなさ~い。」
ガイアはそう言葉を残すと、ためらいもせず、一際輝く世界線を目指して、穴の中へ飛び込んでいった。
もう待つのはうんざりだ。
ならば迎えに行くまで。
自分で彼女の魂を昇華させてみせよう。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる