転生を繰り返してたら神様に惚れられました

丸太

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1章 

2. ソフィア・シルエット

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意識がすうっと戻る感覚。

私は薄く目を開け、両手を目の前にかざす。

シャッ、シャッ、とカーテンを開ける音とともに室内が明るくなっていく。

目の前には小さな幼さの残る手。
その向こうに天蓋ベッドの天井とベッドを囲むレースのカーテン。
細かな刺繍が施された薄ピンクのカーテンが朝陽を目に優しくしてくれる。

上等なベッドの柔らかな布団の中で、私はまた夢を見ていた。
以前書庫室で読んだ、『科学』という技術が発展した世界の物語だ。

いや、妖精の世界の話しだったかな?

うーん、魔法の国で魔力研究をする話?

それとも主人公が国王にまで成り上がり、世界を救出する一大叙事伝?

ああ、せっかくの楽しい夢をどんどん忘れてしまう。

獣人の世界の話?

太古の神様の話し?

なんだっけ?





「お目覚めですか? ソフィア様」

名前を呼ばれて覚醒する。

現実を思い出す。




ここは、かつて妖精に愛された世界だ。

だが現在、人々は妖精への感謝の気持ちをすっかり忘れてしまい、そのせいで妖精はこの世界から去ってしまった。
今では魔法という妖精に与えられた恩恵を細々と継承しているだけの世界だ。


この世界から大きな魔法を扱える者がいなくなり約100年。
世間には生活魔法と呼ばれる、小さな魔法を扱える者が少数残るだけとなった。

もともと人々の生活は魔法ありきで成り立っていた。
夜に暗闇を照らすのも、寒い冬に暖をとるのも、暖かい料理を作るのも、足りない魔力を補ってくれる魔道具が頼りだ。
しかし今では、魔道具を作れる者も、魔道具を扱える者も大幅に減ってしまった。



必然的に、強い魔力、あるいは多い魔力を保有することが、この世界で勝ち組として生き残る術となる。

魔力は遺伝されることが多い。
貴族たちは少しでも強い魔力持ちを血縁に迎え入れようと躍起になり、政略結婚を繰り返した。

それにも限界が来ると、今度は平民から魔力持ちを迎え入れようと、多少強引であろうとも養子縁組を繰り広げた。

世界のそこかしこで、どろどろの人間関係が展開され、それが当たり前となった。



世界中で魔力減少に対する効果的な政策を打ち出せないまま時は過ぎ、世界から魔力が無くなるのと比例して、世界の治安はどんどん悪化していった。

暗い夜には犯罪が増え、街の郊外には魔物が出没するようになり、流通や農業、水産業、畜産業などが営めなくなり、経済が大きく衰退した。



生活が苦しくなってくると人々の心も疲弊する。
争いが多くなり、犯罪が増えるという悪循環は絶える気配を見せない。

何の解決も見出だせないまま時だけは確実に過ぎ行く。

街中では治安維持の兵士が剣を携え歩き回り、街道には魔物討伐の軍隊や、依頼を受けた冒険者たちが行き交う物騒な世の中となった。





そんな世界の小さな国のひとつ、グラスロット王国の辺境都市ブレスに、ソフィア・シルエットは誕生したのである。



そう。
私の名前は、ソフィア・シルエット。
グラスロット王国の辺境都市ブレスとその周辺を治める、国内外にその名を馳せる名家の当主、シルエット辺境伯の第3子にして長女。

もうすぐ10歳。
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