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ニケ大森林
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「王都の騎士も白龍使いの騎士一行も全員揃っているな」
王都騎士団のケインズ団長がそう言うと、隣にいた白龍使いの騎士団のユーズ団長がケインズ団長へ目線を合わせてしっかりと頷く。
「よし、前衛部隊の三組は俺とユーズと一緒に森の中腹まで行ってそこから三方向に分かれるぞ。そこからはそれぞれ王都の騎士団の隊長が指揮をとる。白龍使いの騎士たちは隊長の指示に従ってくれ。後衛部隊は森の中腹で待機だ。何かあれば救援要請を飛ばすから駆けつけてくれ」
「はっ!!」
ケインズ団長の言葉に、騎士たちが一斉に返事をする。
「救護班はここに救護用のテントを張ってくれ。何が起こっても対応できるよう準備を頼む」
救護班として治癒魔法に長けた医師や看護師、そしてそれを守るために配置された王都の騎士達が一斉に動き出した。
「セシル、どうか、無事で、ね」
リラがそう言うと隣にいたロイ様はランス様に目線を合わせて頷き、ランス様も同様に力強く頷いた。
リラとロイ様が救護班として準備に取り掛かるのを見届けてから、私とランス様はケインズ団長に続いて森の中へ進み出す。ついに、森の中に足を踏み入れるんだわ……!
「顔色悪いようだけど、大丈夫?」
そっとルル様が隣に来て心配そうに尋ねてくれた。
「す、すみません、なんだか緊張してしまって」
慌ててそう返事をすると、ルル様は優しく微笑んでくれる。
「いいのよ、緊張して当たり前だわ。大丈夫、何があっても騎士様や白龍達が守ってくれるから」
ね?と微笑まれるとなぜか自然と緊張がほぐれていく。ルル様もベル様みたいに周りを安心させる力があるのかしら。
「他の聖女様はうちのシキと違って緊張感があって羨ましいよ。見てみろよ、うちのシキときたらまぁ図太い心臓をお持ちのようで全く表情が変わらない」
近くにいたガイル様が茶化すようにそういうとシキ様はキッとガイル様を睨み、それからこちらを見た。
「緊張することはいいことよ、危機感がある証拠だわ。むしろそうやって私をダシにして他の聖女と仲良くなろうとするガイルの方が危機感が足りないのよ」
シキ様はそう言ってガイル様を今度は冷ややかな瞳で見ると、ガイル様は「おお、怖い怖い」と肩をすくませる。
「ふふっ」
思わず吹き出すと、シキ様の表情が一瞬だけ和らいだように見えた。
「ありがとうございます、皆さんでそうやって緊張を解いてくれたんですよね」
笑顔を向けてお礼を言うと、シキ様は驚いたように両目を見開いてからフイっと顔を背けた。
「べ、別にそんなんじゃ……」
「はいはい、可愛くないな、セシル様みたいにもっと素直になれよ」
ガイル様がシキ様の頭をガシガシと撫でるとシキ様は「触るな!穢らわしい!」と怒っている。この二人、仲が悪いのか良いのか本当にわからないけれどどちらもやっぱり良い人だ。
そんな風にワイワイと話をしていると、一番前を歩いていた部隊の歩みが突然止まった。
「お出ましかな」
白龍達は静かに微笑み、騎士達は皆剣に手を伸ばし構え始める。シキ様も腰にある剣に手をかけルル様はいつの間にか魔法の杖を出現させていた。白龍と白龍使いの騎士達はそれぞれの聖女達を守るようにして立っている。
森の中に赤く光る瞳が次々と現れ、いつの間にか全方位を魔物達に囲まれていた。
「目的地に着く前に来ちまったみたいだな。雑魚ばかりだがやけに数が多い、気を抜くなよ!!」
ケインズ団長の掛け声と共に、一斉に騎士達が走り出した。
王都騎士団のケインズ団長がそう言うと、隣にいた白龍使いの騎士団のユーズ団長がケインズ団長へ目線を合わせてしっかりと頷く。
「よし、前衛部隊の三組は俺とユーズと一緒に森の中腹まで行ってそこから三方向に分かれるぞ。そこからはそれぞれ王都の騎士団の隊長が指揮をとる。白龍使いの騎士たちは隊長の指示に従ってくれ。後衛部隊は森の中腹で待機だ。何かあれば救援要請を飛ばすから駆けつけてくれ」
「はっ!!」
ケインズ団長の言葉に、騎士たちが一斉に返事をする。
「救護班はここに救護用のテントを張ってくれ。何が起こっても対応できるよう準備を頼む」
救護班として治癒魔法に長けた医師や看護師、そしてそれを守るために配置された王都の騎士達が一斉に動き出した。
「セシル、どうか、無事で、ね」
リラがそう言うと隣にいたロイ様はランス様に目線を合わせて頷き、ランス様も同様に力強く頷いた。
リラとロイ様が救護班として準備に取り掛かるのを見届けてから、私とランス様はケインズ団長に続いて森の中へ進み出す。ついに、森の中に足を踏み入れるんだわ……!
「顔色悪いようだけど、大丈夫?」
そっとルル様が隣に来て心配そうに尋ねてくれた。
「す、すみません、なんだか緊張してしまって」
慌ててそう返事をすると、ルル様は優しく微笑んでくれる。
「いいのよ、緊張して当たり前だわ。大丈夫、何があっても騎士様や白龍達が守ってくれるから」
ね?と微笑まれるとなぜか自然と緊張がほぐれていく。ルル様もベル様みたいに周りを安心させる力があるのかしら。
「他の聖女様はうちのシキと違って緊張感があって羨ましいよ。見てみろよ、うちのシキときたらまぁ図太い心臓をお持ちのようで全く表情が変わらない」
近くにいたガイル様が茶化すようにそういうとシキ様はキッとガイル様を睨み、それからこちらを見た。
「緊張することはいいことよ、危機感がある証拠だわ。むしろそうやって私をダシにして他の聖女と仲良くなろうとするガイルの方が危機感が足りないのよ」
シキ様はそう言ってガイル様を今度は冷ややかな瞳で見ると、ガイル様は「おお、怖い怖い」と肩をすくませる。
「ふふっ」
思わず吹き出すと、シキ様の表情が一瞬だけ和らいだように見えた。
「ありがとうございます、皆さんでそうやって緊張を解いてくれたんですよね」
笑顔を向けてお礼を言うと、シキ様は驚いたように両目を見開いてからフイっと顔を背けた。
「べ、別にそんなんじゃ……」
「はいはい、可愛くないな、セシル様みたいにもっと素直になれよ」
ガイル様がシキ様の頭をガシガシと撫でるとシキ様は「触るな!穢らわしい!」と怒っている。この二人、仲が悪いのか良いのか本当にわからないけれどどちらもやっぱり良い人だ。
そんな風にワイワイと話をしていると、一番前を歩いていた部隊の歩みが突然止まった。
「お出ましかな」
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森の中に赤く光る瞳が次々と現れ、いつの間にか全方位を魔物達に囲まれていた。
「目的地に着く前に来ちまったみたいだな。雑魚ばかりだがやけに数が多い、気を抜くなよ!!」
ケインズ団長の掛け声と共に、一斉に騎士達が走り出した。
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