上 下
42 / 82

王都騎士団本部

しおりを挟む
 ランス様と街へお出かけしてから数日が経ち、ついに魔物討伐祭の打ち合わせの日がやってきた。

 打ち合わせは王都の騎士団や任務に当たる他の白龍使いの騎士や聖女との顔合わせも兼ねているそうなのだけれど、他の白龍使いの騎士や聖女様ってどんな方達なんだろう。

 打ち合わせが開かれる王都騎士団の騎士団本部にやってきた。白龍も会議に出席するため白龍の姿ではなく人の姿になったミゼル様も一緒だ。

 白龍使いの騎士団本部とはまた違った雰囲気の建物。いかにも騎士団って感じの佇まいね。

 中庭を通ると、騎士達が稽古をしていた。

「懐かしいな」

 ふとランス様が稽古の様子を眺めて目を細める。そういえば、ランス様は白龍使いの騎士になる前に王都の騎士団にいたとユーズ様が言ってたっけ。

「ランス様もここで稽古をしていたんですか?」

「そうだよ。でも実際ここにいたのは一年もみたないんだ。王都の騎士になれたと思ったら突然白龍使いの騎士に選ばれてしまったから」

 ランス様が肩をすくませて困ったように頬笑むと、隣にいたミゼル様がおや、と意外そうな顔をして覗きこんでくる。

「なんだかここを離れたことが残念そうだね。白龍使いの騎士に選ばれたのは不服だったかい?」

「いや、そんなことはないよ。君に選ばれたことは光栄だったし、何よりもこうしてセシルに出会えた」

 こちらを向いてにこっと頬笑むランス様。その笑顔があまりにも優しくて嬉しそうで思わず顔に血がのぼってしまう。

「ふふ、それならよかった。嫌々白龍使いの騎士をされてしまってはこちらとしても困るからね」

 クスクスと笑いながらミゼル様は言うけれど、きっと嫌がっていないことなどはなからお見通しなのだろう。



 中庭を抜けて会場となる大会議室に到着した。中に入ると、そこには沢山の騎士が席に着いている。

 自然と分かれているのだろうか、片側には明らかに白龍使いの騎士と聖女、そして白龍達が座っていた。

 私達を含めて全部で4組くらい……?

 人の姿をした白龍はどの白龍も見目麗しいという言葉がピッタリで息を飲む。ミゼル様も当たり前に美しいけれど、そんな美しさが数人集まるだけでその場が輝いて見える……!

「おう、ランス!」

 声のする方を見ると、ロイ様とリラ、白龍のジュイン様がいた。リラはロイの隣にぴったりとくっついているけれど、私の姿を見た瞬間にとびっきりの笑顔になった。あぁ、なんて可愛らしいの!!!

「ロイ!もう来てたんだな」

 ランス様がそう返事をしてからロイ様達の後ろの席に座る。私はランス様とミゼル様に挟まれて座っている状態だ。

 よく見ると、どの白龍使いの騎士と白龍達も二人で聖女様を守って座っているかのようだ。

「セシル、久しぶりなの」

 リラが振り返って挨拶をしてきた。

「久しぶり!ロイ様とジュイン様もお久しぶりです」

 お二人にも挨拶するとロイ様はおう、と手を振りジュイン様は微笑んで会釈してきた。ジュイン様の微笑み、美しすぎてやばいです……!

 ふと視線を感じてそちらを見ると、ロイ様達の斜め前の席に座る白龍使いの騎士様だった。濃いめのブラウンの髪に翡翠のような色の瞳だ。

 軽く会釈するとふいっと目をそらされた。え、何それ嫌な感じ。もしかしてうるさかったのかしら。

 ふと騎士様の隣に座る聖女様と目が合った。艶のある長い黒髪に琥珀のような瞳の美しい聖女様だ。軽く会釈すると向こうも会釈を返してくれたけれど真顔で、そのまま前を向いてしまった。

 ユーズ様やロイ様、ベル様やリラとはまた違う雰囲気でなんとなく胸の辺りがもやもやする。これから一緒に任務に当たることになるのに、大丈夫かな……。



「よーし、全員そろったか。そろそろ始めるぞ」

 声のする方を見ると、前方の席にケインズ団長が座っていた。その隣にはユーズ団長とベル様、白龍ユイン様が座っている。

 ケインズ団長、なんだかいつにもまして機嫌が悪そうだけどどうしたのかしら。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます

柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。 社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。 ※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。 ※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意! ※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた

ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。 マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。 義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。 二人の出会いが帝国の運命を変えていく。 ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。 2024/01/19 閑話リカルド少し加筆しました。

処理中です...