上 下
21 / 82

白龍ユイン様

しおりを挟む
 ベル様とランス様のことについて色々と話をしていたら、なんとなく気持ちが落ち着いてきた。

「ねぇ、このスコーンとっても美味しいのよ。食べてみて」

 ベル様に促されて食べてみると、本当に美味しい!ほっぺたが落ちてしまいそうなほどの美味しさだ。お茶も一口飲んで、ホッと息をつく。

 青空に雲がどんどんと流れていく。見晴らしが良くて風が気持ち良い。

「聖女としてユーズの所にきてからかれこれ12年近く経つけれど、今でもこうして生きていられることが奇跡みたいに感じられるわ」

 空を見つめるベル様の瞳はキラキラと輝いている。

「ベル様は何歳の時にこちらにいらっしゃったんですか?」

「18歳の時ね。ユーズは22歳だったわ。二人ともすっかり年をとっちゃった」

 うふふ、とお茶目に笑うベル様。って、え?!それじゃ今のベル様は30歳ってこと??全然見えないんですけど?!それにユーズ様は34歳ってこと?!そちらも全然見えない!

「ベル様、めちゃめちゃお若く見えますね!」

「あらやだぁ、セシルったらうまいんだから!嬉しいからこれもあげちゃう」

 手元にあったクッキーを沢山くれた。いや、お世辞じゃなく本当にお若いですって……!

 二人でワイワイ騒いでいると、突然ふっと清らかな力を感じる。そちらの方に目を向けると、そこには透けるような金髪のショートボブを風に靡かせた美しい人が立っていた。ミゼルのように異国の衣服みたいなものを見に纏っている。

「キレイ……」

 思わずぼんやりしながら呟くと、その人がにこり、と微笑んだ。やだ、微笑んだ顔もお美しい!!!

「あら、ユイン。ランスの聖女に会いに来たの?」

 ベルがその人に親しげに話しかける。あれ、もしかしてこの人って……。

「セシル、こちらユイン。ユーズの白龍よ。ユイン、こちらセシル。ミゼルとランスの聖女様よ」

 うふふ、と片手を頬に当てながらベル様が嬉しそうに紹介してくれた。

「やぁ、初めまして。君がミゼルとランスの聖女様か。可愛らしいね。これから任務で一緒になることもあるだろう。よろしくね」

「あ、はい!セシルと申します。まだ未熟者ですがよろしくお願いいたします!」

 お辞儀をすると、ユイン様は嬉しそうにクスクスと笑っている。あぁ、笑い声もとても美しい……!

「ユイン、ミゼルには会ったの?」

「いんや、これからだよ。別にミゼルには会わなくえもいいんだけど、セシルに会ったついでだからね」

 ミゼル様も破格の美しさだけれど、ユイン様も負けず劣らずの美しさで驚いてしまう。白龍様が人の姿になるとこんなにも神々しいものなのね……!

「そんなに見つめられると照れてしまうな。そんなに熱い眼差しを向けられてしまうとランスに焼きもちを妬かれてしまうよ。ユーズが焼きもち妬くみたいにね」

 ユイン様はそう言ってクスッとベルの方を見る。

「え、ユーズ様ってユイン様に焼きもち妬くんですか?!」

 あの冷静沈着そうで落ちついた感じのユーズ様が白龍であるユイン様にわざわざ焼きもちを??

 驚いて思わずベル様を見ると、ベル様はほんのり頬を赤らめている。やだ、可愛らしい!!

「その、ユインと仲良くしてるとたまに割り込んできたりするのよね。ユインは白龍だから気にしなくてもいいのに」

「そういうわけにもいかないだろう。私は場合によってはやろうと思えば性別を選んで君から直接力分けをしてもらえるんだ。ユーズにとっては耐え難いことなんだろう、いつも目を光らせているものね。まぁ君はユーズ一筋だから心配ないだろうけれど。私もそんな君達で良かったと思っているよ」

 にっこりと嬉しそうに頬笑むユイン様。ユーズ様って本当にベル様のことが大好きなんだろうな。すごい。私もランス様にそんな風に思ってもらえたら……。

「君も気をつけた方がいいよ。ランスもきっとミゼルに焼きもちを妬いているし、ミゼルはそれをわかってわざとけしかけるようなことをしてるだろうから」

 え?どういうこと???ランス様がミゼル様へ焼きもち???

 キョトンとしてしまう私を見て、ベル様もユイン様も楽しそうに笑っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました

柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」  結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。 「……ああ、お前の好きにしろ」  婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。  ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。  いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。  そのはず、だったのだが……?  離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜

凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】  公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。  だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。  ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。  嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。  ──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。  王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。  カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。 (記憶を取り戻したい) (どうかこのままで……)  だが、それも長くは続かず──。 【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】 ※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。 ※中編版、短編版はpixivに移動させています。 ※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。 ※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます

柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。 社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。 ※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。 ※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意! ※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

処理中です...