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懸念
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「フレデリック、いるか?」
「ああ、いるよ」
フレデリックが返事をすると、フレンが部屋の中に入ってきた。
(フレン様……!)
出かけているから会えないと聞いていたフレンを見て、思わずアリシアは嬉しくなった。アリシアがフレンを見て少し目を輝かせると、フレデリックはムッとする。そんなフレデリックを見てフレンは苦笑し、アリシアに声をかけた。
「体、大丈夫か?」
「はい、その、色々と申し訳ありませんでした……!」
「いや、俺は別に何もしてないし。お礼は全部フレデリックに言ってくれ」
そう言って、フレンはアリシアの胸元に目をやり、痕を見てまた苦笑する。それを見てフレデリックはフレンの視界を遮るようにしてフレンへ話しかけた。
「俺に何か用か?」
「ああ、さっき街に行って有益な情報を得たから、三人で話をしたいんだ」
「もしかして、帰る方法が見つかったのか?」
フレデリックの問いに、フレンが力強く頷く。するとフレデリックとアリシアは驚いたように目を合わせる。
「俺も、メリッサのことで三人で話したいと思っていた」
「あの、それでしたら、ここではなく、フレデリック様の執務室でお話ししませんか?私はこんな姿ですし、一度着替えたいのですが」
アリシアの言葉に、フレデリックとフレンがアリシアを見てああ、と呟く。
「わかった、執務室で待ってるよ」
そう言って、フレデリックとフレンは部屋を出る。部屋を出る直前、フレンは振り返ってアリシアを見た。アリシアはそれに気づいてフレンを見ると、フレンは優しく微笑んでから部屋を出ていった。
(フレン様、未来に帰る方法がわかったんだ……)
一体、街で何があったのだろう。それに、未来に帰れたとしてもそれはつまりフレンがその瞬間死んでしまうということではないのだろうか。
でもあの様子だとその懸念をあまり気にしていないようにも感じる。何か死なずにすむ方法があるのだろうか?
(フレン様は帰りたいと思っていたし、それが正しいことなのだろうけど……)
フレンがいなくなる、そう思うと何となく寂しい気持ちになってくる。フレンが来たことで、目まぐるしく日々が過ぎていった。フレデリックとフレンに挟まれ、二人から愛を囁かれ、どうしていいかわからず戸惑っていたが、それがもうすぐ無くなるのだ。
(寂しいと思うなんて、きっと間違っているわよね……。そんなことより、今は目の前のことにちゃんと向き合わないと)
目をぎゅっとつぶり首をぶんぶんと大きく振ると、アリシアはベッドから降りて身支度を始めた。
◇
「メリッサが実の妹じゃないって話、あんたも知っていたのか」
フレデリックの執務室に来ると、フレデリックはフレンに話しかける。
「……ああ、アリシアとの婚約が決まった時、アリシアが聞いていた。だからお前もそのうちアリシアから聞くだろうと思っていた。聞いたんだな」
フレンの言葉に、フレデリックは小さくため息をつく。
「驚くことばかりだよ。どうして未来であんたたちは、メリッサとちゃんと話し合わなかったんだ?ちゃんと話し合っていれば、メリッサがアリシアの命を狙うことも、あんたが誰かに刺されることもなかっかもしれないだろ?」
フレデリックが厳しい視線をフレンに送ると、フレンはそれをしっかりと見つめ返す。
「未来でのメリッサは確かにわがままな所はあるけど、こっちのメリッサみたいに極度におかしな様子を見せなかった。俺に対して好意を向けているのは変わらなかったが、今回みたいにおかしな真似をすることもなかった。メリッサがアリシアの命を狙ってると知った時まで、そんな素振りは一切見せなかったんだ。俺がメリッサを警戒するようになったのは、アリシアが狙われるようになってからだ」
「こっちのメリッサとは少し違うのか。わけがわからないな。……今回、メリッサはなんで媚薬なんてもの持ってたんだろう。おかしいと思わないか?」
「それはつまり、誰かがメリッサを唆した?」
「その可能性は否定できないだろ」
フレデリックに言われて、フレンは顎に手を添えて唸る。
「ないとは言い切れないだろうけど……。あるとすれば、メリッサに狂信的に惚れている、メリッサの夫になるあいつくらいしか思い浮かばない」
「それって誰なんだよ?」
「お前もよく知ってる男だよ。サリオンだ」
その名前を聞いて、フレデリックは驚愕した顔でフレンを見つめた。
「ああ、いるよ」
フレデリックが返事をすると、フレンが部屋の中に入ってきた。
(フレン様……!)
出かけているから会えないと聞いていたフレンを見て、思わずアリシアは嬉しくなった。アリシアがフレンを見て少し目を輝かせると、フレデリックはムッとする。そんなフレデリックを見てフレンは苦笑し、アリシアに声をかけた。
「体、大丈夫か?」
「はい、その、色々と申し訳ありませんでした……!」
「いや、俺は別に何もしてないし。お礼は全部フレデリックに言ってくれ」
そう言って、フレンはアリシアの胸元に目をやり、痕を見てまた苦笑する。それを見てフレデリックはフレンの視界を遮るようにしてフレンへ話しかけた。
「俺に何か用か?」
「ああ、さっき街に行って有益な情報を得たから、三人で話をしたいんだ」
「もしかして、帰る方法が見つかったのか?」
フレデリックの問いに、フレンが力強く頷く。するとフレデリックとアリシアは驚いたように目を合わせる。
「俺も、メリッサのことで三人で話したいと思っていた」
「あの、それでしたら、ここではなく、フレデリック様の執務室でお話ししませんか?私はこんな姿ですし、一度着替えたいのですが」
アリシアの言葉に、フレデリックとフレンがアリシアを見てああ、と呟く。
「わかった、執務室で待ってるよ」
そう言って、フレデリックとフレンは部屋を出る。部屋を出る直前、フレンは振り返ってアリシアを見た。アリシアはそれに気づいてフレンを見ると、フレンは優しく微笑んでから部屋を出ていった。
(フレン様、未来に帰る方法がわかったんだ……)
一体、街で何があったのだろう。それに、未来に帰れたとしてもそれはつまりフレンがその瞬間死んでしまうということではないのだろうか。
でもあの様子だとその懸念をあまり気にしていないようにも感じる。何か死なずにすむ方法があるのだろうか?
(フレン様は帰りたいと思っていたし、それが正しいことなのだろうけど……)
フレンがいなくなる、そう思うと何となく寂しい気持ちになってくる。フレンが来たことで、目まぐるしく日々が過ぎていった。フレデリックとフレンに挟まれ、二人から愛を囁かれ、どうしていいかわからず戸惑っていたが、それがもうすぐ無くなるのだ。
(寂しいと思うなんて、きっと間違っているわよね……。そんなことより、今は目の前のことにちゃんと向き合わないと)
目をぎゅっとつぶり首をぶんぶんと大きく振ると、アリシアはベッドから降りて身支度を始めた。
◇
「メリッサが実の妹じゃないって話、あんたも知っていたのか」
フレデリックの執務室に来ると、フレデリックはフレンに話しかける。
「……ああ、アリシアとの婚約が決まった時、アリシアが聞いていた。だからお前もそのうちアリシアから聞くだろうと思っていた。聞いたんだな」
フレンの言葉に、フレデリックは小さくため息をつく。
「驚くことばかりだよ。どうして未来であんたたちは、メリッサとちゃんと話し合わなかったんだ?ちゃんと話し合っていれば、メリッサがアリシアの命を狙うことも、あんたが誰かに刺されることもなかっかもしれないだろ?」
フレデリックが厳しい視線をフレンに送ると、フレンはそれをしっかりと見つめ返す。
「未来でのメリッサは確かにわがままな所はあるけど、こっちのメリッサみたいに極度におかしな様子を見せなかった。俺に対して好意を向けているのは変わらなかったが、今回みたいにおかしな真似をすることもなかった。メリッサがアリシアの命を狙ってると知った時まで、そんな素振りは一切見せなかったんだ。俺がメリッサを警戒するようになったのは、アリシアが狙われるようになってからだ」
「こっちのメリッサとは少し違うのか。わけがわからないな。……今回、メリッサはなんで媚薬なんてもの持ってたんだろう。おかしいと思わないか?」
「それはつまり、誰かがメリッサを唆した?」
「その可能性は否定できないだろ」
フレデリックに言われて、フレンは顎に手を添えて唸る。
「ないとは言い切れないだろうけど……。あるとすれば、メリッサに狂信的に惚れている、メリッサの夫になるあいつくらいしか思い浮かばない」
「それって誰なんだよ?」
「お前もよく知ってる男だよ。サリオンだ」
その名前を聞いて、フレデリックは驚愕した顔でフレンを見つめた。
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