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お出かけ

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 フレデリックの屋敷に住むようになってから、数週間が経った。フレデリックの屋敷にはフレンも住んでいるが、屋敷の人間にはフレデリックがうまいこと言っているので、今のところは怪しまれていないようだ。

「今日はフレデリック様とドレス選びに行く日ですよね。街へ行くんですから、しっかりおめかししますよ」

 腕を捲って元気にそう言うのはメイドのローリアだ。フレデリックの屋敷でアリシアの担当メイドであるローリアはアリシアより少し年下で、母親もこの屋敷でメイドをしている。

「おめかしって、そんなに気合を入れなくても……」
「ダメです、フレデリック様はお若いのにお忙しい方なので、あんまりお出かけとかできないじゃないですか。たまのお出かけはフレデリック様だって楽しみにしてらっしゃるんです、アリシア様がおめかししてたら絶対に喜びますよ」

 それに、とローリアは言葉を続ける。

「フレン様もご一緒なんですよね?見目麗しいお二人に挟まれたアリシア様もとびきり美しくしないと私が納得できません」

 そう言ってふんすと鼻息を荒くするローリアを、アリシアはくすくすと楽しそうに笑う。

「アリシア様、ここに来てすぐは少し塞ぎ込んでるようでしたけど、最近はよく笑ってくれるようになって嬉しいです」
「……心配かけてごめんなさい。ローリアと話をしていると楽しくなってくるから不思議だわ。でもありがとう。これからもよろしくね」

 アリシアがそう言ってフワッと笑うと、ローリアは頬を赤く染めて嬉しそうに笑い、ハイッ!と威勢よく返事をした。






「アリシア!いつも綺麗だけど、今日は一段と綺麗だね!」
「あ、ありがとうございます」

 お出かけ用のドレスを身に纏ったアリシアを見て、フレデリックは目を輝かせて誉めた。そんなフレデリックにアリシアは思わず照れてしまい、ふとフレンを見ると目が合う。フレンは口の端を少し上げて、静かに頷いた。

「いいんじゃないか」
「おい、なんでそんなに上から目線なんだよ」

 フレンの様子にフレデリックが噛み付くと、ハイハイとフレンは手をひらひらさせてフレデリックをあしらう。そんな二人を見て、プッとアリシアは笑ってしまった。

「「アリシア?」」
「すみません、お二人とも、こういう時はいつも息がぴったりなので」

 クスクスと笑うアリシアを見て、フレデリックもフレンも思わず頭をかく。その動作が同時だったので、またアリシアは笑ってしまった。

「アリシアが楽しそうならいいよ。こいつのことは気に食わないけど」
「お前、歳上に向かってこいつとはなんだよ」
「未来の自分に対してわざわざ敬語を使う必要はないだろ」
「あの、そろそろ出かけませんか?」

 喧嘩が始まりそうだったので、アリシアが声をかけると二人は同時に固まり、アリシアを見て頷いた。


 馬車に乗り込む少し前、フレンがアリシアのすぐ横に来る。どうしたのだろうかとフレンを見ると、フレンが静かにアリシアの耳元に顔を近づけた。

「さっきはフレデリックの手前ああ言ったけど、本当に今日のアリシアも綺麗だ」

 そう言って、フレンはフッと微笑む。かけられた言葉と、その妖艶な微笑みにアリシアが思わず赤面すると、フレンは嬉しそうにくすくすと笑った。

(か、揶揄われてる?!)

「別に揶揄ってるわけじゃないよ。俺の未来の奥さんはやっぱり若い頃から可愛いなと思っただけだ」

(な、なんで思ってることがわかったの!?)

 アリシアが顔を真っ赤にしてフレンを見つめると、フレンはまた嬉しそうに笑っている。

「おい、アリシアに何してる」

 アリシアとフレンの様子に気づいたフレデリックが怒ったように二人の間に割って入る。

「アリシア、顔が赤く……あんた、アリシアに何をしたんだよ!」
「何もしてない。ただ、未来の奥さんを可愛がってただけだ」
「は?……アリシア、こんなやつの近くにいてはダメだ、俺のそばから離れないで」

 そう言って、フレデリックは急にアリシアの肩を抱いて引き寄せた。

(え、な、何を!?)

 突然のことにアリシアはさらに顔を真っ赤にする。そんなアリシアを見て、フレンはまた楽しそうにくすくすと笑っていた。

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