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「母の日の史郎と静江」1話
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6:11…
カチッ…っと目指し時計を止める音がした。
静江「ふっ…今日も私の勝ちね…」
セットしていた時間よりも早く起きた静江は、毎回これを言わないと氣が済まない。夫には「目覚まし掛けなくてよくない?」と度々言われていた。
リビングに向かおうと寝室から廊下に出た瞬間…
静江「ん…何この匂い?」
温められた油の香りが、微かに鼻を刺激した。
静江「こんな時間に…起きてるわけないわよね?」
普段から夫婦別々の部屋で寝ている静江は、首を傾げながら歩いていた。
静江「まさか泥棒⁉︎…なわけないわよね…でも…」
静江は1度部屋に何かを取りに戻ってから、再びリビングに向かった。
ガチャ…ゆっくり扉を開ける。
史郎「あれ…もう起きたの⁉︎はえーよ」
静江「史郎あんた何その格好?」
史郎は全く似合っていないエプロンをしていた。
史郎「何ってエプロンしてりゃ~料理しかないっしょ?。そっちこそなんで帽子被ってんの?」
静江はパジャマ姿に帽子を被っていた。
静江「もしかしたら泥棒かもって」
史郎「その帽子なんの役にたつのよ?」
静江「とりあえず頭だけでもって」
史郎「地震じゃんそれ」
静江「とにかく何よ今日は?こんな朝早くから」
史郎「今日母の日でしょ」
静江「あら。珍しいわね。今日天氣大丈夫かしら…」
史郎「なんだよそれ。やりがいないなー」
…ピ!静江がリモコンのボタンを押しテレビを点けると、ちょうどニュースの合間に天氣予報がやっていた。
お天氣おねえさん「お天氣615。今日のお天氣をお伝えします。昨日の予報では氣持ちの良い、まさに※『五月晴れ』という天氣だったんですが…数時間前に急な低氣圧が発生。快晴から一変、大荒れの天氣となるでしょう。洗濯指数も昨日の100%から、部屋干しになっしまいました」
キャスター「ずいぶん珍しいですね」
お天氣おねえさん「はい。私も少し驚いています。今日はなるべく外出を控えた方がよろしいかと思います。 どうしても外出する際には、レインコートなどの雨対策をした方がいいですね。傘では飛ばされていまいますので」
キャスター「母の日にあいにくの天氣となりました。外出の…」
※(本来の五月晴れとは5月の快晴のことを言うのではないらしい)
ピ!
静江「ホラーみなさいよ~。あんたが急にこんなことするからでしょう?」
史郎「知らねーよ!俺に天候を操るまでの力ないから」
静江「っとにも~う…で何作ってんの?」
史郎「急に話し戻ったよ」
静江はクンクンッと大袈裟に鼻を鳴らした。
静江「青椒肉絲?」
史郎「どんな鼻してんだよ。目玉焼きとウインナー焼いてんの!朝から誰が青椒肉絲食べんのよ」
静江「私全然いけるけど?」
それ以後は無視して、史郎は料理を続けた。
台所は酷い状態になっていた。普段やっていない感ゼロ…丸出しだった。
「どうやったらそうなるのよ?」と言われるのがわかっていたので、ダイニングで待つように促した。
静江「まだ?なんかお腹すいちゃった」
史郎「ちょっとまってよ、今できるから…あー立っちゃダメ。醤油とか箸とか全やるから。今日はもてなされる側でしょ?」
静江「わかんないけどそうなのね」
帽子を脱ぎ、数分おとなしくしていると…
史郎「出来たよ!デラックスモーニング・母の日スペシャル!」
全部乗せたお盆を静江の目の前に置いた。
静江「ダサいわね。…デラックスって、ご飯に納豆に目玉焼きにウインナーにって…普通じゃない」
史郎「もうごちゃごちゃうるさいなー食べないの?」
静江「食べますけども何か?」
横を向いて椅子に座っていたので、きちんと前に向き直した。
静江「いただきます」
両手を合わせて軽く頭を下げた。
静江「どれどれー…ん…このご飯…一粒一粒がキラキラしていてキチンと立っている。もう見た目で「私おいしいわよ』といわんばかりの米やで!土鍋でたかにゃーこの味は出んぜよ」
史郎「タイガー製の…うちの炊飯ジャーだけど…」
静江「おかずも素敵ね。もう少し焼いたらかりんとう…と見分けがつかないこの絶妙な感じのウインナー。割る必要すらない…既に割れてる…気遣いすら感じられる目玉無し焼き」
史郎はぽかーんとしている。
静江が調子付いて、『古舘伊知○郎氏」が降りて来た。
静江「おーーっとこの味噌汁!中の具が透き通るまでの透明感だー!ん?中の玉ねぎがー!手を離してはいけないよ!っと全部繋がっているぞ!この技は!銀座久兵衛すら真似できないぞぉ!お!そこでまさかの味付けだぁ!甘からず、辛からず…そして決してうまからず!…からのー!熱すぎて飲めーーーーん!これは3カウント入った!カンカンカンカンカーン!」
史郎が白目を向いている…
世界が変わった様に思える、しばしの沈黙の後…
静江「あーご馳走様でした」
史郎「…どうだった…」
静江「まー85点ね」
史郎「たか!まじ?」
静江「1000点満点でね」
史郎「ひっく!8.5点じゃん」
静江「最初はそんなもんでしょ」
お盆を持って立ち上がる静江。台所に目が…
静江「し~ろ~~う、あんた何よこれ?」
史郎「あーやるからやるから」
静江「あんたにやらしてたんじゃいつ片付くか、いいからどいて」
見えない圧力に屈する史郎。今度は史郎がダイニングテーブルにきちんと座っていた。
瞬く間に片付いてゆくキッチン。主婦歴20年以上は伊達ではなかった。
史郎「はや。すご」
静江「何年主婦やってると思ってんのよ?」
史郎「…まー、いつもありがたいとは…思ってるよ…」
蚊の鳴くような声で囁いた。
静江「はい?なんだって?」
史郎「ありがたいと思ってますよ!だから今日はもてなしてんの!」
ピ!静江が再度リモコンを押す。
静江「今日は。雪みたいね…」
史郎「んなわけないやろ!天氣予報とっくに終わってるし」
内容はグルメ情報に変わっていた。
静江「で、母の日のおもてなしって、これで終わりじゃないでしょうね?」
史郎「あたりまえじゃんよ。これで終わりなら最初からやんない方が良かったよ」
静江「あらまー期待させるじゃない」
史郎「どうせ今日なんもないっしょ?映画行こうかと思って。母ちゃん大河ドラマ好きじゃん。今MHKでやってるやつあんでしょ?あれ昨日から映画でやってるからさー」
静江「あーなんだっけ…ながいあさまさだったっけ?」
史郎「浅井長政(あざいながまさ)だよ!あさまさって、まじか⁉︎」
静江「あーそれそれ」
史郎「それそれじゃないよもーう。…あとババダ…じゃねー!高田馬場でランチと買い物もすっからね(なんなんだよもう)」
何故か肩で息をしている史郎。
とても長い1日なる予感がしていた…
カチッ…っと目指し時計を止める音がした。
静江「ふっ…今日も私の勝ちね…」
セットしていた時間よりも早く起きた静江は、毎回これを言わないと氣が済まない。夫には「目覚まし掛けなくてよくない?」と度々言われていた。
リビングに向かおうと寝室から廊下に出た瞬間…
静江「ん…何この匂い?」
温められた油の香りが、微かに鼻を刺激した。
静江「こんな時間に…起きてるわけないわよね?」
普段から夫婦別々の部屋で寝ている静江は、首を傾げながら歩いていた。
静江「まさか泥棒⁉︎…なわけないわよね…でも…」
静江は1度部屋に何かを取りに戻ってから、再びリビングに向かった。
ガチャ…ゆっくり扉を開ける。
史郎「あれ…もう起きたの⁉︎はえーよ」
静江「史郎あんた何その格好?」
史郎は全く似合っていないエプロンをしていた。
史郎「何ってエプロンしてりゃ~料理しかないっしょ?。そっちこそなんで帽子被ってんの?」
静江はパジャマ姿に帽子を被っていた。
静江「もしかしたら泥棒かもって」
史郎「その帽子なんの役にたつのよ?」
静江「とりあえず頭だけでもって」
史郎「地震じゃんそれ」
静江「とにかく何よ今日は?こんな朝早くから」
史郎「今日母の日でしょ」
静江「あら。珍しいわね。今日天氣大丈夫かしら…」
史郎「なんだよそれ。やりがいないなー」
…ピ!静江がリモコンのボタンを押しテレビを点けると、ちょうどニュースの合間に天氣予報がやっていた。
お天氣おねえさん「お天氣615。今日のお天氣をお伝えします。昨日の予報では氣持ちの良い、まさに※『五月晴れ』という天氣だったんですが…数時間前に急な低氣圧が発生。快晴から一変、大荒れの天氣となるでしょう。洗濯指数も昨日の100%から、部屋干しになっしまいました」
キャスター「ずいぶん珍しいですね」
お天氣おねえさん「はい。私も少し驚いています。今日はなるべく外出を控えた方がよろしいかと思います。 どうしても外出する際には、レインコートなどの雨対策をした方がいいですね。傘では飛ばされていまいますので」
キャスター「母の日にあいにくの天氣となりました。外出の…」
※(本来の五月晴れとは5月の快晴のことを言うのではないらしい)
ピ!
静江「ホラーみなさいよ~。あんたが急にこんなことするからでしょう?」
史郎「知らねーよ!俺に天候を操るまでの力ないから」
静江「っとにも~う…で何作ってんの?」
史郎「急に話し戻ったよ」
静江はクンクンッと大袈裟に鼻を鳴らした。
静江「青椒肉絲?」
史郎「どんな鼻してんだよ。目玉焼きとウインナー焼いてんの!朝から誰が青椒肉絲食べんのよ」
静江「私全然いけるけど?」
それ以後は無視して、史郎は料理を続けた。
台所は酷い状態になっていた。普段やっていない感ゼロ…丸出しだった。
「どうやったらそうなるのよ?」と言われるのがわかっていたので、ダイニングで待つように促した。
静江「まだ?なんかお腹すいちゃった」
史郎「ちょっとまってよ、今できるから…あー立っちゃダメ。醤油とか箸とか全やるから。今日はもてなされる側でしょ?」
静江「わかんないけどそうなのね」
帽子を脱ぎ、数分おとなしくしていると…
史郎「出来たよ!デラックスモーニング・母の日スペシャル!」
全部乗せたお盆を静江の目の前に置いた。
静江「ダサいわね。…デラックスって、ご飯に納豆に目玉焼きにウインナーにって…普通じゃない」
史郎「もうごちゃごちゃうるさいなー食べないの?」
静江「食べますけども何か?」
横を向いて椅子に座っていたので、きちんと前に向き直した。
静江「いただきます」
両手を合わせて軽く頭を下げた。
静江「どれどれー…ん…このご飯…一粒一粒がキラキラしていてキチンと立っている。もう見た目で「私おいしいわよ』といわんばかりの米やで!土鍋でたかにゃーこの味は出んぜよ」
史郎「タイガー製の…うちの炊飯ジャーだけど…」
静江「おかずも素敵ね。もう少し焼いたらかりんとう…と見分けがつかないこの絶妙な感じのウインナー。割る必要すらない…既に割れてる…気遣いすら感じられる目玉無し焼き」
史郎はぽかーんとしている。
静江が調子付いて、『古舘伊知○郎氏」が降りて来た。
静江「おーーっとこの味噌汁!中の具が透き通るまでの透明感だー!ん?中の玉ねぎがー!手を離してはいけないよ!っと全部繋がっているぞ!この技は!銀座久兵衛すら真似できないぞぉ!お!そこでまさかの味付けだぁ!甘からず、辛からず…そして決してうまからず!…からのー!熱すぎて飲めーーーーん!これは3カウント入った!カンカンカンカンカーン!」
史郎が白目を向いている…
世界が変わった様に思える、しばしの沈黙の後…
静江「あーご馳走様でした」
史郎「…どうだった…」
静江「まー85点ね」
史郎「たか!まじ?」
静江「1000点満点でね」
史郎「ひっく!8.5点じゃん」
静江「最初はそんなもんでしょ」
お盆を持って立ち上がる静江。台所に目が…
静江「し~ろ~~う、あんた何よこれ?」
史郎「あーやるからやるから」
静江「あんたにやらしてたんじゃいつ片付くか、いいからどいて」
見えない圧力に屈する史郎。今度は史郎がダイニングテーブルにきちんと座っていた。
瞬く間に片付いてゆくキッチン。主婦歴20年以上は伊達ではなかった。
史郎「はや。すご」
静江「何年主婦やってると思ってんのよ?」
史郎「…まー、いつもありがたいとは…思ってるよ…」
蚊の鳴くような声で囁いた。
静江「はい?なんだって?」
史郎「ありがたいと思ってますよ!だから今日はもてなしてんの!」
ピ!静江が再度リモコンを押す。
静江「今日は。雪みたいね…」
史郎「んなわけないやろ!天氣予報とっくに終わってるし」
内容はグルメ情報に変わっていた。
静江「で、母の日のおもてなしって、これで終わりじゃないでしょうね?」
史郎「あたりまえじゃんよ。これで終わりなら最初からやんない方が良かったよ」
静江「あらまー期待させるじゃない」
史郎「どうせ今日なんもないっしょ?映画行こうかと思って。母ちゃん大河ドラマ好きじゃん。今MHKでやってるやつあんでしょ?あれ昨日から映画でやってるからさー」
静江「あーなんだっけ…ながいあさまさだったっけ?」
史郎「浅井長政(あざいながまさ)だよ!あさまさって、まじか⁉︎」
静江「あーそれそれ」
史郎「それそれじゃないよもーう。…あとババダ…じゃねー!高田馬場でランチと買い物もすっからね(なんなんだよもう)」
何故か肩で息をしている史郎。
とても長い1日なる予感がしていた…
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