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1000年後の世界~大和王国編~

フブキとデッドランド

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 要塞都市フブキにある病院の一室、そこではユウトがベッドで体を休めていた。

「絶対安静っつっても、退屈だな、美人の看護婦さんでも来ないものか…」

 しかし音沙汰がなく誰かが来る気配はない。
 休んだ結果ユウトの身体の半分は回復したのだが魔力はまだだった。
 ユウトは残りカスのような魔力でも、空中に操作画面を出現させるとメールのように文字を打ち込みマリン宛に助けを求める送信をする。
 これはパールグレイ開発の送受信機で魔力を元に相手とのやり取りが出来るアイテムだ。
 だがマリンに助けを呼び油断したその時、何者かが魔法を発動した事に気付いてしまう。

「ん?魔力の気配?
これはまさか封印用の…」

 ベッドの下に大きな魔法陣が光っており、真上にいるユウトを封印しようと作動し青白い光がベッドを包み込んでしまう。
 ユウトは慌てて魔法陣に手をかざし、魔法耐性でそれらを消し去った。

「この程度で俺を封じられると?」
「やるわね、流石だわ」

 病室の外から女の声がして、着物を着た女が入ってくる。

「何してくれてんだ…あんた……
いきなり攻撃して来るなんて酷いじゃないか!」
「私はあんたを封印する為に雇われた殺し屋よ、悪いけど封印させて貰うわ」

 その女は封印の魔法陣を部屋の壁中に大量に出現させてユウトを封印しようとする。

「くそっ、あらかじめ用意して見えなくしてたってのかよ!
弱っている今その数はやばい!」
「へぇ♪聞いたかいみんな!
チャンスは今だ!私ごと封印しろ!
全部隊封印魔術発動!」

 女は仲間に通信すると、病院の外にいた大量の魔道士が封印魔法を展開する。
 外から無数の魔法陣を展開させ、病院丸ごと封印してしまおうと、彼等は封印魔術を発動した。

「馬鹿な、このままじゃお前も病院の無関係な患者まで封じられるぞ?」
「世界最強の魔王ユアが倒せるなら安い犠牲よ…
皆覚悟は出来ているわ」
「だから俺はユアじゃ……」

 言い終わる前に病院が大きな光の柱に包まれて大規模な封印魔法が発動する。
 格上の相手であれ封印すれば何とかなると、フブキ軍の暗殺部隊は勝利を確信していた。

「魔王ユアもあっけなかったな」
「しかしこれで、クールヘッド様へ良い報告が出来そうだ」

 光が消え魔道士達の誰もが病院を封印したかと思いきや…そうはならなかった…。
 光の中から現れたのは病院で先ほどと何も変わってはいない様子。

「まさか、失敗!?」
「そんな馬鹿な…」
「手順は完璧だったはずだぞ」
「我々に失敗など…」

 その答えは病院の屋上で手をかざしている男にあった。
 未だ万全とは言えぬボロボロの身体だが、無数の封印魔法を全て弾き返し余裕の表情で立ち上がるその男はユウト・アカギ…
 やはりレベル9999(MAX)の魔法耐性は桁違いで、フブキ程度の国にユウトと対等に戦える存在などいなかった。
 震え出す者、絶望する者、パニックになる者まで現れて、ユウトは勝利を確信する。

「お前等、やって良いことと悪いことがあるだろう!
特に仲間を平気で犠牲にする奴は俺は許さん、覚悟は出来ているんだろうな?」

 ユウトは戦う気は無かったが、相手を黙らせるために何もない空間(パールグレイ作のアイテムボックス)から剣を取り出して下にいる魔道士達に切っ先を向けた。
 すると予想以上に敵の殺し屋集団は脅えており、腰を抜かす者がほとんどだった。

「やばい、やばいぞ、奴を本気にさせた…」
「絶対に失敗してはならなかったのに、失敗した…」
「この国は…いや世界は終わりだ!」
「無駄かも知れんがもう逃げるしか…」
「ぎゃああぁぁぁ!!」

 まだ何もしていないのに殺し屋とフブキ軍は皆ユウトに恐れをなして逃げ出してしまった。

「あれ…?」

 ユウトは呆気にとられ外に集まっていた軍隊が何故逃げ出したのかわからずに混乱を隠せない。
 しかし、ユウトが防いだ事で病院内の人間が助かった事は事実のようだ。

「はぁ、はぁ…
こっちを向け魔王ユア…
貴様は私が相手だ、私程度でも、彼等が逃げる時間稼ぎになるならそれでいい」

 先ほどの女が剣を抜いて構えている。
 しかしユウトはやる気がなくなり剣をしまい敵意のない表情で向き直った。

「ずっと勘違いされたままだし、あんたもさっきから何を言ってんだ…
俺は病室に戻って眠りたいだけの病人なんだが…どうしてくれるんだこの騒ぎは…
もうここにはいられなくなったじゃないか…」

 ユウトは剣を構え震えている女を戦意喪失したと見なし横を素通りし、屋上から階段を降りて病院内から出て行った。

「また襲われんの嫌だし…早くマリンと合流して回復して貰わなきゃな…
クロス王国製の首輪とやらの影響で自動回復が上手く機能しねぇ…」


 ここで位置関係を説明しておくと、クレスタウンを中心に南にはボレガノ帝国、北には要塞都市フブキ、西にはカリバーン、東にはデッドランドが存在している。
 ユウトが今いる場所は北の要塞都市フブキで、逃走中の今まさに要塞都市と呼ばれているその理由を思い知らされようとしていた。

「え?え?街が変形したぞ?」
「対象は魔王ユア!
全軍、撃ち方よーい!」

 突然都市にある家の一軒一軒が砲台や戦車に変わり、ユウトはその中心部に追いやられてしまう。
 大量の戦車や砲台に囲まれたユウトはまさに、完全武装した国を相手に一人で戦っている状況だった。

「ふざけんな!
どうして俺がここまでされなきゃならねぇんだ!
おいマリン、早く助けに!」

 クールヘッドはその様子をモニター画面ごしに眺めている。
 彼は長年ユアと戦う為に用意して来た武器の数々を出し惜しみ無く一斉に出現させ、倒せることをただひたすら願って見守っていた。

「この日のために作り上げた我が軍の最終兵器、奴に通用するかわからぬが…始めろ!
負ければ我々は…いや、人類は終わりじゃ!」

 指揮官が「撃てー!」と叫べば、砲台からユウトに目掛けて砲弾が発射される。
 辺りは激しい爆発と炎に包まれるものの体が吹き飛ぶ事のないユウトにフブキ軍は驚愕し言葉を失っていた。
 ユウトは爆破により破れた服で立ち上がり怒った表情をしている。

「いって~な、やめろよ!
お前等もう許さないからな!」

 怒りに満ちた表情のユウトは何もない空間に手を突っ込むと、中から雷を纏う刀「雷神刀」を取り出して城へと構える。

「何かする気だぞ」
「気をつけろ!広範囲に広がる大規模攻撃かも知れんぞ!」
「大砲も効いてねぇ!」
「うわあぁぁ!!」
「こんな事があってたまるか!」

 ユウトが剣を振り上げると空が曇り、天気も雷雨へと変化する。
 空はゴロゴロと鳴り響き稲妻が雷神刀へと引き寄せられ、纏わりついたその稲妻は剣へと吸い込まれ刀身が光り輝いていた。
 ユウトはクールヘッドがいる城を見つめその刀を向け…

「かつて勇者ライ・デインが使っていた雷を操る雷神刀…
その早さ、電光石火の如く…」
「ひいぃっ、なんじゃあれは…
貴様等奴を撃て!撃てーっ!」

 部下に命令をしてユウト目掛けて砲撃をさせるクールヘッド。
 しかし効いている様子も雷が止まる様子もなく雷雨は激しくなるばかり。
 ユウトはその砲撃を受けても無傷のまま、城へ向けて雷を纏った剣を振り下ろした。

「轟け!鳴神月(なるかみづき)!」

 斬撃は雷を纏い目にも止まらぬ早さで城へと進んでいく。
 紫の稲妻を纏ったまま地面を割りながら進むその斬撃は、やがて城へと到達しそれは国王クールヘッドへと直撃した。

「ば……か……な……」

 城ごと真っ二つにされたクールヘッドはそのまま炎で燃え始め、最後は塵となり消えてしまう。
 独裁者クールヘッドの末路は実にあっけなかった事に部下達も言葉を失い驚いていた。
 結果、砲撃を行っていた軍の皆、指揮系統を失いその場から逃げ出した。
 クールヘッドの住む城は大惨事となり、この戦いは終わりを迎えたように思えた。


「こら!ちょっとあんた!大事な取引先になんて事してくれんのよ!」
「そうだ!私らの取引の邪魔をして只で済むと思っているのか!」

 炎の中から現れた二人の10代ぐらいの若い女、見た目女冒険者風の容姿だが今までの敵とは明らかにかけ離れた強者オーラを放っている。

「な、なんだ…あんたら…
俺は疲れているんだ…頼むから見逃してくれないか?」

 慌てふためくユウトを眺め、2人の女は意地の悪い笑みを向け鞘から剣を抜いた。

「許さない、殺す!」
「パンドラズフォースを怒らせたこと、後悔させてやるわ!」
「パンドラ…フォース?
ってなんだよ…そりゃ…っておいマリン!
こいつら絶対強い、やばいんだ!
マリン隊長頼む俺を助け…」

 メッセージウインドウでマリンへ何度も文字を送り続けるユウト…
 2人の女剣士は目の前から消えて、ユウトは早速見失ってしまった。
 次に現れたかと思うと2人の女剣士は目の前で、ユウトは首と胴体を斬られる覚悟をする。
 目を瞑り激痛と死を覚悟したものの、ユウトの前にその二つが訪れる事は無かった。

「ん?剣が…溶けた」
「えっ…何よこれ…」

 地面から現れた真っ赤に煮えたぎるマグマのようなスライムが2人の剣を掴むと、鉄の刀身部分を溶かしていたのだ。

「マリン!来てくれたのか!」
「連絡遅すぎよユウト、私もスズカゼも心配してたんだから!」

 剣を溶かされた2人の女は後ろへ飛び、距離をとる。
 マリンはスライムのスキル属性変化で水色に戻りユウトの肩へ乗った。

「クレスタウンへ帰りましょう?
その消耗量あきらかに普通じゃないわ?
ワープ魔法も使えないんじゃない?」
「ああ、だからメッセージを送り続けていた」

 女剣士はユウトよりもスライムに目を向け、悔しそうに剣を取り替えて再び構えてきた。

「舐められてるようね…」
「私達は女王陛下の親衛隊…
そう簡単にやられるわけには…」

 しかし次の瞬間マリンは属性変化して重力を操る紫と黒の混ざった色のグラビティスライムへと変化した。
 誰も見たことのない色のスライムに相手は混乱し攻撃をためらっている。

「何あのスライム、あんなの見たこと無いわ…」
「スライム系最強種マグマスライムに変化した時点で危ない相手だけど…
あれはさらにその上を行きそうね…」

 2人の女剣士は突如地面に倒れ、重力で押しつぶされそうになる。
 何より凄いのは魔法詠唱も無く、ただの攻撃で重力を操った事だった。

「うっ…くっ」
「なに?なんなの?」

 マリンは分裂し、さらにマグマスライム、フブキスライム、ダークスライムなどに属性変化をして相手を恐怖させる。
 平均レベル9999のマグマスライムとフブキスライム、さらには見たこともないダークスライムを前に2人は体が震えだした。

「あわ……あわわわわ」
「こんなの…私達だけじゃ勝てるわけが無い…」

 戦意喪失した2人はやがて重力に耐えきれなくなり白目を剥いてその場で気を失った。



 マリンとユウトは2人の女剣士を縛り上げた後、クレスタウンへ帰るとスズカゼ達と宿屋で合流する。

「お帰りユウト、マゾドレエとかいう男はユウトピアへ帰ったようだぞ?
ってその傷…重傷だが大丈夫なのか…?」
「ああ、マリンのおかげでこれでも随分回復したよ…」

 迎えてくれたのはスズカゼで、どうやらマゾドレエはセシルに呼び出されユウトピアへ帰ったとのこと。
 そして次の日、ユウト達はクレスタウンの外にある崖付近から5000年前の過去の世界へと続く穴を発見した。
 そこへ行く途中、封印された翔太という少年を見つけ彼の学校での事件解決を手伝ったりかつての敵魔女シオンと出会ったりするのだがそれはまた別の話。

※「悪夢の実験場」「異世界から来た魔法少女がドSだった件」参照


 ユウト達はその5000年前の過去の世界で数ヶ月という時を過ごした。
 その後ユウト達は闇子とサキという女を連れてユウトピアへ戻った後「時間軸の穴を塞ぐ」当初の目的に成功した事を女王アルラウネに伝え、マリン組はひとつの成果を上げる。

「それでスズカゼ、お前が言っていた魔王ってのはユアという奴じゃないのか?」

 この付近で聞く魔王と言えば誰もが知ってるユウトそっくりの男ユアではあるが、スズカゼは首を横にふった。

「私の国を襲った魔王はトリック・スターという奴だった…
平和を望み人間の国と契約を結ぼうとするものの、裏では内部侵略で人の世を徹底破壊する恐ろしい奴だよ…
周辺国家は全て彼に滅ぼされ、私の国は父上がすでに洗脳されている…
世界規模で見ればユアのほうが恐ろしい相手だが、ここ最近の活動は聞いたことがない。
だから人類からすれば今の驚異はトリック・スターのほうが上じゃないかな」
「トリック・スターってモコモコ王国にいた奴じゃないのか?
ただこちら側だと1000年の時が立っているはず…
かなりの歳のはずだが…」
「確か、私達の国に来なかった方の魔族よね?」

 聞き覚えのある名前が出て驚くユウトとマリン。
 トリック・スターと言えばかつてモコモコ王国闇市場からユウトピアに来る事を拒んだ組の一人でもあり、闇市場では人間専門の奴隷商人をしていた事からも彼が人を嫌っていた事が伺える。
 彼がこちらの世界で1000年という時を経過し魔王を名乗っているという情報はユウトピア女王アルラウネすらも知らない事だった。

「知っているなら話が早い…
ユウト、マリン、頼む…どうか私の国を救ってはくれないだろうか…
お礼なら必ず…」



 ──その頃──

 クレスタウンから東の方角、デッドランドの中を歩く存在がひとつ。
 サキュバスの女が病原菌に包まれた霧の中で表情ひとつ変えず自分の影に向かって話をしている。
 端から見れば一人自分の影に話しかけてる変人にしか見えないが、影からは確かに答えが返って来ていたのだ。

「クフェア、この付近に生き物の反応は?」
「いないわよマーガレット、いたとしてもとっくに死んでミイラになっているわ」

 つい先日ユウトピアから派遣された調査組、マーガレットとクフェアのペアでユウトとは別で働かされていた。
 クフェアはマーガレットの影に入り彼女の護衛をしながら、周辺の状況を調べ伝えている。

「あれは…なに??」
「…あれは病に侵された…ほぼ死ぬ寸前の住人でありんすねぇ…
しかしまだ息があるなんて…」
「ちょっと大丈夫?
こんな場所にいて平気なの?
お父さんかお母さんは?」

 マーガレットが心配して声をかけたのは同じサキュバスの小さな女の子だった。
 外見年齢的に10歳くらいで、既に血を吐き病に侵されている。

「お母さんもお父さんも死んだ、残るは私一人だけ…
もうすぐ私も行く…だから構わないで…お姉ちゃん…」

 青ざめ血を吐いており、精神的にも正気を保っていない女の子を見てマーガレットは目に涙を貯めた。

「大丈夫、そうはさせないわ…
あなただけでも救ってみせる」
「え…?」
「こちらでありんす」

 マーガレットは同族の女の子に回復魔法をかけると、クフェアの能力でマーガレットの影の中へ彼女を避難させた。
 マーガレットはこの霧を張った存在に不快感を露わにしながら、より深い霧の中へ進んでいき…ようやく霧の正体を突き止める事に成功する。

「ほっほっほっ、我が国に侵入者など何百年ぶりだろうか…
まずは褒めておこう」

 王冠をかぶった骸骨が剣を持ち、こちらにゆっくりと歩いて来る。
 近付くだけで病原菌の霧の正体があれであるとマーガレットとクフェアは察した。

「いわゆるワイト系の最強種と呼ばれている存在よね…」
「今のわちき達にとって雑魚同然の相手…
恐れるに足らぬ存在でありんす」
「ぬ?なんじゃと?
舐めておるな貴様等…ここまで来れた褒美じゃ、甘美なる敗北と死を与えてやるとしよう」

 デッドランドの国王ワイトキングはマーガレットの前から消えると、次の瞬間に剣を振り下ろし彼女の左腕を切り落とした。
 崩れ落ちる左腕を見てしゃがみこみ傷口を押さえるマーガレット…
 彼女を見てワイトキングは勝ち誇った表情で勝利を確信した。

「ぬ?」

 しかし、ワイトキングが左腕を見れば肩から先が無くなっている。
 同時に真正面を見れば無傷のマーガレットが立っておりワイトキングは言葉を失った。

(何じゃこれは…何が起こっておる…斬り落としたのはあの女の腕のはず…
にもかかわらずワシの腕が斬られ無くなってしまうとは…)

 既に死体であるワイトキングにとって死の恐怖などとうに捨てた感情だった…
 しかし目の前のマーガレットを相手にしては何が起こっているかわからず恐怖を感じずにはいられない。
 ワイトキングの体はかすかに震えており、一歩、また一歩と下がってしまう。

「あら、後ろに下がれば逃げられると思った?」

 突然後ろに現れたマーガレットに肩を掴まれワイトキングは剣を振り回し彼女の右手首を切り落とす。

「ぬぅ!?うっ……
おおおおおおぉぉぉ……」

 切り落としたのは相手の右手首の筈なのに、やはり自分の右手首が落ちている事にワイトキングは納得が行かなかった。

「霧も効かぬ、攻撃すれば自分に跳ね返る…どういう事だ…?
おのれ!こうなったら」

 ワイトキングは逃げ出した。
 しかし辺りは暗くなり足場すらも漆黒に染まり何も見えなくなる。
 逃げた先に立っていた自分自身の不気味な姿を見てワイトキングは一瞬立ち止まった。

(まさか…ドッペルゲンガー…)

 気付いた時には時既に遅し…ワイトキングの体は灰となって消滅していく。
 やがて胴体は全て灰となり病原菌の霧はその場から消滅した。


「ああ…あなた…
何という恐ろしい事を…」

 マーガレットの目の前に修道女の姿の女達が現れた。
 そのうちのリーダー格と思われる一人が、鎌を持ったまま大粒の涙を流している。

「我が主君に何とお伝えすればいいか…
霧がなければ武器が作れないではありませんか…」
「あなたは誰?」
「それはこちらの台詞ですよ、まさかあのワイトキングを雑魚同然に潰すなんて…
私はクロス王国のフィーリアと申します…」
「へぇ、ようやく出て来たわねクロス王国…名前だけは聞いたことあったけど住人に会うのは初めてだわ…
私はユウトピアって国から来たマーガレットよ、よろしくね?」

 フィーリアと名乗る修道女は鎌を治める事はなくマーガレットに向けて構えて戦闘態勢に入っていた。
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