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1000年後の世界~大和王国編~

カリバーン

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 到着した西の魔族の国カリバーン…
 石の壁に囲まれたその入り口は門番により守られていた。
 門番は槍を持ち鎧で身を包んだリザードマンで2人立っている。
 彼らは荷馬車で人間が来たのを見ても襲う事はしなかった。
 その理由は来た者が奴隷商人だからでもある。

「おー、何だてめぇらか…」
「迷い込んで来た勇者なら即処刑してやったのに…つまんねぇな」
「毎度、人間の奴隷売りに来たよ、通しておくれ」
「今日のは凄いんだよ?
クレスタウンで世界最強の勇者とか呼ばれてた奴さ」
「「!?」」

 それを聞きユウトを見た門番は慌てて門の奥へ入っていった。
 その後、奥から彼らの上司らしき魔族の女が現れる…彼女の頭には角、背中には羽、そして尻尾が生えていた。
 見た目的にはキメラと人間のハーフと言ったところだろうか。

「まったく、何故私が出てくる必要がある…」
「いやしかし姐さん…」
「我々だけでは判断しかねるというか…」
「商品が問題だというのか?わかった、見せてみろ」

 そして女は荷馬車の中の気を失ったように眠りについているユウトを見て魔力を調べている。
 彼女は能力でユウトの頭の中の記憶を読みとると、恐怖で顔がひきつって震えていた。

「先日進軍した我が国の精鋭部隊…そのすべてがこの男に敗れたようだ…
それも、剣のたった一振りで…」
「「なんと!?」」

 それを聞いたリザードマンが驚き恐怖し震えている。
 しかし、その空気を断ち切るように、レイナが話に入り彼らに言った。

「安心しなよ、クロス王国製の首輪をしてある…」
「魔力もスキルも封じ込め絶対に壊せぬと聞く例の首輪か…
まさか、そんなものが本当にあろうとはな…」
「これを外さなきゃ一生奴隷に出来るってもんさ……
だからさ、あたしゃ奴隷商人として女王様と交渉がしたいわけよ…
差し出すなら当然、この首輪も売ることになるだろうし…」

 門の向こうに野次馬が増え始め賑やかになってくる。
 このままでは門の近くがパニックになると門番が慌てていた。

「あ…ああ、ちょっと待ってな…」

 その数分後、扉は開いて中へ通行許可が降りた。
 荷馬車の周りを憎しみに満ちた表情の魔族達が歩いて着いて来る。
 その目は、眠りに付いたユウトを睨んでいた。


「うっ…ううっ…」

 目を覚ましたユウトは病院の個室のような場所でベッドの上にいた。
 目の前には見たこともない女の魔族…見た目はドラゴンの尻尾と角が生えた人間、全裸だが炎を身に纏った女だった。
 炎が服の役割をして見えてはいけない所が覆い隠されている。
 おそらく種族はサラマンダーで炎系の魔法やスキルを得意とする魔族だ。

「魔王様…お目覚めになられましたか?」
「な…なんだって?」

 目が覚めるなりいきなり魔王と呼ばれるユウト…当然身に覚えは無く、意味が分からなかった。
 この場所が何処かもわからない上、見知らぬ魔族から魔王と呼ばれる状況にユウトは混乱を隠し切れない。

「ここは…何処だ?
どうやら記憶が混乱しているようだ…
サラマンダーのあんた、状況を説明してくれ…」

 ユウトが眠っていたベッドの回りには飲み物や食べ物がある。
 どうやら歓迎はされているのだと理解し魔王だと勘違いされている状況を利用しようと考えた。

「な…記憶が? 
私はサラマンダーのロカ、本当に記憶にございませんか?
貴方様、ユア様のご命令で、この魔族の国カリバーンを任せて頂いております」

 聞き慣れない呼ばれ方をしてユウトは混乱が隠せなかった。
 自分の名前ユウト・アカギを省略すればユアとはなるが…

(ユア?一体どういう事だ?魔王と言う奴はそんなに俺に似ているのか?)

 彼女の話で現代を騒がせている魔王の正体がユアと言う存在なのだと明らかとなる。
 相手が勘違いしているならばと、ユウトは記憶喪失と嘘を付き話を合わせる事にした。

「そうだったかロカ、どうやら俺は記憶が飛んでいるようだ…今は何一つ思い出せん…すまないな…」
「なる程…記憶が飛んでいたからご自身を勇者などと名乗り、カリバーン最強の軍を壊滅させたのですか?」
「え?」

 ロカから湧き上がる殺意…彼女は立ち上がるとユウトに向かって剣を向けていた。
 その怒りを隠せないロカは今にもユウトに襲い掛かりそうだった…。

「すまん、許せ」
「許せ?同胞を殺し勇者などを演じておきながら?
カリバーンの国民はユア様の顔を知らぬとは言え、記憶が無くなったで許される話では…」
「いや、あの…その…」

 ロカに睨まれたユウトはベッドから降り無意識に土下座をしていた。

「あの…本当に…申し訳…ございません…」

 土下座をする俺の姿に目の前のサラマンダーは目を丸くして口を開け驚愕の表情を浮かべていた。

「おい…」

 すると頭の上からロカに低い声で言われビクッとなる。
 正体がバレたのかと青ざめた表情でロカを見上げるが彼女の目は赤く光っていた。

「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」

 目を見たからだろうか、ユウトの体は燃え上がり全身が炎に包まれた。
 クロス王国製の首輪の影響か、防御魔法もスキルも何も発動せず、ユウトは無力化されてしまっていた。

「ふふ…あの圧倒的だった魔王ユアですらクロス王国製の首輪の前ではその程度か…
魔力もスキルも封じると言うあの噂はやはり本当だったのだな…」
「はぁ、はぁ…ちょっ…待ってくれ、死んでしまう…」

 ユウトは体中の皮膚が焼け焦げて赤黒くなる。
 横たわり苦しそうに呼吸をするユウトを前にロカは頭を踏みつけながら笑みを浮かべていた。

「実はな、前々から貴様の態度は気にくわなかった…力だけしか取り柄を持たぬ哀れな孤独の魔王め…死ね」
「ひいぃぃっ……」

 焼け焦げた体で這うようにして逃げるユウト…
 しかしロカにはすぐに追い付かれてしまい首を掴まれて持ち上げられてしまう。

「はっ!
何だその情けない姿は…貴様には心底幻滅したぞ魔王ユア。
何が世界最強の勇者だ、記憶を失い魔王としての責務すら放棄するならば、もはや貴様に生きる価値は無い…
貴様はこれより囚人として引き回しの刑だ、せいぜい遺族の者達に可愛がって貰うといい…」
「嫌だ…やめろ、このままじゃ本当に死んでしまう…」
「まぁ…せいぜい村中引き回しの際に遺族に殺されないよう気をつける事だ」

 そしてユウトは近くの村の木に、全裸で縛り付けられた。
 力も入らず魔法もスキルも使えないユウトは絶体絶命にもかかわらず…。


 ──その二時間後──

「おらぁっ!死ねぇ!」
「人間め!絶対に許さない!」
「かっ…はっ…」

 オーガの男やヴァンパイアの女が木に縛られたユウトに石を投げている。
 本来であれば無傷で受けられる実力差の筈だが首輪の効果か防御系の魔法もスキルも発動しない。
 額に石が直撃すれば生身の人間と同じように出血し、サラマンダーに負わされた火傷も未だ激痛で自動回復などする事は無かった。
 魔族達に脅え、命乞いをしながら涙を流す彼の姿は勇者とは到底呼べない臆病者だった。

「痛えよぉっ…マリン、サタン、マゾドレエでもいい、助けてくれぇ…頼む…」

 泣き言を言うユウトだが、そのような主張が誰かの耳に届くことはない。
 向けられるものは魔族達からの敵意や殺意のみで救われている点があるとすれば村中引き回しの後、処刑の予定がある事だけだった。
 つまり、処刑までは魔族達が殺すほどの攻撃はして来ないと言える。

「お父さんの仇!」
「死ねよ!勇者!」
「「ぶっ!!!」」

 彼らの攻撃は止むことはない…
 今度はロリサキュバスとショタインキュバスに尻尾の先で顔面を思いっきりビンタされる。
 その威力は生身の人間状態のユウトには大ダメージで体中の皮膚が晴れ上がり鼻血を出していた。

「ごめんなさい…許して下さい…殺さないで下さい…」

 魔族達の前で何度も命乞いをするユウトの姿に…眺めていたこの国カリバーンの女王ロカが吹き出した。

「わはははっ!
皆聞け、実はこやつの正体はな、我が魔族の王、ユアだ!
今や記憶を無くし勇者などをしているそうだ!」

 その発言に、魔族の王国カリバーンの民は混乱して騒ぎになってしまう。
 魔族達を守るはずの存在が勇者をしていると女王に言われ村中パニックになり始めていた。

「だが聞け、そんな彼も今やクロス王国制の首輪でこの有様だ、我々でも殺すことが出来る。
今世紀の魔王ユア様は元人間などという欠点があった…やはり人間などに魔王などは務まらん…
我々魔族の恥は我々で処理するべきだと思わないか?」
「仰る通りでございます」
「はい、人間は所詮人間です、頭も腕力も我々とは違う劣等種族!」

 女王の意見に、部下と思える下半身が大蛇の女とゴーレムが続いて同意した。
 それをきっかけに、洗脳されたのか村人達はユウトを睨み始めた。
 だがユウトは自分が助かりたい一心で冷や汗を垂らしながら口を開く。

「はぁ…はぁ…
騙されるな、お前等間違っているぞ…そもそもお前達は全員元人間だろ?
皆のご先祖様はギーク王国とか言う連中の人体実験の被害者のはず…
それなのに人を見下し…敵対するなんて、一体何やってんだよ…
考え直…ぎゃあああ!!!」

 最後まで言おうとする前に女王ロカに頭を蹴り上げられ頭から血が流れ句を失いそうになった。
 ユウトが辺りを見渡せば目に涙を浮かべている者や怒って武器を手に取っている者までいる。
 そんな中、スタイルの良いサキュバスの女が腕を組みながら前に出てきた。

「私達のような見た目が人に近い種族なら、人間と共存している事もあるでしょうね…
でもね、彼らは結局、自分と違う存在を内面では恐れ嫌い、最後は排除しようと行動するの…
これは歴史が証明してきた事よ?」

 さらに、棍棒を持った大型のミノタウロスが涙を流しながら言った。

「ニンゲン、オレタチ見下ス、ソシテ食ウ…」

 さらに初老っぽいオークも悔しそうに言った。

「見た目だけで見下され、食われる我らからすれば人間は敵…いや悪魔だ」

 さらに先ほどユウトを尻尾で叩いていたロリサキュバスとショタインキュバスが言った。

「魔族だからと言うだけの理由で人間達に性奴隷にされた私達の気持ちが分かるの?」
「違う!俺達は人間達の玩具じゃない!」

 その問いにユウトは目を瞑り少し考えると…彼らに提案するように言った。

「実はこことは違う次元にな…
種族関係なく平和に暮らしている国があるんだ…
俺が作らせた国だが…その名は…ユウトピア」

 それを聞いた魔族達は一瞬言葉を失った。
 その様子を見て手応えありと見たユウトは話を続ける。

「そこへ…行けばいい…
連れて行ってやろう、そこでは人間も魔族も共存出来るって事が証明されてる……」

 辺りはざわめき始め、興味を持っている者まで現れ始める。
 しかし、女王は歯を噛みしめ、唇から血を流し、かつて奴隷商人に捕まり人間達に売られた記憶を思い出していた。

「ふざけるな!
この男の言っている事はデタラメだ!
我々、そして先祖が人間共から受けた仕打ちを忘れたか?
それに記憶喪失だからと勇者を名乗り、我々の同胞を葬るこの男を信用できるのか?
いいや、出来るわけがない!」
「「そうだ!!」」

 ユウトの提案も女王ロカとその側近達の意見でひっくり返されてしまう。
 カリバーンの魔族達は人間達にトラウマがあるのか過去を思いだし怒りに顔を歪ませていた。

「そうだ…人間と暮らすなど」
「あってはならない…」
「危うく騙されるところだった、奴らとは食うか食われるかの関係以外ありえない…」
「魔王様とは言え、人間達に味方したこの罪、償って頂きますぞ!」

 スケルトン、ゾンビ、スライム、そして、杖を持ち立ち上がった人間サイズの老人が言う。
 その状況に女王のサラマンダーは勝ち誇った様子でニヤリと笑った。

「と言う事だ…
残念だったな魔王ユア…
いいや、今や記憶を失い人間の味方をする裏切り者、勇者ユアよ…」
「いや違うんだ!
俺は本当は魔王ユアなんかじゃない!信じてくれ!」

 その発言に、女王は待ってましたと言わんばかりに、笑いながら言った。

「わはははっ!
聞いたかお前達、これがこの男の本性だ!
結局は薄汚い人間の血が流れている下等生物でしかない!
立場が悪くなればすぐに誤魔化し嘘を付いてまで責務を放棄、そして逃げる!」
「最低だ、見損なったぞ!」
「魔王様がこんな方だったなんて…」
「幻滅です、さっさと処刑しましょう!」

 ロカと魔族達の罵声を受け…ユウトもはや何も言い返すことが出来なかった。

「死刑執行はカリバーンの民に任せよう、連れ回すなり監禁して殺すなり、好きにすれば良い!
その後は新たな魔王選定の儀式と行こうか」
「「うおおぉ!!!」」

 村の魔族達がユウト処刑の許可を貰い一気に盛り上がる。
 女王は背中の羽を広げ、炎を身に纏い空へ羽ばたいて塔へ戻って行ってしまった。

(おい、冗談だろ?)

 魔族達は怒っている者も呆れている者も、泣いている者もいて様々だった。
 ユウトは弁解せねばと焦りながら皆に叫ぶ。

「頼む聞いてくれ!俺の言っている事は真実なんだ!嘘なんかじゃない!
それに俺の正体は実は半インキュバスなんだ、俺の縄を解いてくれれば今すぐ証明出来る!」
「嘘付き!」
「嘘に嘘を重ねるか!人間!」
「あらあら、駄目じゃない、死刑囚が喋っちゃ」

 サキュバスの女に口にテープを張られユウトは何も話せなくなってしまう。
 さらに彼女の手はユウトの下半身へ伸びてきて睾丸を指先で摘んだ。

「こんな悪い子は玉でも潰しておきましょうか?
どーせ死ぬんだもの、いらないわよね?こんなもの」

 彼女は低い声で脅しながら、ユウトの玉を指先で摘んでグリグリと動かし力を込めてくる。
 冷静を装ってはいても怒りが感じられ、このままでは本当に潰されると、ユウトは恐怖で全身がガタガタと震えていた。

「痛い!やめろよ!
あ…ああああああ、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!ぎゃあああぁぁぁぁぁっ!!」

 口を動かせば動かすほど力を込められ、玉に力を込められてゆく…
 気遣いの一切無い本気の玉責めにユウトは叫ぶことしか出来なかった。

「うあああぁぁっ!!
無理だ!頼む!やぁぁぁあっやめてえええぇぇっ!」

 ユウトの悲鳴を聴いたサキュバスは一度だけ笑みを浮かべ、その直後…
 ブチュッとブドウを潰すかのような感覚で一気にソレを握り潰した。

(あ…こいつ…本当にやりやが……)

 その直後に激痛が走り…ユウトは気を失った…
 彼は白目を剥いて全身を痙攣させながら無意識にも叫び続けていた。

「ああああああ……ああああああぁぁぁぁ……」

 潰れてもなおギリギリと握力だけでクルミを割るかのように力を込めてくるサキュバス。
 その手のひらからは血が溢れ垂れ地面へと垂れていた。

「うふふ…ほ~ら、潰れちゃいましたよぉ♡
魔王様の金玉が、プチュッて、ブドウみたいに♡」

 睾丸から溢れ出る血をいやらしく舐めとるサキュバスの姿…
 その様子に雄の魔族達は青ざめた表情で脅えていたが、女魔族達はユウトを見て笑っていた。

(駄目だ…殺される…)

 少しして意識を取り戻したユウト…
 彼は逃げようと暴れるものの、木に縛り付けられた縄はピクリともしなかった。

「うるさいぞ人間、貴様はこれでもくわえていろ」
「むぐっ!?うううう」

 口の中にはメデューサと思われる上半身が人で下半身が蛇の魔族の女が尻尾を突っ込んだ…サキュバス、メデューサの攻撃は止まることを知らず、明確にユウトを死に追い込んでいく。
 その様子を楽しむように魔族達はユウトを眺めていた。

「窒息して死んじゃえ♪
もう誰も助けてくれないよ~?」
「おい、そんなんで死ぬなよ、それでも一応魔王様なんだろ?」

 手を叩きながら嬉しそうな表情をしているロリサキュバスと呆れている様子のショタインキュバス。

「玉も潰したし、もう動けないだろう…縄を外すぞ」

 ハーピーと思われる茶髪の鳥女に足の爪で縄を切り裂かれた。

「痛っ………
はぁ…はぁ……死にたく…ない……」

 縄が切り裂かれ木から落ちたユウトだったが…
 そのまま地面に頭をぶつけてしまい気絶してしまった。



 クレスタウンでは、シルクハットにメガネをかけた老人が真剣な表情で店主に聞いている。

「この店に、カリバーンと言う国の過激なビデオがあると聞いたのだが、見せてはくれないかね?」
「いやぁ、しかし…」
「誰にも言わん、我が輩も君達と同じ性癖を持つ者だ」

 期待に満ちた老人の視線に店主と思われる男は折れて、カウンターの奥へ案内した。

「おおおおおお!!!
素晴らしい!!
何という背徳感、そしてエロさ!!」
「とは言っても…
映像的にはどれも犯罪なんですがね…
出演者の男性は亡くなってますし…」

 棚に並ぶDVDのパッケージは酷いもので、普通の性癖の者が覗けばトラウマになるほど不気味なものだった。
 内容的には魔族に人間の男が性的な暴力を受け、最後はどれも殺されているからだ。

「ちなみにこの映像はどうやって撮影されたのですかな?」
「これはカリバーンの死刑囚、主に侵入した人間達が処刑されている映像ですよ…
町中引き回しの上、村の魔族に殺されている時の映像で、奴隷商人が持ってくるんですよね…
それを私達のような物好きが買っていると言うわけです…」
「ほう、では新作が発売される日は決まっていないと言うことか…」
「ええ…ですが誰かがカリバーンで処刑されればビデオは増えますよ…」



 そして…
 カリバーンでは今まさにユウト処刑と言う地獄の撮影会が始まろうとしていた。

「ぎゃあああああああああああああぁぁっ!」

 古い木造で出来た民家の中で血だらけの男が爪をペンチで一枚一枚引き剥がされている。
 目から涙を流し痛みに耐えている彼はユウトで、拷問しているのはカリバーンの女王ロカだった。

「あははははっ!!!
人間の悲鳴は楽しいなぁ?
そらっ、後2本だ、頑張れ魔王様♡」
「違っ、俺は魔王なんかじゃ…あっ!!!
いぎゃああぁぁぁっ!!」

 爪をペンチでひっぺ返される度に、地面へ血の滴が一滴、二滴と落ちていく。
 ユウトは震え、顔は恐怖でひきつり、歯をガチガチ鳴らしていた。

「あははっ…♡
やっぱりこの子マゾじゃ~んっ♪
ここまでされてるのにおちんぽ勃ったまま!
これから殺されるってのに興奮してるなんて本物だね~♪
死は怖くないの?」
「こ…こわいです、だから、やめて下さい…お願いです、許して下さい…
この首輪、外して下さい…」

 竿を足で踏みつけグリグリと力を込めるサキュバスの女を見て、ユウトはサラマンダーの女王よりはマシな相手なのではと思い、涙を流しながら助けを求めていた。
 しかし…

「あははっ、女王様見てみて~☆こいつ私に助け求めてるよ~?」
「私が怖いか?魔王様、ほら、おいたをするのはこのお口かな??」
「うぶっ!!!ううううっ!!」

 口の中に指が一本、二本とねじ込まれ、乱暴に喉を犯そうと動いてくる。
 次は3本かと思いきやいきなり4本の指を作っ困れ、動かされてしまい、そのあまりの苦しさにユウトは下呂を吐いてしまったようだ。

「げえぇぇぇっ!!!」
「どうした?口の中でも切ったか?下呂だけではなく血が出ているぞ?魔王様?」

 止めるのかと思いきや一度引き抜いた指を再びユウトの口の中に突っ込み喉奥を犯し始めた。
 胃の中身が逆流し気分が悪くなっているにもかかわらず、止まることはなかった。

「あはははは☆
そのままだと女王様の指で窒息死しちゃうよ~?
なのにほら、このおちんぽどうしちゃったの?」

 勃起した竿をサキュバスの女が握り上下に扱いているが、一番混乱していたのはそれをされているユウトのほうだった。
 おそらく、彼の意思で勃起したわけではなく、彼女のサキュバスの能力で強制的に勃起させられた事だと理解出来る。
 爪を全て剥がされ、口の中を引っ掻き回され、血と下呂を吐きながらも性的興奮をするなど本来のユウトには出来ない芸当だからだ。
 しかしそんなユウトにも容赦なくサラマンダーの女王は口の中を犯し続けていた。

「口の中を犯されて嬉しいのか?変態め…
まったく、指が血だらけになってしまったじゃないか…
さぁ魔王様、お仕置きだぞ」

 そしてユウトは光を失った。
 直後に来る意識を失うほどの鋭い痛み…。
 何が起こったかと言えばユウトの目にはサラマンダーの伸びた爪が突き刺さっていた…
 視力を失った目に彼女の爪はなおズブズブと入り込んでくる。

「うああぁぁぁっ!!!
目が!!目がああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 その惨い光景を止める者はおらず、サラマンダーの手伝いのサキュバスもユウトの悲鳴を聞きながら意地の悪い笑みを浮かべている。

「ねぇ女王様ぁん♡そろそろトドメ刺しちゃう?
おへそに尻尾突き刺して、この子の中身、全部チューチュー吸っちゃっても良い?」

 目は失明、片玉を失い、全身火傷のユウトは自分でも死期が近付いている事を察した。

(ああ…ここまでなのか、俺は…こんな終わり方なのかよ…)

 特殊な首輪なのか能力もスキルも無効化されており発動しない。
 ユウトはこのまま、仲間にも気付かれず死を迎えるのだと覚悟を決めた。

(マリン、お母さん、ごめんなさい…
俺はどうやら、ここまでのようだ…)

 そして、サラマンダーは少し考え込んだ後、サキュバスに言った。

「そうだな、射精と共にミイラ化させるのも見物だな。やってみろ」
「は~いっ☆」
「う…ぁっ!!!」

 サキュバスの尻尾の先がユウトのヘソに突き刺さり、血が溢れ出す。

(痛ぇ…畜生……
こ、こんな…こんな死に方…納得いかねぇよ…)

 黒のスペードのような形の尻尾の先端部分は完全にヘソを貫通しており、中から血が吸われている。
 そして彼女はユウトに顔を近付けて言った。

「はーい注目~♪
今から君の中身全部吸っちゃうよ~?
ミイラになる覚悟は出来た~?」
「あははははは!
そろそろ死ぬ覚悟は出来たか?魔王様♪」

 全てを諦め目に涙を浮かべるユウト…
 彼の前に今、逃れられない死が訪れようとしていた…
 そして目を閉じ全てを諦めた彼の前に死が…



「ふふふ…」

 耳元で見知らぬ女の笑い声、さらに辺りは時間が止まっていた…

(ん?どうなった?)

 止まった空間でユウトだけが動く事が出来る状況…
 さらにスキルや魔法を封じる首輪が鍵も使わず外れてしまったのだ。

「まさか、外れたのか?絶対に外れなかったこの首輪が…」

 首を何度もさわりながら外れた事を確認するユウト…
 その目は先ほどの絶望の眼差しではなく、光が宿っていた。

(いったい…何故…何が起こったんだ?
ここにはサタンやお母さん、マリンもいない筈だが…)

 そして時間が動き出す…
 動けるようになったサキュバスやサラマンダーがこちらを見て驚いていた。

「バカな…首輪が…」
「このままじゃ逃げるわ…すぐに捕まえないと」

 だが首輪の影響か、潰れた睾丸や視力に対し、治療魔法は使えなかった。
 首輪に吸われた魔力や体力はすぐには戻って来ない。

「逃がすな!」
「はい!」

 サラマンダーがユウトに攻撃を仕掛けようと手を伸ばし手のひらから火の玉を放った。

「うわっ!!!」

 ユウトはそれを飛び退いて避け、背を向けて走り出した。

(やばい、やばいやばいやばいやばい…
首輪は外れたがスキルが使えない…今攻撃を受ければ死ぬ…)

 折れた腕は動かず目は見えないため、走る方向もわからない…
 しかし、ユウトはサラマンダーとサキュバスの声がしない方向に走り出した。
 結果遠のいていく事がわかった。

「まさか、逃げるとは…」

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