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ストーリー
暗殺
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陰間茶屋の翔太は、あの後、次の薫さんのお客の見学もさせられていた。
次は若い男の客で、先ほどとは違い薫さんはお尻に入れられている。
彼は発情した雌の表情で、アナルに勃起したペニスを挿入されて感じている。
「はぁ、はぁ…いいぞ薫…もうイキそうだ」
「あぁっ、出してぇ、お客様のザーメン、アタシの中に…♡」
「うぅっ、いくっ、いくぞっ、おらっ!おらぁっ!!」
正常位でガンガン突きながら、客の男は薫さんのお尻の奥にザーメンを発射した。
「ふぅ…気持ち良かったぜぇ」
客の男は満足した様子で、僕と薫さんに見送られながら、帰って行った。
その後も薫さんは2人の男性客とエッチをし、受けとして攻められていた。
アナルを掘られ、ちんぽにご奉仕して射精させる彼女は女にしか見えない。
僕は改めて、彼女が陰間としてプロなのだと実感させられる。
ただ、もし自分が男に掘られるのかと思うと、恐くて身体の震えが止まらなかった。
やがて仕事が終わり、2人は廊下を歩く。
「翔太君わかった?
これが陰間のお仕事よ?
お客様に合わせて、攻めも受けもこなさなくちゃダメなの」
「はい、勉強になりました…まだちょっと怖いですけど…僕も出来るようになりたいです…」
「ふふっ…よかった♪
それじゃ翔太君、明日もよろしくね?」
僕は部屋に戻り、眠りについた。
───次の日───
ギーク城の内部では、なにやら特殊な儀式が行われていた。
そこにはギーク軍幹部が並び、郁麿や部下の妖怪達も並んでいた。
仮面を付け、杖を持ち、シルクハットにスーツの男、宮廷魔術師ガーネット・スター。
そして短髪、筋肉質の軍服の男、ギーク軍「将軍」デザート・アジール。
さらに坊主で筋肉質の軍服の男、副将軍「デネブ・カイトス」。
もう一人の副将軍、赤髪の女「タニア・アウストラリス」。
そしてギーク軍大佐「カウス・メディア」、中佐の「アルタイル」もいた。
儀式をする部屋の真ん中にはカーテンで覆った簡易版テントを作り、中には黒姫がいる。
そして将軍デザート・アジールが彼女と会話をしていた。
「聖剣デュランダルの使い方はもうわかるな?」
「はい黒姫様、記憶いたしました、ありがとうございます!」
「うむ、これでお主も妾の技を使えるじゃろう…
その力、次の戦争で存分に発揮するのじゃ」
「承知致しました!」
側近の紅葉、桔梗、皐月は喜んでいなかったが幹部は皆、これを機に黒姫に与えられた強大な力を手にしたようだ。
「では最後じゃ、科学部隊担当、郁麿、お前に妾の力を与える…」
「よろしくお願い…するでおじゃる」
「うむ、お前は前から力を欲しておったからのぅ…」
郁麿はテントの中に入り、彼女の後ろに立つ。
ここで行われているのは、いわゆる戦力を分け与える儀式のようなもの。
黒姫の持つ無数のスキルを自らの部下に分け与え、戦力を強化する儀式。
黒姫は着物をはだけさせ、彼女の肩に郁麿は手を置くように命じられる。
「郁麿には、この弓矢と、炎の神、水の神、土の神、風の神の力を与えよう…目を閉じろ」
黒姫と郁麿は目を瞑り、まるで精神がリンクしたような感覚になり、郁麿の中に、今までに無かった知識が入ってくる。
「郁麿よ、お主はこれで、一撃必殺の弓に加え神をも召還出来るようになった。
これでお前はもう弱いなどとは言えなくなった。
その力、次の戦場で存分に発揮せよ」
力を受け継いだ郁麿は涙を流し、そして黒姫のほうを見て、言った。
「ううぅ…麻呂は…麻呂は嬉しいでおじゃる…黒姫様…あなた様のおかげで、麻呂は力を手にする事が出来ました」
「うむうむ…存分に感謝するが良い。
我らギーク王国に敵はない、それをお主等で証明するのじゃ。」
郁麿は新たな力を手にし、感動で涙を流していた。
その後、儀式は無事終わり、解散する予定だった。
しかし…
突如、黒姫の胸を動く何かが高速で貫通した…
「がふっ…なっ…なに…???」
黒姫の胸から、腕が生えていた…
それは郁麿の腕で、黒姫は驚いて彼に振り返る。
「がっ…はぁっ、はぁっ、貴様よくも…許さぬ…許さぬぞ」
簡易版テントが倒れ、中から心臓に腕を突き刺された黒姫の姿が皆の前に晒される。
儀式の最中で弱り切った黒姫は、血を吐き今にも死にそうに見える。
「麻呂はこの時をずっと待っておった、黒姫様の残りの力もすべて麻呂が受け継ぎ…世界は麻呂が支配するでおじゃる!」
「き、き、貴様あぁぁぁぁぁっ!!!」
剣を抜き、冷静さを失い、一番に攻撃したのはガーネット・スターだった。
普段は冷静で敬語で話す彼が、今は鬼の形相で郁麿に切りかかる。
しかし、郁麿は身体能力が上がったのか、彼の剣捌きをすべて避けていた。
しかし、デネブ、タニア、皐月、紅葉、桔梗、デザートが、郁麿を取り囲む。
しかし郁麿は余裕の表情で炎の神を召還した。
「炎の神カグツチ!
麻呂をここから逃がすでおじゃる!」
郁麿の回りには炎の渦が出現する。
そして中から現れたのは炎を纏う神。
筋肉の塊のような男が現れ、郁麿を担ぎ上げると空を飛んで逃げていった。
「何という事を…」
「裏切り者め!よくも黒姫様を!」
「黒姫様!意識はありますか??」
血を吐き倒れる黒姫を、紅葉、桔梗、皐月が囲み回復を試しながら涙を流している。
「駄目です、これではもう…」
「そんな、黒姫様…お願い、死なないで!」
「よりによって、黒姫様が最も無防備になる儀式の最中を狙うなんて…」
そんな中、黒姫は目を開けて、彼女等に最後のお願いをする。
「頼みがある…今すぐ妾を封印せよ…もし、死を逃れる方法があるとすれば、今はこれしか…」
封印と聞いて彼女等は言葉を失った。
「蘇生ではなく…封印ですか?」
実際、無防備となった儀式の最中に受けたダメージは回復が難しい。
もしかすると黒姫のスキルでも無理なのかもしれないと3人は考えた。
「わかりました!黒姫様の言うとおりにしましょう!」
「やりますよ!紅葉!皐月!」
三人は彼女を囲い、呪文を唱える。
すると黒姫は人よりも巨大な石になり、彼女の姿は見えなくなった。
離れた場所ではギーク王国軍の軍服達が走り回っている。
「奴の作った部下も殺せ!」
「絶対に逃がすな!」
部下にそう指示を出すデネブ・カイトス、タニア・アウストラリスも剣を抜き郁麿を探しに行った。
軍隊はパニックになりながら郁麿を探しに行く。
紅葉達、側近三人は封印された彼女の石を見て涙を流していた。
「黒姫様…」
「いずれ…必ず復活させて見せます」
紅葉、桔梗、皐月が石の前に座り込み、涙を流していた。
そこに…剣を構えた将軍デザート・アジールがやって来る。
「将軍…」
紅葉が振り向くが、彼の目はまるで敵を前にした時のようだった。
将軍、デザート・アジールは紅葉達を見て殺気を放ちながら、剣を振り上げている。
「聖剣デュランダルに斬れぬもの無し!桐の太刀筋!エンプレスツリー!」
食らえば一撃で死を迎える危険な技を、デザート・アジールはいきなり、黒姫を封印した石に向かって撃ってきた。
「な…何を!!!」
「あなたも裏切るのですか!デザート!」
「そうは、させません!!」
三人はデザート・アジールの放った虹色の斬撃を刀で受け止めようとする。
しかし、その刃はすべて、虹色の斬撃により真っ二つに折られてしまった。
しかもそれだけでは止まらず、さらにターゲットを狙う斬撃は、彼女達を斬りつけていった。
「「きゃあぁぁぁっ!!!」」
傷口からは植物が生えて、彼女達の体が木に変化していくのがわかった。
黒姫の封印石も、今の斬撃に巻き込まれ真っ二つにされてしまう。
つまりこれは黒姫の復活が不可能という事の証明だった。
「くっくっくっ、斬れぬもの無しとは…まさか本当だったとは…素晴らしい!素晴らしいぞ聖剣デュランダル!」
「な…将軍が…」
「3姫騎士を…黒姫様を」
「どうなってるこの状況…」
その様子に、デネブ、タニア、カウスも驚きながら剣を将軍に向ける。
「将軍!何故ですか!」
「貴様よくも!黒姫様を!!」
デネブが将軍に問いただし、タニアは剣を構えながら青い瞳で睨みつけ恐ろしい殺気を放つ。
もし彼女の間合いに一歩でも踏み込めば、例え将軍と言えども一撃で斬り伏せられるだろう。
「剣聖」タニア・アウストラリスに限ってはそれ程の力を持っていた。
「ちっ、タニア…貴様…」
デザート・アジールはその場から全力で逃走したのだった。
───陰間茶屋──
部屋の外がなにやら騒がしい…
「おのれ!絶対に許さん!」
「犯人は逃走中だ!探せ!」
などという声が、僕の部屋に聞こえてくる。
その外から聞こえる大声のせいで、僕は昼にも関わらず目が覚めてしまった。
廊下を歩いていると、他の男娼も眠れないのか廊下を歩いているのを確認した。
僕は昼間も解放されている食堂へ移動する事にした。
そこには女にしか見えない楓、薫、藍のトップスリー男娼がテーブル席で話し込んでいる。
「薫ねぇの狙ってる人、無事だといいねぇ」
「まぁ、タニアなら大丈夫でしょ、剣聖なんて呼ばれてるみたいだし」
「これでお客が減ったりしなければいいんだけど…」
初めて見た女装の男娼、藍は黒髪ショートボブで、背は薫さんぐらいある。
三人は外の様子に興味津々だった。
「薫さん、楓さん、おはようございます。
藍さんははじめましてですよね、新人の翔太です。」
ペコリと頭を下げて挨拶する、すると、皆が反応した。
「あらぁ、マゾガキちゃん、目が覚めたの?」
「ああ、おはよう…って薫ねぇ、普段から彼のことそう呼んでるの?」
「聞いてるわよ、薫のペットなんでしょ?
すっごいマゾなんだって?」
「ペットじゃないです!
見習いですから!」
言い返すものの藍さんはあまり僕に興味がなさそうだった。
僕は食堂で、お茶の入った急須を沸かし、彼女等のテーブルへ持って行く。
「あら、気が効くわね♪」
差し出された湯呑みにお茶を入れていき、薫さんに頭を撫でられた。
「翔太君も座りなよ、外の様子、気になってるんでしょ?」
「楓さん、ありがとうございます。
はい、さっきから騒がしくって…いったい何が」
3人の話では外では今事件が起こっていて、あの黒姫が仲間に殺されたらしい。
シオンさん、咲さん、和樹さん、ミサさんを殺し、何故か奇跡的に変身出来たユウトさんの姿をした僕をも上回った黒姫。
その黒姫がいったい誰に殺されたと言うのか…
「クーデターを起こした犯人は郁麿と呼ばれる白塗りの顔の男よ?手配書はこれよ?翔太君、見覚えない?」
薫さんが女将から貰ったチラシを見せてくれて、まるで、時代劇に出てきそうなキャラに僕は驚いていた。
「昔の時代劇風のドラマに出てきそうな顔ですね…
城塗りに鳥帽子、そして、この着物…
昔の公家でしょうか?」
「いいえ、昔、日本で有名だった天才科学者に似てるでしょう…?
名前も一致してるし、これはつまり、本人ってことも考えられるわ…?
死体も盗まれたって聞いたし」
天才科学者郁麿、確か殺人実況者グレイトに家族を殺され、彼はビルから飛び降り亡くなったはずだ。
(その彼が黒姫を殺し逃亡中?)
僕はますます、意味がわからなくなった。
「そもそも、黒姫…アレを殺せるのでしょうか…」
僕の言葉に彼女等は興味を持ち、聞いてくる。
「あら翔太君、その黒姫って人を見たの?
詳しく聞かせなさい!」
藍さんに言われ、僕は仕方なく、過去の話をはじめた。
仲間を失ったこと、力のこと、黒姫に挑んで敗北した事をすべて話す。
「へぇ、ただのマゾガキじゃなかったのね。お前」
「薫さん、最近僕への言葉遣い、酷くないですか?」
「見習いだし、アタシのペットなんだからいいでしょ?
そんな事より、軍の最高戦力だったわけね、黒姫ってお姫様は」
「はい、僕にはあの人が負ける姿が想像出来ません…」
「君が能力者と言うのも信じられないけれど、ボク達を拉致した連中を見る限り、ありえない話じゃないね…」
「そうね、私の目の前で魔法みたいなの使ってたし…後翔太君の話に出てきた異世界の最強剣士ってのも気になるわね…」
「異世界の最強剣士かぁ、アタシちょっと見てみたいかも~♪」
異世界の最強剣士ユウトさんの話に三人は興味を持っていた。
5000年も先の未来から来たユウトさん…彼は未来人で、ユウトさんに関してはもう会えないとわかっていても、またひょっこり現れて助けてくれるのではと期待してしまう。
二年前の事件の話をすると、三人はユウトさんに食いついていた。
「僕だって、能力を剥奪する前は思ったことを実現する力はあったんですよ?
例えばここにシュークリームが現れるイメージをすると…」
僕は目を瞑り冗談ぽく言うと、場が静まりかえる。
「実際にはシュークリームが現れるんですよ?」
しかし、テーブルを見ると、何故かシュークリームが現れていた。
「これ、アンタがやったの?」
「君、能力奪われたんじゃないの?」
「すごいすごーい、これ食べられるわよ?もっと出して?」
藍だけは素直に驚いて喜んでいたが、薫さんと楓さんは僕を見て不気味に思ってあるのがわかる。
何より、一番信じられなかったのは僕自身だった。
次は若い男の客で、先ほどとは違い薫さんはお尻に入れられている。
彼は発情した雌の表情で、アナルに勃起したペニスを挿入されて感じている。
「はぁ、はぁ…いいぞ薫…もうイキそうだ」
「あぁっ、出してぇ、お客様のザーメン、アタシの中に…♡」
「うぅっ、いくっ、いくぞっ、おらっ!おらぁっ!!」
正常位でガンガン突きながら、客の男は薫さんのお尻の奥にザーメンを発射した。
「ふぅ…気持ち良かったぜぇ」
客の男は満足した様子で、僕と薫さんに見送られながら、帰って行った。
その後も薫さんは2人の男性客とエッチをし、受けとして攻められていた。
アナルを掘られ、ちんぽにご奉仕して射精させる彼女は女にしか見えない。
僕は改めて、彼女が陰間としてプロなのだと実感させられる。
ただ、もし自分が男に掘られるのかと思うと、恐くて身体の震えが止まらなかった。
やがて仕事が終わり、2人は廊下を歩く。
「翔太君わかった?
これが陰間のお仕事よ?
お客様に合わせて、攻めも受けもこなさなくちゃダメなの」
「はい、勉強になりました…まだちょっと怖いですけど…僕も出来るようになりたいです…」
「ふふっ…よかった♪
それじゃ翔太君、明日もよろしくね?」
僕は部屋に戻り、眠りについた。
───次の日───
ギーク城の内部では、なにやら特殊な儀式が行われていた。
そこにはギーク軍幹部が並び、郁麿や部下の妖怪達も並んでいた。
仮面を付け、杖を持ち、シルクハットにスーツの男、宮廷魔術師ガーネット・スター。
そして短髪、筋肉質の軍服の男、ギーク軍「将軍」デザート・アジール。
さらに坊主で筋肉質の軍服の男、副将軍「デネブ・カイトス」。
もう一人の副将軍、赤髪の女「タニア・アウストラリス」。
そしてギーク軍大佐「カウス・メディア」、中佐の「アルタイル」もいた。
儀式をする部屋の真ん中にはカーテンで覆った簡易版テントを作り、中には黒姫がいる。
そして将軍デザート・アジールが彼女と会話をしていた。
「聖剣デュランダルの使い方はもうわかるな?」
「はい黒姫様、記憶いたしました、ありがとうございます!」
「うむ、これでお主も妾の技を使えるじゃろう…
その力、次の戦争で存分に発揮するのじゃ」
「承知致しました!」
側近の紅葉、桔梗、皐月は喜んでいなかったが幹部は皆、これを機に黒姫に与えられた強大な力を手にしたようだ。
「では最後じゃ、科学部隊担当、郁麿、お前に妾の力を与える…」
「よろしくお願い…するでおじゃる」
「うむ、お前は前から力を欲しておったからのぅ…」
郁麿はテントの中に入り、彼女の後ろに立つ。
ここで行われているのは、いわゆる戦力を分け与える儀式のようなもの。
黒姫の持つ無数のスキルを自らの部下に分け与え、戦力を強化する儀式。
黒姫は着物をはだけさせ、彼女の肩に郁麿は手を置くように命じられる。
「郁麿には、この弓矢と、炎の神、水の神、土の神、風の神の力を与えよう…目を閉じろ」
黒姫と郁麿は目を瞑り、まるで精神がリンクしたような感覚になり、郁麿の中に、今までに無かった知識が入ってくる。
「郁麿よ、お主はこれで、一撃必殺の弓に加え神をも召還出来るようになった。
これでお前はもう弱いなどとは言えなくなった。
その力、次の戦場で存分に発揮せよ」
力を受け継いだ郁麿は涙を流し、そして黒姫のほうを見て、言った。
「ううぅ…麻呂は…麻呂は嬉しいでおじゃる…黒姫様…あなた様のおかげで、麻呂は力を手にする事が出来ました」
「うむうむ…存分に感謝するが良い。
我らギーク王国に敵はない、それをお主等で証明するのじゃ。」
郁麿は新たな力を手にし、感動で涙を流していた。
その後、儀式は無事終わり、解散する予定だった。
しかし…
突如、黒姫の胸を動く何かが高速で貫通した…
「がふっ…なっ…なに…???」
黒姫の胸から、腕が生えていた…
それは郁麿の腕で、黒姫は驚いて彼に振り返る。
「がっ…はぁっ、はぁっ、貴様よくも…許さぬ…許さぬぞ」
簡易版テントが倒れ、中から心臓に腕を突き刺された黒姫の姿が皆の前に晒される。
儀式の最中で弱り切った黒姫は、血を吐き今にも死にそうに見える。
「麻呂はこの時をずっと待っておった、黒姫様の残りの力もすべて麻呂が受け継ぎ…世界は麻呂が支配するでおじゃる!」
「き、き、貴様あぁぁぁぁぁっ!!!」
剣を抜き、冷静さを失い、一番に攻撃したのはガーネット・スターだった。
普段は冷静で敬語で話す彼が、今は鬼の形相で郁麿に切りかかる。
しかし、郁麿は身体能力が上がったのか、彼の剣捌きをすべて避けていた。
しかし、デネブ、タニア、皐月、紅葉、桔梗、デザートが、郁麿を取り囲む。
しかし郁麿は余裕の表情で炎の神を召還した。
「炎の神カグツチ!
麻呂をここから逃がすでおじゃる!」
郁麿の回りには炎の渦が出現する。
そして中から現れたのは炎を纏う神。
筋肉の塊のような男が現れ、郁麿を担ぎ上げると空を飛んで逃げていった。
「何という事を…」
「裏切り者め!よくも黒姫様を!」
「黒姫様!意識はありますか??」
血を吐き倒れる黒姫を、紅葉、桔梗、皐月が囲み回復を試しながら涙を流している。
「駄目です、これではもう…」
「そんな、黒姫様…お願い、死なないで!」
「よりによって、黒姫様が最も無防備になる儀式の最中を狙うなんて…」
そんな中、黒姫は目を開けて、彼女等に最後のお願いをする。
「頼みがある…今すぐ妾を封印せよ…もし、死を逃れる方法があるとすれば、今はこれしか…」
封印と聞いて彼女等は言葉を失った。
「蘇生ではなく…封印ですか?」
実際、無防備となった儀式の最中に受けたダメージは回復が難しい。
もしかすると黒姫のスキルでも無理なのかもしれないと3人は考えた。
「わかりました!黒姫様の言うとおりにしましょう!」
「やりますよ!紅葉!皐月!」
三人は彼女を囲い、呪文を唱える。
すると黒姫は人よりも巨大な石になり、彼女の姿は見えなくなった。
離れた場所ではギーク王国軍の軍服達が走り回っている。
「奴の作った部下も殺せ!」
「絶対に逃がすな!」
部下にそう指示を出すデネブ・カイトス、タニア・アウストラリスも剣を抜き郁麿を探しに行った。
軍隊はパニックになりながら郁麿を探しに行く。
紅葉達、側近三人は封印された彼女の石を見て涙を流していた。
「黒姫様…」
「いずれ…必ず復活させて見せます」
紅葉、桔梗、皐月が石の前に座り込み、涙を流していた。
そこに…剣を構えた将軍デザート・アジールがやって来る。
「将軍…」
紅葉が振り向くが、彼の目はまるで敵を前にした時のようだった。
将軍、デザート・アジールは紅葉達を見て殺気を放ちながら、剣を振り上げている。
「聖剣デュランダルに斬れぬもの無し!桐の太刀筋!エンプレスツリー!」
食らえば一撃で死を迎える危険な技を、デザート・アジールはいきなり、黒姫を封印した石に向かって撃ってきた。
「な…何を!!!」
「あなたも裏切るのですか!デザート!」
「そうは、させません!!」
三人はデザート・アジールの放った虹色の斬撃を刀で受け止めようとする。
しかし、その刃はすべて、虹色の斬撃により真っ二つに折られてしまった。
しかもそれだけでは止まらず、さらにターゲットを狙う斬撃は、彼女達を斬りつけていった。
「「きゃあぁぁぁっ!!!」」
傷口からは植物が生えて、彼女達の体が木に変化していくのがわかった。
黒姫の封印石も、今の斬撃に巻き込まれ真っ二つにされてしまう。
つまりこれは黒姫の復活が不可能という事の証明だった。
「くっくっくっ、斬れぬもの無しとは…まさか本当だったとは…素晴らしい!素晴らしいぞ聖剣デュランダル!」
「な…将軍が…」
「3姫騎士を…黒姫様を」
「どうなってるこの状況…」
その様子に、デネブ、タニア、カウスも驚きながら剣を将軍に向ける。
「将軍!何故ですか!」
「貴様よくも!黒姫様を!!」
デネブが将軍に問いただし、タニアは剣を構えながら青い瞳で睨みつけ恐ろしい殺気を放つ。
もし彼女の間合いに一歩でも踏み込めば、例え将軍と言えども一撃で斬り伏せられるだろう。
「剣聖」タニア・アウストラリスに限ってはそれ程の力を持っていた。
「ちっ、タニア…貴様…」
デザート・アジールはその場から全力で逃走したのだった。
───陰間茶屋──
部屋の外がなにやら騒がしい…
「おのれ!絶対に許さん!」
「犯人は逃走中だ!探せ!」
などという声が、僕の部屋に聞こえてくる。
その外から聞こえる大声のせいで、僕は昼にも関わらず目が覚めてしまった。
廊下を歩いていると、他の男娼も眠れないのか廊下を歩いているのを確認した。
僕は昼間も解放されている食堂へ移動する事にした。
そこには女にしか見えない楓、薫、藍のトップスリー男娼がテーブル席で話し込んでいる。
「薫ねぇの狙ってる人、無事だといいねぇ」
「まぁ、タニアなら大丈夫でしょ、剣聖なんて呼ばれてるみたいだし」
「これでお客が減ったりしなければいいんだけど…」
初めて見た女装の男娼、藍は黒髪ショートボブで、背は薫さんぐらいある。
三人は外の様子に興味津々だった。
「薫さん、楓さん、おはようございます。
藍さんははじめましてですよね、新人の翔太です。」
ペコリと頭を下げて挨拶する、すると、皆が反応した。
「あらぁ、マゾガキちゃん、目が覚めたの?」
「ああ、おはよう…って薫ねぇ、普段から彼のことそう呼んでるの?」
「聞いてるわよ、薫のペットなんでしょ?
すっごいマゾなんだって?」
「ペットじゃないです!
見習いですから!」
言い返すものの藍さんはあまり僕に興味がなさそうだった。
僕は食堂で、お茶の入った急須を沸かし、彼女等のテーブルへ持って行く。
「あら、気が効くわね♪」
差し出された湯呑みにお茶を入れていき、薫さんに頭を撫でられた。
「翔太君も座りなよ、外の様子、気になってるんでしょ?」
「楓さん、ありがとうございます。
はい、さっきから騒がしくって…いったい何が」
3人の話では外では今事件が起こっていて、あの黒姫が仲間に殺されたらしい。
シオンさん、咲さん、和樹さん、ミサさんを殺し、何故か奇跡的に変身出来たユウトさんの姿をした僕をも上回った黒姫。
その黒姫がいったい誰に殺されたと言うのか…
「クーデターを起こした犯人は郁麿と呼ばれる白塗りの顔の男よ?手配書はこれよ?翔太君、見覚えない?」
薫さんが女将から貰ったチラシを見せてくれて、まるで、時代劇に出てきそうなキャラに僕は驚いていた。
「昔の時代劇風のドラマに出てきそうな顔ですね…
城塗りに鳥帽子、そして、この着物…
昔の公家でしょうか?」
「いいえ、昔、日本で有名だった天才科学者に似てるでしょう…?
名前も一致してるし、これはつまり、本人ってことも考えられるわ…?
死体も盗まれたって聞いたし」
天才科学者郁麿、確か殺人実況者グレイトに家族を殺され、彼はビルから飛び降り亡くなったはずだ。
(その彼が黒姫を殺し逃亡中?)
僕はますます、意味がわからなくなった。
「そもそも、黒姫…アレを殺せるのでしょうか…」
僕の言葉に彼女等は興味を持ち、聞いてくる。
「あら翔太君、その黒姫って人を見たの?
詳しく聞かせなさい!」
藍さんに言われ、僕は仕方なく、過去の話をはじめた。
仲間を失ったこと、力のこと、黒姫に挑んで敗北した事をすべて話す。
「へぇ、ただのマゾガキじゃなかったのね。お前」
「薫さん、最近僕への言葉遣い、酷くないですか?」
「見習いだし、アタシのペットなんだからいいでしょ?
そんな事より、軍の最高戦力だったわけね、黒姫ってお姫様は」
「はい、僕にはあの人が負ける姿が想像出来ません…」
「君が能力者と言うのも信じられないけれど、ボク達を拉致した連中を見る限り、ありえない話じゃないね…」
「そうね、私の目の前で魔法みたいなの使ってたし…後翔太君の話に出てきた異世界の最強剣士ってのも気になるわね…」
「異世界の最強剣士かぁ、アタシちょっと見てみたいかも~♪」
異世界の最強剣士ユウトさんの話に三人は興味を持っていた。
5000年も先の未来から来たユウトさん…彼は未来人で、ユウトさんに関してはもう会えないとわかっていても、またひょっこり現れて助けてくれるのではと期待してしまう。
二年前の事件の話をすると、三人はユウトさんに食いついていた。
「僕だって、能力を剥奪する前は思ったことを実現する力はあったんですよ?
例えばここにシュークリームが現れるイメージをすると…」
僕は目を瞑り冗談ぽく言うと、場が静まりかえる。
「実際にはシュークリームが現れるんですよ?」
しかし、テーブルを見ると、何故かシュークリームが現れていた。
「これ、アンタがやったの?」
「君、能力奪われたんじゃないの?」
「すごいすごーい、これ食べられるわよ?もっと出して?」
藍だけは素直に驚いて喜んでいたが、薫さんと楓さんは僕を見て不気味に思ってあるのがわかる。
何より、一番信じられなかったのは僕自身だった。
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