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ストーリー
殺人実況配信者「グレイト」
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場所はとある住宅地…
スキルで透明化して、一軒家の屋根と屋根をジャンプで飛び移り移動をするグレイトは、今日の獲物を探していた。
すると、地面のマンホールの蓋が開くのを確認する。
グレイトはその中から出てきた物に驚いて声を上げてしまった。
「うわっ!!!」
住宅地の小さな道端にあるマンホールの蓋…
それが横に開き、中から鳥帽子を被った白塗りの顔が現れる。
「ひいぃぃっ!?誰かに、気付かれたでおじゃるか!?」
そんな彼は辺りを見渡して、誰もいなかったからか安心しているようだ。
「ホッ、良かった、気のせいでおじゃるか」
しかし殺人状況者グレイトは目に光が宿り、新しい玩具でも見つけた時の表情になっている。
その目は、白塗りの男を見ていた。
(くくっ…何故死んだ奴がまた生き返ってやがる…(笑)
理由はわからんが、またぶっ壊して遊べるなこりゃ…)
殺人状況者グレイトは次のターゲットを、何故か生きている郁麿に決定した。
どうすれば獲物を最も絶望させ、笑える状況に追い込めるか、それを考え実行するのがグレイトの趣味だった。
「しかし、妖狐はまだでおじゃるか…」
郁麿は何かを待っているようで、しばらくすると、彼の近くに狐の妖怪が現れた。
(うっはぁw化け物きたぁぁぁっ!!!こりゃ撮影するしかねぇだろ!!)
グレイトは実体化し、カメラを向けると能力で人の放送に電波ジャックし、開始した。
「撮影開始してまぁす♪」
するとコメントが流れ始める。
「なんだなんだ?」
「おい殺人鬼!やめろ!」
「またかよグレイト!」
「で?次は誰殺んの?」
「うおぉ!待っていたぞ!!」
いつもの彼のアンチ、またはファンのコメントが流れ始める。
「今日はすげぇぞお前ら!住宅地の道端のマンホールから、自殺したはずの天才科学者郁麿が現れた!」
「は??マジかよ!!」
「ゾンビかな?」
「あの「おじゃる」の奴?」
「グレイトに家族を殺された時の奴の顔は最高だったでおじゃるw」
「あの顔は忘れられん、人が絶望した時の表情!また見せてくれ!」
「グレイトに復讐しようと思ってるんじゃね?」
コメント欄が騒ぎになるが彼は別の方角にカメラを向けて狐を写した。
「見えるかお前ら、彼の部下らしき化け狐まで現れた!
つまり奴はもう人間ではない可能性すらある!
でだ、奴を最も絶望させるには、どうすればいいと思う?
俺のリスナーの皆、知恵を貸してくれ」
するとコメント欄は様々な意見に分かれていた。
「郁麿は化け物になってお前に復讐しに来たんだよきっと…もう諦めろ」
「目の前に堂々と現れて、ごめんなさいしよ?ね?」
「流石に化け物相手じゃ、グレイトでも勝ち目ねぇだろ、人間相手ならともかく」
逃げろ、謝れ、化け物には適わないと言ったコメントが集中するが、彼を戦わせたがる意見も集まっていた。
「その妖怪を殺す以外ないんじゃないか?」
「他にもいる場合、郁麿とどういう関係か探り、そして最も繋がりが深いのを殺せばいい」
「繋がりかぁ、しかし妖怪と人間の繋がり?主従関係か?あの巨大狐じゃ、恋愛関係は無理なんじゃないか?」
コメント欄のリスナーと会話をするグレイト、彼は郁麿と化け物にカメラを近付け、撮影を続けている。
その時、別方向から白い着物に水色髪の美しい女がやってきた。
そこへカメラを向ける。
「別の奴が来たな、なぁお前らどう思う?偶然かな?俺に殺された郁麿の嫁さんにちょっと似てねぇ?」
「似てる似てる!」
「あの時の泣き顔は最高だったよなぁ、今思い出しても最高に笑えるw」
「郁麿の目の前であの女犯して殺せば、効果ありそう」
「また良い泣き顔が撮れるかもなぁ」
グレイトは透明化した発信器を女と郁麿に投げつけて、それは彼等の服にくっついた。
「へへっ、楽しみだぜ郁麿、もう一度あの絶望したお前の顔が見れるなんてなぁ!」
そして配信は終了し、その後すぐにパトカーがやってきた。
グレイトはスキルで透明化し、郁麿達もパトカーのサイレンの音で逃げ出したのだが、狐の上に乗り、凄い早さで走り抜けてしまった。
今は亡き柏木健一の祖父…
彼の祖母は、実は不思議な力を持っていた。
それはこの世の常識を覆す、時間をも巻き戻す常識外れの特殊能力。
その力を受け継いで生まれてきた健一は、魔術書にも所有権を認められ、生まれながらにして時間を巻き戻す能力、それから魔法が使えたのだった。
才能が無かった父親には解読不能だった文字も息子にはスラスラ読める。
ただ、中二病が抜けず自らを魔王などという息子を、父も母も本気で心配していた。
「で、明日の夜に、その着物の女が現れると?」
喫茶店で6人の男女が話している。
「正直わからない…だがいつも通り過ごしていれば必ず、和樹君、翔太君、ミサさんの三人は殺される。
この、未来で撮った写真のように…」
健一、シオン、和樹、翔太、ミサ、咲が、テーブル席で飲み物を飲みながら会話をしていた。
「だがどうする、健一の最初の話が本当なら、この中で一番強い私が心が折れて屈服するのだろう?」
「一番強いにこだわるんですね、シオンさん…」
シオンが喋り、和樹が突っ込む。
ほかのメンバーもムッとしていたが、今はなにも言わなかった。
「ああ、その通りだ。
あの強さを前にシオンさん、ミサさん、咲さんは屈服していたよ」
「別にいいんじゃね?世界の支配者が変わったところで、私ら別に生きていければそれでいいし」
「私も…そう思います」
咲とミサが屈服も視野に入れ話し出すが、翔太、シオンは無言のままだった。
「いや、咲さん、ミサさん、あんな連中に支配された国が、原形を止めていると思うのか?
今まで通り、こうやって喫茶店でご飯を食べ、学校に行き、仕事に行き、友達、恋人を作り生活する、そんな国のままでいられると思うか?」
「じゃあ、どうなるっていうの?」
「戦争が続く…とか?」
「ミサさんの言うとおりだ、シオンさんの知る昔話では、あいつらは世界に宣戦布告をしたんだろ?
しかも、世界中と戦争をしながら国民を人体実験の材料にしたと聞く…」
それを聞いたミサと咲が無言になり、黙り込んでしまった。
そこにひらめいた感じで小学六年生の翔太が口を開き、そして言った。
「では、僕達に出来ることは、可能性を潰すこと…でしょうか?」
「ああ、その通りだよ」
続けて咲も質問をする。
「その白塗りの顔の男を見つけだし、今のうちに倒して未来を変えるって事?」
「そうしようと俺は考えている」
「決まりだな、ではもしも、白塗りの男を見かけた場合、一人で対処はせず、一度チームリーダーである私に連絡を頼む」
皆が頷いて、まずは皆で白塗りの男を探す事を第一目標に、この場で決まった。
──ある一軒家──
家の家族は皆、氷漬けにされ凍死しており、中には郁麿、雪女、巨大な狐がいた。
「お父様、何もあのような場所に身を隠さなくても…」
「よいのじゃユキ、それにお父様と呼ばずとも、今は下の名前で、郁麿と読んでくれぬか?」
「はい、郁麿様…」
「様もいらぬが、まぁよい、麻呂は疲れた、少しここで休むでおじゃる」
屋根の上でPCをいじっているグレイトは、中の様子を監視カメラで覗きつつ笑みを浮かべていた。
(こりゃ面白い、未練タラタラじゃねぇかw
だったら、あの雪女をぶっ殺したら、どんな顔で泣いてくれるんだろうなぁ?)
グレイトは、リュックに入った、化学薬品を取り出しながら嗜虐心に満ちた笑顔をしていた。
その三時間後…
「む…??何やら冷たい感触が…しかし心地良いでおじゃる…」
後頭部に冷たい感触、どうやらソファーの上で雪女に膝枕をされているのがわかった。
郁麿は頬を赤くして、ゆっくりと起き上がった。
「し…失礼しました郁麿様」
「よい、その…今のは心地よかったでおじゃる」
照れているのが伝わり雪女が「ふふっ」と笑っていた。
その横顔も仕草も前の妻の容姿と重なり、郁麿は手を伸ばそうとした時だ。
ピンポーン。
チャイムが鳴った。
「行って参ります」
ユキが玄関に行き、この家の住人を装うつもりのようだ。
「宅急便でーすっ」
彼女はドアに手をかけ、そして開けた。
すると、フードを被りガスマスクを付け、PCを持った男が消火器を雪女に向かって発射した。
シュウウゥゥゥ!!!
「なっ!何事でおじゃる!妖狐!」
狐の妖怪が玄関に走っていくが、部屋の中が煙で包まれる。
ガスマスクの男は続けて後ろにあった巨大なスプレーを発射して言った。
「ヒャッハハァッ!見たかお前等!雪女のあの顔!続けて有毒ガス追加しまーすっ!」
シュウゥゥゥ!!
彼の放つスプレー缶から出る物質の影響なのか、部屋の中に毒ガスが充満し、狐の妖怪と、雪女が倒れ動かなくなる。
ガスマスクの男は雪女の髪の毛を掴んだまま、郁麿の前に行くと手を挙げて挨拶した。
「やっ、久しぶり!元気だったかい?死んだのに生き返った郁麿君の為に、今日はプレゼントを持ってきてあげたんだ♪」
「貴…貴様は!!!
あの時の!梨花と砂奈江の命を奪った殺人鬼でおじゃる!!」
郁麿の脳裏に、自殺寸前に見た、彼が梨花と砂奈江を滅多刺しにして殺す映像が浮かび上がる。
しかしガスマスクの男はリュックから爆弾を取り出し、そして言った。
「浮気は良くないよ?郁麿さん、砂奈江さんが悲しむ」
「貴様!貴様ぁぁっ!!
貴様だけは絶対に許さぬ!麻呂は貴様の存在だけは認めぬ!」
郁麿も毒ガスを吸ってしまい動きがだんだん鈍くなっているが、それでも怒りが頂点に達し、彼に殴りかかったのだった。
しかし…
そんなパンチを彼は余裕で避けると、雪女の首から上を爆弾で吹き飛ばした。
「ユキ!ユキイィィッ!!!
おのれ殺人鬼!貴様!何処に!?」
しかし爆発した瞬間彼は消えて、しばらくするとまた目の前に現れた。
つまり彼は透明化して、爆発に巻き込まれないよう回避したのがわかった。
「首を飛ばしても、まだ生き返る可能性があるな、毒ガスは有効そうだしもっと撒いておこう!」
「こんな場所で麻呂は死ぬでおじゃるか!
ぐっ…おのれ!おのれ!グレイト…許さぬ!殺人鬼め!
あぁ…ユキ、梨花、砂奈江、ううっ…
本当に麻呂は、愚か者でおじゃる…」
郁麿は涙を流しながら目の前の殺人実況者グレイトに攻撃も出来なくなってきた。
毒ガスが回り、身動きが取れなくなったのだった。
(麻呂は弱い…またしてもユキを失い、妖狐を失い、この世界でもっとも憎き相手に殺されるとは…)
「ぐふっ、げほっ、ぐれいとっ、ぐれいとぉっ!」
郁麿は血を吐きながら殺人実況者グレイトを睨みつける。
彼はパソコンに夢中でコメントを見ながら会話をしていた。
「見ろよお前等!
これが、死んだはずの天才科学者郁麿の二度目の絶望顔だ!!
嫁さんも娘も俺に殺されて、今度は新たな嫁さん候補の雪女も殺された!
ぶはははっ!!ねえ悔しい??郁麿ちゃん、悔しい?」
グレイトは血を吐いている郁麿を蹴り飛ばし、髪の毛を掴んで、首から上がない雪女の死体を指さした。
「あっはははは!!
俺に二度も敗北して悔しくないの?
メンタル弱すぎの郁麿ちゃん、また自殺しちゃうの?
手も足も出ないままここで死んじゃうの?
おらっ、その不細工な絶望顔を世に晒せ!!」
コメント欄は最高に盛り上がっていた。
「人が絶望する顔は最高だなぁ!」
「良い顔だ!すべてを諦めた自殺志願者の顔!」
「郁麿ちゃんまた死ぬの?敗北自殺するの?」
「さっさと死ねよ郁麿、一度自殺したのに生き返るとかゾンビかよてめぇ」
しかし疑問視する反応もある、一度死んだのに生き返った彼を不思議に思っているコメントも流れていた。
「何故生きてたんだ?」
「死体は焼いたんだろ?」
「いや、盗まれたって噂なかったか?」
「首の骨折れて生き返るわけねぇから、どっちにしろおかしいよ…」
「まさか、偽物?」
最後のコメントにグレイトは反応した。
(いいや偽物なはずはない)
グレイトは、毒ガスで動かなくなった彼を見て、骨格、表情、特徴を見比べ、本物だと確信していた。
「特徴が一致しすぎてるし、双子でもこれはないだろ」
グレイトはそう言うと、郁麿を担いだまま部屋の外に出ると一緒に透明化した。
透明化したまま、映像も中継中のまま外へ移動する。
キョロキョロする警察官が辺りにいたのだが透明なので彼を見ることも出来ずコメント欄も混乱していた。
「警察何やってんだw」
「目の前に郁麿いるだろ?」
「まさか見えてないの?」
画面は警察官を写しているのに彼等はグレイトを捕まえられない。
コメント欄はパニックになり、グレイトは透明人間と疑われていた。
そして郁麿を持ったまま、グレイトは近くの川に移動し、彼はそこで透明化を解除した。
「こいつ解体して川に投げ捨てるわ、自殺する前に殺してやる」
そんな事を実況中継で言う彼に、またファンのコメントが流れてくる。
「おいおいマジか」
「えげつないなグレイト」
「だがそこがいい」
「グレイト頑張れ!」
「気絶した郁麿ぶっさw」
「不細工は死刑」
「かっこいいぞグレイト」
「100万投げとくわ」
「いや、受け取れねぇだろw」
そんなコメントが流る中、グレイトはナイフを取り出し、郁麿を解体しようとしていた。
しかし…
「何をしておる小僧…」
そこにいたのは赤い着物を着た姫のような女だった。
しかし、グレイトはPC画面を彼女に向けるも足が震えている。
グレイトは自身の体が彼女に恐怖し、動けなくなっているのが理解出来た。
(馬鹿な…俺が恐怖で動けなくなるなんて…そんな馬鹿な事が…)
「なんだなんだ?」
「画面揺れてんぞグレイト」
「すっげー美人なねーちゃん」
「コスプレかな?」
「こんな川で?」
グレイトは背筋が凍り、手も足も動かせなくなった、下手に動けば瞬殺されるイメージがグレイトの体を支配していた。
それが枷となり、恐怖となり、彼は動けなくなっていた。
(か…からだが…)
長い髪に美しい着物を着た彼女は興味深そうにPCの配信画面を覗き込んでいる。
「なんじゃこれは、このコメント欄とやらが、見ている奴らなのか?」
コメント欄を見ると、グレイトにこの女を殺すようお願いするコメントが並んでいた。
「綺麗な顔してやがる」
「めっちゃ美人だぜこの女」
「このねーちゃんの泣き顔が見たい」
「なんだその喋り方w」
「キャラまで作ってんのかよw」
「さっさと殺れよグレイト」
「もしかしてビビってるのか?グレイト」
実際グレイトは動けなかった、しかし彼女は配信画面の向こうにいる書き込んでる奴らを見て言った。
「…ほほう、覚悟は出来ておるのじゃろうな?
貴様等…」
彼女は画面の前で意地悪な笑みを向けるとコメント欄が一気に沸いた。
「覚悟?何か出来るの?」
「どーせ何も出来やしないのにね」
「姫様怒った顔も素敵♪」
「何も出来るわけないじゃん♪」
「グレイト!その女さっさとやっちまえよ!」
その時だった…
PC画面に指先を押しつけた彼女が目を閉じて呪文のように言った。
「ゲートオープン!」
すると辺りが光に包まれ、突然30人前後の男女が現れる。
見るからに引きこもりのキモオタが5人、汚っさんが6人、おばさん7人、若い女が2人、不良男子3人、柄悪いチンピラ風のおっさん2人、スーツを着た真面目そうな男が6人…
そのありえない光景に、グレイトも驚いて固まっていたのだった。
「黒姫流捕縄術「黒縛り」」
彼女はグレイト含む、およそ30人を一瞬で縛り上げ、動けないようにしてしまった。
縛られた皆もパニックで、一瞬で何が起こったのかわからず叫び出す物までいる。
「「きゃあぁぁぁっ!!」」
「おい!何処だここは!」
「離せ!どうなってんだ!」
「ふざけんな!なんだこりゃ!」
「どうして瞬間移動したんだ?」
「ありえねぇ!」
「グレイト…」
着物を着た女はコメントの無くなった配信画面を刀で真っ二つに切り落とした。
「さて、グレイトと、世に姿を晒せぬ臆病者どもよ…覚悟は出来ておるのじゃろうな?」
黒姫は二本の刀を取り出し彼等に向き直った。
スキルで透明化して、一軒家の屋根と屋根をジャンプで飛び移り移動をするグレイトは、今日の獲物を探していた。
すると、地面のマンホールの蓋が開くのを確認する。
グレイトはその中から出てきた物に驚いて声を上げてしまった。
「うわっ!!!」
住宅地の小さな道端にあるマンホールの蓋…
それが横に開き、中から鳥帽子を被った白塗りの顔が現れる。
「ひいぃぃっ!?誰かに、気付かれたでおじゃるか!?」
そんな彼は辺りを見渡して、誰もいなかったからか安心しているようだ。
「ホッ、良かった、気のせいでおじゃるか」
しかし殺人状況者グレイトは目に光が宿り、新しい玩具でも見つけた時の表情になっている。
その目は、白塗りの男を見ていた。
(くくっ…何故死んだ奴がまた生き返ってやがる…(笑)
理由はわからんが、またぶっ壊して遊べるなこりゃ…)
殺人状況者グレイトは次のターゲットを、何故か生きている郁麿に決定した。
どうすれば獲物を最も絶望させ、笑える状況に追い込めるか、それを考え実行するのがグレイトの趣味だった。
「しかし、妖狐はまだでおじゃるか…」
郁麿は何かを待っているようで、しばらくすると、彼の近くに狐の妖怪が現れた。
(うっはぁw化け物きたぁぁぁっ!!!こりゃ撮影するしかねぇだろ!!)
グレイトは実体化し、カメラを向けると能力で人の放送に電波ジャックし、開始した。
「撮影開始してまぁす♪」
するとコメントが流れ始める。
「なんだなんだ?」
「おい殺人鬼!やめろ!」
「またかよグレイト!」
「で?次は誰殺んの?」
「うおぉ!待っていたぞ!!」
いつもの彼のアンチ、またはファンのコメントが流れ始める。
「今日はすげぇぞお前ら!住宅地の道端のマンホールから、自殺したはずの天才科学者郁麿が現れた!」
「は??マジかよ!!」
「ゾンビかな?」
「あの「おじゃる」の奴?」
「グレイトに家族を殺された時の奴の顔は最高だったでおじゃるw」
「あの顔は忘れられん、人が絶望した時の表情!また見せてくれ!」
「グレイトに復讐しようと思ってるんじゃね?」
コメント欄が騒ぎになるが彼は別の方角にカメラを向けて狐を写した。
「見えるかお前ら、彼の部下らしき化け狐まで現れた!
つまり奴はもう人間ではない可能性すらある!
でだ、奴を最も絶望させるには、どうすればいいと思う?
俺のリスナーの皆、知恵を貸してくれ」
するとコメント欄は様々な意見に分かれていた。
「郁麿は化け物になってお前に復讐しに来たんだよきっと…もう諦めろ」
「目の前に堂々と現れて、ごめんなさいしよ?ね?」
「流石に化け物相手じゃ、グレイトでも勝ち目ねぇだろ、人間相手ならともかく」
逃げろ、謝れ、化け物には適わないと言ったコメントが集中するが、彼を戦わせたがる意見も集まっていた。
「その妖怪を殺す以外ないんじゃないか?」
「他にもいる場合、郁麿とどういう関係か探り、そして最も繋がりが深いのを殺せばいい」
「繋がりかぁ、しかし妖怪と人間の繋がり?主従関係か?あの巨大狐じゃ、恋愛関係は無理なんじゃないか?」
コメント欄のリスナーと会話をするグレイト、彼は郁麿と化け物にカメラを近付け、撮影を続けている。
その時、別方向から白い着物に水色髪の美しい女がやってきた。
そこへカメラを向ける。
「別の奴が来たな、なぁお前らどう思う?偶然かな?俺に殺された郁麿の嫁さんにちょっと似てねぇ?」
「似てる似てる!」
「あの時の泣き顔は最高だったよなぁ、今思い出しても最高に笑えるw」
「郁麿の目の前であの女犯して殺せば、効果ありそう」
「また良い泣き顔が撮れるかもなぁ」
グレイトは透明化した発信器を女と郁麿に投げつけて、それは彼等の服にくっついた。
「へへっ、楽しみだぜ郁麿、もう一度あの絶望したお前の顔が見れるなんてなぁ!」
そして配信は終了し、その後すぐにパトカーがやってきた。
グレイトはスキルで透明化し、郁麿達もパトカーのサイレンの音で逃げ出したのだが、狐の上に乗り、凄い早さで走り抜けてしまった。
今は亡き柏木健一の祖父…
彼の祖母は、実は不思議な力を持っていた。
それはこの世の常識を覆す、時間をも巻き戻す常識外れの特殊能力。
その力を受け継いで生まれてきた健一は、魔術書にも所有権を認められ、生まれながらにして時間を巻き戻す能力、それから魔法が使えたのだった。
才能が無かった父親には解読不能だった文字も息子にはスラスラ読める。
ただ、中二病が抜けず自らを魔王などという息子を、父も母も本気で心配していた。
「で、明日の夜に、その着物の女が現れると?」
喫茶店で6人の男女が話している。
「正直わからない…だがいつも通り過ごしていれば必ず、和樹君、翔太君、ミサさんの三人は殺される。
この、未来で撮った写真のように…」
健一、シオン、和樹、翔太、ミサ、咲が、テーブル席で飲み物を飲みながら会話をしていた。
「だがどうする、健一の最初の話が本当なら、この中で一番強い私が心が折れて屈服するのだろう?」
「一番強いにこだわるんですね、シオンさん…」
シオンが喋り、和樹が突っ込む。
ほかのメンバーもムッとしていたが、今はなにも言わなかった。
「ああ、その通りだ。
あの強さを前にシオンさん、ミサさん、咲さんは屈服していたよ」
「別にいいんじゃね?世界の支配者が変わったところで、私ら別に生きていければそれでいいし」
「私も…そう思います」
咲とミサが屈服も視野に入れ話し出すが、翔太、シオンは無言のままだった。
「いや、咲さん、ミサさん、あんな連中に支配された国が、原形を止めていると思うのか?
今まで通り、こうやって喫茶店でご飯を食べ、学校に行き、仕事に行き、友達、恋人を作り生活する、そんな国のままでいられると思うか?」
「じゃあ、どうなるっていうの?」
「戦争が続く…とか?」
「ミサさんの言うとおりだ、シオンさんの知る昔話では、あいつらは世界に宣戦布告をしたんだろ?
しかも、世界中と戦争をしながら国民を人体実験の材料にしたと聞く…」
それを聞いたミサと咲が無言になり、黙り込んでしまった。
そこにひらめいた感じで小学六年生の翔太が口を開き、そして言った。
「では、僕達に出来ることは、可能性を潰すこと…でしょうか?」
「ああ、その通りだよ」
続けて咲も質問をする。
「その白塗りの顔の男を見つけだし、今のうちに倒して未来を変えるって事?」
「そうしようと俺は考えている」
「決まりだな、ではもしも、白塗りの男を見かけた場合、一人で対処はせず、一度チームリーダーである私に連絡を頼む」
皆が頷いて、まずは皆で白塗りの男を探す事を第一目標に、この場で決まった。
──ある一軒家──
家の家族は皆、氷漬けにされ凍死しており、中には郁麿、雪女、巨大な狐がいた。
「お父様、何もあのような場所に身を隠さなくても…」
「よいのじゃユキ、それにお父様と呼ばずとも、今は下の名前で、郁麿と読んでくれぬか?」
「はい、郁麿様…」
「様もいらぬが、まぁよい、麻呂は疲れた、少しここで休むでおじゃる」
屋根の上でPCをいじっているグレイトは、中の様子を監視カメラで覗きつつ笑みを浮かべていた。
(こりゃ面白い、未練タラタラじゃねぇかw
だったら、あの雪女をぶっ殺したら、どんな顔で泣いてくれるんだろうなぁ?)
グレイトは、リュックに入った、化学薬品を取り出しながら嗜虐心に満ちた笑顔をしていた。
その三時間後…
「む…??何やら冷たい感触が…しかし心地良いでおじゃる…」
後頭部に冷たい感触、どうやらソファーの上で雪女に膝枕をされているのがわかった。
郁麿は頬を赤くして、ゆっくりと起き上がった。
「し…失礼しました郁麿様」
「よい、その…今のは心地よかったでおじゃる」
照れているのが伝わり雪女が「ふふっ」と笑っていた。
その横顔も仕草も前の妻の容姿と重なり、郁麿は手を伸ばそうとした時だ。
ピンポーン。
チャイムが鳴った。
「行って参ります」
ユキが玄関に行き、この家の住人を装うつもりのようだ。
「宅急便でーすっ」
彼女はドアに手をかけ、そして開けた。
すると、フードを被りガスマスクを付け、PCを持った男が消火器を雪女に向かって発射した。
シュウウゥゥゥ!!!
「なっ!何事でおじゃる!妖狐!」
狐の妖怪が玄関に走っていくが、部屋の中が煙で包まれる。
ガスマスクの男は続けて後ろにあった巨大なスプレーを発射して言った。
「ヒャッハハァッ!見たかお前等!雪女のあの顔!続けて有毒ガス追加しまーすっ!」
シュウゥゥゥ!!
彼の放つスプレー缶から出る物質の影響なのか、部屋の中に毒ガスが充満し、狐の妖怪と、雪女が倒れ動かなくなる。
ガスマスクの男は雪女の髪の毛を掴んだまま、郁麿の前に行くと手を挙げて挨拶した。
「やっ、久しぶり!元気だったかい?死んだのに生き返った郁麿君の為に、今日はプレゼントを持ってきてあげたんだ♪」
「貴…貴様は!!!
あの時の!梨花と砂奈江の命を奪った殺人鬼でおじゃる!!」
郁麿の脳裏に、自殺寸前に見た、彼が梨花と砂奈江を滅多刺しにして殺す映像が浮かび上がる。
しかしガスマスクの男はリュックから爆弾を取り出し、そして言った。
「浮気は良くないよ?郁麿さん、砂奈江さんが悲しむ」
「貴様!貴様ぁぁっ!!
貴様だけは絶対に許さぬ!麻呂は貴様の存在だけは認めぬ!」
郁麿も毒ガスを吸ってしまい動きがだんだん鈍くなっているが、それでも怒りが頂点に達し、彼に殴りかかったのだった。
しかし…
そんなパンチを彼は余裕で避けると、雪女の首から上を爆弾で吹き飛ばした。
「ユキ!ユキイィィッ!!!
おのれ殺人鬼!貴様!何処に!?」
しかし爆発した瞬間彼は消えて、しばらくするとまた目の前に現れた。
つまり彼は透明化して、爆発に巻き込まれないよう回避したのがわかった。
「首を飛ばしても、まだ生き返る可能性があるな、毒ガスは有効そうだしもっと撒いておこう!」
「こんな場所で麻呂は死ぬでおじゃるか!
ぐっ…おのれ!おのれ!グレイト…許さぬ!殺人鬼め!
あぁ…ユキ、梨花、砂奈江、ううっ…
本当に麻呂は、愚か者でおじゃる…」
郁麿は涙を流しながら目の前の殺人実況者グレイトに攻撃も出来なくなってきた。
毒ガスが回り、身動きが取れなくなったのだった。
(麻呂は弱い…またしてもユキを失い、妖狐を失い、この世界でもっとも憎き相手に殺されるとは…)
「ぐふっ、げほっ、ぐれいとっ、ぐれいとぉっ!」
郁麿は血を吐きながら殺人実況者グレイトを睨みつける。
彼はパソコンに夢中でコメントを見ながら会話をしていた。
「見ろよお前等!
これが、死んだはずの天才科学者郁麿の二度目の絶望顔だ!!
嫁さんも娘も俺に殺されて、今度は新たな嫁さん候補の雪女も殺された!
ぶはははっ!!ねえ悔しい??郁麿ちゃん、悔しい?」
グレイトは血を吐いている郁麿を蹴り飛ばし、髪の毛を掴んで、首から上がない雪女の死体を指さした。
「あっはははは!!
俺に二度も敗北して悔しくないの?
メンタル弱すぎの郁麿ちゃん、また自殺しちゃうの?
手も足も出ないままここで死んじゃうの?
おらっ、その不細工な絶望顔を世に晒せ!!」
コメント欄は最高に盛り上がっていた。
「人が絶望する顔は最高だなぁ!」
「良い顔だ!すべてを諦めた自殺志願者の顔!」
「郁麿ちゃんまた死ぬの?敗北自殺するの?」
「さっさと死ねよ郁麿、一度自殺したのに生き返るとかゾンビかよてめぇ」
しかし疑問視する反応もある、一度死んだのに生き返った彼を不思議に思っているコメントも流れていた。
「何故生きてたんだ?」
「死体は焼いたんだろ?」
「いや、盗まれたって噂なかったか?」
「首の骨折れて生き返るわけねぇから、どっちにしろおかしいよ…」
「まさか、偽物?」
最後のコメントにグレイトは反応した。
(いいや偽物なはずはない)
グレイトは、毒ガスで動かなくなった彼を見て、骨格、表情、特徴を見比べ、本物だと確信していた。
「特徴が一致しすぎてるし、双子でもこれはないだろ」
グレイトはそう言うと、郁麿を担いだまま部屋の外に出ると一緒に透明化した。
透明化したまま、映像も中継中のまま外へ移動する。
キョロキョロする警察官が辺りにいたのだが透明なので彼を見ることも出来ずコメント欄も混乱していた。
「警察何やってんだw」
「目の前に郁麿いるだろ?」
「まさか見えてないの?」
画面は警察官を写しているのに彼等はグレイトを捕まえられない。
コメント欄はパニックになり、グレイトは透明人間と疑われていた。
そして郁麿を持ったまま、グレイトは近くの川に移動し、彼はそこで透明化を解除した。
「こいつ解体して川に投げ捨てるわ、自殺する前に殺してやる」
そんな事を実況中継で言う彼に、またファンのコメントが流れてくる。
「おいおいマジか」
「えげつないなグレイト」
「だがそこがいい」
「グレイト頑張れ!」
「気絶した郁麿ぶっさw」
「不細工は死刑」
「かっこいいぞグレイト」
「100万投げとくわ」
「いや、受け取れねぇだろw」
そんなコメントが流る中、グレイトはナイフを取り出し、郁麿を解体しようとしていた。
しかし…
「何をしておる小僧…」
そこにいたのは赤い着物を着た姫のような女だった。
しかし、グレイトはPC画面を彼女に向けるも足が震えている。
グレイトは自身の体が彼女に恐怖し、動けなくなっているのが理解出来た。
(馬鹿な…俺が恐怖で動けなくなるなんて…そんな馬鹿な事が…)
「なんだなんだ?」
「画面揺れてんぞグレイト」
「すっげー美人なねーちゃん」
「コスプレかな?」
「こんな川で?」
グレイトは背筋が凍り、手も足も動かせなくなった、下手に動けば瞬殺されるイメージがグレイトの体を支配していた。
それが枷となり、恐怖となり、彼は動けなくなっていた。
(か…からだが…)
長い髪に美しい着物を着た彼女は興味深そうにPCの配信画面を覗き込んでいる。
「なんじゃこれは、このコメント欄とやらが、見ている奴らなのか?」
コメント欄を見ると、グレイトにこの女を殺すようお願いするコメントが並んでいた。
「綺麗な顔してやがる」
「めっちゃ美人だぜこの女」
「このねーちゃんの泣き顔が見たい」
「なんだその喋り方w」
「キャラまで作ってんのかよw」
「さっさと殺れよグレイト」
「もしかしてビビってるのか?グレイト」
実際グレイトは動けなかった、しかし彼女は配信画面の向こうにいる書き込んでる奴らを見て言った。
「…ほほう、覚悟は出来ておるのじゃろうな?
貴様等…」
彼女は画面の前で意地悪な笑みを向けるとコメント欄が一気に沸いた。
「覚悟?何か出来るの?」
「どーせ何も出来やしないのにね」
「姫様怒った顔も素敵♪」
「何も出来るわけないじゃん♪」
「グレイト!その女さっさとやっちまえよ!」
その時だった…
PC画面に指先を押しつけた彼女が目を閉じて呪文のように言った。
「ゲートオープン!」
すると辺りが光に包まれ、突然30人前後の男女が現れる。
見るからに引きこもりのキモオタが5人、汚っさんが6人、おばさん7人、若い女が2人、不良男子3人、柄悪いチンピラ風のおっさん2人、スーツを着た真面目そうな男が6人…
そのありえない光景に、グレイトも驚いて固まっていたのだった。
「黒姫流捕縄術「黒縛り」」
彼女はグレイト含む、およそ30人を一瞬で縛り上げ、動けないようにしてしまった。
縛られた皆もパニックで、一瞬で何が起こったのかわからず叫び出す物までいる。
「「きゃあぁぁぁっ!!」」
「おい!何処だここは!」
「離せ!どうなってんだ!」
「ふざけんな!なんだこりゃ!」
「どうして瞬間移動したんだ?」
「ありえねぇ!」
「グレイト…」
着物を着た女はコメントの無くなった配信画面を刀で真っ二つに切り落とした。
「さて、グレイトと、世に姿を晒せぬ臆病者どもよ…覚悟は出来ておるのじゃろうな?」
黒姫は二本の刀を取り出し彼等に向き直った。
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