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5 シーロアの武器屋へ
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木々の間を抜けていき、しばらく歩くと雪が踏み固められた道に出る。ここに来るまでの間に「ちょっとトイレ」と言って転移魔法陣でイスタラクシアに戻り、少ない金銭を持ってきた。
金貨1枚、銀貨5枚、欠銀貨3枚、銅貨4枚、欠銅貨4枚。欠貨は真ん中に穴が空いているもので、それぞれ価値が10倍ずつ上がっていく。
「さ、そろそろシーロアだよ」
「馬車が多くなってきたね」
「それだけお酒が人気なのさ」
シーロア方面へ向かう馬車も多いが、出て行く馬車も同じくらい多い。アルアンの宿場町と同じなら関税があり、相当潤っていそうだ。
町の周囲には人2人ほどの高さがある壁で覆われており、幅広な門の前には馬車の行列ができていた。
「この分だとかなり待ちそうですね」
「大丈夫、商人でない僕達は向こうだよ」
アレンの指差す先には小ぢんまりとした扉があり、そちらの列は殆ど人が居ない。一緒に短い列に並ぶ。
「全然人がいないね」
「仕方ないさ。周囲の宿場町ならほっといてもお酒は手に入るし、お酒を造らないなら宿屋の方が儲けられるしね」
「そうなんだ?」
「シーロアが主導して宿場町へ輸出してるんだ。販売を個人だけに限定させてね」
聞くと、お酒をかなり格安でシーロアから卸しており、自分で飲むか宿泊客個人への販売以外を禁止している。泊まった商人に味を教えておき、仕入れるならシーロアまで来てね、ということだ。
「へー、上手くできてるなあ」
「ま、そのおかげでこの辺りが栄えてるんだし、言うことは何も無いさ」
「可愛い女の子とお酒も飲めるし」
「そう! やっぱりそこが大事だよね」
「アーリィさんの事はいいの?」
「全部アーリィのためさ。やっぱり男なら、リードしてなんぼだからね」
そのために経験を積んでるのだという。何処まで本気で言っているのか分からないが、俺としても付き合った女の子にバカにされるようなことはしたくない。なんとしてでも経験を積まねば。決して他意はない。
「あい、次の…なんだ、アレンじゃないか。久しぶりだな」
「久しぶり、遠くから僕を呼ぶ声が聞こえてね。つい誘われて舞い戻ってきてしまったよ」
「おめーは相変わらずだなぁ、全く。そっちのは連れかい?」
「その通り。ドジを踏んだバカ親父の武器を買うのと、助けて貰ったお礼の案内を兼ねているのさ」
「フレドです。遊びにきました」
「ははは、えらい直球だな! 入町料は欠銀貨1枚ずつだ」
俺が懐から欠銀貨を出す前にアレンが支払ってしまった。渡そうとするも、これくらいはお礼のうちと言って受け取って貰えなかった。無碍にするのも忍びないので有り難く受ける。
「……よし、楽しんでこいよ!」
門番さんは手を振って見送ってくれた。門番といえば無愛想で粗雑な応対を想像していたが、ダンさんといい此処といい、とてもフレンドリーだ。認識を改めなければいけない。
扉をくぐると、馬車4台は悠々歩ける大通りが出迎えてくれた。出店や屋台で商人と交渉しているところもあれば、馬車に荷を積んでいるところもある。いずれにしても初めてみる光景だ。
「おお、すごい……」
「最初に来た人はみんなそういう反応をするんだよ」
僕もそうだったからね、とアレンは笑顔でウインクしてくる。確かにアルアンとは雰囲気が打って変わり、賑やかというより忙しなさの方が先に来る。
「先に武器屋へ行きたいんだけど、いいかい?」
「もちろん。どんな武器があるのか興味があるよ」
「狩人はあまり居ないから、大したものは置いてないんだけどね」
雑談をしながら歩いていると、一人の女性が駆け寄ってきた。ブロンドの間から見えるおでこがチャームポイントの、可愛らしい娘だ。
「アレン! 来てたんだ!」
「サターシャ、久しぶり。僕が居なくて寂しかったかい?」
「とっても寂しかった! お店には寄ってくれるの?」
「もちろんさ。今晩また会いに行くよ」
「うん、それじゃあ待ってるから!」
走り出そうとした彼女を、アレンが引き止めた。
「おっと、待ちたまえ。お詫びをしないといけない」
そう言ってポケットから深緑色のペンダントを取り出す。
「サターシャは良く赤色の服を着ていたからね。合うんじゃないかと思ったんだ」
「えっ、プレゼント? ありがとう、嬉しい!」
「君の笑顔が見れて、僕も嬉しいよ。引き止めて悪かったよ、またね」
「うん! ……いっぱいサービスしたげるからね」
ちゅ、と頬にキスをするとサターシャは走り出していった。彼女が見えなくなったところで、俺へ顔を向けてきた。
「今の子はサターシャ。『いろり亭』の看板嬢だよ」
「おお、本物の看板嬢……」
会話を聞いている限り明るくて皆から好かれそうな人だった。あの子が看板嬢をしていると思うと、なんだか熱くたぎるものがある。
「さあこんな場所だけど、プレゼントの選び方を教えてあげよう」
「うん、うん」
「さっきの会話の中で気になったことはあるかい?」
「えーと、赤色の服を着ていたってところ?」
「そう! プレゼントを選ぶ時のコツさ」
アレン曰く、『相手が好んでいる色の物』もしくは『好みの色に似合う物』を選べば間違いないらしい。
「『物を貰う』ということよりも、『自分のために選んでくれた』と思って貰うことが大事なのさ」
「なるほど……」
「それから、ちゃんと渡す時に言うことも大事だよ。女性にとって口にして貰うというのは、それだけ特別な意味を持つんだ」
それからも口説き方なんかを聞きつつ、武器屋へ行った。
アレンの言う通り普通の品揃えで、特にめぼしい物は無かった。
金貨1枚、銀貨5枚、欠銀貨3枚、銅貨4枚、欠銅貨4枚。欠貨は真ん中に穴が空いているもので、それぞれ価値が10倍ずつ上がっていく。
「さ、そろそろシーロアだよ」
「馬車が多くなってきたね」
「それだけお酒が人気なのさ」
シーロア方面へ向かう馬車も多いが、出て行く馬車も同じくらい多い。アルアンの宿場町と同じなら関税があり、相当潤っていそうだ。
町の周囲には人2人ほどの高さがある壁で覆われており、幅広な門の前には馬車の行列ができていた。
「この分だとかなり待ちそうですね」
「大丈夫、商人でない僕達は向こうだよ」
アレンの指差す先には小ぢんまりとした扉があり、そちらの列は殆ど人が居ない。一緒に短い列に並ぶ。
「全然人がいないね」
「仕方ないさ。周囲の宿場町ならほっといてもお酒は手に入るし、お酒を造らないなら宿屋の方が儲けられるしね」
「そうなんだ?」
「シーロアが主導して宿場町へ輸出してるんだ。販売を個人だけに限定させてね」
聞くと、お酒をかなり格安でシーロアから卸しており、自分で飲むか宿泊客個人への販売以外を禁止している。泊まった商人に味を教えておき、仕入れるならシーロアまで来てね、ということだ。
「へー、上手くできてるなあ」
「ま、そのおかげでこの辺りが栄えてるんだし、言うことは何も無いさ」
「可愛い女の子とお酒も飲めるし」
「そう! やっぱりそこが大事だよね」
「アーリィさんの事はいいの?」
「全部アーリィのためさ。やっぱり男なら、リードしてなんぼだからね」
そのために経験を積んでるのだという。何処まで本気で言っているのか分からないが、俺としても付き合った女の子にバカにされるようなことはしたくない。なんとしてでも経験を積まねば。決して他意はない。
「あい、次の…なんだ、アレンじゃないか。久しぶりだな」
「久しぶり、遠くから僕を呼ぶ声が聞こえてね。つい誘われて舞い戻ってきてしまったよ」
「おめーは相変わらずだなぁ、全く。そっちのは連れかい?」
「その通り。ドジを踏んだバカ親父の武器を買うのと、助けて貰ったお礼の案内を兼ねているのさ」
「フレドです。遊びにきました」
「ははは、えらい直球だな! 入町料は欠銀貨1枚ずつだ」
俺が懐から欠銀貨を出す前にアレンが支払ってしまった。渡そうとするも、これくらいはお礼のうちと言って受け取って貰えなかった。無碍にするのも忍びないので有り難く受ける。
「……よし、楽しんでこいよ!」
門番さんは手を振って見送ってくれた。門番といえば無愛想で粗雑な応対を想像していたが、ダンさんといい此処といい、とてもフレンドリーだ。認識を改めなければいけない。
扉をくぐると、馬車4台は悠々歩ける大通りが出迎えてくれた。出店や屋台で商人と交渉しているところもあれば、馬車に荷を積んでいるところもある。いずれにしても初めてみる光景だ。
「おお、すごい……」
「最初に来た人はみんなそういう反応をするんだよ」
僕もそうだったからね、とアレンは笑顔でウインクしてくる。確かにアルアンとは雰囲気が打って変わり、賑やかというより忙しなさの方が先に来る。
「先に武器屋へ行きたいんだけど、いいかい?」
「もちろん。どんな武器があるのか興味があるよ」
「狩人はあまり居ないから、大したものは置いてないんだけどね」
雑談をしながら歩いていると、一人の女性が駆け寄ってきた。ブロンドの間から見えるおでこがチャームポイントの、可愛らしい娘だ。
「アレン! 来てたんだ!」
「サターシャ、久しぶり。僕が居なくて寂しかったかい?」
「とっても寂しかった! お店には寄ってくれるの?」
「もちろんさ。今晩また会いに行くよ」
「うん、それじゃあ待ってるから!」
走り出そうとした彼女を、アレンが引き止めた。
「おっと、待ちたまえ。お詫びをしないといけない」
そう言ってポケットから深緑色のペンダントを取り出す。
「サターシャは良く赤色の服を着ていたからね。合うんじゃないかと思ったんだ」
「えっ、プレゼント? ありがとう、嬉しい!」
「君の笑顔が見れて、僕も嬉しいよ。引き止めて悪かったよ、またね」
「うん! ……いっぱいサービスしたげるからね」
ちゅ、と頬にキスをするとサターシャは走り出していった。彼女が見えなくなったところで、俺へ顔を向けてきた。
「今の子はサターシャ。『いろり亭』の看板嬢だよ」
「おお、本物の看板嬢……」
会話を聞いている限り明るくて皆から好かれそうな人だった。あの子が看板嬢をしていると思うと、なんだか熱くたぎるものがある。
「さあこんな場所だけど、プレゼントの選び方を教えてあげよう」
「うん、うん」
「さっきの会話の中で気になったことはあるかい?」
「えーと、赤色の服を着ていたってところ?」
「そう! プレゼントを選ぶ時のコツさ」
アレン曰く、『相手が好んでいる色の物』もしくは『好みの色に似合う物』を選べば間違いないらしい。
「『物を貰う』ということよりも、『自分のために選んでくれた』と思って貰うことが大事なのさ」
「なるほど……」
「それから、ちゃんと渡す時に言うことも大事だよ。女性にとって口にして貰うというのは、それだけ特別な意味を持つんだ」
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