上 下
83 / 84

79話保護院。ジーザとの出会い

しおりを挟む
「終わりました。これ、銀貨9枚です」

「ありがとうございます。先ほど保護院を気にされていましたが、覗かれて見ますか?」

「え?良いんですか?」

見るのは全然問題がないと言われた。ただ、魔物に親を襲われた子もいるから、ルピとロッソは待っていて欲しいそう。それは仕方がないね。2人に教会の裏で待っててねと伝え僕だけ向かった。

シスターに連れていかれた場所は、教会から少し離れた平屋の建物。外からでも子供達の元気な笑い声や喧嘩してる声が聞こえる。賑やかだなぁ。

「こんなに子供がいるんですか⁉︎」

「そうですね…。ざっと30名弱ほどでしょうか。みんな良い子なんですよ」

「この子達大人になるまで、ここで育つんですか?」

「良いご縁があれば養子縁組する子もいますよ。もちろん、子供との相性を見てですが」

部屋に入ると新しいお友達?と僕に寄ってくる子もいた。僕の年齢だとまだ保護対象らしい。
だからゲーハさんも、あんなに心配してくれたのかな。

「この方は冒険者ですよ。皆さんよりも少し年上のお兄さんは、とても強いんですよ。見習いましょうね」

はーい!と手を上げてくれ、どんな冒険してるの⁉︎と興味津々で聞いてくれる子もいれば
冒険者がなんだよ!俺たちを捨てた親と同じ職業のやつなんか来るな!とか、僕達魔物の餌にされるの?とか、反応が極端だった。
その中に、隅っこで1人ポツンと壁に向かって座ってる子がいた。

「あの子は…」

「ジーザですか。あの子はちょっと特殊で…。あまり刺激しないよう気をつけてください」

本当に1人、ポツンと座っている男の子。病院で1人窓を見ていた頃の僕と重なる。寂しそうな生気のないような目が、とても見ていて悲しい。

「話しかけても大丈夫ですか?」

「えぇ。話すぐらいなら。ただ、魔物の話や親の話はご法度でお願いいたします」

「わかりました」

シスターの許可をもらいジーザの側に歩み寄る。他の子は、もう僕には興味はないらしく遊び始めていた。

「初めまして。僕はハヤトだよ」

「……」

僕に振り返る事なく無反応なジーザ。どうしようかな。僕が見てジーザがわかるわけじゃないし…。
もしかしたら、鑑定って使えないのかな。見たものをロッソに聞けば、解決策がわかるかもしれない。ジーザに本当なら確認を取るべきなんだろうけど、これでは取れそうにない。

ーージーザを鑑定ーー

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

名前:ジーザ
レベル:11
種族:人族
年齢:7歳

HP:463
MP:111
攻撃:98
防御:79
魔力:893
速度:20
幸運:8

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

MPに比べると魔力の数値がかなり大きい。
以前、ロッソにステータスの事を聞いた時にMPは魔力を発動し操り物事をなそうとする力。すなわち魔力を使い魔法に変換する力だと教えられた。

それが少ないということは、魔力を操る力が無いと言うことになる。これだけの差があれば、魔力が暴走しても仕方がないのかもしれない…。
でも、これ僕ではどうしようもないなぁ…。

「用事が無いならほっといて…」

「君とお話がしたいんだけど、僕と話すのは嫌かな?」

「……」

それ以後は、何を話しかけても頑なに無視された。初めて会った僕が話しかけても、心開いてくれたりはしないか。

僕も初めて会った看護師さんが、頑張って病気治そうね!と言って来られても、何も知らないくせにと思っていた。これは少しづつ時間をかけて打ち解けていく必要があるのかもしれないね。

「ねぇ!こいつと話しても楽しくないよ。だって、こいつずっと無視するんだもん」

「そんなことを言ってはいけません!彼も大切な保護院の家族なんですよ!」

「ケッ!なにが家族だよ!俺らは捨てられてここにいるんだ!」

シスターが突っかかってきた子供をなだめようと必死になってる。シスターとしてはジーザを刺激されたくない思いが強いのかもしれない。
でも、それがかえってジーザの心を閉ざしているように僕には見えた。

「明日また来ても大丈夫ですか?」

「それは構いませんが…」

「それなら明日もお邪魔します。ジーザ、また明日ね」

僕はそう声をかけると保護院を出て、ルピ達の下へと向かった。
ルピとロッソは、まだステータスがどうだこうだってやり取りしてて、よく飽きないなぁって逆に感心しちゃうよ。

「終わったから帰ろう」

『見て来たんでしょ?どうだったの?』

「鑑定使えたら見れて、MPに比べて魔力がかなり高かったよ。やっぱりそれが暴走の原因なのかな」

『そうね…。それが一番の理由でしょうね。でも、このままだとその子確実に死ぬわよ』

ロッソが、前回は運よく魔力の暴走に身体が耐えれたのかもしれない。でも、そう何度も奇跡なんて起きないわと言ってくる。

両親を自分のせいで失ってしまっという後悔。保護院で居場所が得られてない不安感。不安定な気持ちがどこで爆発してもおかしくないわと。
コリーと話して解決策が無いか考えてみると言ってくれたので、今は2人に任せるしか方法はないのかもしれないね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました

Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。 実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。 何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・ 何故か神獣に転生していた! 始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。 更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。 人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m なるべく返信できるように努力します。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

召喚されたけど不要だと殺され、神様が転生さしてくれたのに女神様に呪われました

桜月雪兎
ファンタジー
召喚に巻き込まれてしまった沢口香織は不要な存在として殺されてしまった。 召喚された先で殺された為、元の世界にも戻れなく、さ迷う魂になってしまったのを不憫に思った神様によって召喚された世界に転生することになった。 転生するために必要な手続きをしていたら、偶然やって来て神様と楽しそうに話している香織を見て嫉妬した女神様に呪いをかけられてしまった。 それでも前向きに頑張り、楽しむ香織のお話。

一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!

モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。 突然の事故で命を落とした主人公。 すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。  それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。 「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。  転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。 しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。 そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。 ※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...