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65話ちと暑いぐらい

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「ア”ヅイ…」

『あるじ情けないわよ。ルピの結界があるでしょ』

『もう少し結界強くする?』

『ダメよ。あまり強くすると覚られてしまうわ』

僕は今猛烈に熱い。暑いを通り越して熱い。身体からボタボタ流れ落ちる汗。飲んでも飲んでも、飲んだ瞬間から水分が身体から出てる気がする。

「なんで2人は平気なの?大丈夫なの?」

『暑いものは暑いわよ。でも、人間とは体のつくりが違うから我慢はできるわね』

意気揚々と僕の前を歩くルピとロッソ。その後ろを僕は項垂れるように歩いていく。僕達がいるのは今火山火口脇にある洞窟の中。
なんでこんなところにいるかっていうと、それはね…




――4日前――

ドリーから帰って、コリーにお弁当持ってきたよと声をかけたけど、風呂作りが忙しいから後で食べるのと言われたため置いて僕達はドリーへ帰った。

翌朝家に行くとコリーが玄関先で待っており、風呂が完成したから待っててくれたのかなと思えば違った。
ちなみに風呂は完成したそうだ。流石仕事が早い!

『主人や、ドラゴンの魔石が欲しいんじゃがの。取りに行ってきていいかの?』

「ドラゴンの魔石?そんなもの何に使うの?」

『ちとの。必要なんじゃ』

『ドラゴン!ルピも見たい!!』

『あまり大勢で行くとのぉ…。気づかれて逃げられてしまうからの。ワシと精霊で行こうかと思うんじゃが』

コリーはさすがに従魔3匹に妖精1匹連れて行くと、ドラゴンに強い気配が複数来たと逃げられてしまう可能性が大きい。
行っても2人までじゃと。

なんでそこにドラゴンいること知ってるの?って聞いてみると、奴隷商のところへ行く前に、いろいろ散歩がてら歩いていたら見つけたんじゃと言っていた。
散歩がてら歩いててドラゴン見つけないでしょ。

『ルピが行きたい!ルピ、ドラゴン見て見たい!!』

「でも、ルピが行ったら逃げられちゃうかもなんだって」

『なら、ルピとハヤトで行けば良いんじゃないの?』

目をキラキラさせながら、僕を見てくるルピ。反則だよルピその目…。えー…でも、僕はドラゴン興味はあるけど見たいわけじゃないんだよね。
なんか怖いじゃん…。

『急ぎ欲しいんじゃが行って来ていいかの?』

「あ、うん。それって大丈夫なの?危なくないの?」

『そこら辺の魔物とはわけが違うが、勝てんわけではないの』

すごいね。ドラゴンってすごく強くて獰猛なイメージがあるのに、勝てんわけではないとサラッというコリーがかっこよく見えるよ。
コリーもこう言ってることだし良いかな。無茶するタイプには見えないし。

「うん。わかった。気を付けて行って来てね。どれぐらいで帰ってくるの?」

『そうじゃのぉ。少し遠いが5日もあれば帰ってくるじゃろ』

「5日か。わかった。その間に僕は家に必要なもの買って待ってるよ」

『ヤダー!!ルピが行くー!!』

この後、ルピが行きたいルピが行きたいと駄々をこねまくるルピ。

美味しいもの食べて待ってよと言ってもダメ。遊んで待ってよと言ってもダメ。怒ったら逆に悪化した…。

ロッソにダメなものはダメだよって言ったばかりだから、ここでルピの我儘聞くわけにはいかないよ。

『はぁ…。このままじゃ収まり付かないわ。仕方ないから、あたしとルピとあるじで行ってくるしかないかしらね』

『そうじゃのぉ。ワシは魔石が入れば誰が取りに行っても問題ないんじゃが』

チラッと3人で僕を見てこないでよ。わかったよ。行けば良いんでしょ行けば!行くよ!

「今回だけだからねルピ。我儘ばかり言っちゃダメだよ。ロッソにありがとうして』

『ロッソありがとう!大好き!』

『…////。別に、良いわよ…』

ロッソが照れてる。初めて見た。可愛い…。普段ツンデレなロッソが本気で照れてる。
言うと照れてなんてないわ!って言いそうだから言わないけど。ルピの笑顔にはみんな敵わないんだね。

『主人や、悪いの。行くなら10日分の食糧持って行った方が良いぞ』

「え?だってさっき5日って」

『それはワシら従魔の足で行った場合じゃ。ルピが本気で主人連れて飛ぶわけにいかんじゃろ?』

えぇぇぇ…。ドラゴンのために10日の旅!?安請け合いしちゃったな。けど、行くって言ったのに行かないなんて言えないしなぁ…。仕方ないか。

「わかったよ。10日分の準備して行くよ。どこに行けば良いの?」

『南にある火山火口脇の洞窟じゃ』

『あら。あんなところに洞窟なんてあったのね。行ったことはあるけど、洞窟なんて気づかなかったわ』

『ある程度下までおりんとわからんからの』

火山!?今火山って言ったよね!?そんなところにある洞窟なんて行って大丈夫なの??ドラゴンなんでそんな辺鄙に場所に住んでるんだよ…。

「それって、人間の僕が行って大丈夫なの?」

『ルピの結界があるから大丈夫よ。あまり強くはできないだろうけど、死ぬことはないわ』

「死ぬことはないって…」

『大丈夫じゃ。ちと暑いぐらいじゃて。ワシも行って大丈夫じゃったんじゃから』

まぁ、実際に行ったコリーが大丈夫って言ってるんだから大丈夫なんでしょ。その後マーヤさん達に10日ほど家を空けると伝え大量の食糧と飲み物を買い込んだ。
そして向かった先で、僕は来たことを後悔することになる。



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