上 下
62 / 84

58話なんてことでしょう

しおりを挟む
目の前にデンと置かれているのは、元風呂敷。ルピとロッソは嬉しそうにしてるけど、僕はあまり嬉しくない。

今度からはもっと言葉選ばないと。前もそう思う瞬間があったのに、僕は学習能力が低いみたいだ…。

出来上がったものは、コリーが作るものと同じ雰囲気を感じる。匠の仕事だ。
なんということでしょう。見えない精霊の手にかかれば風呂敷がいとも簡単に巾着へ…って。おかしいでしょ。そもそも針と糸は?

「ロッソ、なんで針と糸もなくて巾着が出来上がるの?」

『知らないわ。できたんだから良いじゃない』

『良いじゃない!』

はぁ…。自由奔放な従魔を持つ僕は大変だよ。2人と精霊に、今度からは僕に確認してから作ること!と言ったけど、早くアイテムボックスここに作ってと言ってくるから聞いてないかもな。トホホ…。

でも勝手に作ったのは別として、すごく綺麗な巾着が出来上がってきたな。これ本当にどうやって作ったんだろ?

「ルピ、精霊さんに針と糸はどうしたの?って聞いてくれる」

『良いよー!精霊さんハヤトがね---------』

ルピが楽しそうに、うんうん!すごいね!と話しを聞いてくれる。ルピがすごいねって、いったい何してくれちゃったんだ。ロッソも、あら器用なことするじゃないと感心しているし、早く僕にも教えて。

『針はね、ホーンラビットのツノを折って細くして作ったんだって!糸は糸を作る蜘蛛がいるから、その蜘蛛から貰ったんだよ!』

「はい?ホーンラビット倒してツノ折って、蜘蛛倒して糸取ったってこと?」

『違うよ!蜘蛛は倒すと糸取れないの。だから、お願いして貰ったんだって!』

『違うわ。お願いじゃなくて、脅して出させたのよ。蜘蛛が出す普通の糸だと使えないから、それようの糸を出させたのよ』

精霊って可愛いイメージじゃないの?殺してツノ折っただの、脅して出させたって恐喝じゃん…。
2人ともそれを聞いて、すごいだの器用だの言ってたの⁉︎僕との感覚が違いすぎるでしょ!

『精霊さんも一緒に行こう!』

『そうね。精霊がいれば魔石以外のものが取れそうだし、良い考えだわ』

ちょっとちょっとちょっと‼︎
ルピ達にとっては新しい友達と知り合って、あなたも一緒に遊びに行こうよ!って感覚なんだろうけど、内容は魔物討伐だからね?
でも、僕といても暇だろうし仕方ないか。

「ちゃんとコリーに確認してからじゃないとダメだよ。コリーの精霊なんだから」

『聞いてくるー!---------良いよってー!』

やることが早いな。はぁ…。ここで僕が何か言っても構ってやれるわけじゃないしね。3人にあまり遠くまで行かないようにねと許可を出して、僕は家の中へと入って行った。

『主人や、一緒に行かなかったのか?』

「あの3人に人間の僕はついていけないよ。それに、コリーのお皿とか作ろうと思って」

『ほっほっほ。若い主人が情けない事を言う。飛ばして貰えばついていけたじゃろうに。ま、あやつも遊べる相手が増えて嬉しがっとるじゃろう』

飛ばして貰えばって…。きっと魔物討伐を競い合うようにするんだろうから、僕がいれば邪魔になるだろうしね。
皆んなで仲良くしてくれれば、それが一番だよ。

「コリー、外に置いてある丸太の一部貰っても良い?」

『構わんぞ。必要ならすぐ切るぞ』

「そんなにいらないから!」

ルピやロッソも規格外だけど、簡単に家を建てたり、すぐ木を切るぞって言うコリーも規格外だよ。
外に出て丸太の一部を貰うと、どんなものにしようか頭の中で考えを巡らせることに集中した。

「うーーん。コリーみたいに僕も細工できれば良いのに。なんで僕が作ると、子供が描いた絵のようになるんだ」

どうせ作るならと、ルピ達のお皿も新しいものに挑戦中。ルピは羽のデザイン。ロッソは3つの尻尾。コリーは帽子とヒゲをイメージ。
でも、僕が作ると子供がクレヨンで描いた絵のように歪んだ彫刻になってしまう。

失敗しては消して、消しすぎて薄くなれば新しい木材で挑戦していたら、僕の横にはすごい数のコップとお皿が出来上がっていた。

『これはなにをしておるんじゃ。木が泣いておるぞ』

「あ、コリー。うん…ごめん。コリーみたいに細工できないかなってやってみたんだけど…」

『挑戦するのは良いことじゃ。しかし木を無駄にしてはいかん。木にも命はあるのじゃ。使う以上は意義ある使い方をしてやらんとな』

コリーの言う通りだ。できないからとひたすら作った僕が悪い。コリーはお皿やコップを手に取ると、何事も勉強じゃ。これらはおがくずにして畑に撒くかのと無駄にならない方法を考えてくれた。

『主人や、なんでもかんでもスキルでどうにかすると考えちゃいかんぞ。自分で彫ることも味わい深いものじゃ。このようにな』

「はや!って、あの手すりの細工はコリーが彫ったものなの⁉︎」

『そうじゃ。ワシも何百年も彫って彫って身につけたワザじゃ。一朝一夕で真似できるものじゃないぞ。ほーっほっほ』

そっか。いつの間にか僕は自分の力で何かをやるってことをしてなかったのかもしれない。貰った力で、どうにかすることに慣れてしまってたんだろうな。

「コリー。掘るやつ僕に貸してくれる?自分の手で不細工かもしれないけど頑張って彫ってみるよ」

『良いぞ良いぞ。何事も練習じゃ。主人が一生懸命作ってくれれば、ワシらはそれだけで嬉しいのじゃ。見てくれなぞ気にせんでいいぞ』

本当ならもっと怒られても良いのかもしれない。きっとそれをしないのは、僕に自分で気づいて考えて欲しいと思うコリーの優しさなんだろう。

その思いに応えられるよう、僕も頑張らなきゃ!


しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!

モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。 突然の事故で命を落とした主人公。 すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。  それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。 「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。  転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。 しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。 そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。 ※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

神々の仲間入りしました。

ラキレスト
ファンタジー
 日本の一般家庭に生まれ平凡に暮らしていた神田えいみ。これからも普通に平凡に暮らしていくと思っていたが、突然巻き込まれたトラブルによって世界は一変する。そこから始まる物語。 「私の娘として生まれ変わりませんか?」 「………、はいぃ!?」 女神の娘になり、兄弟姉妹達、周りの神達に溺愛されながら一人前の神になるべく学び、成長していく。 (ご都合主義展開が多々あります……それでも良ければ読んで下さい) カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。

召喚されたけど不要だと殺され、神様が転生さしてくれたのに女神様に呪われました

桜月雪兎
ファンタジー
召喚に巻き込まれてしまった沢口香織は不要な存在として殺されてしまった。 召喚された先で殺された為、元の世界にも戻れなく、さ迷う魂になってしまったのを不憫に思った神様によって召喚された世界に転生することになった。 転生するために必要な手続きをしていたら、偶然やって来て神様と楽しそうに話している香織を見て嫉妬した女神様に呪いをかけられてしまった。 それでも前向きに頑張り、楽しむ香織のお話。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水
ファンタジー
 クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。  神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。  洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。  彼は喜んだ。  この世界で魔法を扱える事に。  同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。  理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。  その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。  ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。  ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。 「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」  今日も魔法を使います。 ※作者嬉し泣きの情報 3/21 11:00 ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング) 有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。 3/21 HOT男性向けランキングで2位に入れました。 TOP10入り!! 4/7 お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。 応援ありがとうございます。 皆様のおかげです。 これからも上がる様に頑張ります。 ※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz 〜第15回ファンタジー大賞〜 67位でした!! 皆様のおかげですこう言った結果になりました。 5万Ptも貰えたことに感謝します! 改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。

処理中です...