僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下

文字の大きさ
上 下
46 / 84

44話対峙、そして枯渇

しおりを挟む
ルピはその後、僕と目を合わせようとせず出てくる魔物を討伐していった。お腹減ってない?と聞いても、食べたくないと返されてしまい困ってしまった。重症だ…。僕がもっとちゃんと説明できればいいんだけど…。

その日はルピは一日中なにも食べなかった。僕に結界を張り続けてる以上、魔力も減ってお腹も減ってるはずだ。
ロッソも少しぐらい食べなさいよ!食べなきゃ力出ないわよ!と言ってくれたけど、いらないと丸まってしまった。

仕方なくロッソと僕でお弁当を出すけど、ルピが食べない姿を見ると僕達も食べる気にもなれず、ロッソがリンゴだけで良いわとリンゴをかじってその日はテントで就寝。

翌朝もそのお昼も、ルピはご飯を食べなかった。食べるようきつめに言ってみたけど、食べたくないのになんで食べさせようとするの!と頑なに断られる。
このままだといけないと思うけど、なんて言えば食べてもらえるんだろう…。

『あるじ、この先に襲われている人間がいるわ』

「だいぶ先?」

『ここから走って20分ほどよ』

「急いで向かおう」

『ルピが先に行く!ルピが守れる!!』

「ルピ、ちょっと待って!!!!」

僕の言葉を聞かずにルピは行ってしまった。きっと僕に守れることを証明して、ドラスさんとマーヤさんの側にいれると言いたいのかもしれない。
ロッソにここら辺に出る魔物なら僕でもどうにかなるから、ルピが無茶をしないように見てきてほしいと後を追いかけてもらった。

僕が見える場所まで付くと、馬車の周りに3人の遺体。そしてそれを囲むように首輪をつけた魔物が複数いた。ルピとロッソは攻撃してくる魔物から馬車を守っている。

ロッソが『近づいちゃダメ!近くに魔物を操ってる人間の気配を感じる』と念話を飛ばして来る。
ルピが肩で息をしているように見えるため、相当無理をしているんだろう。ロッソにルピに結界を解くよう伝えてくれと言うけど、ロッソが首を横に振るためルピが聞くつもりはないようだ。

ふっと後ろから気配を感じ振り向くとフードを被った男らしき人影が剣を振り下ろしてきた。
ガキンッ!とルピの結界に阻まれて男はよろめく。

「お前だな。お前があの従魔達の主人か…。あれらは良い値で売れる。悪く思うなよ!」

咄嗟にナイフを出すがナイフと剣とでは差がありすぎてしまい、ほぼルピの結界に守られている状態だ。これではまずい…‼︎ルピに相当な負担がいってるはずだ…!

ロッソからルピが限界に近いと念話が送られ、操られてる魔物を殺しても良いかと確認してくる。
人に害をなさない魔物なら解放して上げたいけど、こうなれば仕方ない…。馬車に人がいれば守って欲しい。それ以外は任せる。
ルピに結界を解くよう強く伝え、僕はその間にもフードの男と対峙する。

「何が目的だ!」

「あの馬車にいるのはな、今後俺たちの仕事をやりやすくできるかどうかの要が乗っててな‼︎殺させてもらいたいんだよ‼︎」

ルピが結界を解除しくてくれたので、ナイフで剣に応戦する。間合いが違いすぎて腕や足に血が滲むが、やれないわけではないなと距離を取りつつ話しかけてみる。

「お前は、あの馬車の中にいる人間が目的なのか⁉︎」

「当初はその予定だったが、それよりも良いおもちゃを見つけてな…。今はそのおもちゃが頂きたいのさ!」

振り下ろされる剣をかろうじてナイフで受け止める。

「お前みたいに弱いテイマーには勿体すぎるおもちゃだからな!俺たちでうまく使ってやるの…っさ‼︎」

ガキイィィンという音ともに、僕の手からナイフが落ちていた。しまったと思う時には、首筋に相手の剣が光っており動けない。

「お前の従魔なら命令しろ。俺たちに危害を加えるなと」

「するつもりはない‼︎あの子達を危険な目に合わせるつもりは僕にはない‼︎」

「なら死にやがれ‼︎カッコつけた死に損ないがぁぁああ‼︎」

剣が振り下ろされた。腕を上げガードをする。が、特になにも起こらず目を開けると、そこには首がない男の死体ーーーーーーーーーがあった。

『早くきて!ルピが!』
慌ててルピのそばに駆け寄る。ルピは魔力が限界にきていた。その最後の力を絞って僕と対峙する男を倒してくれたようだ。声をかけてもうずくまり肩で息をするルピ。ポーションを鞄から出し抱き上げる。

「ルピ…ルピッ!魔力回復用のポーションを…ッ!これを飲むんだルピ!」

飲む気配がない。無理やり体を起こして口につけるが、ダラダラとポーションが地面に吸収されて行く。体にもかけてみるがダメなようだ。
ロッソがこれだけ枯渇しているんだから、体にかけても意味がないわ‼︎早く飲ませなきゃ本当に危ないわ‼︎

「飲んでルピ!お願いだから飲んで‼︎」

「私に貸しなさい!」

いきなり女の子の声がしたかと思うと、その子はポーションを奪い取ると口に含みルピに口移しで飲ませる。
ルピの喉が揺れているので飲んだんだな…とホッとする。 
しばらく待つと顔色と呼吸が落ち着いてきて、安堵で座り込んでしまった。

「ありがとう…助かりました」

「あなたは…ッ!従魔の主人なんでしょう⁉︎なんでこんな状態になるまで…‼︎」

セミロングの青い髪の女の子が僕に向かい叫んでいた。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!

モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。 突然の事故で命を落とした主人公。 すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。  それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。 「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。  転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。 しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。 そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。 ※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...