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36話リンゴと薬草

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ゲーハさんが勇者の末裔だったことにもビックリだけど、でも以前教会で勇者のステータス見た時に制約の指輪なんて書いてなかったな。

冒険者のやる気を上げるように置いてあるものだろうし、こんなえげつないもんつけてたのかってなるよりは良いのかな。
わからないことは考えても仕方ない。

「それで、お前の結界と鳥の魔力の問題はどうするんだ?」

「昨日出した鳥は、自分でエサを食べるから大丈夫って言ってました。あと、ドラスさん達に危険があればわかるらしいです」

「分身が自分でエサを食べる?んなわけあるか。魔力で動いてるもんだぞ」

『リンゴ食べれば力になるの』

「え?そうなの?ルピが出したお水で育てたからかな?」

『それもあるけど、昨日土にも少し力をあげたから』

「へぇー。普通に耕しているように見えて、ルピはいろいろ考えてたんだね」

『うん!』

ルピは可愛くてすごく賢いんだね。またいい子いい子と撫でてあげる。それが嬉しいのかスリスリとしてくるのが可愛い。

「水?耕す?話が全く分からん」

ゲーハさんにドラスさんの家の庭を借りて、生産ギルドで貰った種とリンゴの種を植えたこと。
植えてルピが耕したら翌日には実がなっており、鳥は自分でその実を吸収して動いているらしいと伝えた。

「んなわけあるかぁぁぁぁ!どこの世界に植えたら一晩でリンゴの木が育って実がなって、それを分身が自分で食べて動くなんて非常識なことが起きるんだ!」

「ここにあるじゃないですか」

ルピにドラスさんの側にいる鳥を呼んでもらって、アイテムボックスから出したリンゴを渡すとついばむように吸収していった。

「ほら」

「……………」

「ゲーハさん?」

固まっちゃったよ。どうしよう。

「あ、食べます?味も美味しいんですよ!今朝みんなで食べたら、甘くてすごくおいしかったんです!まだありますから」

「お前はバカか!この状況で、あ、食べます?なんて聞かれて、旨そうなリンゴだななんて言えるかぁぁぁぁ!」

もう、固まったと思ったら叫びだすなんだ忙しい人だな。
ゲーハさんはありえないとブツブツ言っていたけど、ありえるものはしょうがない。
僕もビックリしたけど、きっとこれが日常になっていくんだろうから。鞄から出したリンゴは取り合えず机の上に置いた。

「それで、その恐ろしく魔力が高そうなリンゴをお前はどうするつもりだ。鳥のエサ用か」

「リンゴは全部鳥が食べるわけじゃないので、売れるなら売りたいです。薬草もリンゴも」

「リンゴがリンゴなら薬草も同じようもんだろうな。で、どこに売るんだ?」

「え?薬草採取の依頼で買ってもらえないんですか?」

「こんな非常識な魔力含有量含んでそうなもの買えるか!どこで取ってきたんだと大騒ぎになるわ!」

そうなの!?薬草栽培で生きていく道もありかなって考えていたのに…。売れないものが大量に出来上がっても仕方ないしな。
腐るわけじゃないみたいだし、当分は鳥さんのエサかな。

「せめて、これが通常の薬草かポーションならな…。売る方法もあるんだが」

「ポーションなら売れるんですか⁉でも、個人売買なんてして良いんですか?」

「いや違う。売ってる店に卸すんだ。薬草をそのまま売るよりも、ポーションにして売る方が高いからな。だから調合ができる人間は、ポーションにして店に売るやつもいるんだよ」

「でもそれって、商用ギルド通さなくていいんですか?」

「商用ギルドに店舗登録して許可がもらえれば売れるぞ。個人的に作ってる人間から買うか、自分で薬草買って作って売ってるはずだ。商用ギルドは薬草の買取のみだからな。生産ギルドで作ってはいるが、あれは教会で使われるものになる」

教会ではよほど重傷でなければ毒やケガを負うと低価格で治癒してくれるらしい。
冒険者もギルド職員も街の人もケガをすれば教会に行く。冒険者はステータス添付のお金を払うことで、街の人やギルド職員は街内会費の一部としてお金を払うことで、教会での治療は低価格。
ただし、ギルドカードや街人カードに毎月の制限回数が表示されるので無制限ではないみたいだけど。

「お布施取るだけ取って自分達にまったく恩恵が無いのは嫌だろう。ただし、効果が高いポーションがあるわけじゃないから、冒険者は自分で効果が高いポーションを買っているがな。じゃないと外で負傷した時困る」

「でも、それならもし僕がポーション作れるようになったら、商用ギルドに店舗登録すればいいんじゃないですか?」

「今は無理だな。店舗登録のための講習を数回受けてもらって、筆記テストに合格が必須だ。あとは信用だな。買い取るなら品質の見極めも必要だし、なかにはまがい物を持ってくるやつもいる。冒険者がここの店のポーションは問題ないと思わなきゃ買ってもくれないしな」

「講習は良いとして、筆記テスト…。仮に合格した場合、無料で最初に配るのはどうですか⁉それでわかれば買ってもらえそうじゃないですか!」

「どこでそれ使うんだ?外で負傷した人間が、よくわからない店から貰ったポーションを危ない時に使うか?街の人間が、教会に行けば治る傷を怪しいポーションかけるのか?」

今は諦めろ。そのうち得策が出てきたら考えればいいと言ってくれたので、薬草とリンゴは当分アイテムボックスの中だな。
リンゴを片付けようと手を伸ばし、キミがポーションになれば良いのにねと思いしまおうとすると手もとが光り


ポーションがあった。
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