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28話冒険者ギルド(前編)
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「なんだい。うるさいね。もう少し静かにできないのかい」
パン屋の仕事を終えたマーヤさんが台所へ戻ってきた。売れ残りがあったのかな。カゴに数種類のパンが入っている。
「ルピがしゃ、しゃ、喋ったんたよ!」
「なんだい。うるさい次はまともにも喋れなくなったのかい」
相変わらず容赦がないマーヤさん。でも、2人にとってこれは愛情証言の1つだと僕は知ってる。初めて見た人によっては、なんて仲が悪い夫婦なんだと思うかもしれないけど…。
「だからおまえ。ルピが喋ったんだよ!」
「何を言ってるんだい。いつもたくさん話してくれてるだろう。おかしなこと言う人だよ。ねぇルピ」
「ピィー♪『そうだよね!』」
「ほら、ルピもおかしいって言ってるだろ」
ちょっと見ていて可哀そうになってきたため、僕のスキルに従魔念話があることを伝えマーヤさんにドラスさんが驚いている理由を話したが
マーヤさんがドラスさん以上に驚くことはなくルピはやっぱりお利口さんですごいんだねぇと褒めていた。
「おまえ、ちゃんとわかってるのか⁉従魔と念話で話せるなんて俺は聞いたことがないぞ!」
「あたしだってないさね。でも、ルピとハヤトがそれで良いなら良いじゃないか」
「そういうもんなのか…?」
「そういうもんだろ。それとも、あんたは2人が聞いたことがないことができるからって追い出しでもするのかい?」
「そんなわけないだろ!でも、俺は俺なりに心配してるんだよ」
「その気持ちはわかるが、どうしたもんかねぇ。それに話してきたっことこは、誰かにルピのことが知られたってことなんだろ?」
さすがマーヤさん。ドラスさんみたいにただ驚くだけじゃないく、言葉の裏に隠れる意図を読み取ってくれる。
「今日冒険者ギルドのゲーハさんの前で、うっかりルピと話してしまって従魔と話せるのか?と疑問を持たれてます」
「そういうことかい。アンタ、明日ハヤトと一緒にギルドに行ってやりな」
「いや、俺はちょっとギルドには…。パン屋の仕事もあるしだな」
「ろくに小麦も運べない。パン詰めさせたら潰す。会計は間違う。アンタがいても邪魔なだけさね」
「でもな…」
「つべこべ言わず行ってきな‼小さい男だね」
1言えば10マーヤさんに返され立つ瀬がないドラスさん。諦めたのか明日一緒に冒険者ギルドに行こうと言ってくれた。
僕としてはゲーハさんと明日会うのに得策が思い浮かばなかったから、ドラスさんがついてきてくれるのは心強いけど…無理強いはできない。
「とりあえずあたしは晩御飯の準備をするからね」
マーヤさんが料理を作りに奥へ行く。ドラスさんは考え事をしているようで無言が気まずい。やっぱり無理強いはいけない。断ろう。
「すいません。ドラスさん明日僕達だけでも大丈夫なんで」
「いや、大丈夫さ。お前たちが気にすることじゃない」
その後食事の時にもドラスさんは黙々と食事を続けており、いつもならマーヤさんが怒りそうな気もするのに静かな食卓を囲み夜が更けていった。
朝起きるとドラスさんが台所でお茶を飲んでいる姿がない。あれ?いつもならいるのにな。パン屋の厨房へ向かうとここはいつも通りルピとマーヤさんが準備をしていた。
「起きたのかい」
「はい。ドラスさんの姿が見えないんですけど、どこかお出かけされたんですか?」
「あぁ。気にしなくていいよ。ギルドに行くまでには姿を見せるさ」
マーヤさんが言った通り、ルピと朝ご飯を済ませ2階でギルドに行く準備をしているとドラスさんが下で待っているからなと扉越しに声を掛けられ返事を返す。
1階に下りると、いつもは襟がないシャツに動きやすい服装をしているドラスさんが、襟付きのシャツにジャケットを着ていた。
準備できたなら行こうかと僕とルピの前を歩くドラスさんの後ろについて行く。冒険者ギルドに着くとドラスさんから受付さんに話しかけた。
「ギルドマスターにお会いしたい」
「どのようなご用件でしょう?アポイントは取られていますか?」
「後ろにいるハヤトと従魔のことで来たと伝えてくれ」
「かしこまりました」
僕達に受付さんが目線をやると、立ち上がり奥へと向かう。しばらく待つとお待たせしましたと昨日の部屋へ案内された。
「受付が知らない男が一緒にいるというから、誰かと思ったがドラスお前だったのか」
「隊長。お久しぶりです。顔も見せず申し訳ありませんでした」
「堅い話しはいい。それに俺はもう隊長じゃない。ただのギルドのお守り役さ」
「謙遜をされないでください。出世じゃないですか」
「まぁ、そんな話は今は良い。それよりどうしてお前がここにいるんだ?」
ドラスさんは、街の外で僕達にゴブリンに襲われているところ助けられたこと。そして僕達を今家で面倒見ていることを伝える。
ゲーハさんは仮にもお前Dランクまで行ったのに、ゴブリンごときにやられたのかと呆れていた。ドラスさんDランクだったんだ…。でも、あの時は小麦を守ることを優先してたんだから仕方ないよ。
「それで、俺はそこのハヤトが連れている従魔のことが聞きたいたいんだが」
「ハヤトとルピは俺の命の恩人です。隊長…ギルドマスターのことは人として尊敬していますが、2人が言いたくないことは無理に聞かないでほしいとお願いしに来ました」
「俺には冒険者ギルドに登録した以上は冒険者たちのことを把握しておく必要がある。知らぬ存ぜぬで通る話でないことは、お前もわかっているはずだ」
「それをわかったうえでお願いしております」
「はぁ…。親心かなにかわからないがな、強い従魔を欲して狙うやつもいる。従魔を手い入れるために使役しているテイマーが真っ先に殺されかねない。それにお前の後ろにいるやつはあまりにも考えがない。わかっていってるのか?」
「それは…」
ドラスさんはゲーハさんを尊敬していると言っている以上悪い人ではないんだろう。それに、僕達のことを思いついて来てくれたドラスさんを困らせるのは僕にとっては本意じゃない。
「僕でわかる限りのことはお話しします。でも、ここだけの話に留めておいてもらうのが条件です。話したことで、ルピに危害が加わったり僕から引き離そうとしたり、ドラスさん達に迷惑がかかるなら僕達はこの街を出ていきます」
ドラスさんが来たくないと言ったここに来てくれたんだ。僕も覚悟を決めよう。
パン屋の仕事を終えたマーヤさんが台所へ戻ってきた。売れ残りがあったのかな。カゴに数種類のパンが入っている。
「ルピがしゃ、しゃ、喋ったんたよ!」
「なんだい。うるさい次はまともにも喋れなくなったのかい」
相変わらず容赦がないマーヤさん。でも、2人にとってこれは愛情証言の1つだと僕は知ってる。初めて見た人によっては、なんて仲が悪い夫婦なんだと思うかもしれないけど…。
「だからおまえ。ルピが喋ったんだよ!」
「何を言ってるんだい。いつもたくさん話してくれてるだろう。おかしなこと言う人だよ。ねぇルピ」
「ピィー♪『そうだよね!』」
「ほら、ルピもおかしいって言ってるだろ」
ちょっと見ていて可哀そうになってきたため、僕のスキルに従魔念話があることを伝えマーヤさんにドラスさんが驚いている理由を話したが
マーヤさんがドラスさん以上に驚くことはなくルピはやっぱりお利口さんですごいんだねぇと褒めていた。
「おまえ、ちゃんとわかってるのか⁉従魔と念話で話せるなんて俺は聞いたことがないぞ!」
「あたしだってないさね。でも、ルピとハヤトがそれで良いなら良いじゃないか」
「そういうもんなのか…?」
「そういうもんだろ。それとも、あんたは2人が聞いたことがないことができるからって追い出しでもするのかい?」
「そんなわけないだろ!でも、俺は俺なりに心配してるんだよ」
「その気持ちはわかるが、どうしたもんかねぇ。それに話してきたっことこは、誰かにルピのことが知られたってことなんだろ?」
さすがマーヤさん。ドラスさんみたいにただ驚くだけじゃないく、言葉の裏に隠れる意図を読み取ってくれる。
「今日冒険者ギルドのゲーハさんの前で、うっかりルピと話してしまって従魔と話せるのか?と疑問を持たれてます」
「そういうことかい。アンタ、明日ハヤトと一緒にギルドに行ってやりな」
「いや、俺はちょっとギルドには…。パン屋の仕事もあるしだな」
「ろくに小麦も運べない。パン詰めさせたら潰す。会計は間違う。アンタがいても邪魔なだけさね」
「でもな…」
「つべこべ言わず行ってきな‼小さい男だね」
1言えば10マーヤさんに返され立つ瀬がないドラスさん。諦めたのか明日一緒に冒険者ギルドに行こうと言ってくれた。
僕としてはゲーハさんと明日会うのに得策が思い浮かばなかったから、ドラスさんがついてきてくれるのは心強いけど…無理強いはできない。
「とりあえずあたしは晩御飯の準備をするからね」
マーヤさんが料理を作りに奥へ行く。ドラスさんは考え事をしているようで無言が気まずい。やっぱり無理強いはいけない。断ろう。
「すいません。ドラスさん明日僕達だけでも大丈夫なんで」
「いや、大丈夫さ。お前たちが気にすることじゃない」
その後食事の時にもドラスさんは黙々と食事を続けており、いつもならマーヤさんが怒りそうな気もするのに静かな食卓を囲み夜が更けていった。
朝起きるとドラスさんが台所でお茶を飲んでいる姿がない。あれ?いつもならいるのにな。パン屋の厨房へ向かうとここはいつも通りルピとマーヤさんが準備をしていた。
「起きたのかい」
「はい。ドラスさんの姿が見えないんですけど、どこかお出かけされたんですか?」
「あぁ。気にしなくていいよ。ギルドに行くまでには姿を見せるさ」
マーヤさんが言った通り、ルピと朝ご飯を済ませ2階でギルドに行く準備をしているとドラスさんが下で待っているからなと扉越しに声を掛けられ返事を返す。
1階に下りると、いつもは襟がないシャツに動きやすい服装をしているドラスさんが、襟付きのシャツにジャケットを着ていた。
準備できたなら行こうかと僕とルピの前を歩くドラスさんの後ろについて行く。冒険者ギルドに着くとドラスさんから受付さんに話しかけた。
「ギルドマスターにお会いしたい」
「どのようなご用件でしょう?アポイントは取られていますか?」
「後ろにいるハヤトと従魔のことで来たと伝えてくれ」
「かしこまりました」
僕達に受付さんが目線をやると、立ち上がり奥へと向かう。しばらく待つとお待たせしましたと昨日の部屋へ案内された。
「受付が知らない男が一緒にいるというから、誰かと思ったがドラスお前だったのか」
「隊長。お久しぶりです。顔も見せず申し訳ありませんでした」
「堅い話しはいい。それに俺はもう隊長じゃない。ただのギルドのお守り役さ」
「謙遜をされないでください。出世じゃないですか」
「まぁ、そんな話は今は良い。それよりどうしてお前がここにいるんだ?」
ドラスさんは、街の外で僕達にゴブリンに襲われているところ助けられたこと。そして僕達を今家で面倒見ていることを伝える。
ゲーハさんは仮にもお前Dランクまで行ったのに、ゴブリンごときにやられたのかと呆れていた。ドラスさんDランクだったんだ…。でも、あの時は小麦を守ることを優先してたんだから仕方ないよ。
「それで、俺はそこのハヤトが連れている従魔のことが聞きたいたいんだが」
「ハヤトとルピは俺の命の恩人です。隊長…ギルドマスターのことは人として尊敬していますが、2人が言いたくないことは無理に聞かないでほしいとお願いしに来ました」
「俺には冒険者ギルドに登録した以上は冒険者たちのことを把握しておく必要がある。知らぬ存ぜぬで通る話でないことは、お前もわかっているはずだ」
「それをわかったうえでお願いしております」
「はぁ…。親心かなにかわからないがな、強い従魔を欲して狙うやつもいる。従魔を手い入れるために使役しているテイマーが真っ先に殺されかねない。それにお前の後ろにいるやつはあまりにも考えがない。わかっていってるのか?」
「それは…」
ドラスさんはゲーハさんを尊敬していると言っている以上悪い人ではないんだろう。それに、僕達のことを思いついて来てくれたドラスさんを困らせるのは僕にとっては本意じゃない。
「僕でわかる限りのことはお話しします。でも、ここだけの話に留めておいてもらうのが条件です。話したことで、ルピに危害が加わったり僕から引き離そうとしたり、ドラスさん達に迷惑がかかるなら僕達はこの街を出ていきます」
ドラスさんが来たくないと言ったここに来てくれたんだ。僕も覚悟を決めよう。
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