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24話 ゲーハは頭が痛い
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ゲーハさんの言葉になんて返していいかわからず黙ってしまった。うまく切り抜ける方法を探せば探すほど、人生でもこの世界でも経験が少ない僕では言葉が見つからない。
「で、どうなんだ?お前はその従魔の考えてることがわかるのか?」
「テイマーであれば、従魔の気持ちはある程度はわかるんじゃないですか?そうしないと討伐の時に困るんじゃないかと…」
「俺が聞いてるのは気持ちじゃない。考えてることがわかるのかと聞いてるんだ。質問には的確に答えを返せ‼」
怖いよゲーハさん…。つるっぱげの頭に鍛えられた身体。もしもサングラスかけてそれらしい格好してたら、確実に怖い世界の人に見えるよ。
本人はそんなつもりはないんだろうけど、僕は出会ったことがないタイプの人に委縮してしまう。
冒険者ギルドで絡まれた時は人のうわべだけしか見ない中年男。そんな人にいちゃもんつけられるぐらい腹は立ったが怖いとは思わなかった。けど、今は純粋に怖い。
「マスター。それでは怖がらせてしまうだけです。相手は登録したばかりの初心者です。もう少し言葉を選ぶべきです」
「俺はいつも通り普通に聞いてるだけだろ?それに俺は怖がらせてるつもりなんてまったくない」
「見た目が怖いのですから、言い方を丁寧にされたらどうですかと申し上げてるのです」
「お前けっこうひどいこと言ってるぞ…」
「事実を申し上げたままです」
受付さんが助け舟を出してくれ助かる。助かるけどマーヤさんしかり受付さんしかり、この世界の女性は強いのかもしれない。僕も気を付けよう…。
ゴホンッとゲーハさんは咳ばらいをすると話を再開してくる。
「俺の見た目が怖いつもりはないが怖いなら諦めてくれ。治しようがない。それでもう一度聞くが、従魔が考えていることがわかるのか?」
「なんとなくは…」
「なんとなくってどの程度わかるんだ?さっきは従魔とあきらかに会話しているように見えたが?」
「逆に聞かせてください。僕は他のテイマーに出会ったことがありません。他のテイマーの人は、どのように従魔と意思疎通をとっているのですか?」
「従魔の種類にもよるが、知能と技能が高い種族になればなるほど、詳細な命令も理解し対応することが出来る。しかし、理解ができるだけであって会話ができるわけじゃない」
ゲーハさんの話を聞くと知能が低い従魔は鍛え訓練することにより、
右の魔物を倒せ。威嚇しろ。攻撃せず待機。といった命令に従い動くことができるようだ。
それ以外にも寂しければ側によってくるし、お腹がすけばエサの前で待ったりなどして気持ちを伝えてくるらしい。それを見てテイマーは従魔の気持ちを感じ取るということだった。
「勇者の仲間のテイマーが従えた従魔は知能が高くステータスも半端ない。それぐらいの従魔になると、パーティーの現状を把握して動くことも可能だ。自分がどんなふうに動けば役に立つのかと考え動くからな。しかし、普通は無理だ」
「僕は山奥の小さな村で育ちました。その時に、ルピを卵から孵して今一緒にいます。それもあって、表情でルピの気持ちや考えはわかるつもりです」
「じゃぁ、さっきの会話しているように見えたのも従魔を見て気持ちを読み取ったって言いたいのか?」
「はい」
「お前なんか隠してるだろ」
ルピと念話で話せますなんて、初めて会って信頼関係もないゲーハさんに言っていいのかなんてわからない。わからない以上は嘘でも黙っておくほうが賢明な気がする。
「はぁ…。言う気がないもんを無理に聞き出しても仕方がない。それは置いといてだ。お前の従魔の異常さが本当かにわかには信じられんが報告に上がっている」
「異常さ…ですか?」
「昨日【ED】の魔物討伐の依頼を受けに街の外へ行った人間が、お前の従魔が魔物を見ることなく討伐していると伝えてきた。しかも、討伐した魔物は全て魔石になったとも。最初は嘘だと思ったが、お前が買取所に出した魔石の数。そして討伐完了の報告に出したのもすべて魔石。裏をとる必要はあるだろう」
見られてたんだ…。もっと気を付ければよかった…。買取所で魔石の数が異常だと言われていたのに、完璧に僕のミスだ。
「それでどうなんだ?報告した人間の話が本当なら、お前の従えてる従魔は普通じゃない」
「僕の口からは言えません」
「なら誰の口からなら言えるんだ?」
「それも言えません」
「お前ふざけてるのか‼」
「ピィーーーー‼ヤァーーーーーー‼『やめて!ハヤトをいじめないで‼』」
ルピが叫んだ瞬間に強い風が部屋の中に吹き、窓ガラスは割れ机に置いてあった書類や花瓶などが散らばり割れていった。
「……………。これは、その従魔がやったのか?」
「僕の口からは言えません…」
「そうか…。今日はもう帰れ。この状態では話にならん。悪いが明日また話そう」
「わかりました…」
「あぁ。明日のこの時間にまた来てもらえるか。それから、ドラスにたまには顔を出せと伝えといてくれ」
「ドラスさんにですか?」
「あいつは俺の昔の部下でな。いろいろあって疎遠になっているが、まぁ伝えておいてくれればそれで良い」
「わかりました」
受付さんがギルドの入り口まで見送ってもらい外へ出る。
これから生産ギルドに行く気にもなれず、ひとまず教会の裏の広場で少し休もう。
「俺は今、猛烈に頭が痛い…」
「私はこの後片付けを考えると、頭が痛いです…」
「で、どうなんだ?お前はその従魔の考えてることがわかるのか?」
「テイマーであれば、従魔の気持ちはある程度はわかるんじゃないですか?そうしないと討伐の時に困るんじゃないかと…」
「俺が聞いてるのは気持ちじゃない。考えてることがわかるのかと聞いてるんだ。質問には的確に答えを返せ‼」
怖いよゲーハさん…。つるっぱげの頭に鍛えられた身体。もしもサングラスかけてそれらしい格好してたら、確実に怖い世界の人に見えるよ。
本人はそんなつもりはないんだろうけど、僕は出会ったことがないタイプの人に委縮してしまう。
冒険者ギルドで絡まれた時は人のうわべだけしか見ない中年男。そんな人にいちゃもんつけられるぐらい腹は立ったが怖いとは思わなかった。けど、今は純粋に怖い。
「マスター。それでは怖がらせてしまうだけです。相手は登録したばかりの初心者です。もう少し言葉を選ぶべきです」
「俺はいつも通り普通に聞いてるだけだろ?それに俺は怖がらせてるつもりなんてまったくない」
「見た目が怖いのですから、言い方を丁寧にされたらどうですかと申し上げてるのです」
「お前けっこうひどいこと言ってるぞ…」
「事実を申し上げたままです」
受付さんが助け舟を出してくれ助かる。助かるけどマーヤさんしかり受付さんしかり、この世界の女性は強いのかもしれない。僕も気を付けよう…。
ゴホンッとゲーハさんは咳ばらいをすると話を再開してくる。
「俺の見た目が怖いつもりはないが怖いなら諦めてくれ。治しようがない。それでもう一度聞くが、従魔が考えていることがわかるのか?」
「なんとなくは…」
「なんとなくってどの程度わかるんだ?さっきは従魔とあきらかに会話しているように見えたが?」
「逆に聞かせてください。僕は他のテイマーに出会ったことがありません。他のテイマーの人は、どのように従魔と意思疎通をとっているのですか?」
「従魔の種類にもよるが、知能と技能が高い種族になればなるほど、詳細な命令も理解し対応することが出来る。しかし、理解ができるだけであって会話ができるわけじゃない」
ゲーハさんの話を聞くと知能が低い従魔は鍛え訓練することにより、
右の魔物を倒せ。威嚇しろ。攻撃せず待機。といった命令に従い動くことができるようだ。
それ以外にも寂しければ側によってくるし、お腹がすけばエサの前で待ったりなどして気持ちを伝えてくるらしい。それを見てテイマーは従魔の気持ちを感じ取るということだった。
「勇者の仲間のテイマーが従えた従魔は知能が高くステータスも半端ない。それぐらいの従魔になると、パーティーの現状を把握して動くことも可能だ。自分がどんなふうに動けば役に立つのかと考え動くからな。しかし、普通は無理だ」
「僕は山奥の小さな村で育ちました。その時に、ルピを卵から孵して今一緒にいます。それもあって、表情でルピの気持ちや考えはわかるつもりです」
「じゃぁ、さっきの会話しているように見えたのも従魔を見て気持ちを読み取ったって言いたいのか?」
「はい」
「お前なんか隠してるだろ」
ルピと念話で話せますなんて、初めて会って信頼関係もないゲーハさんに言っていいのかなんてわからない。わからない以上は嘘でも黙っておくほうが賢明な気がする。
「はぁ…。言う気がないもんを無理に聞き出しても仕方がない。それは置いといてだ。お前の従魔の異常さが本当かにわかには信じられんが報告に上がっている」
「異常さ…ですか?」
「昨日【ED】の魔物討伐の依頼を受けに街の外へ行った人間が、お前の従魔が魔物を見ることなく討伐していると伝えてきた。しかも、討伐した魔物は全て魔石になったとも。最初は嘘だと思ったが、お前が買取所に出した魔石の数。そして討伐完了の報告に出したのもすべて魔石。裏をとる必要はあるだろう」
見られてたんだ…。もっと気を付ければよかった…。買取所で魔石の数が異常だと言われていたのに、完璧に僕のミスだ。
「それでどうなんだ?報告した人間の話が本当なら、お前の従えてる従魔は普通じゃない」
「僕の口からは言えません」
「なら誰の口からなら言えるんだ?」
「それも言えません」
「お前ふざけてるのか‼」
「ピィーーーー‼ヤァーーーーーー‼『やめて!ハヤトをいじめないで‼』」
ルピが叫んだ瞬間に強い風が部屋の中に吹き、窓ガラスは割れ机に置いてあった書類や花瓶などが散らばり割れていった。
「……………。これは、その従魔がやったのか?」
「僕の口からは言えません…」
「そうか…。今日はもう帰れ。この状態では話にならん。悪いが明日また話そう」
「わかりました…」
「あぁ。明日のこの時間にまた来てもらえるか。それから、ドラスにたまには顔を出せと伝えといてくれ」
「ドラスさんにですか?」
「あいつは俺の昔の部下でな。いろいろあって疎遠になっているが、まぁ伝えておいてくれればそれで良い」
「わかりました」
受付さんがギルドの入り口まで見送ってもらい外へ出る。
これから生産ギルドに行く気にもなれず、ひとまず教会の裏の広場で少し休もう。
「俺は今、猛烈に頭が痛い…」
「私はこの後片付けを考えると、頭が痛いです…」
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