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11話 アイテムボックスと奴隷

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「昨日から気になってたんだが、ずいぶん荷物が少ないけどどうやって山からここまで来たんだい?」

「荷物はアイテムボックスに入れてあります」

「アイテムボックス持ちだって⁉︎ハヤトあんまりそれを人前で言うもんじゃないよ!悪用する人間も出てくるからね」

「悪用なんてされるんですか⁉︎」

「アイテムボックス自体が希少さね。戦争をするにもなにをするにも、荷物を運ぶのが一番の重労働さ。だから、難癖つけて奴隷落ちにさせてこき使われる話だってあるんだよ」

なにそれ、奴隷なんているんだ…。しかも私利私欲のために奴隷落ちなんて絶対にゴメンだ。

「うーん…便利だったんですけど、鞄で運ぶしかないですね。冒険者ギルドに行く前に雑貨ギルドで鞄を買ってから行きます」

「お古でいいなら、父ちゃんの鞄をもらいな。若い頃に冒険者に憧れて買ってたはずだからね」

「…ッ!なんでそれを母ちゃん⁉︎いや…あれはデザインが気にいってて…」

「命の恩人に鞄1つやれないのかい⁉︎」

「そんなことはございません。ハヤト、良い鞄があるんだ。持っていけ!」

ドラスさん、顔は笑ってるけど目が笑ってない…。尻に敷かれすぎでしょう。

「大丈夫です。ドラスさんの大切な思い出の品を貰うわけにはいきませんから」

「いや…頼む。俺を思うなら持って行ってくれ…」

あ…僕が断ると、この後が大変なんだね。それならありがたく頂くのがドラスさんのためだ。良い鞄見つけたらプレゼントするからねと心に誓った。

貰った鞄は、肩から斜めにかけるタイプのシンプルな柔らかい革でできたものだった。革がなかなか街の人には貴重らしく、若い頃冒険者の間で流行り頑張って買ったらしい。

「ハヤト、アイテムボックスを使う時はこの鞄の中でこっそり使いな。それならバレないさね」

「なるほど!確かにそうですね!ありがとうございます」

「あと、これお昼ご飯に食べな。それから昨日の銀貨1枚はハヤトが実際にギルドでお金をもらった時でいい。それまではいらないよ。本当はそんな危ない事してほしくないが、それじゃぁ気持ちが納得しないだろうしね」

まるで母親のように心配し優しく接してくれるマーヤさんに心が温かくなる。マーヤさんにもきっといつか何かプレゼントをしようと心に誓う。

「冒険者ギルドは、ウチを出て右に曲がって歩くと大きな十字路に出る。それを左に曲がって少し歩くとつくからね。周りにそれらしき冒険者が集まってるから気づくはずさ。帰りを待ってるから、気をつけて行ってくるんだよ」

「はい!行って来ます!」

「ピィー!」

「子供を送り出す時はこんな気持ちなのかね…」

「そりゃ言い過ぎだろ。ちょっと行って帰ってくるん…ぅわっ!イッテ‼︎」

僕たちに優しく話しかけながら、後ろで話すドラスさんにマーヤさんは振り向くことなく側にある置物を投げつける。

この人、やっぱり只者じゃないよ…。昨日もしマーヤさんが先に見つけていたら、じつはドラスさん助けられる力があったんじゃないかとさえ思えてくる。ルピも隣で若干引いていた。

「マーヤさん、ドラスさん行って来ます!」

「ピィー♪」

「気をつけて行ってくるんだよー!晩御飯の前には今日は帰ってきなー!」

「はーい!」

「ピィー!」

街中は夜とは違って人が溢れとてもにぎやかだった。昨日は気づかなかったけど所々で屋台が出ておりジュースやお菓子が売られている。串に刺さったお肉などが美味しそうに焼かれて売られていた。

「うちのは美味しいよー!」
「一度味だけでも見てっとくれー!」

いろいろな声がにぎわいルピも楽しいのか、僕の前を嬉しそうに歩いて行く。街には人だけではなく、獣人というのかな。本当にファンタジーあふれる世界だった。

しばらく歩いて行くと、1つの大きな建物の前に鎧を着た人や魔法使いなのかフードをすっぽりかぶった人。逆に身軽な格好で腰のあたりにナイフを着けている人などが集まっていた。

マーヤさんがすぐにわかるよと教えてくれた通り、迷うことなくつけたようだ。

集まっている人はあそこにはこんな魔物が出た。冒険者の誰かが洞窟の討伐を完了したらしいなど、そんな話をワイワイとし情報交換をしている様子。情報はどの世界も大切だよね!

ギルドの扉は開放されており、中に入ると受付と書かれている場所があった。昨日も思ったけど、僕普通に異世界の文字が読めるし違和感がない。これもギフトなのかな?
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