暴食ジト目スライムに、女運無し平凡男が翻弄されながら第2の人生行ってみました!

緋沙下

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35羽 テントと石と破格の値段

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「ガレッダは、ケンの店で働くつもりなのか?」

「はい。僕ではこの街で仕事はないと思うので。新しい街でも仕事があるかわからないし、お世話になりたいと思っています」

「そうか。お前も冒険者登録はしてたよな。それなら2人でチームを作ればいい。その方がケンが討伐したものがお前にもポイントとして加算されるからな」

ダニアさんが言うには、ギルドはランクによって貰える報酬や受けれる仕事もあるらしい。
俺は全然そんなこと気にしたことはなかったが、世間では皆このランクを上げるのに必死なようだ。

ランクが上がれば上がるほど、それは信頼になる。信頼が高くなれば、破格の依頼金になることもあるらしい。
安い金出して出来るかわからない冒険者に頼むよりも、多少色を付けても確実に仕事をこなしてもらいたいと考える依頼者は多いそう。そりゃそうだな。

「チームになれば稼いだポイントは山分けだ。ケンは全く興味なさそうだからな。貰っとけ」

「でも、何の役にも立てない僕が貰うのは寄生虫のようで嫌です」

「俺もそれで良いよ。別に俺はギルドランクが上がりたくて討伐してるわけじゃないからな。今のランクすら俺は知らないよ」

ランクを知らないという俺の言葉に、え!?って顔でガレッダが見てくる。
ランクが高い冒険者がやってるお店って売りに出すところもあるんですよ!と言われるが、それって俺がいた世界でいうところの三ツ星レストランみたいなもんだろ?
俺は気兼ねなく誰にでも来てもらいたい。美味ければ客は来る。それで十分だ。

「いや、本当に俺興味が無いんだよ。ダニアさんが進めなきゃ入ってすらなかったしな」

「だな。今お前のランクはBランクだよ。こんなに早くBランクなんて、普通は飛び上がって喜ぶのに、お前興味のきょの字もないからなぁ。ランクの上げがいが無い奴だよ」

「そんな冒険者がいたっていいでしょ。それに俺は飯屋で食っていくんです。そんなわけだから、ガレッダ気にしなくていいよ」

俺の言葉に、それならしっかりとポイント貰う分も含めて仕事させてもらいます!とガレッダの意気込みが凄い。
ま、まぁガレッダのやる気に火をつけれたなら良かったよ。

「給与の支払いなんだけど、普通はどれぐらい皆さんもらってるものなんですか?」

「俺とイーサは役職ついてるからな、普通よりは多少多いぐらいだな」

「あぁ。だから、お前の妹を家で見てもなんの支障もない。多少は貯えもあるつもりだ」

だから、普通がいくらなんだよ普通が。その金額がわからなかったら給与が出しようがないだろう。
あ、でも俺の価値観で払っても良いのか。俺が雇うんだし。あまりにも安いようなら上げれば良い。

「なぁガレッダ。多分普通に働くよりもマジできついけど大丈夫か?」

「はい。仕事がもらえる以上、ありがたく思っています」

「それなら良いんだけど、宿のベッドで寝れることなんてほとんどないからな。あ、泊まりたかったらガレッダは泊ってくれて構わないよ。俺はほぼ野宿してるから。もちろんテントは買うよ」

それなら、少し良いものがあるとダニアさんが紹介してくれた。ただ少し値が張るんだよなぁ…と言っていたので、明日開店前にでも見に行ってみよう。

ルイ―ザさんと妹の話しも終わったらしく、ルイ―ザさんがイーサさんに我が家に来てくださるそうよと嬉しそうに話していた。
妹もルイ―ザさんの手を握り、イーサさんによろしくお願いしますと頭を下げていた。あぁ…ここに本物の女神がいる…。

「今日はイーサの新しい家族とケンの新しいスタッフに乾杯しよう!」

「「「「「乾杯!」」」」」



目が覚めたら宿。さすがにテント出して寝るのが面倒で宿を取った。
ガレッダには仕込み含めて説明したいから今日の15時に街の外で待ち合わせた。俺は昨日ダニアさんが話していた店へと向かった。

扉を開けると、上についているベルが——カラン・カラン——と良い音を奏でた。奥にいた女性が、いらっしゃいませと良い笑顔を俺に向けてくれる。

「ダニアさんの紹介で、ここにテントを良くしたものがあると聞いたんですが」

「はい。それならこちらですね」

「はい??」

見せてくれたのは大小さまざまな石。いや、石なんか見せられても全然意味が分からないんだけど…。

「ふふ。皆さん最初はそのような反応をされるんですよ。これは一番シンプルなものになりますが、見て貰った方が早いですね」

店員が石を手の平に持ち、俺に店員の肩に触れてくるように伝える。
その瞬間身体が引っ張られるように吸い込まれていった。一瞬の事に目を閉じ明けると、真っ暗な場所だった。

「え!?店員さん!?え!?????」

「今明り付けますから。ライト——」

店員さんが声をかけると、部屋の中に明かりが灯り真っ白な空間が現れた。広さは1人暮らしの1Rぐらいか?

「これは…」

「これは石を媒体として空間創造を付与しております。私の曾祖父が空間認識の魔法に長けており、私もその能力を受け継ぎ、商品として開発しました」

「はぁ…。でも、なんで石なんですか?」

「冒険者が外の寝泊まりにテント代わりとして使われる方もいるので、外でカモフラージュできるものにしました。もちろん他の物にも付与できますよ。オプション代は頂きますが」

確かに外で使うなら、他の物に紛れる方が良いだろう。しかも、誰彼構わず使えないよう持ち主を登録するらしい。万が一落ちて他の石の中に紛れても、登録しておけば所有者には光って見えるので安心ですよと言われた。
これは便利だ。布団とかも持ち込み可能らしく、普通に生活できるな。

「この中で火を使うことは出来るんですか?」

「はい。可能です。台所がついたタイプもあればお風呂が付いたタイプもございます」

ただ、台所やお風呂ではない場所で焚火をしたり水を使えば、焦げ跡が残ったり水浸しになるので気を付けてくださいと言われた。

「台所と風呂は別途持っているので、それをどうにか上手く活かせられないですかね?」

「それなら、台所とお風呂を設置前の物があります。設置する予定で作っておりますので、そちらであれば問題ないかと」

話しを詰めていき、ガレッダが寝泊まりすることも考え2DKサイズの物を見せてもらった。
無機質な白い空間が壁と扉で隔てられており、オプションで外の様子がわかる窓もつけられるそうだ。

「ちなみにこれっていくらなんですか?」

「はい。この広さで窓を付けるとなりますと、白金貨15枚ですかね」

「白金貨?」

「金貨1500枚でございます」

1500万!?それは高い。俺の手持ちじゃ全然買えないよ…。
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