暴食ジト目スライムに、女運無し平凡男が翻弄されながら第2の人生行ってみました!

緋沙下

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30羽包丁愛と野次馬精神

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今日は休業日。朝から大雨だ。この状態じゃ客は来ないだろ。
足りなかった食器やグラスを買い足すため街に来ている。

朝起きたら土砂降りで、テントにぶつかる雨の音で予定よりも早く目が覚めた。傘代わりにデカい葉っぱさして来たけど、やっぱ濡れたな。
手ごろな店で傘を買い街を探索中。

「朝ご飯もまだだったな。何か食うか?っていっても、どこも出店は閉まってるんだよな…。やっぱ雨の日は閉める店が多いみたいだな」

特に反応もなく、雨の中を歩くファース。なぜかファースの周りだけ雨が弾いてるんだよな。

テントを出る時に、俺にも雨弾くようにしてくれよと言ったら葉っぱ一枚持って来られて終わった。持って来てくれただけ感謝するけどね。

小一時間歩いたが、出店が開いている雰囲気はない。仕方なくパン屋に入り、ファースが食いたいとうパン40個と俺のパン3つ買って、屋根があるベンチの上で食べた。

勿論パン屋の店員にはレジまで40個のパンなんて持って行けないから、この棚からこの棚まで貰っていいですかね?って金を渡した。
大量の袋を貰い棚から直接袋に入れて持ち帰ったけど、変な目で見られてしまった…。

「ほら、置いとくから勝手に食えよ」

——ジュワッジュワッ——

ファースは甘いパンの次は総菜パンと交互に食べていた。デザート的な感じなのか、フルーツが乗ったパンは最後に取っているようだ。

俺はウインナーが挟まっているパンと木の実パンにクリームパンを完食。美味いんだけど、ちょっと生地がボソッとしている感じが残念なパン屋だったな。

そう考えると、あの屋台のチーズパン美味かったんだよなぁ…。まぁ腹ごなしも終わったし、食器見に行くか。





「ありがとうございました」

食器は前回と同じものを購入。それにお椀を買った。トン汁入れる食器が無くてメニューとして出せてないからな。

それに同じ素材で統一感がある方が良いだろ。コップやフォーク等々も買ったしな。

「ケン。こんな雨の中お買い物か?」

「イーサさんこそ、どうされたんですか?」

「あぁ。贔屓にしている店が包丁を研いで欲しいと言って来てたから。休み時間使って行ってたんだ」

包丁研ぎに行ってたって、あなたギルド職員でしょ。なんで出張研屋みたいなことやってるんだと思ったけど
この人の包丁愛を考えればなんか納得も行く。

イーサさんには今日はこの雨だから休業日にして、足りないものを買いに来ましたと伝えた。
今日は止みそうにないからな。それが良いだろうと空を見上げていた。

「俺はそろそろギルドに戻る。また近いうちにお邪魔しよう」

「はい。お待ちしております」

「あぁ。それじゃぁ———」

少し離れた場所から、『誰か捕まえてとくれーー!泥棒ー!泥棒よー!』という大きな声が聞こえてくる。
イーサさんは声の方に走って向かってしまった。

野次馬精神が働いたと言ったら怒られそうだけど、俺も向かってみる。
ほら、ちょっとどんな奴が泥棒するのか興味があった。

向かった先でイーサさんが抑え込んでいるのは、小学中学年ぐらいの女の子。手には盗んだ果物が握られていた。
こんな小さな子が…。どうして…。

「なぜ盗んだ。窃盗は重罪だぞ」

「………」

「なぜ盗んだかと聞いているんだ!」

女の子は下を向き話す気配がない。
そしてイーサさんの迫力満点の顔で怒鳴られると、怒鳴られてない俺ですら怖いのに、ある意味この子凄いわ。

「捕まえてもらって悪いね。ほら、リンゴは返してもらうよ!」

果物屋の女店主が女の子からリンゴを奪おうとするが、両手でがっちりと握りしめたリンゴを離す気配はない。

リンゴの値段は市場とは違い若干値段が高かった。生産者が直接売るわけじゃない。仕入れ値に上乗せした金額なんだろうが、それでも1つ銀板3枚だ。
子供のお小遣いで十分買えそうに見えるんだけど…。

周りに集まる見物客。イーサさんは傘を手放しており、2人ともずぶ濡れだ。

「ほら離すんだ」

「あっ…!」

イーサさんが無理やり女の子の手を開き、リンゴを奪い取ると女店主に渡した。

女店主はリンゴを受け取ると、傷が無いから今回は良いが、次やったら突き出すからね!と言い放ち店の中へ戻っていった。それを見終えた見物客もチラホラと去っていく。

俺はどうして良いのかわからず、そっとイーサさんの傘をあいてる手で持ち濡れてる2人の上に持って行った。

「とりあえず、ギルドに連れて帰って話しを聞こう。俺が聞くよりも、ダニアの方が聞き上手だからな」

「突き出すって女の人は言ってましたけど、ギルドがそうなんですか?」

「いや、ギルドはギルドだ。犯罪を取り締まる場所は別にあるのさ。ほら、さっさと立って歩け。それとも、こんな街中で担がれたいのか?」

担がれると言う言葉に、女の子は渋々立ち上がり腕を掴んでるイーサさんに引っ張られるように歩いて行った。
俺は何とも後味が悪い感じがしながら、その場を後にした。

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