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23羽可愛くない客寄せスライム
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「これって実の方はないの?」
「実はあるわよ。でも、こっちの世界では噛んだ瞬間に吐き出されたから店には置いてないのよ。いるなら持ってくるけど?」
「あるなら是非欲しい!」
カオルさんが奥に引っ込み、その実が大量に入った瓶を持ってきてくれる。それそれ。まさに俺が欲しかったのはそれだよ!
「これいくらで売ってくれる?」
「うーん…。前はこの三分の一の値段で銀貨1枚で売ってたけど、売れないから一瓶銀貨1枚で良いわ」
「マジで!?日本でも結構高いけどそんな値段で良いの!?」
カオルさん曰く、爺さんから貰ったスキルで香辛料や保存料の関係は作れるから別に私が損するわけじゃないわと言われた。
売れないと思ってたものが売れただけでも特らしい。
「すごい不思議なんだけど、どうやって生計立ててるんだ?あまり流行ってるようには見えないけど…」
「時々胡椒売りに行くのよ。胡椒は今渡した瓶1つで金貨10枚になるから。月に2回売りに行けば生活できるわ。家賃もここは繁華街から離れてるせいか格安だしね」
「胡椒がこれで金貨10枚!?」
やばい…。マジか。この量で金貨10枚ってえげつないな…。俺も生活困ったら売りに行こう。
「他にも見ても良い?」
「どうぞ!同郷のよしみだし、安くしとくわよ」
「助かるよ。店に来た時には、俺もサービスするから来てくれよな」
いろいろ見て回り、最終的には金貨2枚のお買い上げ。ぜひ御贔屓に!と笑顔で見送られ外へ出た。
さてと、この買った実をまずは干さなきゃ話しにならないからな。
その後もいくつかの店を回り、卵や燻製されたベーコンのようなものを買って格安宿へと足を運んだ。
「肉も大量に手に入ったし、香辛料も欲しいもの買えたし、今日は一晩この肉が書いてあるメモの分析して良い?悪いけど、飯は宿ので今日は我慢しくれ」
ハァ…とため息が聞こえてきそうな勢いで右手が上がる。
明日からは街の外で営業するから。そしたら美味いもの食わせてやるから我慢してくれ。
しかし、翌朝起きたら宿主からお連れの従魔が追加でかなり食べまして…。1500円では到底賄えるものではなくと、金貨2枚の支払いを請求された。
お前どれだけ食ったんだよ!
◇
「よし!これで良いかな」
昨日買っておいた、少し大きめのボードに『串焼き屋・その他メニューあります』と書いて店に掲げた。
酒はビールオンリー。まぁ、焼き鳥と言えばビールだろ。俺はそうだし、俺がやる以上は俺に合った店ではまずはやろう。
昨日カオルさんの店で買った実は、天日干し中。一週間もあれば使い物になるだろう。
「なぁ、ファース。お前魔法『中』だったよな。氷とか出せたりしない?そうしたら、ガラスショーケース使えるんだけど」
右手が上がる。おっ!使えるのか!それなら早速出してもらわないとな。
「ならここに出してくれよ。これぐらいの大きさで、長さはこのぐらいが良いんだけど?」
左手が上がる。細かい指示は難しいのか?
「デカいのなら出せるのか?それなら砕くしかないけど、アイスピック買ってないわ…。まぁ、岩で砕いて水で洗えば良いか。水は際限なく出てくるからな」
また左手が上がる。なんだよ。氷出せるって言ったじゃないかよ。
「まさか出せるけど出したくないとか言うんじゃないよな?」
右手が上がる。なんだよこいつ!まさか、昨日晩飯作らなかったことに対して怒ってるのか!?散々食って追加請求来たんだぞ!
ファースになんで出したくないんだよと聞くと、まずは自分に食わせろ。人(スライム)にお願いがあるなら、お願いを聞いてもらえることを先にしてから伝えるのが筋だろうと言われた。
本当に、本当にかわいげの欠片もないスライムだな!
「わかったよ。今から焼いてやるからちょっと待ってろよ!焼いたらお前文句言わずに氷出せよ!」
右手が上がる。お前にとって俺って、食べ物を作るだけの存在な気がするけど、俺の気のせいなのか?
街の外へ出た後、比較的街から離れていない場所を選んで屋台を開いた。理由は3つ。
街が近ければ、少しぐらい食べて帰っても良いかなという気持ちが出るかもしれない。
例えば仕事終わりに職場近くて飲むのは電車で帰ることを考えると面倒。だけど最寄り駅までくれば徒歩で帰れるし、飲んで帰ろうかという気持ちはこっちの世界も変わらないだろうと考えた。
二つ目は街の近くは魔物が少ない。てか、ほとんど出ない。
これなら魔物に襲われるかもとビクビク食べる心配がないだろう。
三つめは夜の狩りをメインにする人を狙うこと。
ダニアさんに聞くと、夜行性の魔物や夜にしか咲かない貴重な花の薬草もあるらしい。
それを採取するために夜活動する人もいると言われた。まさに狙い目だろ!
「お前に作る飯が客寄せになれば良いけど。焼き鳥焼く香りをかいで、焼き鳥喰うか作戦だな」
タレの香ばしい匂いはダニアさんでこちらの世界でも受けると実証済みだ。
ファースは今日はタレメインの食事で通してもらおう。お前は客寄せパンダならぬ、客寄せスライムになるんだ。
さぁ、どんどん食ってくれよ!イーサさんから貰ったメモを昨夜一晩かけて読み解いたら、鳥と思われるものがいたからな。それをまずは焼いてみるか!
「実はあるわよ。でも、こっちの世界では噛んだ瞬間に吐き出されたから店には置いてないのよ。いるなら持ってくるけど?」
「あるなら是非欲しい!」
カオルさんが奥に引っ込み、その実が大量に入った瓶を持ってきてくれる。それそれ。まさに俺が欲しかったのはそれだよ!
「これいくらで売ってくれる?」
「うーん…。前はこの三分の一の値段で銀貨1枚で売ってたけど、売れないから一瓶銀貨1枚で良いわ」
「マジで!?日本でも結構高いけどそんな値段で良いの!?」
カオルさん曰く、爺さんから貰ったスキルで香辛料や保存料の関係は作れるから別に私が損するわけじゃないわと言われた。
売れないと思ってたものが売れただけでも特らしい。
「すごい不思議なんだけど、どうやって生計立ててるんだ?あまり流行ってるようには見えないけど…」
「時々胡椒売りに行くのよ。胡椒は今渡した瓶1つで金貨10枚になるから。月に2回売りに行けば生活できるわ。家賃もここは繁華街から離れてるせいか格安だしね」
「胡椒がこれで金貨10枚!?」
やばい…。マジか。この量で金貨10枚ってえげつないな…。俺も生活困ったら売りに行こう。
「他にも見ても良い?」
「どうぞ!同郷のよしみだし、安くしとくわよ」
「助かるよ。店に来た時には、俺もサービスするから来てくれよな」
いろいろ見て回り、最終的には金貨2枚のお買い上げ。ぜひ御贔屓に!と笑顔で見送られ外へ出た。
さてと、この買った実をまずは干さなきゃ話しにならないからな。
その後もいくつかの店を回り、卵や燻製されたベーコンのようなものを買って格安宿へと足を運んだ。
「肉も大量に手に入ったし、香辛料も欲しいもの買えたし、今日は一晩この肉が書いてあるメモの分析して良い?悪いけど、飯は宿ので今日は我慢しくれ」
ハァ…とため息が聞こえてきそうな勢いで右手が上がる。
明日からは街の外で営業するから。そしたら美味いもの食わせてやるから我慢してくれ。
しかし、翌朝起きたら宿主からお連れの従魔が追加でかなり食べまして…。1500円では到底賄えるものではなくと、金貨2枚の支払いを請求された。
お前どれだけ食ったんだよ!
◇
「よし!これで良いかな」
昨日買っておいた、少し大きめのボードに『串焼き屋・その他メニューあります』と書いて店に掲げた。
酒はビールオンリー。まぁ、焼き鳥と言えばビールだろ。俺はそうだし、俺がやる以上は俺に合った店ではまずはやろう。
昨日カオルさんの店で買った実は、天日干し中。一週間もあれば使い物になるだろう。
「なぁ、ファース。お前魔法『中』だったよな。氷とか出せたりしない?そうしたら、ガラスショーケース使えるんだけど」
右手が上がる。おっ!使えるのか!それなら早速出してもらわないとな。
「ならここに出してくれよ。これぐらいの大きさで、長さはこのぐらいが良いんだけど?」
左手が上がる。細かい指示は難しいのか?
「デカいのなら出せるのか?それなら砕くしかないけど、アイスピック買ってないわ…。まぁ、岩で砕いて水で洗えば良いか。水は際限なく出てくるからな」
また左手が上がる。なんだよ。氷出せるって言ったじゃないかよ。
「まさか出せるけど出したくないとか言うんじゃないよな?」
右手が上がる。なんだよこいつ!まさか、昨日晩飯作らなかったことに対して怒ってるのか!?散々食って追加請求来たんだぞ!
ファースになんで出したくないんだよと聞くと、まずは自分に食わせろ。人(スライム)にお願いがあるなら、お願いを聞いてもらえることを先にしてから伝えるのが筋だろうと言われた。
本当に、本当にかわいげの欠片もないスライムだな!
「わかったよ。今から焼いてやるからちょっと待ってろよ!焼いたらお前文句言わずに氷出せよ!」
右手が上がる。お前にとって俺って、食べ物を作るだけの存在な気がするけど、俺の気のせいなのか?
街の外へ出た後、比較的街から離れていない場所を選んで屋台を開いた。理由は3つ。
街が近ければ、少しぐらい食べて帰っても良いかなという気持ちが出るかもしれない。
例えば仕事終わりに職場近くて飲むのは電車で帰ることを考えると面倒。だけど最寄り駅までくれば徒歩で帰れるし、飲んで帰ろうかという気持ちはこっちの世界も変わらないだろうと考えた。
二つ目は街の近くは魔物が少ない。てか、ほとんど出ない。
これなら魔物に襲われるかもとビクビク食べる心配がないだろう。
三つめは夜の狩りをメインにする人を狙うこと。
ダニアさんに聞くと、夜行性の魔物や夜にしか咲かない貴重な花の薬草もあるらしい。
それを採取するために夜活動する人もいると言われた。まさに狙い目だろ!
「お前に作る飯が客寄せになれば良いけど。焼き鳥焼く香りをかいで、焼き鳥喰うか作戦だな」
タレの香ばしい匂いはダニアさんでこちらの世界でも受けると実証済みだ。
ファースは今日はタレメインの食事で通してもらおう。お前は客寄せパンダならぬ、客寄せスライムになるんだ。
さぁ、どんどん食ってくれよ!イーサさんから貰ったメモを昨夜一晩かけて読み解いたら、鳥と思われるものがいたからな。それをまずは焼いてみるか!
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