11 / 38
10羽悪意ある人間
しおりを挟む
「なぁー。頼むよ。ちょっと綺麗にしてくれよ」
スライムに頭を下げる俺。これ知らない人が見たら、すごい光景に見えるんだろうな…。見せるつもりないけど。
「マジで頼むって。さっき上手そうな菓子あったろ?あれ買うからさ」
菓子という言葉が功を奏したのか、スライムが俺の服ごと綺麗にしてくれる。スライム様々だ。でも、なんか不機嫌そうなんだよね。まさかのヤキモチか!?それはないか。
風呂が全然意味をなさなかったため、スライムに綺麗にしてくれと部屋に戻るなり頼み込んだ。最初はガン無視されていたが、お願い聞いてもらえて助かったよ。
「それじゃ、俺そろそろ時間だから行くけどお前は待ってる?」
左手が上がる。ついてくるのね。まぁ、良いんだけどさ。彼女もお前のことが気になって声かけて来たんだし。むしろいてくれると話しが盛り上がるかもしれない。
◇
やばい。早く来過ぎたか?でも10分前だから別に早くはないか。待ち合わせの場所に来ても、彼女は来ている気配はなかった。来なかったら俺凹むぞ…。
「ケン早かったのね。待たせたかしら」
「リズ!いや、俺も来たばかりだよ」
さっき会った時に名前は聞いていた。見た目も可愛ければ名前も可愛いんだから、こりゃ困った。リズが美味しいと言った店に入りテーブルに着いた。
「ケンは、お酒は飲める口なのかしら?」
「勿論さ。美味しく飲めるよ」
前の世界でも客商売。酒を頂く時もあった。仕事上飲めないより、飲める方が何かと便利だった。20歳過ぎて飲み始めた頃は飲んでつぶれて、よく親父に怒られてたけどな…。
「そう。なら良かったわ。ここのお酒はとても美味しいのよ!マスター、いつものお酒貰えるかしら?」
「いつものって、リズは常連なの?」
「ここのマスターとは古い付き合いなのよ」
マスターっていう男に目を向けると、俺よりも少し上ぐらいか?若い頃から店をしてるなら、親近感がわくな。客も入ってるし、美味い店なのは確かなんだろう。
リズが、ここの料理はこれがねと進めてくれるものを頼み、楽しさから酒もどんどん進む。
「ねぇ、このスライムの名前なんて言うの?」
「スライムの名前?普通名前つけるもんなのか?」
「え?皆つけてるわよ。名前を付けるのもテイマーの楽しみでしょ?」
そうなのか。名前かぁ。全然考えたことなかったな。スライムは気にする様子もなく、頼まれたものを食べていた。勿論店の人には許可取ってから食べさせている。
女性と酒飲むって客意外となかったからな。自分のペースも考えず進められるがままに酒を飲んでしまった。
―
――
――――
――――――
「大丈夫?お水貰う?」
「いらぁ…。らいりょうぶらよぉー(大丈夫だよ)」
「そろそろ閉店の時間だから、お会計しても良いかしら?」
「それにゃや、これしゃいふりゃからぁー(それなら、これ財布だから)」
俺が出した財布をリズは受け取ると、払ってくるわねと席を立った。そして俺はそのまま意識を手放した。
――店の裏口―――
「リズ、あいつはつぶれたのか?」
「いつも通りのお酒飲ませたからね。問題ないわ。それに、あいつ屋台持ってるみたいなのよ。売ればそれなりの金になるわ」
「お前も悪い奴だよな。弱そうな奴見つけては金ふんだくるんだから」
「なによ。あんただって、そのおかげで美味しい思いできてるんでしょ」
店の裏口で話すマスターとリズ。2人は弱そうな冒険者や疎そうな男を見つけては、リズが引っ掛け店に連れてくる。そして強い酒を飲ませてはつぶれさせ、金目の物を奪っていく。
後々酔いから冷めた男が俺の金はどうした!!と言い寄ってきても、怖い男達に絡まれて、盗まれてしまったの…。店の代金はそんな客を入れたこちらが悪いからと、店側が負担してくれたわと逃げるのが手だ。
危うくなれば身を隠し、ほとぼり冷めれば出てくる。街の人間には手を出さない。
街に初めて来たような男をターゲットにすれば、そんなに問題も起きないしね。涙流しながら話せば、怖い思いさせて悪かったなと言うんだもの。バカの男が多いのね。
「屋台はどこにあるんだ?」
「街の馬車を止めてある場所に置いてあると言っていたわ。預かり札も盗んできたから、問題ないわ」
「そうか。今ならちょうど係が交代の時間だ。顔を隠せば問題ないだろ。男は当分起きないだろうしな」
そうねとリズが話しながら男と店の外に出ていく。この後屋台を手に入れたら他の街で売ればいいと話しながら屋台がある場所へ向かおうとして、2人の足が止まる。
「あら、あの男のスライムじゃない」
「なんだ。いっちょ前に主人を守るナイトのつもりか?弱いスライムのくせしてナイト気取りかよ」
目の前にいるスライムを見て、2人が口々に好きなことを言い放つ。
ほら、早くどかしてよ。スライムごときに時間が勿体ないわというリズに、わかってるよと男がスライムにどけよ!殺されたいのかと近づく。
近づいた瞬間に、スライムが男を飲み込む。抵抗する暇もなく消化される男。
「ヒィィ…!!なんでスライムが人間を食べるのよ!?おかしいッ―――」
リズが言葉を発し終わる前にスライムがリズを捕食し消化する。残されたのは、屋台を預かる札と女が奪った財布だけが残されていた。
何事もなかったように、静かな夜が更けていく。
スライムに頭を下げる俺。これ知らない人が見たら、すごい光景に見えるんだろうな…。見せるつもりないけど。
「マジで頼むって。さっき上手そうな菓子あったろ?あれ買うからさ」
菓子という言葉が功を奏したのか、スライムが俺の服ごと綺麗にしてくれる。スライム様々だ。でも、なんか不機嫌そうなんだよね。まさかのヤキモチか!?それはないか。
風呂が全然意味をなさなかったため、スライムに綺麗にしてくれと部屋に戻るなり頼み込んだ。最初はガン無視されていたが、お願い聞いてもらえて助かったよ。
「それじゃ、俺そろそろ時間だから行くけどお前は待ってる?」
左手が上がる。ついてくるのね。まぁ、良いんだけどさ。彼女もお前のことが気になって声かけて来たんだし。むしろいてくれると話しが盛り上がるかもしれない。
◇
やばい。早く来過ぎたか?でも10分前だから別に早くはないか。待ち合わせの場所に来ても、彼女は来ている気配はなかった。来なかったら俺凹むぞ…。
「ケン早かったのね。待たせたかしら」
「リズ!いや、俺も来たばかりだよ」
さっき会った時に名前は聞いていた。見た目も可愛ければ名前も可愛いんだから、こりゃ困った。リズが美味しいと言った店に入りテーブルに着いた。
「ケンは、お酒は飲める口なのかしら?」
「勿論さ。美味しく飲めるよ」
前の世界でも客商売。酒を頂く時もあった。仕事上飲めないより、飲める方が何かと便利だった。20歳過ぎて飲み始めた頃は飲んでつぶれて、よく親父に怒られてたけどな…。
「そう。なら良かったわ。ここのお酒はとても美味しいのよ!マスター、いつものお酒貰えるかしら?」
「いつものって、リズは常連なの?」
「ここのマスターとは古い付き合いなのよ」
マスターっていう男に目を向けると、俺よりも少し上ぐらいか?若い頃から店をしてるなら、親近感がわくな。客も入ってるし、美味い店なのは確かなんだろう。
リズが、ここの料理はこれがねと進めてくれるものを頼み、楽しさから酒もどんどん進む。
「ねぇ、このスライムの名前なんて言うの?」
「スライムの名前?普通名前つけるもんなのか?」
「え?皆つけてるわよ。名前を付けるのもテイマーの楽しみでしょ?」
そうなのか。名前かぁ。全然考えたことなかったな。スライムは気にする様子もなく、頼まれたものを食べていた。勿論店の人には許可取ってから食べさせている。
女性と酒飲むって客意外となかったからな。自分のペースも考えず進められるがままに酒を飲んでしまった。
―
――
――――
――――――
「大丈夫?お水貰う?」
「いらぁ…。らいりょうぶらよぉー(大丈夫だよ)」
「そろそろ閉店の時間だから、お会計しても良いかしら?」
「それにゃや、これしゃいふりゃからぁー(それなら、これ財布だから)」
俺が出した財布をリズは受け取ると、払ってくるわねと席を立った。そして俺はそのまま意識を手放した。
――店の裏口―――
「リズ、あいつはつぶれたのか?」
「いつも通りのお酒飲ませたからね。問題ないわ。それに、あいつ屋台持ってるみたいなのよ。売ればそれなりの金になるわ」
「お前も悪い奴だよな。弱そうな奴見つけては金ふんだくるんだから」
「なによ。あんただって、そのおかげで美味しい思いできてるんでしょ」
店の裏口で話すマスターとリズ。2人は弱そうな冒険者や疎そうな男を見つけては、リズが引っ掛け店に連れてくる。そして強い酒を飲ませてはつぶれさせ、金目の物を奪っていく。
後々酔いから冷めた男が俺の金はどうした!!と言い寄ってきても、怖い男達に絡まれて、盗まれてしまったの…。店の代金はそんな客を入れたこちらが悪いからと、店側が負担してくれたわと逃げるのが手だ。
危うくなれば身を隠し、ほとぼり冷めれば出てくる。街の人間には手を出さない。
街に初めて来たような男をターゲットにすれば、そんなに問題も起きないしね。涙流しながら話せば、怖い思いさせて悪かったなと言うんだもの。バカの男が多いのね。
「屋台はどこにあるんだ?」
「街の馬車を止めてある場所に置いてあると言っていたわ。預かり札も盗んできたから、問題ないわ」
「そうか。今ならちょうど係が交代の時間だ。顔を隠せば問題ないだろ。男は当分起きないだろうしな」
そうねとリズが話しながら男と店の外に出ていく。この後屋台を手に入れたら他の街で売ればいいと話しながら屋台がある場所へ向かおうとして、2人の足が止まる。
「あら、あの男のスライムじゃない」
「なんだ。いっちょ前に主人を守るナイトのつもりか?弱いスライムのくせしてナイト気取りかよ」
目の前にいるスライムを見て、2人が口々に好きなことを言い放つ。
ほら、早くどかしてよ。スライムごときに時間が勿体ないわというリズに、わかってるよと男がスライムにどけよ!殺されたいのかと近づく。
近づいた瞬間に、スライムが男を飲み込む。抵抗する暇もなく消化される男。
「ヒィィ…!!なんでスライムが人間を食べるのよ!?おかしいッ―――」
リズが言葉を発し終わる前にスライムがリズを捕食し消化する。残されたのは、屋台を預かる札と女が奪った財布だけが残されていた。
何事もなかったように、静かな夜が更けていく。
0
お気に入りに追加
251
あなたにおすすめの小説

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。


転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる