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第4章 冒険者

第83話 連絡通路

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 そもそもこの世界は、剣と魔法の世界である。

 才能の差違はあれ、この世界の住人は魔法を使用出来る。

 いわゆる生活魔法というものを加えれば、ほぼ全員が使えるようだ。

 ビアンカが使ったライトの魔法も、そうした生活魔法の一つになる。

 他に火を着けたり、水を出したり、風を流したりと、ちょっとした魔法なら全ての属性を使えるらしい。

 ただ、治療や攻撃といった魔法は専門魔法となり、それこそ先天的な能力とか才能が必要となり、使用する知識の過多に左右されるという。

 基本的に魔力が少ないと能力があっても使えず、知識がないと生活魔法以上の活用は出来ないってコトだ。

 転生者に魔法特化が多い理由がコレらしい。

 前世の記憶を持っていれば、多少なりとも科学知識というものはあるだろう。

 この科学知識が、この世界でチートと呼ばれる能力の下地になっている。

 例えば、火というものを、この世界の住人は焚き火を基本に考える。

 物が燃える現象としての『火』だ。

 しかし、転生者は物が燃えるプロセスを理解した上での『火』を認識している。

 それはつまり、『火』の燃焼力や温度、性質を魔法に還元出来るというコトだ。

 ライトの魔法も理屈は同じになる。

 ビアンカはライトの魔法を『明るくなる』と認識して使っている。

 だから明るくなっても熱くはならないのだ。

 ただ、ビアンカのライトの魔法はけっこう明るい。

 ビアンカの頭上に揺れているせいか、僕には少し眩しい感じだが、暗い通路の先まで照らしているため不便は感じない。

 ダンジョンの通路は割りと広く、長い。

 石を積んだ、いわば連絡通路ってヤツで、本当のダンジョンはこの先にある自然洞穴からになる。

 自然と言いながら、ダンジョン内部には初めから階段や扉があり、冒険者が入り易くなっている。

 コレはダンジョン自体が冒険者を招き入れるための、罠の一種と認識されているらしい。

 ダンジョン内に跋扈する魔物や、度々発生する宝物といったものと同じで、冒険者を引き付け捕食するシステムの一部というコトだ。

 宝物と言っても、宝箱が有るわけではない。

 ダンジョン内の部屋の一部に盛り上がった場所があり、そこを掘ると硬貨や装備品が埋まっているのだ。

 そのほとんどは、ダンジョンで不明になった冒険者の所持品であるという。

 ダンジョン内部で死んだ冒険者を取り入れ、不要なモノをまとめて排出したモノを、宝物と称するらしい。

 羽振りの良い冒険者が不明になると、出現する宝物のグレードが上がるというのは、冒険者なら誰でも知っている話だし、それを逆算してダンジョンに潜る冒険者も存在する。

 なんとも浅ましい話だが、そうした輩が宝物を手に入れられる程、ダンジョンは浅くはない。
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