上 下
51 / 84
第3章 鍛練

第75話 待ち伏せ

しおりを挟む
 必要品の購入を終えた僕とビアンカは、明日の待ち合わせ場所と時間を決めて、今日は解散となった。

 ビアンカは宿泊拠点の宿屋の名前と場所を僕に告げ、そのまま帰って行った。

 僕はまっすぐクレイの屋敷へと足を向ける。

「木札」

 ビアンカと別れてしばらく歩くと、前方の建物の陰から、冒険者とおぼしき男が二人、僕の通行を妨げるように現れた。

「・・・人違いです」

「間違えちゃいないだろう。何知らんふりしてんだ?」

「面倒臭いから?」

「舐めやがって」

 怒鳴る訳でなく、脅す訳でもなく、二人の冒険者は僕を見据えて離さない。

 すぐに後ろから複数人の足音が響く。

 こりゃ待ち伏せされたかな。

 ビアンカと別れるのを待って後を付けられたのだろう。

 後ろの、多分冒険者と違い、前方の二人は完全に気配を断っていた。

 僕みたいな素人が『気配』なんて言葉を使うのもなんだけど。

 それでも害意を持って待ち伏せされたら、気持ち悪い感じとか嫌な予感とかはすると思うんだよ。

 それがまったくなかったってコトは、それなりのランクの冒険者ってコトなんだろう。

 そんなコトを考えていると、後ろの冒険者も僕を囲む位置に付く。

「何か用ですか?」

 僕は努めて平静な声音で前方の一人を見た。

 おそらくこのグループのリーダーなのだろう、どこか飄々とした雰囲気の四十代冒険者だ。

「用な。アレだよ、アレ」

 リーダーっぽい男は、バンダナっぽい布で覆った頭をガシガシと掻き、言葉を濁した。

「どれです?」

「俺たちはお前にヤられたヤツらの知り合いでな、お前のおかげでヤツらの立場が非情に悪くなっててな、まぁなんだ。落とし前ってヤツな」

 ほぼ棒読みで説明されてもな。

 明らかに形式的な理由じゃないか。

「あぁ、逆恨みですか」

 取り敢えず乗ってみた僕の言葉も、自分で言うのも何だが、棒読みになっていた。

 役者にはなれないよね。ならないけど。

「お前にとっちゃそうかな。俺たちにとっちゃ当然の流れなんだがな」

 いや、誰にとっても逆恨みでしょ、という突っ込みは胸にしまって、

「あぁ、もぅ、そう言う茶番はイイですから。いるんでしょ?」

 僕はそう言い放つ。

 リーダーっぽい男が感心したように僕を見るが、そんなもん無視だ。

「よく分かりましたね」

 相変わらずニヤニヤ笑いながら目はまったく笑ってない、爬虫類っぽい雰囲気の男、ヨハン・フリューゲスが現れる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

婚約破棄?貴方程度がわたくしと結婚出来ると本気で思ったの?

三条桜子
恋愛
王都に久しぶりにやって来た。楽しみにしていた舞踏会で突如、婚約破棄を突きつけられた。腕に女性を抱いてる。ん?その子、誰?わたくしがいじめたですって?わたくしなら、そんな平民殺しちゃうわ。ふふふ。ねえ?本気で貴方程度がわたくしと結婚出来ると思っていたの?可笑しい!  ◎短いお話。文字数も少なく読みやすいかと思います。全6話。 イラスト/ノーコピーライトガール

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...