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第3章 鍛練
第75話 待ち伏せ
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必要品の購入を終えた僕とビアンカは、明日の待ち合わせ場所と時間を決めて、今日は解散となった。
ビアンカは宿泊拠点の宿屋の名前と場所を僕に告げ、そのまま帰って行った。
僕はまっすぐクレイの屋敷へと足を向ける。
「木札」
ビアンカと別れてしばらく歩くと、前方の建物の陰から、冒険者とおぼしき男が二人、僕の通行を妨げるように現れた。
「・・・人違いです」
「間違えちゃいないだろう。何知らんふりしてんだ?」
「面倒臭いから?」
「舐めやがって」
怒鳴る訳でなく、脅す訳でもなく、二人の冒険者は僕を見据えて離さない。
すぐに後ろから複数人の足音が響く。
こりゃ待ち伏せされたかな。
ビアンカと別れるのを待って後を付けられたのだろう。
後ろの、多分冒険者と違い、前方の二人は完全に気配を断っていた。
僕みたいな素人が『気配』なんて言葉を使うのもなんだけど。
それでも害意を持って待ち伏せされたら、気持ち悪い感じとか嫌な予感とかはすると思うんだよ。
それがまったくなかったってコトは、それなりのランクの冒険者ってコトなんだろう。
そんなコトを考えていると、後ろの冒険者も僕を囲む位置に付く。
「何か用ですか?」
僕は努めて平静な声音で前方の一人を見た。
おそらくこのグループのリーダーなのだろう、どこか飄々とした雰囲気の四十代冒険者だ。
「用な。アレだよ、アレ」
リーダーっぽい男は、バンダナっぽい布で覆った頭をガシガシと掻き、言葉を濁した。
「どれです?」
「俺たちはお前にヤられたヤツらの知り合いでな、お前のおかげでヤツらの立場が非情に悪くなっててな、まぁなんだ。落とし前ってヤツな」
ほぼ棒読みで説明されてもな。
明らかに形式的な理由じゃないか。
「あぁ、逆恨みですか」
取り敢えず乗ってみた僕の言葉も、自分で言うのも何だが、棒読みになっていた。
役者にはなれないよね。ならないけど。
「お前にとっちゃそうかな。俺たちにとっちゃ当然の流れなんだがな」
いや、誰にとっても逆恨みでしょ、という突っ込みは胸にしまって、
「あぁ、もぅ、そう言う茶番はイイですから。いるんでしょ?」
僕はそう言い放つ。
リーダーっぽい男が感心したように僕を見るが、そんなもん無視だ。
「よく分かりましたね」
相変わらずニヤニヤ笑いながら目はまったく笑ってない、爬虫類っぽい雰囲気の男、ヨハン・フリューゲスが現れる。
ビアンカは宿泊拠点の宿屋の名前と場所を僕に告げ、そのまま帰って行った。
僕はまっすぐクレイの屋敷へと足を向ける。
「木札」
ビアンカと別れてしばらく歩くと、前方の建物の陰から、冒険者とおぼしき男が二人、僕の通行を妨げるように現れた。
「・・・人違いです」
「間違えちゃいないだろう。何知らんふりしてんだ?」
「面倒臭いから?」
「舐めやがって」
怒鳴る訳でなく、脅す訳でもなく、二人の冒険者は僕を見据えて離さない。
すぐに後ろから複数人の足音が響く。
こりゃ待ち伏せされたかな。
ビアンカと別れるのを待って後を付けられたのだろう。
後ろの、多分冒険者と違い、前方の二人は完全に気配を断っていた。
僕みたいな素人が『気配』なんて言葉を使うのもなんだけど。
それでも害意を持って待ち伏せされたら、気持ち悪い感じとか嫌な予感とかはすると思うんだよ。
それがまったくなかったってコトは、それなりのランクの冒険者ってコトなんだろう。
そんなコトを考えていると、後ろの冒険者も僕を囲む位置に付く。
「何か用ですか?」
僕は努めて平静な声音で前方の一人を見た。
おそらくこのグループのリーダーなのだろう、どこか飄々とした雰囲気の四十代冒険者だ。
「用な。アレだよ、アレ」
リーダーっぽい男は、バンダナっぽい布で覆った頭をガシガシと掻き、言葉を濁した。
「どれです?」
「俺たちはお前にヤられたヤツらの知り合いでな、お前のおかげでヤツらの立場が非情に悪くなっててな、まぁなんだ。落とし前ってヤツな」
ほぼ棒読みで説明されてもな。
明らかに形式的な理由じゃないか。
「あぁ、逆恨みですか」
取り敢えず乗ってみた僕の言葉も、自分で言うのも何だが、棒読みになっていた。
役者にはなれないよね。ならないけど。
「お前にとっちゃそうかな。俺たちにとっちゃ当然の流れなんだがな」
いや、誰にとっても逆恨みでしょ、という突っ込みは胸にしまって、
「あぁ、もぅ、そう言う茶番はイイですから。いるんでしょ?」
僕はそう言い放つ。
リーダーっぽい男が感心したように僕を見るが、そんなもん無視だ。
「よく分かりましたね」
相変わらずニヤニヤ笑いながら目はまったく笑ってない、爬虫類っぽい雰囲気の男、ヨハン・フリューゲスが現れる。
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