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厄介な繋がり②
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糸を辿り見つけた佳穂は、男に絡まれていて気安く彼女の肩に触れる男に対する苛立ちと、何故か殺意すら湧き上がってきた。
(喧しい口をきけぬよう、男達の首を落とすか。いや、傷付けたらこの世界では大事になるな)
此方の世界ではベルンハルトは異分子で、皇帝の地位など役に立たない。
この国の法律では、相手を殺害したり傷付ければ大事になるらしく、面倒事を増やさないためにも怒りと爆発しそうになる魔力を抑えた。
「ベルンハルトさん、ごめんなさい」
手を繋ぐのを断ったことや、危機感の薄さに小言の一つも言ってやりたいが、素直に謝る佳穂の泣きそうになっている顔を見てしまうと何も言えなくなる。
肩を震わせる佳穂を抱き寄せてしまいたい衝動に駆られるが、人通りの多い道でそれは憚られた。
只でさえ周囲の者達から、何事かと詮索する視線を向けられているのだ。これ以上の注目を浴びる気は無い。
「此処から離れるぞ」
返事をする間を与えず、佳穂の手首を掴むとベルンハルトは歩き出した。
人通りの少ない路地裏まで半ば引きずるように歩くと、ベルンハルトは佳穂の身体を雑居ビルの壁へ押し付けた。
「ベルン、ハルトさん?」
困惑した佳穂が「どうしたの?」と問いかけてくるのが腹立たしく思えて、無言のまま見下ろした。
逃がさないように佳穂の両脇に手を突き、腕の中へと閉じ込めると彼女は表情に怯えの色が混ぜてベルンハルトを見上げた。
「ちょっと何を、」
「黙れ」
たった一言で佳穂は何も言えなくなる。
不安げに見上げてくる佳穂へ顔を近付ければ、勘違いしたのか彼女はぎゅっと目を瞑った。
クッと笑いそうになりながら、ベルンハルトはきつく結ばれた唇では無く、細い首筋へ唇を落とすとやわらかな皮膚を吸い上げた。
「んっ」
啄むように首筋の皮膚を食んでやれば、甘い吐息が佳穂の口から漏れ羞恥からか目尻にはうっすらと涙が浮かぶ。
涙目になる佳穂の上々の反応に、電車内で感じた以上の熱が下半身に集中していく。
性的対象には見ていなかった女に欲情するとは、自分の意思とは思えない。
自分の意思だと思えないのに、もっと彼女に刺激を与えたらどんな甘い声で啼くのか。
声を必死で抑えている佳穂の声を聞きたくて彼女の首を食む。
食む度に「んっ、んっ」と身体を震わせ堪える姿は、小動物のように愛らしく感じてベルンハルトはペロリと舌を這わした。
首より下へ視線を向けると、今までは見向きもしなかったささやかな大きさの二つの膨らみが目に入る。
触れたいと手を伸ばしかけて、有り得ないと止めた。
心臓の鼓動が速くなっているのは、妙な気分になるのは佳穂と心臓が繋がっているためだ。
「ひゃんっ」
仕上げとばかりに、吸い上げた首筋へ舌を這わせ鎖骨を人差し指でなぞり、ベルンハルトは自分が付けた赤い花の上々な出来に口の端を吊り上げた。
所有印として鬱血の痕を女に刻む心理は、理解出来ず小馬鹿にしていた。
しかし、白い首筋に紅い花片が散る様は己の征服欲が満たされ、仄暗い感情が心の奥底に芽生えるのだと分かり、苦笑する。
「口付けされると思ったか?」
「私に、な、にしたんですか?」
精一杯の抵抗として、睨んでいるつもりの佳穂の目尻には涙が溜まり、潤んだ瞳で熱く見詰めているようにしか見えず全くの逆効果となっていた。
「ただの男除けだ」
言葉の意味が分からず首を捻る佳穂は、帰宅して鏡を見たら絶叫するだろう。
全身を羞恥心から真っ赤に染めて狼狽える彼女を想像してみると、クツクツと笑いが込み上げてくる。
真っ赤な顔で足元をふらつかせる佳穂としっかりと手を繋ぎ、先程とはうって代わり上機嫌となったベルンハルトは歩き出した。
(喧しい口をきけぬよう、男達の首を落とすか。いや、傷付けたらこの世界では大事になるな)
此方の世界ではベルンハルトは異分子で、皇帝の地位など役に立たない。
この国の法律では、相手を殺害したり傷付ければ大事になるらしく、面倒事を増やさないためにも怒りと爆発しそうになる魔力を抑えた。
「ベルンハルトさん、ごめんなさい」
手を繋ぐのを断ったことや、危機感の薄さに小言の一つも言ってやりたいが、素直に謝る佳穂の泣きそうになっている顔を見てしまうと何も言えなくなる。
肩を震わせる佳穂を抱き寄せてしまいたい衝動に駆られるが、人通りの多い道でそれは憚られた。
只でさえ周囲の者達から、何事かと詮索する視線を向けられているのだ。これ以上の注目を浴びる気は無い。
「此処から離れるぞ」
返事をする間を与えず、佳穂の手首を掴むとベルンハルトは歩き出した。
人通りの少ない路地裏まで半ば引きずるように歩くと、ベルンハルトは佳穂の身体を雑居ビルの壁へ押し付けた。
「ベルン、ハルトさん?」
困惑した佳穂が「どうしたの?」と問いかけてくるのが腹立たしく思えて、無言のまま見下ろした。
逃がさないように佳穂の両脇に手を突き、腕の中へと閉じ込めると彼女は表情に怯えの色が混ぜてベルンハルトを見上げた。
「ちょっと何を、」
「黙れ」
たった一言で佳穂は何も言えなくなる。
不安げに見上げてくる佳穂へ顔を近付ければ、勘違いしたのか彼女はぎゅっと目を瞑った。
クッと笑いそうになりながら、ベルンハルトはきつく結ばれた唇では無く、細い首筋へ唇を落とすとやわらかな皮膚を吸い上げた。
「んっ」
啄むように首筋の皮膚を食んでやれば、甘い吐息が佳穂の口から漏れ羞恥からか目尻にはうっすらと涙が浮かぶ。
涙目になる佳穂の上々の反応に、電車内で感じた以上の熱が下半身に集中していく。
性的対象には見ていなかった女に欲情するとは、自分の意思とは思えない。
自分の意思だと思えないのに、もっと彼女に刺激を与えたらどんな甘い声で啼くのか。
声を必死で抑えている佳穂の声を聞きたくて彼女の首を食む。
食む度に「んっ、んっ」と身体を震わせ堪える姿は、小動物のように愛らしく感じてベルンハルトはペロリと舌を這わした。
首より下へ視線を向けると、今までは見向きもしなかったささやかな大きさの二つの膨らみが目に入る。
触れたいと手を伸ばしかけて、有り得ないと止めた。
心臓の鼓動が速くなっているのは、妙な気分になるのは佳穂と心臓が繋がっているためだ。
「ひゃんっ」
仕上げとばかりに、吸い上げた首筋へ舌を這わせ鎖骨を人差し指でなぞり、ベルンハルトは自分が付けた赤い花の上々な出来に口の端を吊り上げた。
所有印として鬱血の痕を女に刻む心理は、理解出来ず小馬鹿にしていた。
しかし、白い首筋に紅い花片が散る様は己の征服欲が満たされ、仄暗い感情が心の奥底に芽生えるのだと分かり、苦笑する。
「口付けされると思ったか?」
「私に、な、にしたんですか?」
精一杯の抵抗として、睨んでいるつもりの佳穂の目尻には涙が溜まり、潤んだ瞳で熱く見詰めているようにしか見えず全くの逆効果となっていた。
「ただの男除けだ」
言葉の意味が分からず首を捻る佳穂は、帰宅して鏡を見たら絶叫するだろう。
全身を羞恥心から真っ赤に染めて狼狽える彼女を想像してみると、クツクツと笑いが込み上げてくる。
真っ赤な顔で足元をふらつかせる佳穂としっかりと手を繋ぎ、先程とはうって代わり上機嫌となったベルンハルトは歩き出した。
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