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10.たこ焼きデート
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魔法の本の力で、異世界から我が家へ皇帝陛下がやって来てから十日経った。
ワインやビールに似た蒸留酒を主に飲んでいたというベルンハルトは、商店街の酒屋で試飲した日本酒をいたく気に入って家でも晩酌をするようになっていた。
彼は酒のつまみとして凝ったものよりは簡単なものを好むようで、焼いた厚切りベーコンと有名メーカーの粗挽きウインナー、塩茹で枝豆がお気に入りらしい。
宮廷料理の内容を彼から聞けば、高級レストランのフルコースを毎食食べていたという。推測しかないが、豪華絢爛な食事をしていた食生活の反動でたまには庶民の食事をしたいという、感覚なのだろうか。
「此方の世界の食文化は面白いな。これは作れるものなのか?」
定位置となっているソファーに座ったベルンハルトが指差したのは、テレビ画面に映った美味しそうなたこ焼き。
「たこ焼き?」
麦茶入りの硝子のコップをテーブルへ置き、佳穂は腕組みをする。
以前、叔父がたこ焼きと明石焼き作りにはまっていた時期があり、たこ焼き用ホットプレートは確か食器棚の奥にあったと思う。
「家でも作れますよ。ただ、材料が無いのと作るのは久しぶりで上手くたこ焼きを回せないかな。そうだ、どうせなら専門店に行きましょうか」
「ほう……それは、デートの誘いか?」
「はっ!?」
ニヤリと、意地の悪い笑いを浮かべて言うベルンハルトはからかい半分で言っている。そうだとは分かっていても、デートと言う言葉で佳穂の頬は真っ赤に染まった。
「ちがっ」
「デートとやら、楽しみにしていよう」
否定の言葉の上からかぶせて言われてしまい、佳穂はさらに顔を真っ赤にしてベルンハルトを見詰める。
違うと言わせないようにしているのは、彼は本当に意地が悪い。それでも、“デート”の言葉に心臓の鼓動が速くなってしまうのは困りもの。
熱を持って赤く染まった頬を隠すために佳穂は両手で包み込んだ。
翌朝、少し緊張する朝食を済ませてから自室へ戻り、買ってからタグすら切っておらずにしまっていた服を箪笥から引っ張り出した。
彼氏ですら無かった男とのデート用にと、張り切って買った可愛らしい服。
動きやすいカジュアルな服を好んで着る佳穂にとって、可愛らしさを全面に出した白いレースのノースリーブカットソーとふんわりしたピンク色のスカート。
普段着慣れない服を着たせいか鏡に映る自分の姿に違和感を覚えて、佳穂は鏡の前で一人百面相をしていた。
甘過ぎないデザインで可愛いが、何時もと違うピッタリとしたカットソーのため体の線が出てしまい恥ずかしい。
可愛い服装ではナチュラルメイクは似合わない。普段はほとんどつかわない、濃い目のアイシャドウをコスメボックスから出して、濃くなりすぎないように化粧をする。
薬用リップしか塗らない唇には、チェリーピンク色のグロスを塗った。
普段より時間をかけて化粧をしたのだ。これで少しは、ベルンハルトと歩いていても違和感無いようになれていたらいいのにと、何度も鏡に映る自分の姿を確認した。
いつも支度に時間がかかってしまい、待たせてしまったことを謝らなければと居間へ向かった佳穂は、ソファーに座るベルンハルトへ「お待たせしました」と声をかけた。
「遅いっ、」
気配に気付いたベルンハルトが振り向き、そして大きく目を見開く。
「馬子にも衣装だってわかっていますから、そんなに見ないでください」
「いや、似合っていないとは言っていない」
痛いほどのベルンハルトからの視線に耐えられずに佳穂は横を向く。
キャビネットの硝子に映る自分は確かに違和感があった。
普段は下ろしているか一つに纏めている髪は緩く巻いて、しっかりとマスカラを塗った睫毛はバッチリ上を向いていし、似合わないのは百も承知。
溜め息混じりに前を向くと、Tシャツにジーンズ姿のラフな格好のベルンハルトと目が合った。
ラフな格好なのに、彼が着るとファストファッションの服が一流ブランドの服に見えるのだから、美形は本当に羨ましいと思う。
視線を合わせ続けるのに耐えきれず、佳穂は視線を逸らした。
ワインやビールに似た蒸留酒を主に飲んでいたというベルンハルトは、商店街の酒屋で試飲した日本酒をいたく気に入って家でも晩酌をするようになっていた。
彼は酒のつまみとして凝ったものよりは簡単なものを好むようで、焼いた厚切りベーコンと有名メーカーの粗挽きウインナー、塩茹で枝豆がお気に入りらしい。
宮廷料理の内容を彼から聞けば、高級レストランのフルコースを毎食食べていたという。推測しかないが、豪華絢爛な食事をしていた食生活の反動でたまには庶民の食事をしたいという、感覚なのだろうか。
「此方の世界の食文化は面白いな。これは作れるものなのか?」
定位置となっているソファーに座ったベルンハルトが指差したのは、テレビ画面に映った美味しそうなたこ焼き。
「たこ焼き?」
麦茶入りの硝子のコップをテーブルへ置き、佳穂は腕組みをする。
以前、叔父がたこ焼きと明石焼き作りにはまっていた時期があり、たこ焼き用ホットプレートは確か食器棚の奥にあったと思う。
「家でも作れますよ。ただ、材料が無いのと作るのは久しぶりで上手くたこ焼きを回せないかな。そうだ、どうせなら専門店に行きましょうか」
「ほう……それは、デートの誘いか?」
「はっ!?」
ニヤリと、意地の悪い笑いを浮かべて言うベルンハルトはからかい半分で言っている。そうだとは分かっていても、デートと言う言葉で佳穂の頬は真っ赤に染まった。
「ちがっ」
「デートとやら、楽しみにしていよう」
否定の言葉の上からかぶせて言われてしまい、佳穂はさらに顔を真っ赤にしてベルンハルトを見詰める。
違うと言わせないようにしているのは、彼は本当に意地が悪い。それでも、“デート”の言葉に心臓の鼓動が速くなってしまうのは困りもの。
熱を持って赤く染まった頬を隠すために佳穂は両手で包み込んだ。
翌朝、少し緊張する朝食を済ませてから自室へ戻り、買ってからタグすら切っておらずにしまっていた服を箪笥から引っ張り出した。
彼氏ですら無かった男とのデート用にと、張り切って買った可愛らしい服。
動きやすいカジュアルな服を好んで着る佳穂にとって、可愛らしさを全面に出した白いレースのノースリーブカットソーとふんわりしたピンク色のスカート。
普段着慣れない服を着たせいか鏡に映る自分の姿に違和感を覚えて、佳穂は鏡の前で一人百面相をしていた。
甘過ぎないデザインで可愛いが、何時もと違うピッタリとしたカットソーのため体の線が出てしまい恥ずかしい。
可愛い服装ではナチュラルメイクは似合わない。普段はほとんどつかわない、濃い目のアイシャドウをコスメボックスから出して、濃くなりすぎないように化粧をする。
薬用リップしか塗らない唇には、チェリーピンク色のグロスを塗った。
普段より時間をかけて化粧をしたのだ。これで少しは、ベルンハルトと歩いていても違和感無いようになれていたらいいのにと、何度も鏡に映る自分の姿を確認した。
いつも支度に時間がかかってしまい、待たせてしまったことを謝らなければと居間へ向かった佳穂は、ソファーに座るベルンハルトへ「お待たせしました」と声をかけた。
「遅いっ、」
気配に気付いたベルンハルトが振り向き、そして大きく目を見開く。
「馬子にも衣装だってわかっていますから、そんなに見ないでください」
「いや、似合っていないとは言っていない」
痛いほどのベルンハルトからの視線に耐えられずに佳穂は横を向く。
キャビネットの硝子に映る自分は確かに違和感があった。
普段は下ろしているか一つに纏めている髪は緩く巻いて、しっかりとマスカラを塗った睫毛はバッチリ上を向いていし、似合わないのは百も承知。
溜め息混じりに前を向くと、Tシャツにジーンズ姿のラフな格好のベルンハルトと目が合った。
ラフな格好なのに、彼が着るとファストファッションの服が一流ブランドの服に見えるのだから、美形は本当に羨ましいと思う。
視線を合わせ続けるのに耐えきれず、佳穂は視線を逸らした。
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