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猛獣との出会い
05.猛獣とOLの新しい関係
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日中は暖かくなってきたとはいえ、まだまだ夜間と早朝は寒い日もある。
久々に感じる自分以外の温もりと触れ合う素肌が心地よくて、紗智子は甘えるように彼の胸へ顔を埋めた。
(あたたかい? この人は彼なの? 違う、彼は私じゃなくてあの子を選んだのに)
夢と現の境目で彷徨う意識の中、手を伸ばして眠る彼の髪へ触れた。
指の間をするする抜けていく髪はやわらかくて、髪質と長さに違和感を覚えて首を傾げる。
彼の髪はもっと短くて硬い手触りでは無かったか。それに、彼とはもう半年前に別れていていつもは一人で寝ていたはずだ。
(この人は、誰―?)
心地いい眠りへの誘いを振り切り、紗智子は重たい目蓋を無理やり開く。
目覚めてすぐに感じたのは、素肌に当たるシーツの感触。
靄がかる視界で首を動かして下方を確認すると、一糸まとわぬ裸で寝ていた自分の胸が上下するのが見えた。
隣に寝ている誰かの腕が腰へ回され、顔を上げた紗智子は驚きのあまり大きく肩を揺らす。
腕の持ち主も自分と同じく全裸で寝ていたのだ。
どういう状況がすぐには理解できずに、身じろぎすれば体の節々、特に腰に鈍痛を感じて呻く。
全裸の男女が一緒に寝ており、腰の痛みと全身の倦怠感というだけでも、昨夜は横で寝ている男とセックスをしたということで。
「ぎゃあ」と叫びたいのに、乾いた喉では叫び声にはならずヒュウッという空気の漏れる音が鳴る。
いつも枕元へ置いているスマホを探そうと首を動かし、ぐしゃぐしゃに乱れたシーツと開封済のコンドームの袋数個が視界に入り、そこで昨夜の出来事を思い出した。
(そうだ、この人と、クロードさんとセックスしちゃったんだ。最初は無理矢理だったのに、ベッドでは自分から彼に跨って、何度も……うわあぁ~!)
酔った勢いで彼と一夜の過ちを犯した一月前とは違い、昨夜の記憶はしっかりと残っている。最初は抵抗していたのに、理性を失い本能のままに交わってしまった。
何度も達して最後は気絶するほどの、激し過ぎる情事の顛末を思い出してしまい、流されてしまったとはいえ何ということをしたんだという恥ずかしさから、眠るクロードに背を向けて両手で顔を覆う。
動く度に体の節々、特に腰が痛み体中の筋肉が張っているのが分かる。
昨夜の状況を分析して気持ちが少し落ち着いて来ると、汗でべたつく体と額に張り付く髪が気になってきた。
掛け布団を捲り、痛む腰を押さえて上半身を起こしかけた紗智子の手首が、横から伸びてきた手によって掴まれる。
「何処へ、行く?」
寝ていたと思ったクロードが寝起き特有の掠れた声で問う。
半開きの目はまだ夢現といった風で、乱れた髪も相まって色っぽさが増して見えドキリと胸が跳ねた。
「えぇっと、シャワーを浴びてくるだけだから、まだ寝ていて」
「ああ」
頷いたクロードは再び目蓋を閉じた。
カーテンの隙間からすでに高い位置へ昇っている陽の光が差し込む。
陽光に照らされた部屋の惨状を確認して、紗智子は泣きたくなった。
床へ散らばる二人分の服と口を縛った使用済みのコンドームの数は一つや二つではない。
昨夜の激しいセックスで、クロードは何回射精したのか。彼の絶倫っぷりに身震いする。
震える脚と痛む腰を叱咤して、壁に手をついて洗面所へ辿り着き、洗面台の鏡に映る自分の姿を確認して……顔を顰めてしまった。
「キスマークを付けるだなんて、信じられない」
鎖骨の下、両胸、腹部、太股の内側に少なくとも十五か所に咲いた、赤い鬱血痕。
首筋に付けなかったのは、一応仕事をしている紗智子への配慮からか。
キスマークを付けるような男とは思えなかったのに、意外というか、彼に執着されている気がしてきて怖くなった。
バスタオルを洗濯機の上へ置き、浴室の扉を開く。
浴槽にたっぷりとお湯が張られていたことを不審に思いつつ、紗智子は床へバスマットを敷きシャワーの切り替えハンドルを回す。
頭からぬるめの湯をかぶっていると、段々と目が覚めてきて思考も纏まってくる。
「無理矢理だったのに、この後、どうしよう……」
首を横に振った紗智子は、シャワーを止めてボディスポンジにボディソープを垂らし泡立てた。
久々に感じる自分以外の温もりと触れ合う素肌が心地よくて、紗智子は甘えるように彼の胸へ顔を埋めた。
(あたたかい? この人は彼なの? 違う、彼は私じゃなくてあの子を選んだのに)
夢と現の境目で彷徨う意識の中、手を伸ばして眠る彼の髪へ触れた。
指の間をするする抜けていく髪はやわらかくて、髪質と長さに違和感を覚えて首を傾げる。
彼の髪はもっと短くて硬い手触りでは無かったか。それに、彼とはもう半年前に別れていていつもは一人で寝ていたはずだ。
(この人は、誰―?)
心地いい眠りへの誘いを振り切り、紗智子は重たい目蓋を無理やり開く。
目覚めてすぐに感じたのは、素肌に当たるシーツの感触。
靄がかる視界で首を動かして下方を確認すると、一糸まとわぬ裸で寝ていた自分の胸が上下するのが見えた。
隣に寝ている誰かの腕が腰へ回され、顔を上げた紗智子は驚きのあまり大きく肩を揺らす。
腕の持ち主も自分と同じく全裸で寝ていたのだ。
どういう状況がすぐには理解できずに、身じろぎすれば体の節々、特に腰に鈍痛を感じて呻く。
全裸の男女が一緒に寝ており、腰の痛みと全身の倦怠感というだけでも、昨夜は横で寝ている男とセックスをしたということで。
「ぎゃあ」と叫びたいのに、乾いた喉では叫び声にはならずヒュウッという空気の漏れる音が鳴る。
いつも枕元へ置いているスマホを探そうと首を動かし、ぐしゃぐしゃに乱れたシーツと開封済のコンドームの袋数個が視界に入り、そこで昨夜の出来事を思い出した。
(そうだ、この人と、クロードさんとセックスしちゃったんだ。最初は無理矢理だったのに、ベッドでは自分から彼に跨って、何度も……うわあぁ~!)
酔った勢いで彼と一夜の過ちを犯した一月前とは違い、昨夜の記憶はしっかりと残っている。最初は抵抗していたのに、理性を失い本能のままに交わってしまった。
何度も達して最後は気絶するほどの、激し過ぎる情事の顛末を思い出してしまい、流されてしまったとはいえ何ということをしたんだという恥ずかしさから、眠るクロードに背を向けて両手で顔を覆う。
動く度に体の節々、特に腰が痛み体中の筋肉が張っているのが分かる。
昨夜の状況を分析して気持ちが少し落ち着いて来ると、汗でべたつく体と額に張り付く髪が気になってきた。
掛け布団を捲り、痛む腰を押さえて上半身を起こしかけた紗智子の手首が、横から伸びてきた手によって掴まれる。
「何処へ、行く?」
寝ていたと思ったクロードが寝起き特有の掠れた声で問う。
半開きの目はまだ夢現といった風で、乱れた髪も相まって色っぽさが増して見えドキリと胸が跳ねた。
「えぇっと、シャワーを浴びてくるだけだから、まだ寝ていて」
「ああ」
頷いたクロードは再び目蓋を閉じた。
カーテンの隙間からすでに高い位置へ昇っている陽の光が差し込む。
陽光に照らされた部屋の惨状を確認して、紗智子は泣きたくなった。
床へ散らばる二人分の服と口を縛った使用済みのコンドームの数は一つや二つではない。
昨夜の激しいセックスで、クロードは何回射精したのか。彼の絶倫っぷりに身震いする。
震える脚と痛む腰を叱咤して、壁に手をついて洗面所へ辿り着き、洗面台の鏡に映る自分の姿を確認して……顔を顰めてしまった。
「キスマークを付けるだなんて、信じられない」
鎖骨の下、両胸、腹部、太股の内側に少なくとも十五か所に咲いた、赤い鬱血痕。
首筋に付けなかったのは、一応仕事をしている紗智子への配慮からか。
キスマークを付けるような男とは思えなかったのに、意外というか、彼に執着されている気がしてきて怖くなった。
バスタオルを洗濯機の上へ置き、浴室の扉を開く。
浴槽にたっぷりとお湯が張られていたことを不審に思いつつ、紗智子は床へバスマットを敷きシャワーの切り替えハンドルを回す。
頭からぬるめの湯をかぶっていると、段々と目が覚めてきて思考も纏まってくる。
「無理矢理だったのに、この後、どうしよう……」
首を横に振った紗智子は、シャワーを止めてボディスポンジにボディソープを垂らし泡立てた。
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