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第1章 春
3.目標
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「じゃあ、とりあえずスタートテストの結果を見せてもらおうか」
彼は通学鞄からテストを取り、差し出した。嵯峨本はまず氏名欄を確認する。
岡裕喜――
「え、もしかして僕の名前覚えてなかった? 1年の時一緒のクラスだったよ」
バレてしまったか、察しのいい奴め。嵯峨本は内心毒づく。
「そうか、ごめん。人を覚えるの苦手なんだよ。それで――国語59点、英語53点。なんだ、意外と高いんだな。もっと低いかと思った」
「国語と英語は得意なの。まあ、こんな点数だけど……」些か失礼な言い方だったが、岡は素直に認めた。
「数学、15点。このテストで赤点取る奴なんて本当にいるんだな……」嵯峨本は目を見開く。
「数学だけはマジで苦手……。四則演算以外、よくわからなかった」
「小学生の時も算数ダメだったろ。中学の数学なんて小学校の算数の延長だし」
「そうなんよ。どうか助けてくれ~」岡は再び両手を顔前で合わせる。
「どこまでできるかわからないけど、やれるところまでやってみようか」
嵯峨本がそう言うと、岡は明朗に返答した。
「どうにか、今度の追試で8割は超したいと思ってる」
「そいつはお前の努力次第ってこった」嵯峨本はため息交じりに一応言ってみた。正直、期待薄である。岡の能力もそうだが、自分自身も少し自信がなかった。
「最初に間違ってる問題は比例・反比例だな。公式とかちゃんと覚えてるか?」
「えーっと、比例がy=x/aで、反比例がy=axだったよね?」
道のりは果てしなく長そうだ。
彼は通学鞄からテストを取り、差し出した。嵯峨本はまず氏名欄を確認する。
岡裕喜――
「え、もしかして僕の名前覚えてなかった? 1年の時一緒のクラスだったよ」
バレてしまったか、察しのいい奴め。嵯峨本は内心毒づく。
「そうか、ごめん。人を覚えるの苦手なんだよ。それで――国語59点、英語53点。なんだ、意外と高いんだな。もっと低いかと思った」
「国語と英語は得意なの。まあ、こんな点数だけど……」些か失礼な言い方だったが、岡は素直に認めた。
「数学、15点。このテストで赤点取る奴なんて本当にいるんだな……」嵯峨本は目を見開く。
「数学だけはマジで苦手……。四則演算以外、よくわからなかった」
「小学生の時も算数ダメだったろ。中学の数学なんて小学校の算数の延長だし」
「そうなんよ。どうか助けてくれ~」岡は再び両手を顔前で合わせる。
「どこまでできるかわからないけど、やれるところまでやってみようか」
嵯峨本がそう言うと、岡は明朗に返答した。
「どうにか、今度の追試で8割は超したいと思ってる」
「そいつはお前の努力次第ってこった」嵯峨本はため息交じりに一応言ってみた。正直、期待薄である。岡の能力もそうだが、自分自身も少し自信がなかった。
「最初に間違ってる問題は比例・反比例だな。公式とかちゃんと覚えてるか?」
「えーっと、比例がy=x/aで、反比例がy=axだったよね?」
道のりは果てしなく長そうだ。
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