いえろ〜の極短編集

僕を見て

　僕を見て。

　なんで、そうやって小さい板ばっかり見るの？

　僕は今、あなたに話をしているのに、

　あなたは今、僕とお話をしていないよね？

　ちゃんと、僕の目を見てよ。



　僕を見て。

　なんで、そうやって着てる服ばっかり褒めるの？

　僕は今、きみの笑顔に惚れたのに、

　きみは今、僕の服に恋してるよね？

　ちゃんと、僕の裸を見てよ。



　僕を見て。

　なんで、そうやって悲しい顔ばっかり見せるの？

　僕は今、残念なことなんてひとつもないのに、

　あなたは今、そんな僕を憐れんでるよね？

　ちゃんと、僕の心を見てよ。



　僕を見て。

　なんで、そうやって他人の評価ばかり気になるの？

　僕は今、こころからあなたを賞賛してるのに、

　あなたは今、そんな僕をこわがってるよね？

　ちゃんと、僕の眼を見てよ。



　僕を見て。

　風の音、陽の光、そんなものはどうでもいい。

　あらゆる媒体を全部、全部ないがしろにして。

　ただ、あなたの目の前にいる、

　僕だけをちゃんと、見てほしいんだ。