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第六章
婚約破棄から断罪へ3
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しかし、ユリウスは動じもせずに、ベンジャミンにカーテンを開けるよう命じた。
ベンジャミンは頷き、彼の手によってカーテンが開けられる。さあ、と光られたカーテンの向こう、落ちかけの、それでも確かな陽光が会場へと入ってきた。
当然、レインの目にもその光が落ちる。それを見ていたオリバーの側近の一人がおどろいたように呟いた言葉は、レインの瞳のその変化を目の当たりにした学生たちの耳によく響いた。
「暁の虹……!」
「な……!」
――暁の虹って、王族の!?
――まさか、本当に!?
ざわめきが大きくなる。レインは自分の目がこんなふうに呼ばれていることも知らなかった。体が震えそうになる。それを、ユリウスはしっかりと支えてくれた。背があたたかい。だから、安心できた。
「そうだ。私も、そしてお前も受け継がなかった王族の証。暁の虹を、このレインは――いいや、イリスレイン姫は持っている。これ以上の証拠がどこにある。お前は最初に見て理解したんだろう。イリスレインがレインだと。だからレインが王族に戻れないよう、証拠を握りつぶしたのだ。唯一の王族がお前だと思っているから」
オリバーの目が見開かれる。
「悪いがスペアは大勢いる。一応だが、私にも王位継承権がある」
「なんだと……」
「アンダーサン公爵家は王家のスペアだ。王家に何かあったときに王に即位する。現王が先代女王陛下の代わりに王になったように」
ざわめきが止まる。息を呑む音だけがしいんとした部屋に響く。
「一度でも考えなかったか? お前が万一死んだとき、誰が王になるのか、と」
「だ――まれ!だまれだまれだまれ!」
オリバーは咆哮した。ユリウスにつかみかかろうとして――。
「――……そこまでにしなさい、オリバー」
その、静かな声に、はっと動きを止めた。
侍従に支えられながら、ずいぶんとやつれた様子で階上の王族専用の観覧席から降りてくるのは、今この国を治めている国王陛下にしてオリバーの父、その人だった。
ベンジャミンは頷き、彼の手によってカーテンが開けられる。さあ、と光られたカーテンの向こう、落ちかけの、それでも確かな陽光が会場へと入ってきた。
当然、レインの目にもその光が落ちる。それを見ていたオリバーの側近の一人がおどろいたように呟いた言葉は、レインの瞳のその変化を目の当たりにした学生たちの耳によく響いた。
「暁の虹……!」
「な……!」
――暁の虹って、王族の!?
――まさか、本当に!?
ざわめきが大きくなる。レインは自分の目がこんなふうに呼ばれていることも知らなかった。体が震えそうになる。それを、ユリウスはしっかりと支えてくれた。背があたたかい。だから、安心できた。
「そうだ。私も、そしてお前も受け継がなかった王族の証。暁の虹を、このレインは――いいや、イリスレイン姫は持っている。これ以上の証拠がどこにある。お前は最初に見て理解したんだろう。イリスレインがレインだと。だからレインが王族に戻れないよう、証拠を握りつぶしたのだ。唯一の王族がお前だと思っているから」
オリバーの目が見開かれる。
「悪いがスペアは大勢いる。一応だが、私にも王位継承権がある」
「なんだと……」
「アンダーサン公爵家は王家のスペアだ。王家に何かあったときに王に即位する。現王が先代女王陛下の代わりに王になったように」
ざわめきが止まる。息を呑む音だけがしいんとした部屋に響く。
「一度でも考えなかったか? お前が万一死んだとき、誰が王になるのか、と」
「だ――まれ!だまれだまれだまれ!」
オリバーは咆哮した。ユリウスにつかみかかろうとして――。
「――……そこまでにしなさい、オリバー」
その、静かな声に、はっと動きを止めた。
侍従に支えられながら、ずいぶんとやつれた様子で階上の王族専用の観覧席から降りてくるのは、今この国を治めている国王陛下にしてオリバーの父、その人だった。
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