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2巻
2-3
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ずっとそうだ。リオンは何かを忘れているのに、思い出そうとすると、その記憶は遠ざかる。まるで、思い出さないでと懇願されているように。
「リ、オン」
ラキスディートがぽつりとリオンの名前を口にする。狼狽えているようだった。
「リオン、ごめんね」
「ばか、ばか、わたくし、いいえ、そう、いいえ」
うまく形にできない思いがじくじくと心を痛ませる。
どうして上手に言えないんだろう。上手にあなたを愛したいだけなのに。
いつかラキスディートが思っていたことを、知らずリオンは口にしていた。
瞬間、ラキスディートは――ラキスディートは伏せていた目を見ひらき、その白金の髪を揺らしてリオンの頤を持ち上げた。
ラキスディートの黄金の目が、わずかに覗いたリオンの星屑の瞳を映す。
「私もそうだ。……君を上手に愛したくて、それで、結局君を傷つけてしまった」
「わたくしだってそうよ。ごめんなさい、ラキス。わがままを……」
「わがままじゃない!」
ラキスディートの手を振り払ってうつむくリオンに、ラキスディートは声を荒らげた。
声を出したことで我に返ったのだろう。
びくりと肩を揺らしたリオンの頬を再び両の手で包み込み、ラキスディートは静かに口を開いた。
「……わがままなんかじゃない。リオン。君のそれがわがままであるものか」
ラキスディートの金の目がリオンを一心に見つめている。
こんな状況だというのに、リオンの胸がとくんと色づいた。
「私は、君を好きで……どうしたらいいのかわからなかった。君を幸せにしたいのに、誰かを愛したことがないから幸せにする方法を知らなかったんだ」
「わたくし、だって」
リオンの言葉をさえぎって、ラキスディートが言葉を続ける。彼にしては珍しいことだった。
「だから……だから、リオン。君のわがままは、私には君が望んでいることを教えてくれる大切な言葉なんだ。私は、君をずっと見ていたけれど……私が君を幸せにしたいと思うばかりで、本当に君を幸せにできるのかと何度も悩んだから」
ラキスディートが初めて告げる言葉は、リオンの考えが形になったような言葉だった。
リオンも、わからなかった。
我慢したから、偽りでも必要とされたアルトゥール王国でのことを思い出す。
リオンにとって耐えることは誰かに必要とされるための行為だった。
麻痺してしまった感覚は、リオンの行動をも縛り付けていた。
「わたくしの、わがままは、あなたにとって必要なことなの?」
「リオン、君のそれは、私にとってはこの世界で最も聞きたい言葉だ」
やっと、わかった。
助けて、と言えるようになったなら、今度は言葉を探すべきだったのだ、と。
「ラキス。わたくし、あの、あのね」
「うん」
「わたくし、今から大きなわがままを言うわ。……それでもいい?」
「――もちろん」
ラキスディートが微笑んだ。
リオンはその細くなった黄金の目に一時、見惚れる。
やっぱり、このひとが好きだ。
本当に、本当に、心の底から、魂に刻み付けるように深く愛している。
リオンはラキスディートの腕の中にいる幸福を噛みしめた。
大好きだ。ラキスディートはいつだってリオンを包んでくれる夜の空のよう。
リオンがいてもいい場所、リオンが生きていていい場所。
リオンが居たい場所は、いつだってここなのだ。
「あなたと花祭りに行きたいの。あなたの手からご飯を食べたい。あなたと青薔薇を見に行きたい。抱きしめてもらいたい。キスをして。あなたと笑いあいたい。ぎゅっとしていて、いつまでもわたくしを離さないで」
いくつもいくつも、リオンの望みは尽きぬほどあった。
その一つ一つを掬い上げるように、ラキスディートはリオンの頬をなぜる。
微笑むラキスディートの腕の中、リオンの薄紅色の髪がラキスディートの白金の髪と混じりあって風に揺れた。
「あなたと、ずっとずっと一緒に居たいの」
見上げたラキスディートの目は、とろけるような蜂蜜色をしていた。金よりもっと甘い、舐めたらおいしそうな、そんな色。その目が細まって、リオンを優しく見つめた。
「全部叶えるよ。リオン。君の願いが叶わぬことなど、これから先、けしてありはしない」
ラキスディートの目が、リオンの星屑を映して近づく。
やがてリオンの目にいっぱいの黄金が映った時、リオンの唇にはラキスディートのそれが柔らかく重なっていた。
口付けて、離れて、もう一度触れるだけの口付けをする。
身体の一部が触れているだけなのに、リオンはラキスディートの優しいキスに溺れているような心地がした。
実際溺れているのかもしれない。息ができないわけではないけれど、ずっとこの温かい腕の中にいたいと思ってしまう。
世界で一番安心できる、リオンの――リオンだけの、ラキスディートの腕の中だ。
キスに味なんてないはずなのに、ラキスディートのそれはひどく甘やかで、リオンは酔っぱらったようなふわふわした気持ちになる。
「ラキス、ラキス、だいすき」
まるで親鳥から餌をもらう雛鳥のように、ラキスディートに口付けをねだるリオンを、ラキスディートはどう思ったのだろう。
そうっと目を開けて見上げると、ラキスディートの黄金色の目はますます蜂蜜みたいにとろりと輝いていて、それはそれは綺麗な琥珀にも見えた。
「リオンはかわいい、本当に、可愛い……」
たまらないと言って、ラキスディートはリオンを抱きすくめた。
身体のどこもが触れ合って、とてもとても近くにいる身体からは懐かしくも慕わしい匂いがした。
ああ――ラキスだ。ラキスの匂いがする。
「リオン、君がかわいくて、私はどうにかなりそうだ」
「なっていいわ、ラキスならどうなっても素敵だと思う」
真面目に答えたのに、ラキスディートが驚いたように息をのむ。
おかしなことを言ったつもりはなかったけれど、とリオンが顔を上げると、ラキスディートはまるでこらえきれないといった顔で、リオンの顔に口付けの雨を降らせた。
ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスは、リオンの胸をくすぐったくさせる。
「リオンは、私がおかしくなってもいいの?」
「ラキスなら、いいわ。もちろん他の人なら、その、ええと、怖いと思うかもしれないけれど。でも、わたくし、ラキスなら全然怖くないわ」
ラキスディートの問いかけに、リオンはにっこり笑った。
何を当然のことを言うのかしらと思ったからだ。
ラキスディートはラキスディートで、たとえリオンがラキスディートの過去を知らなくても、リオンが思い出せない何かがラキスディートに関わっているのだとしても、それがリオンがラキスディートを好きでない理由にはならない。
リオンはきっと、ラキスディートになら何をされても受け入れる。
けれどそれはラキスディートがリオンを害したとして、という可能性の話ではない。
だって、ラキスディートはリオンをけして傷つけない。
ラキスディートが怒るのはリオンのためだ。
ラキスディートが悲しむのはリオンのためだ。
ラキスディートが微笑むのはリオンのためだ。
ラキスディートの腕は、声は――体は、心は、リオンのためにあるのだ。
もはや迷うことなく、戸惑うことなく、悩むことなく断言できる。
リオンは信じているのではない。ただ事実として、ラキスディートがリオンのための、リオンの唯一のひとだと理解していた。
だから、リオンはラキスディートを恐れない。
ラキスディートが何をしても、何になっても、リオンはラキスディートに恋をしているし、ラキスディートが世界中から憎まれても、ラキスディートだけを抱きしめるだろう。
もちろんラキスディートがそんなことになるはずがないので、ただの想像だ。
けれども、リオンは己の心が、今、ラキスディートだけのためにあるのだとわかった。
暗い闇の視界を、眩い光で照らしてくれた白金のあなた。
どうして好きにならないでいられるのだろう。
――あなたはわたくしに、全てをくれたの。
これは依存ではない。
代わりに、ラキスディートなしで生きていくことができるかという問題でもなかった。
リオンの世界にはラキスディートがいて、ラキスディートがくれた素晴らしい関わりがたくさんあって、眩いばかりの幸せがあって、そうしてリオンがラキスディートを好きでいてもいい、そんな優しい不文律がある、そういうことだった。
「リオン……」
「ラキスがどんなでもわたくし、ラキスを好きになったわ。わかっているの。でも、もしあなたが間違えたと思ったら、わたくしが今日みたいにわがままを言うわ」
「私を抑えてくれるのか? それは、あの日のこと、みたいに?」
「いいえ」
リオンがヒルデガルドの命乞いをした時の話だろう。
リオンは伸び上がって、今度は自分からラキスディートに口付けた。
「わたくし、あなたが間違えたんだと思っていないもの。わがままを言うなら、そう。わたくしを長い間寂しくしたことに対してなんだわ」
リオンがラキスディートの腕の中で微笑むと、ラキスディートはつられて笑った。
「リオン、元気になったね」
「あなたが来てくれたから、わたくし、すごくうれしくなったの」
「……寂しくさせてごめんね」
ラキスディートがぽつりと呟く。
リオンはゆっくりと目を閉じた。ゆるゆるとかぶりを振って目を隠す髪を払う。
もう一度開いた目は、前髪越しではないラキスディートの顔を――下がった眉を映した。
「ラキス」
それがなんだか可愛らしくて、こんなことをラキスディートに思うのはおかしいとわかっているけれど、どうにも可愛らしくてしかたなくて、リオンはラキスディートの腕の中で体を丸め、小さく縮こまった。
ころんと転がりそうなリオンを、慌ててラキスディートが抱き直す。
「わたくし、怒ってなんていないわ。だけどわたくし、今、とってもあなたに包まれていたい気持ちなの」
そう言ってリオンが見上げると、ラキスディートが息をのんだ音がした。
春の風がふんわりと、軽やかな花の香りを運んでくる。
リオンのチェリーブロンドが優しく揺れて、再びラキスディートの白金と混じりあった。
「リオン――」
ラキスディートが胸の内を吐き出すようにリオンの名前を呼ぶ。
けれど、それ以上は続かないのか、興奮のために潤んだ目でリオンを見つめ、やがてフー……と息をついた。
「リオンが、可愛すぎて――違う、愛しすぎて、困る」
「ええっ! あ、あの、その、ごめんなさい。ラキスを困らせるつもりはなかったの。本当よ」
初めて告げられた否定的な単語にリオンの肩が跳ねる。
もしかして、リオンはわがままを言いすぎたのだろうか。
ラキスディートがリオンを愛してくれていることはわかっているけれど、だからと言ってラキスディートを不快にさせていいわけではないのだ。
リオンは視界が熱くけぶるのを感じて、唇をきゅっと噛んだ。
「ラキスを困らせようと思ったわけじゃないの……違うのよ、ラキス……」
リオンがラキスディートの服をぎゅっと握って子供じみた言い訳をするのを、ラキスディートはどう思っているのだろう。
反省と後悔で涙がこぼれそうになった――ところで、リオンの目尻に柔らかなものが押し当てられた。
ハッと目を瞬くと、それはラキスディートの唇だった。
なぜかこの上なくにこやかな笑みを浮かべるラキスディートと至近距離で目があってしまった。
「ら、ラキス?」
「ああ、もう、かわいい。本当にかわいい。私の番はこの世で一番可愛い」
「ラキス、わたくしの耳はきちんと聞こえているわ。繰り返す必要はないのよ」
「可愛いから可愛いって言ってるんだよ。リオンは可愛い。こんな可愛い子は隠しておかないと危ないな」
「そういう話をしているのではなかったのよ、ラキス?」
リオンの悲哀を困惑に変え、さらにその困惑を彼方へ吹き飛ばしてしまったラキスディートがリオンに頬擦りをする。
リオンの頭はもはや許容量を超えてしまい、今や近くにある端整な顔に改めてドキドキと胸を高鳴らせることしかできなかった。
思考と心臓が明後日の方に稼働し始め、謎の反応をしてしまう。
そうやって、あわあわと真っ赤な顔になったリオンに助け舟を出したのは、それまでの流れをずっと窓際で鑑賞していた、リオンを偏愛する二人の女官――すなわち、エリーゼベアトとカイナルーンであった。
「こほん。偉大なる我らが竜王陛下、お姉さま……番さまを愛でるのは大変結構なことです。しかしですね、愛でるあまりに番さまを困らせるのはよろしくありませんわ」
「番さま、お目々が腫れてしまいますわ。少し冷やしましょうね」
エリーゼベアトが咳払いをし、カイナルーンが手拭いを濡らして待機している。きっと、リオンに手を貸す頃合を見計らっていたのだろう。
彼女たちの顔はラキスディートに匹敵するほど笑み崩れているが。
同じ部屋にいることをすっかり失念していたリオンが慌ててあたりを見回すと、カーテンの向こう側で幾人もの召使たちが固唾をのんで見守っているのが見えた。
番さま! 頑張れ! と拳を握り、口の動きで伝えてくれるその気持ちは大変にうれしい。
うれしいのだけれど……
「み、みんな……」
今までのことをたくさんのひとが見ていたと知って、リオンは顔から湯気が出るかと思った。恥ずかしくて恥ずかしくて、卒倒しそうだ。
「お姉さま、大丈夫ですわ。私たちのことは壁だとお思いくださいませ」
「そうです、番さま、我らはみな壁です。この光景を胸に刻み、向こう千年は幸せな気持ちで生きられます。お気になさらないでください」
自分たちを壁と称するエリーゼベアトとカイナルーンの目は爛々と輝いている。忘れてと言っても無理だろうことは一瞬でわかった。
「刻まなくていいのよ……?」
「いいものを見せていただきました」
羞恥で震える言葉に最高の笑顔が返ってきた。
だからリオンは反射的に微笑み返してしまった。
リオンの笑顔でさらに沸き立つ召使たちに、自分の柔らかくなった表情筋がこんな弊害をもたらすなんてと思ってみたりしつつ、リオンは助けを求めてラキスディートを振り返った。
が、ラキスディートはリオンを見てぷるぷると震えるばかりだ。
甘やかな瞳はリオンを愛でる時のそれで、リオンはますます恥ずかしくなってしまった。
長い前髪越しでも柔らかな視線を感じてしまう。
どうしようかしらとリオンが熱くなった頬に手を触れると、こほん、と咳払いして息を整えたラキスディートがリオンの髪をそっと撫でた。
「ら、ラキス……?」
「ほら、お前たち、リオンが困っている」
見上げるリオンを眩しそうに見て微笑むラキスディートも原因の一つだ、なんて言えない。
ラキスディートに触れられて、ますます恥ずかしくなったリオンは肩を震わせた。
召使たちがラキスディートの声に礼をして一歩下がる。
「リオンは花祭りに行きたいんだよね」
「え、え……?」
突然話題が戻った。
一瞬ついていけなくて、きょとんと目を瞬くリオンにラキスディートはまた笑った。
「それなら、これから花祭りに行こう、リオン。花祭りは楽しいらしいよ」
「らしい? ラキスは行ったことがないの?」
「うん、実はそうなんだ」
髪の感触を楽しむように、手櫛で柔らかくリオンのチェリーブロンドを梳るラキスディート。
「竜王さまは、花祭りに……行けないの?」
楽しい祭りだと言うなら、王であるラキスディートが参加できないのはあまりにも理不尽だ。
リオンは恥ずかしかったのも忘れてラキスディートの顔に手を伸ばした。さらりとした手触りの髪がリオンの手に触れる。ひんやりとしたラキスディートの頬が、リオンの手のひらを冷やした。
「違うよ、リオン。私が花祭りに行かなかったのは、花祭りに興味を持てなかったからなんだ」
「……どうして?」
思わずリオンはそう尋ねていた。
花祭りに興味がない理由を知りたいわけではない。
ただ、今の、楽しそうにリオンを誘うラキスディートから興味がない、という気持ちを感じられなかったのだ。
衣擦れの音がする。ラキスディートが、リオンの手を柔らかくとった音だ。
目を瞬くリオンの手の甲にラキスディートが口付ける。
途端、先程の羞恥が蘇って、リオンは頬を紅色に染めた。
「花祭りは、番のいる竜のための祭りだからね。冬の終わり、春の始まり――つまりは、花祭りの時期は求愛の季節なんだ」
ラキスディートが片目を瞑る。
開いている目の金の瞳孔がリオンを映してきゅうと太くなった。
ラキスディートの興奮を感じてリオンの心臓が高鳴る。
「だから、私には必要ではなかった。番に求愛する祭りなのに、番がいなかったんだから」
「……ええと、あの、じゃあ、ラキスは、わたくしのために、花祭りに行こうと言ってくれるの?」
ラキスディートの眼差しが強くなる。
リオンの目を隠す前髪なんて覆いでもなんでもないというように、リオンの奥底まで視線を届かせるラキスディート。
リオンはどうしよう、と思った。
ラキスディートが好きで、好きで、恋をしていて、たまらなく愛していて。でも、その上がまだあるのだと実感してしまった。
「そうだね、リオンのため……でもあるかな」
「でも、ある?」
ラキスディートは微笑んだ。
「私は、リオンに楽しい、を知ってほしい。リオンが楽しいと、好きだと思うものを増やしたい。私はリオンが幸せだと思う時に、自分も幸せだと思うから」
ラキスディートの顔が近くなる。
視界が白金のカーテンに閉ざされて、リオンの唇に一瞬だけ柔らかなものが触れる。
リオンの心臓が壊れたように高鳴り、今すぐ死んでしまうんじゃないかと思った。
「ラキス!」
「リオン、花祭りに行く?」
「行く、行くわ、ラキス。だから、もう、もう、恥ずかしいのはやめていただきたいの」
涙目だし顔も赤い。けれど、それが悲しみからくるものではないからだろう、ラキスディートは笑み崩れて、リオンの体をぎゅうっと掻き抱いた。
「よし、それでは行こう。今から支度すれば、ちょうどいい時間に城下に降りられるだろう」
「リ、オン」
ラキスディートがぽつりとリオンの名前を口にする。狼狽えているようだった。
「リオン、ごめんね」
「ばか、ばか、わたくし、いいえ、そう、いいえ」
うまく形にできない思いがじくじくと心を痛ませる。
どうして上手に言えないんだろう。上手にあなたを愛したいだけなのに。
いつかラキスディートが思っていたことを、知らずリオンは口にしていた。
瞬間、ラキスディートは――ラキスディートは伏せていた目を見ひらき、その白金の髪を揺らしてリオンの頤を持ち上げた。
ラキスディートの黄金の目が、わずかに覗いたリオンの星屑の瞳を映す。
「私もそうだ。……君を上手に愛したくて、それで、結局君を傷つけてしまった」
「わたくしだってそうよ。ごめんなさい、ラキス。わがままを……」
「わがままじゃない!」
ラキスディートの手を振り払ってうつむくリオンに、ラキスディートは声を荒らげた。
声を出したことで我に返ったのだろう。
びくりと肩を揺らしたリオンの頬を再び両の手で包み込み、ラキスディートは静かに口を開いた。
「……わがままなんかじゃない。リオン。君のそれがわがままであるものか」
ラキスディートの金の目がリオンを一心に見つめている。
こんな状況だというのに、リオンの胸がとくんと色づいた。
「私は、君を好きで……どうしたらいいのかわからなかった。君を幸せにしたいのに、誰かを愛したことがないから幸せにする方法を知らなかったんだ」
「わたくし、だって」
リオンの言葉をさえぎって、ラキスディートが言葉を続ける。彼にしては珍しいことだった。
「だから……だから、リオン。君のわがままは、私には君が望んでいることを教えてくれる大切な言葉なんだ。私は、君をずっと見ていたけれど……私が君を幸せにしたいと思うばかりで、本当に君を幸せにできるのかと何度も悩んだから」
ラキスディートが初めて告げる言葉は、リオンの考えが形になったような言葉だった。
リオンも、わからなかった。
我慢したから、偽りでも必要とされたアルトゥール王国でのことを思い出す。
リオンにとって耐えることは誰かに必要とされるための行為だった。
麻痺してしまった感覚は、リオンの行動をも縛り付けていた。
「わたくしの、わがままは、あなたにとって必要なことなの?」
「リオン、君のそれは、私にとってはこの世界で最も聞きたい言葉だ」
やっと、わかった。
助けて、と言えるようになったなら、今度は言葉を探すべきだったのだ、と。
「ラキス。わたくし、あの、あのね」
「うん」
「わたくし、今から大きなわがままを言うわ。……それでもいい?」
「――もちろん」
ラキスディートが微笑んだ。
リオンはその細くなった黄金の目に一時、見惚れる。
やっぱり、このひとが好きだ。
本当に、本当に、心の底から、魂に刻み付けるように深く愛している。
リオンはラキスディートの腕の中にいる幸福を噛みしめた。
大好きだ。ラキスディートはいつだってリオンを包んでくれる夜の空のよう。
リオンがいてもいい場所、リオンが生きていていい場所。
リオンが居たい場所は、いつだってここなのだ。
「あなたと花祭りに行きたいの。あなたの手からご飯を食べたい。あなたと青薔薇を見に行きたい。抱きしめてもらいたい。キスをして。あなたと笑いあいたい。ぎゅっとしていて、いつまでもわたくしを離さないで」
いくつもいくつも、リオンの望みは尽きぬほどあった。
その一つ一つを掬い上げるように、ラキスディートはリオンの頬をなぜる。
微笑むラキスディートの腕の中、リオンの薄紅色の髪がラキスディートの白金の髪と混じりあって風に揺れた。
「あなたと、ずっとずっと一緒に居たいの」
見上げたラキスディートの目は、とろけるような蜂蜜色をしていた。金よりもっと甘い、舐めたらおいしそうな、そんな色。その目が細まって、リオンを優しく見つめた。
「全部叶えるよ。リオン。君の願いが叶わぬことなど、これから先、けしてありはしない」
ラキスディートの目が、リオンの星屑を映して近づく。
やがてリオンの目にいっぱいの黄金が映った時、リオンの唇にはラキスディートのそれが柔らかく重なっていた。
口付けて、離れて、もう一度触れるだけの口付けをする。
身体の一部が触れているだけなのに、リオンはラキスディートの優しいキスに溺れているような心地がした。
実際溺れているのかもしれない。息ができないわけではないけれど、ずっとこの温かい腕の中にいたいと思ってしまう。
世界で一番安心できる、リオンの――リオンだけの、ラキスディートの腕の中だ。
キスに味なんてないはずなのに、ラキスディートのそれはひどく甘やかで、リオンは酔っぱらったようなふわふわした気持ちになる。
「ラキス、ラキス、だいすき」
まるで親鳥から餌をもらう雛鳥のように、ラキスディートに口付けをねだるリオンを、ラキスディートはどう思ったのだろう。
そうっと目を開けて見上げると、ラキスディートの黄金色の目はますます蜂蜜みたいにとろりと輝いていて、それはそれは綺麗な琥珀にも見えた。
「リオンはかわいい、本当に、可愛い……」
たまらないと言って、ラキスディートはリオンを抱きすくめた。
身体のどこもが触れ合って、とてもとても近くにいる身体からは懐かしくも慕わしい匂いがした。
ああ――ラキスだ。ラキスの匂いがする。
「リオン、君がかわいくて、私はどうにかなりそうだ」
「なっていいわ、ラキスならどうなっても素敵だと思う」
真面目に答えたのに、ラキスディートが驚いたように息をのむ。
おかしなことを言ったつもりはなかったけれど、とリオンが顔を上げると、ラキスディートはまるでこらえきれないといった顔で、リオンの顔に口付けの雨を降らせた。
ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスは、リオンの胸をくすぐったくさせる。
「リオンは、私がおかしくなってもいいの?」
「ラキスなら、いいわ。もちろん他の人なら、その、ええと、怖いと思うかもしれないけれど。でも、わたくし、ラキスなら全然怖くないわ」
ラキスディートの問いかけに、リオンはにっこり笑った。
何を当然のことを言うのかしらと思ったからだ。
ラキスディートはラキスディートで、たとえリオンがラキスディートの過去を知らなくても、リオンが思い出せない何かがラキスディートに関わっているのだとしても、それがリオンがラキスディートを好きでない理由にはならない。
リオンはきっと、ラキスディートになら何をされても受け入れる。
けれどそれはラキスディートがリオンを害したとして、という可能性の話ではない。
だって、ラキスディートはリオンをけして傷つけない。
ラキスディートが怒るのはリオンのためだ。
ラキスディートが悲しむのはリオンのためだ。
ラキスディートが微笑むのはリオンのためだ。
ラキスディートの腕は、声は――体は、心は、リオンのためにあるのだ。
もはや迷うことなく、戸惑うことなく、悩むことなく断言できる。
リオンは信じているのではない。ただ事実として、ラキスディートがリオンのための、リオンの唯一のひとだと理解していた。
だから、リオンはラキスディートを恐れない。
ラキスディートが何をしても、何になっても、リオンはラキスディートに恋をしているし、ラキスディートが世界中から憎まれても、ラキスディートだけを抱きしめるだろう。
もちろんラキスディートがそんなことになるはずがないので、ただの想像だ。
けれども、リオンは己の心が、今、ラキスディートだけのためにあるのだとわかった。
暗い闇の視界を、眩い光で照らしてくれた白金のあなた。
どうして好きにならないでいられるのだろう。
――あなたはわたくしに、全てをくれたの。
これは依存ではない。
代わりに、ラキスディートなしで生きていくことができるかという問題でもなかった。
リオンの世界にはラキスディートがいて、ラキスディートがくれた素晴らしい関わりがたくさんあって、眩いばかりの幸せがあって、そうしてリオンがラキスディートを好きでいてもいい、そんな優しい不文律がある、そういうことだった。
「リオン……」
「ラキスがどんなでもわたくし、ラキスを好きになったわ。わかっているの。でも、もしあなたが間違えたと思ったら、わたくしが今日みたいにわがままを言うわ」
「私を抑えてくれるのか? それは、あの日のこと、みたいに?」
「いいえ」
リオンがヒルデガルドの命乞いをした時の話だろう。
リオンは伸び上がって、今度は自分からラキスディートに口付けた。
「わたくし、あなたが間違えたんだと思っていないもの。わがままを言うなら、そう。わたくしを長い間寂しくしたことに対してなんだわ」
リオンがラキスディートの腕の中で微笑むと、ラキスディートはつられて笑った。
「リオン、元気になったね」
「あなたが来てくれたから、わたくし、すごくうれしくなったの」
「……寂しくさせてごめんね」
ラキスディートがぽつりと呟く。
リオンはゆっくりと目を閉じた。ゆるゆるとかぶりを振って目を隠す髪を払う。
もう一度開いた目は、前髪越しではないラキスディートの顔を――下がった眉を映した。
「ラキス」
それがなんだか可愛らしくて、こんなことをラキスディートに思うのはおかしいとわかっているけれど、どうにも可愛らしくてしかたなくて、リオンはラキスディートの腕の中で体を丸め、小さく縮こまった。
ころんと転がりそうなリオンを、慌ててラキスディートが抱き直す。
「わたくし、怒ってなんていないわ。だけどわたくし、今、とってもあなたに包まれていたい気持ちなの」
そう言ってリオンが見上げると、ラキスディートが息をのんだ音がした。
春の風がふんわりと、軽やかな花の香りを運んでくる。
リオンのチェリーブロンドが優しく揺れて、再びラキスディートの白金と混じりあった。
「リオン――」
ラキスディートが胸の内を吐き出すようにリオンの名前を呼ぶ。
けれど、それ以上は続かないのか、興奮のために潤んだ目でリオンを見つめ、やがてフー……と息をついた。
「リオンが、可愛すぎて――違う、愛しすぎて、困る」
「ええっ! あ、あの、その、ごめんなさい。ラキスを困らせるつもりはなかったの。本当よ」
初めて告げられた否定的な単語にリオンの肩が跳ねる。
もしかして、リオンはわがままを言いすぎたのだろうか。
ラキスディートがリオンを愛してくれていることはわかっているけれど、だからと言ってラキスディートを不快にさせていいわけではないのだ。
リオンは視界が熱くけぶるのを感じて、唇をきゅっと噛んだ。
「ラキスを困らせようと思ったわけじゃないの……違うのよ、ラキス……」
リオンがラキスディートの服をぎゅっと握って子供じみた言い訳をするのを、ラキスディートはどう思っているのだろう。
反省と後悔で涙がこぼれそうになった――ところで、リオンの目尻に柔らかなものが押し当てられた。
ハッと目を瞬くと、それはラキスディートの唇だった。
なぜかこの上なくにこやかな笑みを浮かべるラキスディートと至近距離で目があってしまった。
「ら、ラキス?」
「ああ、もう、かわいい。本当にかわいい。私の番はこの世で一番可愛い」
「ラキス、わたくしの耳はきちんと聞こえているわ。繰り返す必要はないのよ」
「可愛いから可愛いって言ってるんだよ。リオンは可愛い。こんな可愛い子は隠しておかないと危ないな」
「そういう話をしているのではなかったのよ、ラキス?」
リオンの悲哀を困惑に変え、さらにその困惑を彼方へ吹き飛ばしてしまったラキスディートがリオンに頬擦りをする。
リオンの頭はもはや許容量を超えてしまい、今や近くにある端整な顔に改めてドキドキと胸を高鳴らせることしかできなかった。
思考と心臓が明後日の方に稼働し始め、謎の反応をしてしまう。
そうやって、あわあわと真っ赤な顔になったリオンに助け舟を出したのは、それまでの流れをずっと窓際で鑑賞していた、リオンを偏愛する二人の女官――すなわち、エリーゼベアトとカイナルーンであった。
「こほん。偉大なる我らが竜王陛下、お姉さま……番さまを愛でるのは大変結構なことです。しかしですね、愛でるあまりに番さまを困らせるのはよろしくありませんわ」
「番さま、お目々が腫れてしまいますわ。少し冷やしましょうね」
エリーゼベアトが咳払いをし、カイナルーンが手拭いを濡らして待機している。きっと、リオンに手を貸す頃合を見計らっていたのだろう。
彼女たちの顔はラキスディートに匹敵するほど笑み崩れているが。
同じ部屋にいることをすっかり失念していたリオンが慌ててあたりを見回すと、カーテンの向こう側で幾人もの召使たちが固唾をのんで見守っているのが見えた。
番さま! 頑張れ! と拳を握り、口の動きで伝えてくれるその気持ちは大変にうれしい。
うれしいのだけれど……
「み、みんな……」
今までのことをたくさんのひとが見ていたと知って、リオンは顔から湯気が出るかと思った。恥ずかしくて恥ずかしくて、卒倒しそうだ。
「お姉さま、大丈夫ですわ。私たちのことは壁だとお思いくださいませ」
「そうです、番さま、我らはみな壁です。この光景を胸に刻み、向こう千年は幸せな気持ちで生きられます。お気になさらないでください」
自分たちを壁と称するエリーゼベアトとカイナルーンの目は爛々と輝いている。忘れてと言っても無理だろうことは一瞬でわかった。
「刻まなくていいのよ……?」
「いいものを見せていただきました」
羞恥で震える言葉に最高の笑顔が返ってきた。
だからリオンは反射的に微笑み返してしまった。
リオンの笑顔でさらに沸き立つ召使たちに、自分の柔らかくなった表情筋がこんな弊害をもたらすなんてと思ってみたりしつつ、リオンは助けを求めてラキスディートを振り返った。
が、ラキスディートはリオンを見てぷるぷると震えるばかりだ。
甘やかな瞳はリオンを愛でる時のそれで、リオンはますます恥ずかしくなってしまった。
長い前髪越しでも柔らかな視線を感じてしまう。
どうしようかしらとリオンが熱くなった頬に手を触れると、こほん、と咳払いして息を整えたラキスディートがリオンの髪をそっと撫でた。
「ら、ラキス……?」
「ほら、お前たち、リオンが困っている」
見上げるリオンを眩しそうに見て微笑むラキスディートも原因の一つだ、なんて言えない。
ラキスディートに触れられて、ますます恥ずかしくなったリオンは肩を震わせた。
召使たちがラキスディートの声に礼をして一歩下がる。
「リオンは花祭りに行きたいんだよね」
「え、え……?」
突然話題が戻った。
一瞬ついていけなくて、きょとんと目を瞬くリオンにラキスディートはまた笑った。
「それなら、これから花祭りに行こう、リオン。花祭りは楽しいらしいよ」
「らしい? ラキスは行ったことがないの?」
「うん、実はそうなんだ」
髪の感触を楽しむように、手櫛で柔らかくリオンのチェリーブロンドを梳るラキスディート。
「竜王さまは、花祭りに……行けないの?」
楽しい祭りだと言うなら、王であるラキスディートが参加できないのはあまりにも理不尽だ。
リオンは恥ずかしかったのも忘れてラキスディートの顔に手を伸ばした。さらりとした手触りの髪がリオンの手に触れる。ひんやりとしたラキスディートの頬が、リオンの手のひらを冷やした。
「違うよ、リオン。私が花祭りに行かなかったのは、花祭りに興味を持てなかったからなんだ」
「……どうして?」
思わずリオンはそう尋ねていた。
花祭りに興味がない理由を知りたいわけではない。
ただ、今の、楽しそうにリオンを誘うラキスディートから興味がない、という気持ちを感じられなかったのだ。
衣擦れの音がする。ラキスディートが、リオンの手を柔らかくとった音だ。
目を瞬くリオンの手の甲にラキスディートが口付ける。
途端、先程の羞恥が蘇って、リオンは頬を紅色に染めた。
「花祭りは、番のいる竜のための祭りだからね。冬の終わり、春の始まり――つまりは、花祭りの時期は求愛の季節なんだ」
ラキスディートが片目を瞑る。
開いている目の金の瞳孔がリオンを映してきゅうと太くなった。
ラキスディートの興奮を感じてリオンの心臓が高鳴る。
「だから、私には必要ではなかった。番に求愛する祭りなのに、番がいなかったんだから」
「……ええと、あの、じゃあ、ラキスは、わたくしのために、花祭りに行こうと言ってくれるの?」
ラキスディートの眼差しが強くなる。
リオンの目を隠す前髪なんて覆いでもなんでもないというように、リオンの奥底まで視線を届かせるラキスディート。
リオンはどうしよう、と思った。
ラキスディートが好きで、好きで、恋をしていて、たまらなく愛していて。でも、その上がまだあるのだと実感してしまった。
「そうだね、リオンのため……でもあるかな」
「でも、ある?」
ラキスディートは微笑んだ。
「私は、リオンに楽しい、を知ってほしい。リオンが楽しいと、好きだと思うものを増やしたい。私はリオンが幸せだと思う時に、自分も幸せだと思うから」
ラキスディートの顔が近くなる。
視界が白金のカーテンに閉ざされて、リオンの唇に一瞬だけ柔らかなものが触れる。
リオンの心臓が壊れたように高鳴り、今すぐ死んでしまうんじゃないかと思った。
「ラキス!」
「リオン、花祭りに行く?」
「行く、行くわ、ラキス。だから、もう、もう、恥ずかしいのはやめていただきたいの」
涙目だし顔も赤い。けれど、それが悲しみからくるものではないからだろう、ラキスディートは笑み崩れて、リオンの体をぎゅうっと掻き抱いた。
「よし、それでは行こう。今から支度すれば、ちょうどいい時間に城下に降りられるだろう」
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