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2巻
2-2
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◆ ◆ ◆
――リオン。
ラキスディートの書く手紙は、竜王国の曲線の多い文字で流麗に綴られている。
人間の国の言葉で書こうかと言うラキスディートに、竜王国の文字を学びたいのだと言ったのはリオンだ。
なにくれとなく気遣ってくれる召使たち。カイナルーンやエリーゼベアトには言っていないけれど、竜王国の文字を学びたい、というのは建前だった。
本当のところ、リオンはラキスディートが生きてきた世界の言葉で、自分の名を綴ってほしかっただけだった。
「リオンお姉さま、陛下のお返事には何が書かれているのですか?」
リオン。
手紙の中のその言葉を何度もなぞって微笑むリオンに、エリーゼベアトが不思議そうに声をかける。
「風がね、いい匂いなんですって。竜は鼻もいいのね」
「そうですね……。たしかに、今の風には花の匂いが混じっております」
そうこたえて、しかしエリーゼベアトは呆れたように肩をすくめた。
「陛下にも困ったものです。お姉さまをこんなにお待たせして」
「いいえ。エリィ。ラキスは、わたくしを大切にしてくださるわ」
「だからと言って、もう三月も会おうとなさらないじゃないですか! お姉さまを寂しくさせるなんて! 我が兄ながら情けないですわ」
そう言ってエリーゼベアトはぷりぷりと怒ってみせた。
この国のひとびとは本当に優しい。リオンは優しい世界に生きていることを、ここで初めて知った。
花が咲くといい匂いがすること。
空が青くてきれいなこと。
おはよう、と声をかけられるとうれしいこと。
手を握られると温かいこと。
誰かがそばにいると、心がいっぱいになること。
切ない気持ちがあふれて、けれど泣きたいくらいに尊くて、それが恋をするということだと、リオンは竜王国で知った。
――風から花の匂いがする。
――リオンの部屋にも、冬咲きの青薔薇が届いているかな。
――きっとこれが最後の冬の花だよ。
薔薇は華やかな香りをリオンの部屋に満たしてくれる。
ラキスディートの心がうれしくて、けれど、会いたい気持ちは膨らむばかりだ。
ままならない胸の内を、リオンは手紙に込めた。
返事はまだ来ない。一つ前の返事をリオンはもう一度広げて読み返す。
――君を、上手に愛したい。
最後の一行。ラキスディートの文字が、少しだけ滲んでいるように見えた。
上手に愛したい、それは、わたくしのほうだわ。
リオンはわずかに目を伏せた。
恋をしている。だけど、どうやって愛せばいいのかわからない。
ラキスディートがくれる愛と同じだけ、ラキスディートを包むように愛せるようになりたかった。
ラキスディートが大好きで、けれどリオンは愛されることに慣れていないから、その心を恋という形でしか発露できない。
「わたくし、愛されているのね」
リオンは、自分が口にした言葉をゆっくりと噛みしめた。
そばで花茶の用意をしていたカイナルーンが、それはもう! と拳を握る。
「陛下はリオンさまを愛しておいでです!」
「カイナルーン、お兄さまの肩を持たなくとも構わなくてよ?」
「いいえ、いいえ! だって、リオンさまがこんなに笑ってくださるようになったんですよ? それは陛下の愛情があったからこそです!」
力説するカイナルーンに、エリーゼベアトがため息をつく。
エリーゼベアトは、カイナルーンが父である宰相のため、ラキスディートの肩を持っていると思っているのだろう。
リオンはほのかに笑って、差し出された花茶の器を白い手に載せた。
途端、周囲の召使がほう、と深い息をつく。
竜王国に来てからこっち、リオンはかいがいしい召使たちやラキスディートの心遣いを受けて、まるで蕾が綻ぶような変化を遂げていた。
栄養状態のよくなった頬は常に薔薇色で唇も血色がよくなり、チェリーブロンドの髪はつやつやと日の光を反射している。
もともとおっとりした気質だったこともあって、動きは生来の優雅さを取り戻し、長い前髪に隠された青い目も今では少しの時間だけ、そのきらめきを周囲に見せることがあった。
開け放した窓から花の香りの風が入ってきて、リオンの前髪を乱す。
その一瞬、夜空の星屑がやさしく細められているのを見て、リオンに仕える者たちは今の幸福を噛みしめた。
リオンという少女は、いまやまさしくこの竜王国の宝だった。
生まれついての姫君のように周りのひとを慈しみ、それ以上に愛される。そういう、星のような存在だった。
もちろんリオン自身にその自覚は乏しく、今日も召使のみんなは優しい、とだけ思っているのだが。
「お茶、とてもおいしいわ。ありがとう」
まだ、人に目を見せることは怖い。リオンが目を見せられるのはラキスディートにだけだ。けれど、それをとがめない、優しいこの国のひとたちを、リオンはラキスディートが治める国の民だからというだけでなく、愛しく思うようになっていた。
「ラキス……」
リオンはラキスディートの言葉に納得していた。
少なくとも、表面上は。
リオンは強くなりたかった。ラキスディートを後方から支えるのではなく、隣にいたい。
「リオンさま……」
カイナルーンが手紙をなぞってラキスを呼ぶリオンを心配そうに見ている。
大丈夫、今は少し寂しいだけなの。リオンは口元にかすかな笑みをはいてみせた。
会いたい気持ちが雪のように溶けてくれれば、この、ラキスディートへの想いのままならなさに耐えられるだろうか。
「知っているのよ。ラキスがわたくしを傷つけまいとしていることを」
「お姉さま、だからといって、番をほったらかしにするのはいけないことです。怒るべきですわ」
エリーゼベアトが憤慨する。リオンは首を振った。
「いいえ。……ひとは弱いのでしょ、竜より、ずっと。離れてわかったの。いつだってラキスは怖がっているのよ。わたくしを喪うことが恐ろしいんだわ」
リオンが弱いから、ラキスディートはどうしたらいいのかわからないのだ。
手紙に何度も書かれた謝罪の言葉を指でたどる。
ラキスディートの恐怖を知って、リオンは何も言えなくなった。
大好きなのだ。本当に。
それでも、リオンはラキスディートに簡単に傷つけられるほど弱いから、触れ合うのに努力がいる。
リオンは、ラキスディートに傷つけられたりしない。そう信じている。
だけど、もし間接的にでも、リオンが傷ついてしまったら? ラキスディートはそれを自分のせいだと思うだろう。
わたくしを、助けないで、とかつてリオンが口にした言葉が呪いのように二人を縛っている。
「強くなりたいわ」
ふと、呟いたあと、リオンは唇を押さえた。
言ってはいけない言葉だった。わがままな言葉だった。
「リオンさまはじゅうぶん、お強いですわ」
「ええ、ええ。お姉さまはお強くていらっしゃるわ」
カイナルーンとエリーゼベアトが当然のようにリオンの言葉を拾って返し、リオンははっと振り返った。
二人がうなずき合ってリオンの側へぴったりと寄り添う。
目を瞬くリオンに、カイナルーンが笑った。
「リオンさまは、強さの種類をご存じですか?」
「種類?」
「はい。武力もありましょう、精神の強さも魔力の強さもございます。けれど、リオンさまのお強さはきっと、ここにあるのです」
カイナルーンが胸を押さえる。心ということだろうか。
「胸、心、精神の力ということ?」
「いいえ、少し違いますわ。お姉さま」
エリーゼベアトが微笑んで、リオンの手の中の冷めたカップを受け取る。
「心が強いだけなら寄り添おうと思いません。お姉さまは自分の考えで、今、陛下を守りたいと思っていらっしゃる」
魔法よりずっと得がたい力です。カイナルーンが首肯した。
「それは、意志の力と言うのですわ」
瞬く金の目がリオンを見つめて、前髪越しにリオンの視界を埋め尽くす。エリーゼベアトの言葉の意味は難しい。今のリオンには心も意志も同じものだと思える。
ああ、けれど、おまじないを教わった時に言われた気がする。意志の力が魔法に反映されるのだと。
「意志と心は違います。心の在り方を外に発露しないと意志にはなりませんわ。お姉さまは、思ったことを外に出そうとしていらっしゃる」
「だから、わたくしの持つ強さは、意志だということ?」
「ええ、そうですわ!」
エリーゼベアトはうれしそうに顔を綻ばせる。
伝わったことがうれしいのだろう。
竜の国にはまだリオンの知らない概念がたくさんある。
リオンはエリーゼベアトの頭にそっと触れた。
リオンが思ったことを口に出せるようになったのも、行動に移せるようになったのも、竜王国に来てからだ。やさしく包まれて、守られて――
黄金の瞳が穏やかに細まってリオンを見つめる。あの暖かさがリオンを変えてくれたのだ。
柔らかで絹のような髪を撫でると、エリーゼベアトは照れ臭そうにはにかんだ。
それが幼い子供みたいで、リオンは小さく声を上げて笑う。
カイナルーンが羨ましそうにくちびるを尖らせるので、もう片方の手で彼女の頭も撫でる。頭を撫でられるのはうれしいことらしい。
背後で準備をしている召使たちも一斉に視線を向けてくるので、リオンはびっくりしたくらいだった。
「ありがとう、みんな」
リオンが笑うと同時に風が吹いた。
春の先触れより強い一陣の風がカーテンをめくりあげ、リオンの艶やかなチェリーブロンドをふわりと持ち上げる。
カイナルーンから手渡された温かい花茶のカップに口をつけようとしていたリオンは、ゆったりとした動きで振り返る。
春が来る時には、強い風が吹くらしい。
だから、いよいよ待ち望んでいた春が来たのかと思って窓の外を見やり――そうして、目を見開いた。
「ラキス……?」
空気を孕んだガラスのような羽を陽の光に反射させる、優美な姿。
白くきらめいた身体は大きいのに、まるで重たさを感じさせぬようにそっとそうっと羽ばたいて。
羽ばたきのひとつひとつがリオンの髪を揺らして、金の目が愛しむように、いいや、それよりずっと強い想いのこもった眼差しでリオンを見つめていた。
「ラキス」
リオンの足が震える。手が、唇が、おこりのように震えて揺れている。
手を伸ばすのを止められない。あれだけ自制して、耐えて、無様な姿をさらすまいと大人ぶって微笑んだ、その虚勢がすべて剥がれていく。
「リオン」
くるる、と真白い竜の喉が鳴る。
最後に会えた、あの日見た竜の姿がリオンの心を震わせる。
我慢した。本当に。
あなたを愛したくて、あなたに恋をしていて、だからこれは考える時間を与えられたのだと自分の心を押し込めたのに、ラキスディートに会いたいと涙交じりで綴った本心が外に出てしまった。
意志の力があるのだと、カイナルーンやエリーゼベアトに教わって、安心したように振る舞ったそれは結局のところ強がりに過ぎなくて。
「ラキス、わたくし、わたくし」
ふらふらとリオンの足が窓へ向かう。
会いたかった。抱きしめてほしい。
その胸に飛び込みたくて、雲の上を歩くようなおぼつかない一歩を繰り返す。
ラキスディートが慌てたようにリオンを押しとどめるけれど、ラキスディートに触れたくて、リオンは止まることができなかった。
その様子に気付いたエリーゼベアトとカイナルーンの二人が慌てて窓を大きく開ける。
ラキスディートの身体が光を纏って人に変わり、リオンが窓の外へ飛び出すより早く、リオンの小さな体を抱きしめた。
「リオン――」
「ラキス」
ああ――
ラキスディートの体温が染み込むようだ。
あんなに焦がれた腕の中は、やっぱり温かくてリオンの目に涙が滲んだ。
上手にあなたを愛したかった。
恋をするだけではなくて、あなたを包み込めるようになりたかった。
本当にそう思っていたし、まぎれもない心からの決意だった。
それでもどうしても、リオンはわがままなばかりで耐えることもできなくて、最後にやっぱり、ラキスディートに会いたい気持ちが膨らんでしまった。
わたくし、だめね。
思考の端でそんなことを考えてゆるく微笑むリオンに、ラキスディートは惜しみない熱をくれる。
「リオン、ごめん、ごめん、リオン」
「ラキス、なのね、本当に」
ラキスディートが、狼狽えたようにリオンをかき抱いた。
「わたくし、だめだったわ。あなたが好きで、我慢しようとしてもあなたに会いたくて、結局」
「違う、違う。リオン。君は駄目なんかじゃない。これは、私が臆病だったんだ」
君に触れるのが怖かった。君を、傷つかないように守り切れなかった自分が許せなかった。
ラキスディートは吐き出すように言った。
「知っていたわ。あなたが、わたくしが思っていたよりずっと怖がりだって」
頬を伝うものが音もなくリオンの襟を濡らして初めて、リオンは自分が泣いていると知った。
「リオン」
「春が来る前に、来てくれたわ」
「違う、いいや、私は。……背中を押されないとここに来られなかった」
ラキスディートがそう言って、リオンを抱いたままその場に跪いた。
自然、ラキスディートの体がリオンを包み込むような形になる。
リオンは久方ぶりのラキスディートの体温にますます目が熱くなるのを感じた。
だって、ラキスだ。あんなに会いたかったのに、会えなくて。
仕方ないと割り切って――割り切ったつもりで、冬の最初に作り始めた小さなハンカチを握ってはため息をつくばかりだった。
それが、今、吐息の届く距離で触れている。とくんとくんと、速い鼓動がラキスディートを通り越してリオンの胸を打つ。
ラキスディートがリオンの髪をゆっくり撫でて、口を開いた。
「私は臆病で、君をアルトゥール王国に行かせてしまってからずっと、君を避けていた」
リオンは小さく頷いた。それは今さらだ。
リオンはとっくに納得している。ラキスディートが気にすることではない。
けれど、ラキスディートは苦しそうにひとつ、息をした。
「自責の念で君を避けて、結果、君をもっと傷つけてしまった」
「ラキス、わたくし、傷ついてなんかいないわ」
「それなら君は今、泣いていないよ。リオン」
リオンははっと目を見張った。
ラキスディートの腕に力がこもる。
これはあなたに会えてうれしかったから、とリオンは口を開こうとして、けれどラキスディートの表情に何も言えなくなった。
その金色の目は揺らいでいて、朝の湖のようにきらきらと光をともしている。
向こうがわにリオンの顔が映っている。
全部見透かされている気がして、リオンは瞬きをした。
気がするのではない。実際、見透かされていたのだろう。
リオンを理解しようと、全身全霊で尽くしてくれるラキスディートだから、きっと、リオンがどんなにごまかしても見通してしまう。
だって――寂しかったのは、本当だから。
寂しかった、会いたかった。
耐えて耐えて、まだ我慢できると握った手は血の気がなくて真っ白になっていた。
それがラキスディートにわからないはずがない。
そうっと柔らかく包まれた手から感じる熱はただひたすらに温かくて、リオンは唇を震わせた。
「だって、わたくしだってあなたを守りたかったの。ラキス、あなたの役に立ちたかった。足手まといになりたくなくてアルトゥールに行ったけれど、あれはわたくしの身勝手だった」
声が揺れている。空気が震えているのは、リオンの声音が悲しみを帯びているからだ。
意志の力がある、とエリーゼベアトもカイナルーンも言ってくれたけれど、それは結局形のないものだから、リオンに本当の自信をつけてくれたわけではなかったのかもしれない。
いいや、違う、そうではなくて、リオンは、リオンは。
「助けて、って、言えるようになったの。けれど、それだけじゃ足りないと思ったの」
力がないのが悲しいのではない。
かつては助けてと言えなかったリオンだけれど、今は助けを求められる。
けれど、リオンは欲張りになっていた。それだけでは嫌だった。
「あなたの隣にいたい。強くなって、あなたに愛されるだけじゃなくて、愛したいと思ったから」
とぎれとぎれの言葉は嗚咽だった。リオンは、つまり――自信がなかったのだ。
愛してもらって幸せになった途端、それだけの価値が自分にあるのか不安になってしまった。
ラキスディートはすばらしいひとだ。リオンはラキスディートに愛されて当然だ。そう、うぬぼれることができなかった。
リオンはラキスディートが大好きだから、ただ与えられることに満足できなくて。
「あなたに愛されて、幸せだったわ。でも、でも、どうして、ラキス」
ああ、わがままだ。これは本当にわがままだ。
自分勝手で、人間の悪いところを集めた淀みをラキスディートにぶつけまいとしていたのに、今にも口から零れそうだ。
「リオン、君を守れることが、私は」
「――ばか!」
ラキスディートの言葉を封じ、リオンはラキスディートの胸をたたいた。
ああ、決壊してしまった。我慢していたのに。
リオンの握り締めた手がラキスディートの胸に触れてはとん、と軽い音がして、目を見開いたラキスディートは、ひゅ、と息を吸った。
後ろから、前から、皆の驚く声がする。
それでも、リオンは、このわがままを口にしてしまうことを、もはや止められなかった。
「あなたはずっと、ずっとそう! どうして、わたくしに、ラキスを守る、ほんの少しの隙間だって与えてくれないの」
赤い記憶がふわりと頭をかすめる。
助けないで――そう、言ってしまった。
いつのことだったのだろう。けれど、一つだけはっきりしていることがある。
――本当は、あなたを守りたかったの。
ラキス。わたくしのほうこそ、間違えてばかりなんだわ。
リオンはゆっくりと息をした。
ラキスディートの胸にしがみつくようにして、彼の鼓動を聞きながら頭を揺さぶる何かを探そうとした。
――リオン。
ラキスディートの書く手紙は、竜王国の曲線の多い文字で流麗に綴られている。
人間の国の言葉で書こうかと言うラキスディートに、竜王国の文字を学びたいのだと言ったのはリオンだ。
なにくれとなく気遣ってくれる召使たち。カイナルーンやエリーゼベアトには言っていないけれど、竜王国の文字を学びたい、というのは建前だった。
本当のところ、リオンはラキスディートが生きてきた世界の言葉で、自分の名を綴ってほしかっただけだった。
「リオンお姉さま、陛下のお返事には何が書かれているのですか?」
リオン。
手紙の中のその言葉を何度もなぞって微笑むリオンに、エリーゼベアトが不思議そうに声をかける。
「風がね、いい匂いなんですって。竜は鼻もいいのね」
「そうですね……。たしかに、今の風には花の匂いが混じっております」
そうこたえて、しかしエリーゼベアトは呆れたように肩をすくめた。
「陛下にも困ったものです。お姉さまをこんなにお待たせして」
「いいえ。エリィ。ラキスは、わたくしを大切にしてくださるわ」
「だからと言って、もう三月も会おうとなさらないじゃないですか! お姉さまを寂しくさせるなんて! 我が兄ながら情けないですわ」
そう言ってエリーゼベアトはぷりぷりと怒ってみせた。
この国のひとびとは本当に優しい。リオンは優しい世界に生きていることを、ここで初めて知った。
花が咲くといい匂いがすること。
空が青くてきれいなこと。
おはよう、と声をかけられるとうれしいこと。
手を握られると温かいこと。
誰かがそばにいると、心がいっぱいになること。
切ない気持ちがあふれて、けれど泣きたいくらいに尊くて、それが恋をするということだと、リオンは竜王国で知った。
――風から花の匂いがする。
――リオンの部屋にも、冬咲きの青薔薇が届いているかな。
――きっとこれが最後の冬の花だよ。
薔薇は華やかな香りをリオンの部屋に満たしてくれる。
ラキスディートの心がうれしくて、けれど、会いたい気持ちは膨らむばかりだ。
ままならない胸の内を、リオンは手紙に込めた。
返事はまだ来ない。一つ前の返事をリオンはもう一度広げて読み返す。
――君を、上手に愛したい。
最後の一行。ラキスディートの文字が、少しだけ滲んでいるように見えた。
上手に愛したい、それは、わたくしのほうだわ。
リオンはわずかに目を伏せた。
恋をしている。だけど、どうやって愛せばいいのかわからない。
ラキスディートがくれる愛と同じだけ、ラキスディートを包むように愛せるようになりたかった。
ラキスディートが大好きで、けれどリオンは愛されることに慣れていないから、その心を恋という形でしか発露できない。
「わたくし、愛されているのね」
リオンは、自分が口にした言葉をゆっくりと噛みしめた。
そばで花茶の用意をしていたカイナルーンが、それはもう! と拳を握る。
「陛下はリオンさまを愛しておいでです!」
「カイナルーン、お兄さまの肩を持たなくとも構わなくてよ?」
「いいえ、いいえ! だって、リオンさまがこんなに笑ってくださるようになったんですよ? それは陛下の愛情があったからこそです!」
力説するカイナルーンに、エリーゼベアトがため息をつく。
エリーゼベアトは、カイナルーンが父である宰相のため、ラキスディートの肩を持っていると思っているのだろう。
リオンはほのかに笑って、差し出された花茶の器を白い手に載せた。
途端、周囲の召使がほう、と深い息をつく。
竜王国に来てからこっち、リオンはかいがいしい召使たちやラキスディートの心遣いを受けて、まるで蕾が綻ぶような変化を遂げていた。
栄養状態のよくなった頬は常に薔薇色で唇も血色がよくなり、チェリーブロンドの髪はつやつやと日の光を反射している。
もともとおっとりした気質だったこともあって、動きは生来の優雅さを取り戻し、長い前髪に隠された青い目も今では少しの時間だけ、そのきらめきを周囲に見せることがあった。
開け放した窓から花の香りの風が入ってきて、リオンの前髪を乱す。
その一瞬、夜空の星屑がやさしく細められているのを見て、リオンに仕える者たちは今の幸福を噛みしめた。
リオンという少女は、いまやまさしくこの竜王国の宝だった。
生まれついての姫君のように周りのひとを慈しみ、それ以上に愛される。そういう、星のような存在だった。
もちろんリオン自身にその自覚は乏しく、今日も召使のみんなは優しい、とだけ思っているのだが。
「お茶、とてもおいしいわ。ありがとう」
まだ、人に目を見せることは怖い。リオンが目を見せられるのはラキスディートにだけだ。けれど、それをとがめない、優しいこの国のひとたちを、リオンはラキスディートが治める国の民だからというだけでなく、愛しく思うようになっていた。
「ラキス……」
リオンはラキスディートの言葉に納得していた。
少なくとも、表面上は。
リオンは強くなりたかった。ラキスディートを後方から支えるのではなく、隣にいたい。
「リオンさま……」
カイナルーンが手紙をなぞってラキスを呼ぶリオンを心配そうに見ている。
大丈夫、今は少し寂しいだけなの。リオンは口元にかすかな笑みをはいてみせた。
会いたい気持ちが雪のように溶けてくれれば、この、ラキスディートへの想いのままならなさに耐えられるだろうか。
「知っているのよ。ラキスがわたくしを傷つけまいとしていることを」
「お姉さま、だからといって、番をほったらかしにするのはいけないことです。怒るべきですわ」
エリーゼベアトが憤慨する。リオンは首を振った。
「いいえ。……ひとは弱いのでしょ、竜より、ずっと。離れてわかったの。いつだってラキスは怖がっているのよ。わたくしを喪うことが恐ろしいんだわ」
リオンが弱いから、ラキスディートはどうしたらいいのかわからないのだ。
手紙に何度も書かれた謝罪の言葉を指でたどる。
ラキスディートの恐怖を知って、リオンは何も言えなくなった。
大好きなのだ。本当に。
それでも、リオンはラキスディートに簡単に傷つけられるほど弱いから、触れ合うのに努力がいる。
リオンは、ラキスディートに傷つけられたりしない。そう信じている。
だけど、もし間接的にでも、リオンが傷ついてしまったら? ラキスディートはそれを自分のせいだと思うだろう。
わたくしを、助けないで、とかつてリオンが口にした言葉が呪いのように二人を縛っている。
「強くなりたいわ」
ふと、呟いたあと、リオンは唇を押さえた。
言ってはいけない言葉だった。わがままな言葉だった。
「リオンさまはじゅうぶん、お強いですわ」
「ええ、ええ。お姉さまはお強くていらっしゃるわ」
カイナルーンとエリーゼベアトが当然のようにリオンの言葉を拾って返し、リオンははっと振り返った。
二人がうなずき合ってリオンの側へぴったりと寄り添う。
目を瞬くリオンに、カイナルーンが笑った。
「リオンさまは、強さの種類をご存じですか?」
「種類?」
「はい。武力もありましょう、精神の強さも魔力の強さもございます。けれど、リオンさまのお強さはきっと、ここにあるのです」
カイナルーンが胸を押さえる。心ということだろうか。
「胸、心、精神の力ということ?」
「いいえ、少し違いますわ。お姉さま」
エリーゼベアトが微笑んで、リオンの手の中の冷めたカップを受け取る。
「心が強いだけなら寄り添おうと思いません。お姉さまは自分の考えで、今、陛下を守りたいと思っていらっしゃる」
魔法よりずっと得がたい力です。カイナルーンが首肯した。
「それは、意志の力と言うのですわ」
瞬く金の目がリオンを見つめて、前髪越しにリオンの視界を埋め尽くす。エリーゼベアトの言葉の意味は難しい。今のリオンには心も意志も同じものだと思える。
ああ、けれど、おまじないを教わった時に言われた気がする。意志の力が魔法に反映されるのだと。
「意志と心は違います。心の在り方を外に発露しないと意志にはなりませんわ。お姉さまは、思ったことを外に出そうとしていらっしゃる」
「だから、わたくしの持つ強さは、意志だということ?」
「ええ、そうですわ!」
エリーゼベアトはうれしそうに顔を綻ばせる。
伝わったことがうれしいのだろう。
竜の国にはまだリオンの知らない概念がたくさんある。
リオンはエリーゼベアトの頭にそっと触れた。
リオンが思ったことを口に出せるようになったのも、行動に移せるようになったのも、竜王国に来てからだ。やさしく包まれて、守られて――
黄金の瞳が穏やかに細まってリオンを見つめる。あの暖かさがリオンを変えてくれたのだ。
柔らかで絹のような髪を撫でると、エリーゼベアトは照れ臭そうにはにかんだ。
それが幼い子供みたいで、リオンは小さく声を上げて笑う。
カイナルーンが羨ましそうにくちびるを尖らせるので、もう片方の手で彼女の頭も撫でる。頭を撫でられるのはうれしいことらしい。
背後で準備をしている召使たちも一斉に視線を向けてくるので、リオンはびっくりしたくらいだった。
「ありがとう、みんな」
リオンが笑うと同時に風が吹いた。
春の先触れより強い一陣の風がカーテンをめくりあげ、リオンの艶やかなチェリーブロンドをふわりと持ち上げる。
カイナルーンから手渡された温かい花茶のカップに口をつけようとしていたリオンは、ゆったりとした動きで振り返る。
春が来る時には、強い風が吹くらしい。
だから、いよいよ待ち望んでいた春が来たのかと思って窓の外を見やり――そうして、目を見開いた。
「ラキス……?」
空気を孕んだガラスのような羽を陽の光に反射させる、優美な姿。
白くきらめいた身体は大きいのに、まるで重たさを感じさせぬようにそっとそうっと羽ばたいて。
羽ばたきのひとつひとつがリオンの髪を揺らして、金の目が愛しむように、いいや、それよりずっと強い想いのこもった眼差しでリオンを見つめていた。
「ラキス」
リオンの足が震える。手が、唇が、おこりのように震えて揺れている。
手を伸ばすのを止められない。あれだけ自制して、耐えて、無様な姿をさらすまいと大人ぶって微笑んだ、その虚勢がすべて剥がれていく。
「リオン」
くるる、と真白い竜の喉が鳴る。
最後に会えた、あの日見た竜の姿がリオンの心を震わせる。
我慢した。本当に。
あなたを愛したくて、あなたに恋をしていて、だからこれは考える時間を与えられたのだと自分の心を押し込めたのに、ラキスディートに会いたいと涙交じりで綴った本心が外に出てしまった。
意志の力があるのだと、カイナルーンやエリーゼベアトに教わって、安心したように振る舞ったそれは結局のところ強がりに過ぎなくて。
「ラキス、わたくし、わたくし」
ふらふらとリオンの足が窓へ向かう。
会いたかった。抱きしめてほしい。
その胸に飛び込みたくて、雲の上を歩くようなおぼつかない一歩を繰り返す。
ラキスディートが慌てたようにリオンを押しとどめるけれど、ラキスディートに触れたくて、リオンは止まることができなかった。
その様子に気付いたエリーゼベアトとカイナルーンの二人が慌てて窓を大きく開ける。
ラキスディートの身体が光を纏って人に変わり、リオンが窓の外へ飛び出すより早く、リオンの小さな体を抱きしめた。
「リオン――」
「ラキス」
ああ――
ラキスディートの体温が染み込むようだ。
あんなに焦がれた腕の中は、やっぱり温かくてリオンの目に涙が滲んだ。
上手にあなたを愛したかった。
恋をするだけではなくて、あなたを包み込めるようになりたかった。
本当にそう思っていたし、まぎれもない心からの決意だった。
それでもどうしても、リオンはわがままなばかりで耐えることもできなくて、最後にやっぱり、ラキスディートに会いたい気持ちが膨らんでしまった。
わたくし、だめね。
思考の端でそんなことを考えてゆるく微笑むリオンに、ラキスディートは惜しみない熱をくれる。
「リオン、ごめん、ごめん、リオン」
「ラキス、なのね、本当に」
ラキスディートが、狼狽えたようにリオンをかき抱いた。
「わたくし、だめだったわ。あなたが好きで、我慢しようとしてもあなたに会いたくて、結局」
「違う、違う。リオン。君は駄目なんかじゃない。これは、私が臆病だったんだ」
君に触れるのが怖かった。君を、傷つかないように守り切れなかった自分が許せなかった。
ラキスディートは吐き出すように言った。
「知っていたわ。あなたが、わたくしが思っていたよりずっと怖がりだって」
頬を伝うものが音もなくリオンの襟を濡らして初めて、リオンは自分が泣いていると知った。
「リオン」
「春が来る前に、来てくれたわ」
「違う、いいや、私は。……背中を押されないとここに来られなかった」
ラキスディートがそう言って、リオンを抱いたままその場に跪いた。
自然、ラキスディートの体がリオンを包み込むような形になる。
リオンは久方ぶりのラキスディートの体温にますます目が熱くなるのを感じた。
だって、ラキスだ。あんなに会いたかったのに、会えなくて。
仕方ないと割り切って――割り切ったつもりで、冬の最初に作り始めた小さなハンカチを握ってはため息をつくばかりだった。
それが、今、吐息の届く距離で触れている。とくんとくんと、速い鼓動がラキスディートを通り越してリオンの胸を打つ。
ラキスディートがリオンの髪をゆっくり撫でて、口を開いた。
「私は臆病で、君をアルトゥール王国に行かせてしまってからずっと、君を避けていた」
リオンは小さく頷いた。それは今さらだ。
リオンはとっくに納得している。ラキスディートが気にすることではない。
けれど、ラキスディートは苦しそうにひとつ、息をした。
「自責の念で君を避けて、結果、君をもっと傷つけてしまった」
「ラキス、わたくし、傷ついてなんかいないわ」
「それなら君は今、泣いていないよ。リオン」
リオンははっと目を見張った。
ラキスディートの腕に力がこもる。
これはあなたに会えてうれしかったから、とリオンは口を開こうとして、けれどラキスディートの表情に何も言えなくなった。
その金色の目は揺らいでいて、朝の湖のようにきらきらと光をともしている。
向こうがわにリオンの顔が映っている。
全部見透かされている気がして、リオンは瞬きをした。
気がするのではない。実際、見透かされていたのだろう。
リオンを理解しようと、全身全霊で尽くしてくれるラキスディートだから、きっと、リオンがどんなにごまかしても見通してしまう。
だって――寂しかったのは、本当だから。
寂しかった、会いたかった。
耐えて耐えて、まだ我慢できると握った手は血の気がなくて真っ白になっていた。
それがラキスディートにわからないはずがない。
そうっと柔らかく包まれた手から感じる熱はただひたすらに温かくて、リオンは唇を震わせた。
「だって、わたくしだってあなたを守りたかったの。ラキス、あなたの役に立ちたかった。足手まといになりたくなくてアルトゥールに行ったけれど、あれはわたくしの身勝手だった」
声が揺れている。空気が震えているのは、リオンの声音が悲しみを帯びているからだ。
意志の力がある、とエリーゼベアトもカイナルーンも言ってくれたけれど、それは結局形のないものだから、リオンに本当の自信をつけてくれたわけではなかったのかもしれない。
いいや、違う、そうではなくて、リオンは、リオンは。
「助けて、って、言えるようになったの。けれど、それだけじゃ足りないと思ったの」
力がないのが悲しいのではない。
かつては助けてと言えなかったリオンだけれど、今は助けを求められる。
けれど、リオンは欲張りになっていた。それだけでは嫌だった。
「あなたの隣にいたい。強くなって、あなたに愛されるだけじゃなくて、愛したいと思ったから」
とぎれとぎれの言葉は嗚咽だった。リオンは、つまり――自信がなかったのだ。
愛してもらって幸せになった途端、それだけの価値が自分にあるのか不安になってしまった。
ラキスディートはすばらしいひとだ。リオンはラキスディートに愛されて当然だ。そう、うぬぼれることができなかった。
リオンはラキスディートが大好きだから、ただ与えられることに満足できなくて。
「あなたに愛されて、幸せだったわ。でも、でも、どうして、ラキス」
ああ、わがままだ。これは本当にわがままだ。
自分勝手で、人間の悪いところを集めた淀みをラキスディートにぶつけまいとしていたのに、今にも口から零れそうだ。
「リオン、君を守れることが、私は」
「――ばか!」
ラキスディートの言葉を封じ、リオンはラキスディートの胸をたたいた。
ああ、決壊してしまった。我慢していたのに。
リオンの握り締めた手がラキスディートの胸に触れてはとん、と軽い音がして、目を見開いたラキスディートは、ひゅ、と息を吸った。
後ろから、前から、皆の驚く声がする。
それでも、リオンは、このわがままを口にしてしまうことを、もはや止められなかった。
「あなたはずっと、ずっとそう! どうして、わたくしに、ラキスを守る、ほんの少しの隙間だって与えてくれないの」
赤い記憶がふわりと頭をかすめる。
助けないで――そう、言ってしまった。
いつのことだったのだろう。けれど、一つだけはっきりしていることがある。
――本当は、あなたを守りたかったの。
ラキス。わたくしのほうこそ、間違えてばかりなんだわ。
リオンはゆっくりと息をした。
ラキスディートの胸にしがみつくようにして、彼の鼓動を聞きながら頭を揺さぶる何かを探そうとした。
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