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2巻
2-1
しおりを挟むプロローグ
「――私の、愛しい番に、なにをしている」
白金の髪に黄金の瞳、背に翼をもった美しいそのひとが、リオンを守るように抱きしめてくださった、その日のことをよく覚えている。
今から一年ほど前、リオンはアルトゥール王国という人間の国に住んでいた。両親を喪ったリオンは義理の両親と義妹に虐げられて暮らしており、毎日を絶望の中で生きていた。
当時のリオンには王太子のシャルルという婚約者がいたけれど、彼に愛されることはなかった。またそのシャルルは義妹であるヒルデガルドに懸想してしまい、リオンは婚約破棄され、義妹を虐げたという偽りの罪で断罪されそうになったのだ。
そこに、風のように現れてリオンを救ってくれたのが、白金の髪をもつ竜の王――生態系の頂点に君臨する彼、ラキスディートだった。
ラキスディートはリオンをアルトゥール王国から連れ出し、竜王国に住まわせてくれた。
リオンを己の番だと言って溺愛するラキスディートは、リオンに幸せというものを思い出させてくれた。リオンには十年前以前の記憶がなく、残っていたのは燃え盛る炎の悪夢のみ。自分を知っている様子のラキスディートに何も返せないことを気に病むリオンに、彼はリオンがリオンであるだけでいいと言ってくれた。
リオンが番だから、ではなく、リオンがリオンであるだけで愛しているから、と。
番とは、竜の伴侶のことだ。魂のつながり、何度生まれ変わっても出会うという運命の相手、それが番だ。竜にとって、番というものは命より優先するほど大切なものだ。しかしその関係以上に、リオンがリオン自身だからという理由で愛している、と告げられた時、リオンはラキスディートに恋をした。
……が、それでハッピーエンド、とはならず、リオンはある時アルトゥール王国に残してきた心残り――世話をしていた孤児院の子供たちを心配に思い、新たな義妹――ラキスディートの妹であるエリーゼベアトとともにかつて住んでいた実家に戻った。
それだけならよかったのだが、リオンはそれを聞きつけたヒルデガルドに攫われてしまったのだった。竜王国は空に浮いた国で、入国は簡単なことではない。だからヒルデガルドはリオンがアルトゥール王国に戻ったことを好機だと思ったのだろう。
攫われ、殺されかかったリオンを、助けてくれたのはまたもラキスディートだった。
あたりを焦土にするほどの怒りを見せ、リオンを救い出してくれたラキスディートとともに、リオンはヒルデガルドと対峙した。
そこでリオンとヒルデガルドの縁は完全に分かたれた。リオンの十年前の記憶も戻り、リオンはラキスディートが十年前にも自分を助けてくれたことを知った。
――そうして、竜王国へと帰ったリオンは、ラキスディートと結ばれ……今度こそ、大団円を迎えたのだった。
これは、そんな一つの物語の、のちのお話。
第一章
からん、ころんと音がする。
何の音かと言われれば、鐘の音と言うべきか、もっと情感的に春の訪れを祝う音だというべきなのか、ラキスディートは執務室の窓から見える城下町の様子を見やって、しばし悩んだ。
この世界の生態系の頂点たる竜が治め、住まう国。強者の国。空中国家、竜王国――ラキスディート。様々な枕詞が付くこの国と同じ名を持つ竜王である彼は、最愛の番に出会うまで世界の美しさを表す言葉にはとんと縁がなかった。それゆえ今、こういう時を表す、良い表現を見つけあぐねていた。
「リオン」
ラキスディートの愛する番は先だって、召使を通してこの執務室に手紙を届けた。
竜王国の文字を学んだばかりのリオンは、その短い時間を表すようにいとけない、かわいらしい丸っこい文字で、ラキスディートの体調を気遣った文章を綴っていた。
それを読んで思わず笑みがこぼれる。
――こんにちは、ラキス。
――雪が融け始めてきたわ。あなたのお部屋の窓から見えるかしら。お体は大丈夫?
冬。雪が積もり始める季節に、ラキスディートがリオンのすべてを奪って以降、リオンはラキスディートに敬称をつけることがなくなった。
はじめこそ、ラキスディートに愛想をつかしたのかと戦々恐々としたものだが、遠目に見たリオンの表情にはラキスディートへの怒りなぞ見えず、そのあと始めた文通で、もっと近しくなりたいと告げられてからは、その呼び方に、十年前の彼女を思い出してこそばゆくなる日々が続いていた。
――わたくし、お庭でうさぎを作ったの。雪で作りました。ゆきうさぎというのですって。
リオンがその小さくやわい手で雪を丸めるのを想像するだけで、ラキスディートは暖かい気持ちになる。
けれど、その手を冷たくして痛めてはいないかと同時に少しだけ気にかかった。
――青薔薇は、年中咲くのね。だから、うさぎに飾ってみたの。かわいらしくて……よろしければ見てほしいわ。
リオンのつつましい願いだ。それすら愛しくて、ラキスディートは手紙の続きをうれしい気持ちで読み進め――そうして、後悔した。
――本当のことをいうと、あなたに、会いたいの。ラキス。
リオン。
ラキスディートは、ペンを持つ手を震わせて、奥歯をぐっと噛みしめた。
竜王国の冬は短い。そう言っても、三月を越えれば終わるという程度には長く、その間、ラキスディートとリオンは一度も顔を合わせていなかった。
冬の入り口、リオンがアルトゥール王国に行ってから、もう三月が経つ。春がそこまで迫って、ラキスディートは季節一つ分をリオンなしで過ごしたのだ。
その理由は、側近たちや召使が聞けばあきれ返るようなもので、言ってしまえばラキスディートのわがままに近かった。いいや、わがままと言っていいのだろうか。ラキスディートの心を裂き、リオンを寂しがらせるこれは、誰にもなんの益もない、くだらないものだ。
冬――それは、竜の冬ごもりの季節だ。
古の竜は――人の姿をとるようになる前の竜は冬には巣にこもり、寒い冬をやり過ごしつつ、番を愛おしんだという。
それはひとえに、種族の違う子を産む番を凍えから守るという本能からくるもので、竜は貯蔵された食べ物を番へと給餌し、自らの体で温めるという、まるで蜜月の時のような行動をする。
だが、現代では服や屋敷、魔法による暖房など、数々の便利なものがあるため、ラキスディートの五代前にはすでに形骸化していた。
「リオン……」
ラキスディートはまた深く息を吐いた。
形骸化している、だが、竜の本能にのっとって変わらぬものがある。それが反映されたのがいわゆる現代の冬ごもりであり――ありていに言えば、冬というのは、屋敷にこもって子づくりをするぞ! と竜の本能が浮足立つ期間、というわけだ。
ラキスディートがリオンに近づけないわけは、つまりそういうことである。
一度リオンに触れてしまったら、ラキスディートがどうなるかわかりきっている。
絶対にリオンを傷つけたくなかった。リオンがアルトゥール王国に行ってしまった時も、リオンに心残りがあると気付けなかった。竜王国の王とは思えぬほど愚かしい。
ラキスディートは、全能ともいわれる自分の力を知っている。
それでも、リオンのことに関しては何もわからぬ自分に辟易した。
リオン……
ラキスディートは情けない自分に、あきれ返った。だというのに、リオンに触れたくてたまらないのだ。近づきたくて、冬ごもり、などという古い慣習を思い出してしまう。
そこに来た冬。ラキスディートはもはや、リオンに会うことは許されぬと思ったのだ。
せめて春が来るまでは。冬が終わるまでは。
リオンに触れることを願う、自分という暴漢に、愛しいリオンをさらしてはならないと思った。
奪われる恐怖を知っている。あの日、夢で見た地獄がラキスディートを今も痛めつけていた。君のつらさを全部救いたくて救えなかった自分を厭うている。
少し前に手紙でそう告げると、優しいリオンは、そうだったのね、と一言返事をよこして、あの日のことを話題に出さなくなった。
ラキスディートはそれが苦しかった。リオンにばかり我慢をさせている。
ただ愛するだけのことが、どうしてこんなに難しいのだろう。
――わがままでした。ごめんなさい。忘れて、ラキス。
視線を落とし、手紙の続きを見て、ラキスディートは今すぐにリオンのもとへ飛び出していきそうな自分を抑えつけた。この翼をむしってでも、それは阻止しなければならなかった。
会いたい、リオンに会いたい。あの笑顔を見て、抱きしめて、口付けをしたかった。
――また、春に会いましょう。待ち遠しいわ。
窓の外を見る。春は近い、それでも雪はまだ残っていた。
◆ ◆ ◆
開け放したままの窓から離れて、ラキスディートは執務机の引き出しを開けた。
特に理由はなかったが、いつの間にか、これが癖のようになっていた。
引き出しの中には、黒樫の木で作られた小箱。
その箱をそうっと持ち上げて、鍵を開けた。
――途端、溢れ出てきたのは布だ。
布、いいや、小さな布小物たち。
ハンカチやポーチ、ぬいぐるみ。
箱の大きさよりずっと多くのものが入っているのは、これがラキスディートが手ずから作った箱だからだ。竜の魔力がこもった小箱には、ラキスディートの宝物が詰め込まれていた。
ラキスディートはリオンの刺繍を買い集めた。自身の鱗と交換して金を得て、全てを集められはしなかったができる限り。
金があればリオンは大切にされると思った。だというのにそれがリオンのいる環境をよくすることはなく、むしろ悪化させた。
評判は全てリオンの義理の妹だった人間のものになった。
「……リ、オン」
ラキスディートは、箱の中にある一枚の白いハンカチをなぞって読み上げた。
拙い刺繍は、それでもラキスディートにはこの上ない宝だ。
これは、リオンがラキスディートに初めてくれたハンカチだった。
リオンが忘れた思い出の中、出会った時に傷を覆ってくれたハンカチの文字を読みたくて、それまで気にも留めなかった人間の言葉を学んだ。
リオン。星屑。竜の言葉と綴りも文字も違ったけれど、それはラキスディートの慈しむべき少女の名だ。
ラキスディートは、ゆっくりと息を吐いた。
小さく折りたたまれたハンカチを開いて、その中身を手に取る。
深い森のような緑色の石が飴細工のようなラキスディートの鱗で継がれて、ほのかに輝いていた。
リオンの母の形見。ラキスディートにもよくしてくれたロッテンメイヤー伯爵夫人の一族が受け継ぐ、嫁入り道具のエメラルド。
リオンをあの城から救ってしばらく。
リオンが握りしめていたエメラルドのネックレスに気付いたのは偶然だった。
尖ったかけらはリオンの手を傷つけていたけれど、それを無理に剥がして捨ててしまうことはできなかった。リオンの宝物なら、ラキスディートの宝物も同じだったからだ。
ならばせめて、形が変わってもこの世に残そうと思った。
竜の鱗を融かして石を継いで、そのせいで大きさも形も変わってしまった歪なエメラルドを新しい鎖で吊るし、ようやっと体裁を整えたのは、ほんの三日ほど前だった。
ラキスディートはこれを誰にも話さなかった。
リオンにこれを渡すべきか、考えあぐねていたのだ。
もはやもとの面影はなく、ぐんにゃりと歪んだ緑の石はラキスディートの魔力を帯びて、少し金が混じっている。
その見た目に、ラキスディートがリオンの両親の思い出を壊してしまったように思えた。
「陛下、ハシノ塔の修繕が完了しましたので、書類の確認を……って、ひどい顔だな」
ノックの音と同時に部屋に入ってきたのは見慣れた赤毛の青年だ。
イクス、とラキスディートがその名を口にすると、イクスフリードはうわあ、と目隠しの下で口を歪めた。
竜王の顔を見てこんなに露骨に表情を変えるのはこいつくらいだろうな、と思いながらラキスディートが目をすがめる。イクスフリードはいかにも取り繕った表情を作って、顔の上半分を覆う布の下、口元をひき結んだ。
「おっと、今は仕事中でしたね、失礼しました」
「構わない。確認するから渡してくれ」
「こちらです」
イクスフリードが差し出した書類の束に辟易する。
しかし仕事は仕事であるので、上から順にぱらぱらとめくって目を通した。
そうして最後まで読み終わると、これらはすべて一件分の報告書であった。
「……問題ない。思ったより早かったか」
ハシノ塔とはその名の通り竜王国の端、地上を見下ろす場所に立つ複数の塔のことだ。
地上の動き――人や獣人といった異種族の動向を見るためにある塔で、そのうちいくつかがここ数か月の間うまく機能していなかった。
竜が最強の種族とはいえ、強さにあぐらをかいていてはいけないと、先代の竜王が建てたらしい。
修復のために作業員を送り出して三月。ラキスディートの想像よりずいぶん短い修理期間だった。
「そりゃあ、竜王陛下の結婚式が目前ですからね、皆張り切ってましたよ」
イクスフリードが胸を張る。
しかし、その結婚式、という単語でラキスディートの声が震えた。
「……そうか……」
「いやいや、お前が不安になってどうするんだよ。式前に落ち込むのは花嫁の特権だぞ」
リオンとの結婚式の支度が進んでいる。
竜には結婚式をするという慣例はないものの、人を番にした者はけして少なくはない。かつて人の結婚式をまねてごっこ遊びをした十年前の思い出をよすがに、リオンのためにとラキスディートが命じてからこっち、驚くほどスムーズに用意が整っている。
仕立て師のルルという竜がいい例で、人の習慣に明るい者が率先して作業をしているからだ。
「リオンは落ち込んでいるのか!?」
「番さまは落ち着いてるってよ」
ラキスディートの言葉に、イクスフリードが冷静に返す。
「……そうか」
「まあ、お寂しいとは思うけどな」
イクスフリードが苦笑した。ラキスディートは自分の女々しさが嫌になった。
リオンを守るため、そう自分に言い聞かせ、リオンに寂しい思いをさせている。
番を幸せにできていないくせに、なにが最強の竜だ、と思った。
「どうして番さまに会って差し上げないんだよ」
イクスフリードがラキスディートに向き直る。
ラキスディートは正直なところを口にした。
「合わせる顔がない」
「この間の事件?」
「ああ」
リオンは先だってアルトゥール王国に行き、そこでかつての義妹――ヒルデガルドに攫われた。
リオンと結ばれたきっかけになる事件だったが、そこに至るまでにラキスディートが頼る先にならなかったのがつらかった。だがラキスディートはすねたわけではない。そうではなくて、番を危険にさらしたことは唾棄すべきだと思っていた。
少なくとも、ラキスディートは。
大切にしたい、愛しい存在を泣かせて傷つけたことが、ラキスディートの心に澱のように残っていた。
「番さまは気にしてない……。お前が助けに来たことも感謝している。……それより、その後のお前の対応にこそ難がありそうだけどな」
「リオンを大事にすると誓ったのに」
「気にするのはわかるけどさ。俺だって番に同じことをしでかしたら穴掘って埋まると思うし」
イクスフリードが肩をすくめる。
「でも、番さまは毎日元気にしてらっしゃるとさ。カイナルーンが言ってた」
「そうか。……リオンが健やかならそれでいい」
ラキスディートは目を伏せた。
あと少し、もう少し。春が来るまでは。
そんなことを思って、手の中の宝石を握った。
情けない雄だ。自分でもそう思う。多分、イクスフリードもそうだったのだろう。
ああ! と叫んで、イクスフリードがびたん! とその赤い尾を床に打ち付けた。
「お前な、うじうじうじうじ、それでも竜王か?」
イクスフリードはいらいらした様子で、尻尾をだん! だん! とたたきつけている。
「竜の雄なら度胸見せろ、度胸を」
目を丸くしたラキスディートの胸倉を、イクスフリードがぐいと掴む。
「竜の雌は確かに強いけどさ。番さまを見てたら人間の雌だって強いもんだってわかるだろ。それともなんだ? お前にとって番は支えあうものじゃないってことか? 自分の番の強さを信じてやらねえで、竜王名乗ってんじゃねえぞ」
イクスフリードが言い切ってラキスディートを解放する。すぐに自分の目元を覆ってうめいた。
その目でラキスディートの心を見たのだろう。
だから、こんなに怒っているのだ。
「リオンは――」
ラキスディートは静かにつぶやいた。
番の雄は、雌を守る。雌は雄に守られる。
それが成立するのは信頼関係があるからで、雌がいなければ雄は崩れてしまう。
――つまり、雌は雄の心を守っているのだ。
ラキスディートは気付いた。
ああ、そうか、と。
リオン――を、番を守りたいという思いは、ラキスディートの特権ではなかった。
「そうだな。リオンは強い。誰より意志が強い……心が強い」
あの日、あの時。炎の夢の中、自分を守らないでと叫んだリオン。
それがきっとリオンの強さだった。
リオン――私の星屑。
『わたくしを助けないで』
とっさに放った言の葉が、ラキスディートを死なせないためのものであると知っていた。
だから――だから、ラキスディートも守られていたのだ。リオンに。
それが番なのだと。対等で互いを慈しみあう、それこそが比翼の翼――竜の番なのだった。
千年生きてきて気付いたのが今というのは、情けないことだ。
けれど、気付けてよかった。ラキスディートは心からそう思った。
「目が覚めた。すまない、イクス」
「いいってことさ。先輩妻帯者としての助言は役に立つだろ?」
イクスフリードはからからと笑う。
産まれた年がどちらが先か、もう覚えていない。しかし、この男が自分よりずっと早く番を見つけた理由がわかる気がした。
――と、そこでイクスフリードがぱっと両の手を振って、と同時に尾をぶんぶんと振った。
「あ。それとそのエメラルド、持っていくなら花祭りにかこつけて渡せばいいんじゃないかなと、お兄さんは思うよ」
口元がにやにやしたその顔は、いつも通りだ。
いつもなら兄面をするなと言うところだが、今は感謝のほうがずっと強い。
ラキスディートは吐息とともに、感謝と弟扱いの悔しさの混じる、複雑な気持ちを吐き出した。
「……考えておく」
春の足音がする。冬が、終わろうとしていた。
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