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番4(性描写あり)完
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けれど、それはけして怯えによるものではなく――この、強いアルファに愛してもらえる、という、そんな胸のうちを震わせる喜びによるものだった。
アンリエッタの手がそっとフェリクスの首に回される。
「噛んでいいよ。アンリエッタ」
「え――……ぁ、ぁあああ、あ!」
フェリクスがそう言う――瞬間。フェリクスの剛直が、アンリエッタの狭い隘路をずぶずぶと押し開きアンリエッタの中に分け入ってきた。かさ高い部分がアンリエッタの、そこに触れられるとてんでダメになってしまうところをぞりぞりとかきむしる。そうされると、アンリエッタはフェリクスに抱きかかえられているせいで快楽を逃がすこともできず、ただ銀の髪を振り乱して嬌声をあげることしかできなかった。
「ぁ、ああ、ん――ッ」
アンリエッタは目の前のなにかに歯を立てた。そうすることでしか、このどうしようもない感覚に耐えることができなかった。
それが、フェリクスの肩であることにも気づかないで、アンリエッタは必死にそこをかぷかぷ噛んだ。
「アンリエッタ、こんな、こんな僕に、掴まって、愛されて、もうどこにも行けないなんて」
――ふ、とフェリクスの吐息が耳朶を打つ。アンリエッタはうっすらと目を開けた。
しかし、そのわずかにできた余裕すら、フェリクスの律動に奪われてしまう。
アンリエッタの奥の奥までたどり着いたフェリクスは、アンリエッタの胎内からあふれる愛蜜に誘われるように、その奥を優しくたたいた。とちゅ、とちゅ……という、甘やかすような音が、自分の胎内から響いてくるのがアンリエッタの脳髄を蕩かすようだった。
「かわいい、アンリエッタ……」
かわいそうに。フェリクスはそう言って、アンリエッタの唇に触れるだけのキスを落とした。
ごめんね、でも逃がしてあげられない。
ちいさくささやく声に、アンリエッタは微笑んだ。
「のぞむ、ところだわ」
「アンリエッタ……?」
「私もあなたが好きなんだもの。私から逃がしてあげられないのは、私も一緒よ」
そう言って、フェリクスの背に回した腕に力をこめる。密着した肌は心地よく、今、誰よりも近くにいるのだと理解させてくれる。
「ああ――、やっぱり、君は僕の女神だ」
フェリクスが、泣き笑いのように目を細める。ついで、激しくなった律動に、アンリエッタはまた言葉を失った。
「あ、ぁ、ん、あん、ぁ、ひぁ、ぁ――……ッ」
アンリエッタの甘やかな声が響く。なにかが来てしまう感覚とともに、腹のうちが温かいもので満たされた。
フェリクスがアンリエッタをひっくり返し、そのうなじへ噛みつく。そこに、痛みはなかった。ただ、自分のアルファにうなじを噛んでもらえた、という充足感があるだけだ。
ふー、ふー、とあらい息をついて、アンリエッタは脱力した。フェリクスがそんなアンリエッタをやさしく腕の中に囲うから、思わず心地よさに目を細めてしまう。猫の子みたいだわ、アンリエッタはそう思った。
「アンリエッタ……」
フェリクスがアンリエッタの名前を呼ぶ。
誰よりも慕わしい声音で。アンリエッタの好きな、やさしい表情で。
その腕に抱かれているアンリエッタは、きっと世界で一番幸せだ。
アンリエッタはフェリクスの背にもう一度手を回した。とくん、とくん、と、先ほどより幾分か遅くなった鼓動が、アンリエッタの耳朶を打つ。
「僕は、君を守りたくて、何度も間違えた。僕より君を幸せにできる人間が、この世界にはいるかもしれない」
アンリエッタはゆっくりと目を瞬いた。フェリクスの言葉に、けれど口をはさむことはしない。
フェリクスが続ける。
――でも、と。
「僕は、君を想う、愛しぬくと誓うよ。君がおばあさんになっても、そのしわしわの手を握って、ずっと隣にいる。守る。だから――」
アンリエッタは、フェリクスの唇に人差し指を立てた。驚いて丸くなる、フェリクスの空色の目と視線が合う。……ああ――ああ――。
私、この人に愛されて、愛せて、幸せなんだわ、と。
アンリエッタは、自分の心、腹を、胸を、すべてを満たすこの気持ちを、何と呼ぶべきか、今、ようやくわかった気がした。
それは、いたわりだったし、恋だった。
悲しいような、けれどどうしようもなく得難い、大切なものだった。
きっと――これが、愛するということなのだ。
「私も、あなたを愛してる。フェリクス。だから……だからね」
アンリエッタは笑った。
「一緒に、守りあっていきましょう。何度間違えても、何度失敗してもいいの。私にはあなたがいて、あなたには私がいる。それはどんなに心強いことでしょう。……だから、の先はいらないわ。私、あなたの隣にいたい。あなたの後ろじゃなくて、あなたの隣に」
アンリエッタの言葉を、フェリクスが息をつめて聞いている。
空に、星が瞬いている。きっと、もうすぐ朝が来る。朝焼けの紫を越えて、フェリクスの色をした空が見える。
「私ががんばって、できないことなんてない。そこに、アルファもオメガも、ベータもないのよ。私は、私のままで、あなたがいれば、無敵なんだから」
そう言ったアンリエッタの唇が、フェリクスのやわらかなそれでいまいちどふさがれる。
そこには、星が降るような愛しさが詰まっていた。
唇を触れ合わせ、離して、触れて、また離して。
そうして二人で笑いあって。
「君は、最高だ」
「ええ、だって、あなたがいるもの、フェリクス」
アンリエッタは銀糸の髪を揺らして笑んだ。ふたりでずっと生きていくから、幸せで、強くなれる。恋人とは、夫婦とは――番とは、そういうものなのだと。
遠回りの末に出した答えは単純で、くすりと笑ってしまうようなものだった。けれど、それでよかった。
――それが、よかった。
遠く高い空をさらさらと流れる雲。咲き誇る薔薇の花。その光景の中で出会った幼い二人は、今、こうして幸せに笑う。これは、そういう物語だった。
アンリエッタの手がそっとフェリクスの首に回される。
「噛んでいいよ。アンリエッタ」
「え――……ぁ、ぁあああ、あ!」
フェリクスがそう言う――瞬間。フェリクスの剛直が、アンリエッタの狭い隘路をずぶずぶと押し開きアンリエッタの中に分け入ってきた。かさ高い部分がアンリエッタの、そこに触れられるとてんでダメになってしまうところをぞりぞりとかきむしる。そうされると、アンリエッタはフェリクスに抱きかかえられているせいで快楽を逃がすこともできず、ただ銀の髪を振り乱して嬌声をあげることしかできなかった。
「ぁ、ああ、ん――ッ」
アンリエッタは目の前のなにかに歯を立てた。そうすることでしか、このどうしようもない感覚に耐えることができなかった。
それが、フェリクスの肩であることにも気づかないで、アンリエッタは必死にそこをかぷかぷ噛んだ。
「アンリエッタ、こんな、こんな僕に、掴まって、愛されて、もうどこにも行けないなんて」
――ふ、とフェリクスの吐息が耳朶を打つ。アンリエッタはうっすらと目を開けた。
しかし、そのわずかにできた余裕すら、フェリクスの律動に奪われてしまう。
アンリエッタの奥の奥までたどり着いたフェリクスは、アンリエッタの胎内からあふれる愛蜜に誘われるように、その奥を優しくたたいた。とちゅ、とちゅ……という、甘やかすような音が、自分の胎内から響いてくるのがアンリエッタの脳髄を蕩かすようだった。
「かわいい、アンリエッタ……」
かわいそうに。フェリクスはそう言って、アンリエッタの唇に触れるだけのキスを落とした。
ごめんね、でも逃がしてあげられない。
ちいさくささやく声に、アンリエッタは微笑んだ。
「のぞむ、ところだわ」
「アンリエッタ……?」
「私もあなたが好きなんだもの。私から逃がしてあげられないのは、私も一緒よ」
そう言って、フェリクスの背に回した腕に力をこめる。密着した肌は心地よく、今、誰よりも近くにいるのだと理解させてくれる。
「ああ――、やっぱり、君は僕の女神だ」
フェリクスが、泣き笑いのように目を細める。ついで、激しくなった律動に、アンリエッタはまた言葉を失った。
「あ、ぁ、ん、あん、ぁ、ひぁ、ぁ――……ッ」
アンリエッタの甘やかな声が響く。なにかが来てしまう感覚とともに、腹のうちが温かいもので満たされた。
フェリクスがアンリエッタをひっくり返し、そのうなじへ噛みつく。そこに、痛みはなかった。ただ、自分のアルファにうなじを噛んでもらえた、という充足感があるだけだ。
ふー、ふー、とあらい息をついて、アンリエッタは脱力した。フェリクスがそんなアンリエッタをやさしく腕の中に囲うから、思わず心地よさに目を細めてしまう。猫の子みたいだわ、アンリエッタはそう思った。
「アンリエッタ……」
フェリクスがアンリエッタの名前を呼ぶ。
誰よりも慕わしい声音で。アンリエッタの好きな、やさしい表情で。
その腕に抱かれているアンリエッタは、きっと世界で一番幸せだ。
アンリエッタはフェリクスの背にもう一度手を回した。とくん、とくん、と、先ほどより幾分か遅くなった鼓動が、アンリエッタの耳朶を打つ。
「僕は、君を守りたくて、何度も間違えた。僕より君を幸せにできる人間が、この世界にはいるかもしれない」
アンリエッタはゆっくりと目を瞬いた。フェリクスの言葉に、けれど口をはさむことはしない。
フェリクスが続ける。
――でも、と。
「僕は、君を想う、愛しぬくと誓うよ。君がおばあさんになっても、そのしわしわの手を握って、ずっと隣にいる。守る。だから――」
アンリエッタは、フェリクスの唇に人差し指を立てた。驚いて丸くなる、フェリクスの空色の目と視線が合う。……ああ――ああ――。
私、この人に愛されて、愛せて、幸せなんだわ、と。
アンリエッタは、自分の心、腹を、胸を、すべてを満たすこの気持ちを、何と呼ぶべきか、今、ようやくわかった気がした。
それは、いたわりだったし、恋だった。
悲しいような、けれどどうしようもなく得難い、大切なものだった。
きっと――これが、愛するということなのだ。
「私も、あなたを愛してる。フェリクス。だから……だからね」
アンリエッタは笑った。
「一緒に、守りあっていきましょう。何度間違えても、何度失敗してもいいの。私にはあなたがいて、あなたには私がいる。それはどんなに心強いことでしょう。……だから、の先はいらないわ。私、あなたの隣にいたい。あなたの後ろじゃなくて、あなたの隣に」
アンリエッタの言葉を、フェリクスが息をつめて聞いている。
空に、星が瞬いている。きっと、もうすぐ朝が来る。朝焼けの紫を越えて、フェリクスの色をした空が見える。
「私ががんばって、できないことなんてない。そこに、アルファもオメガも、ベータもないのよ。私は、私のままで、あなたがいれば、無敵なんだから」
そう言ったアンリエッタの唇が、フェリクスのやわらかなそれでいまいちどふさがれる。
そこには、星が降るような愛しさが詰まっていた。
唇を触れ合わせ、離して、触れて、また離して。
そうして二人で笑いあって。
「君は、最高だ」
「ええ、だって、あなたがいるもの、フェリクス」
アンリエッタは銀糸の髪を揺らして笑んだ。ふたりでずっと生きていくから、幸せで、強くなれる。恋人とは、夫婦とは――番とは、そういうものなのだと。
遠回りの末に出した答えは単純で、くすりと笑ってしまうようなものだった。けれど、それでよかった。
――それが、よかった。
遠く高い空をさらさらと流れる雲。咲き誇る薔薇の花。その光景の中で出会った幼い二人は、今、こうして幸せに笑う。これは、そういう物語だった。
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